「食後にすぐお腹が張る」「少し食べただけで満腹になる」「みぞおちが痛い」—— こんな症状が続いているのに、病院の検査では異常なしと言われたことはありませんか?
それは 「機能性ディスペプシア(FD)」 かもしれません。
機能性ディスペプシアは、胃や十二指腸に明らかな病気がないにもかかわらず、慢性的な胃の不快感が続く疾患です。
現代のストレス社会では、10〜40%の人が経験 するといわれるほど身近な病気ですが、原因が特定しにくく、適切な対処ができていない人も多いのが現状です。
この記事では、機能性ディスペプシアの症状・原因・治療法をわかりやすく解説 します。
「ただの胃もたれ」と軽視せず、適切なケアで快適な生活を取り戻しましょう!
1. 機能性ディスペプシア(FD)とは?
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、明確な器質的疾患(胃潰瘍やがんなど)がないにもかかわらず、胃や十二指腸の不快な症状が続く一般的な胃腸障害です。
特徴的な症状には、上腹部の灼熱感、上腹部の痛み、食後の膨満感、早期満腹感などがあり、食事によって症状が悪化することが多いです。
かつては「非潰瘍性ディスペプシア」とも呼ばれ、胃炎や消化性潰瘍などの「器質性ディスペプシア」と区別されていました。
2. 機能性ディスペプシアの原因とメカニズム
機能性ディスペプシアの正確な原因は不明ですが、さまざまな要因が関与していると考えられています。
主な要因
- 胃・十二指腸の運動機能異常(食べ物を適切に消化・排出できない)
- 胃・十二指腸の知覚過敏(通常よりも痛みや膨満感を感じやすい)
- 腸内細菌叢の変化
- 免疫機能の異常
- 腸脳軸の機能障害(腸と脳の相互作用の異常)
- 胃の電気リズムの異常
- 自律神経系・中枢神経系の調節不全
- H. pylori(ピロリ菌)感染
- 心理的ストレス・不安・うつ
リスク要因
- 女性(男性よりも発症率が高い)
- 喫煙
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
- 高BMI(肥満)
- 胃腸感染症の既往歴
- 精神的ストレス(不安やうつ)
→ 特に不安を持つ人はFD発症リスクが8倍高いという報告もあります。
3. 機能性ディスペプシアの症状
機能性ディスペプシアの症状は 「食後愁訴症候群(PDS)」と「心窩部痛症候群(EPS)」 の2つのタイプに分類されます。
① 食後愁訴症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)
- 食後の膨満感(お腹が張る感じ)
- 早期満腹感(少量でお腹いっぱいになり、食事が続けられない)
PDSはFD患者の**約69%**が該当する最も多いタイプです。
② 心窩部痛症候群(EPS:Epigastric Pain Syndrome)
- みぞおち(上腹部)の痛み
- みぞおちの灼熱感(焼けるような不快感)
EPSはFD患者の**約7%**を占め、PDSとEPSが重なる人も約25%います。
その他の症状
- 吐き気
- 胸焼け
- 食欲不振
- 消化不良感
- げっぷ
症状は慢性的で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
4. 機能性ディスペプシアの診断
機能性ディスペプシアは、**「症状の持続」と「検査で異常がないこと」**をもとに診断されます。
診断基準(ローマIV基準)
✅ 過去3か月間、以下の1つ以上の症状が続いている
- 食後の膨満感
- 早期満腹感
- 上腹部の痛み
- 上腹部の灼熱感
✅ 症状の発症が診断の6か月以上前からある
✅ 内視鏡検査で胃潰瘍や胃がんなどの異常がない
診断に必要な検査
- 血液検査(貧血や炎症の有無)
- ピロリ菌検査(尿素呼気試験、便抗原検査)
- 胃内視鏡検査(胃がんや潰瘍の除外)
- 超音波・CT検査(必要に応じて)
5. 機能性ディスペプシアの治療法
機能性ディスペプシアの治療には、生活習慣の改善、薬物療法、心理的ケアなどがあります。
① 生活習慣の改善
- 少量の食事をこまめに摂る
- 脂っこい食事を減らす
- カフェイン・アルコールの摂取を控える
- ストレスを軽減する
- 適度な運動をする
特に脂っこい食事は胃の感受性を高め、FDの症状を悪化させるため要注意です。
② 薬物療法
症状に応じて、以下の薬が使用されます。
薬の種類 | 作用 | 主な薬剤 |
---|---|---|
消化管運動促進薬 | 胃の動きを改善 | アコチアミド、モサプリド |
胃酸分泌抑制薬 | 胃酸を抑える | PPI(オメプラゾール)、H2ブロッカー |
胃の知覚過敏改善薬 | 胃の痛みや不快感を軽減 | ミルタザピン(抗うつ薬)、ブスピロン |
漢方薬 | 胃腸機能を調整 | 六君子湯 |
PDSには消化管運動促進薬、EPSには抗うつ薬やPPIが有効なことが多いです。
③ 心理的ケア
- ストレス管理(瞑想、ヨガ、カウンセリングなど)
- 認知行動療法(CBT)
- 抗うつ薬・抗不安薬の使用(必要に応じて)
特にストレスや不安が強い場合、心理的アプローチが有効です。
6. 機能性ディスペプシアの予後
機能性ディスペプシアは慢性的な疾患ですが、命に関わる病気ではありません。
長期的な経過
- 約15~20%の患者は症状が続く
- 50~35%の患者は症状が消失
- 30~35%の患者は他の消化器症状を経験
📌 定期的な生活習慣の見直しや適切な治療により、症状を管理することが可能です。
7. まとめ
- 機能性ディスペプシア(FD)は、検査で異常がないのに胃の不調が続く病気
- 食後の膨満感、早期満腹感、上腹部痛などが主な症状
- ストレスや食生活が影響しやすい
- 生活習慣の改善と薬物療法で症状を管理可能