私たちは日々、自分の内側でさまざまな思考や感情と向き合っています。
しかし、自分の頭の中だけで物事を考えていると、視野が狭まり、感情に飲み込まれやすくなります。そんな時に役立つのが「自己距離化」という技法です。
自己距離化とは、自分の思考や感情を一歩引いて眺めるスキルのこと。心理学では、これによってストレスの軽減や客観的な判断ができるとされています。今回の「他人の声を使って思考する」は自己距離化を使ったテクニックです。
他人の声を使って思考する
自己距離化の一つの方法として、「他人の声を使って思考する」テクニックがあります。これは、頭の中で信頼する他人(友人、恩師、尊敬する人など)になりきって、自分に問いかけたり、アドバイスを与えるという方法です。
例えば、こんなふうに実践します:
- つらいことがあったとき、「○○さんだったらなんて言うだろう?」と考える
- 決断に迷ったとき、「あの人の声」で問いかけてみる:「今の自分は本当に納得してる?」
- 子供の頃の自分に向けて、未来の自分の声で話してみる:「大丈夫、きっと乗り越えられるよ」
このように、他人の声を借りることで、自分の考えに一度「距離」を置くことができ、より冷静に、柔軟に思考できるようになります。
なぜ効果があるのか?
私たちの頭は、「誰の声で考えているか」によって、ものの見方が変わります。たとえば、いつも自分の声で考えていると、感情に流されやすくなったり、同じ考えにとらわれてしまうことがあります。
でも、信頼している人や尊敬する人の声を頭の中で再現すると、不思議と冷静に、ちがった角度から物事を見られるようになります。これは、自然に「視点を切り替える」ことができているからです。
特に日本では、「まわりの気持ちを考える」「他人の目を意識する」といった文化があるので、このやり方はとてもなじみやすいんです。
今日からできる簡単なステップ
- 信頼できる人を一人思い浮かべてみましょう。
家族でも友だちでも先生でも、「この人なら自分をわかってくれる」と思える人がいいです。 - その人の話し方や雰囲気を思い出してみてください。
ゆっくり話す?元気な口調?ちょっと厳しい?優しい?思い出すだけで、その人の声が聞こえてくるかもしれません。 - いま悩んでいることを、その人になりきって考えてみましょう。
「○○さんだったら、どう言うかな?」と、自分に向かってアドバイスしてもらうイメージです。 - 前向きな言葉じゃなくても大丈夫。
ときには、耳が痛い言葉の方が、自分を正しい方向に導いてくれることもあります。
もしも、感情が落ち着かない、思考整理ができないなど、良い方向に進まない場合は「思い浮かべた信頼できる人」を変えてみるのがおすすめです。
「他人の声を使って思考する」場合に、うまくいく人物が見つていくことがコツです。
メンターやロールモデルでもOK!
「他人の声を使って思考する」と聞くと、実際に身近にいる人を思い浮かべがちですが、必ずしも現実の人物である必要はありません。
信頼しているメンターのような存在や、憧れているロールモデルでも十分に効果があります。
たとえば、
- 昔お世話になった先生
- 尊敬する上司や先輩
- 歴史上の偉人
- 憧れのアーティストやスポーツ選手
- 心に残っている本や映画のキャラクター
など、「この人ならこう言うだろうな」と思える人物を心の中に置いてみてください。その人の声で考えることで、自然と視点が広がり、冷静で前向きな思考ができるようになります。
あなたの心の中に、頼れる“相談役”をつくるような感覚です。
まとめ
「他人の声を使って思考する」という自己距離化の方法は、感情に流されやすい時や、思考が堂々巡りになってしまう時に、心の整理や冷静な判断を助けてくれるとても実用的なテクニックです。現実にいる人だけでなく、メンターやロールモデル、架空の人物でもOK。大切なのは、「自分とは違う視点」を通して、自分自身と対話すること。
誰でも今日から実践できるこの方法を、ぜひ日常の中で活用してみてください。あなたの心の中に、頼れる“もうひとりの自分”を育てていきましょう。