「もっと勉強しなきゃ…」そう思いながらも、なかなか行動に移せない――。
多忙な研修医にとって、限られた時間の中で計画的に学ぶことは大きな課題です。
そんな中、注目されているのが心理学に基づいた学習戦略「WOOP」。
本研究では、WOOPを使うことで、従来の目標設定よりも研修医の勉強時間が大幅に増加したことが明らかになりました。
果たして、WOOPとはどんな手法で、なぜ学習効果を高められるのでしょうか?
参考:【マサチューセッツ総合病院2017年研究】研修医の学習行動の変化:目標設定とWOOPの使用に関するランダム化比較試験
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
WOOP(Wish, Outcome, Obstacle, Plan)という手法を使ったグループは、従来の目標設定のみのグループよりも明らかに多くの時間を勉強に使いました。
WOOPは、目標の達成率を高めるものです。ドイツの心理学者 ガブリエル・エッティンゲン(Gabriele Oettingen) が開発した目標達成のためのフレームワークです。
W(Wish) :達成したい目標を決める
O(Outcome) :目標が叶ったときの理想の結果を思い描く
O(Obstacle) :目標達成を邪魔する障害を特定する
P(Plan) :障害が起きたときの対処方法を決める
大きな特徴は「目標達成を妨害するものを、あらかじめ対策すること」です。
WOOPとは?目標を達成率を高める
内容の信頼性:9 / 10
- ランダム化比較試験(RCT)であり、研究デザインは堅牢
- サンプル数は34人とやや小規模
- 単施設・単診療科での実施のため、汎用性には限界あり
何の研究か?
研修医が自己調整型の学習を効果的に行うために、心理学に基づくWOOPという手法が、従来の「目標設定」よりも勉強時間を増やす効果があるかを調査した研究です。
自己調整型の学習とは、自主的な学習のことです。
自分一人で目標達成する力はどのくらいか?を測定するものですね。
研究した理由は?
医師にとって自己調整型学習は非常に重要ですが、臨床業務の忙しさや疲労により、計画した通りに勉強するのは難しい状況です。
これを解決する方法として、心理学で実証されているWOOPの効果を医療教育の現場で検証することが目的でした。
「多忙な研修医が、さらに自主的に勉強する時間を増やす」って、かなりの難易度ですよね。この方法が有効であれば、「ほとんどの人は目標に使う時間を増やすことができる」と思います。私もWOOPは愛用しています。
結果はどうだったか?
WOOPを実践したグループは、目標に沿った勉強時間の中央値が4.3時間で、目標設定のみのグループ(1.5時間)よりも有意に多かった(P = 0.021)
この研究では、WOOP(願望、成果、障害、計画)という心理的手法を使ったグループと、従来の「目標設定」だけを行ったグループで、3週間にわたり勉強時間を比較しました。
その結果、WOOPグループのほうが1週間あたり平均で4.3時間も「目標に沿った」勉強をしていたのに対し、目標設定グループは1.5時間しか勉強していませんでした。
統計的にも有意差があり(P = 0.021)、偶然による差ではないと考えられます。
つまり、WOOPを使うことで、勉強時間が約3倍に増えたことになります。
目標設定だけよりも、WOOPを使った方が、勉強時間がほぼ3倍になっていますね。
WOOPは、「目標設定(ポジティブなゴールイメージ)のみだと効果ないよね。効果出すには現実的にできるように考えた法が良いよね。」というメンタルコントラストの理論から発展したものです。
非目標的な勉強時間には両群で差は見られなかった
面白いことに、「目標とは関係ない医療分野の勉強」に使った時間については、WOOPグループ(中央値5.5時間)と目標設定グループ(5.0時間)の間に統計的な差はありませんでした(P = 0.99)。
これは、WOOPが「目標に関連した勉強」に集中させる効果がある一方で、他の学習活動を犠牲にしていないことを意味します。
WOOPで目標の勉強時間が増えたとしても、他の勉強時間を削っていないんですね。
これはWOOPが単に目標達成するではなく、「障害対策をするもの」となっているので、時間管理がしやすかったためと思います。障害対策で「余分な時間を削ることもできる方法」なので。
WOOPグループでは学習習慣や時間管理に対する満足度も高かった
勉強時間だけでなく、主観的な満足度にも違いが見られました。
- WOOPグループでは、勉強習慣や時間の使い方に対する満足度が維持またはやや向上
- 一方、目標設定グループでは、満足度が明確に低下しました(特に「時間管理」に関する評価が悪化)
これは、WOOPを使うことで、自分の学習に対してコントロール感や達成感を持てたことを示唆しています。
満足度の維持・やや向上は、実はかなりな効果です。
というのも、多忙な研修生が勉強時間を週4.3時間増やしているので、勉強に時間を使うこと自体はストレスに感じやすいと考えられるからです。
「多忙+目標達成」だからですね。なので、多忙ではない人、ほどよく時間がある人は、より満足度が上がりやすいんじゃないかな?と思います。
効果の大きさ(Hedges’ g)は0.66で、中〜大程度の効果
Hedges’ g(ヘッジズのg)は、「どのくらい効果があったか」を数値で示す統計指標です。
- 0.2 = 小さい効果
- 0.5 = 中くらいの効果
- 0.8 = 大きな効果
今回の研究では、g = 0.66だったため、これは「中〜大程度の効果があった」と評価されます。
この数値は、教育や心理学の介入研究においては十分に意味のある効果であり、WOOPの実用性を強く示しています。
効果量0.66なので、「目標達成するなら、WOOPの理論は取り入れたほうが良いぞ」というレベルですね。これも研修医を対象にしていると思えば、目標達成が苦手な人はもっと効果が高まるのでは?と思います。
というのも、研修医とは医大に行った人たちなので、おそらくもともと目標達成能力が高いからです。それにもかかわらず、目標達成に効果がでているので、「目標達成を高めたい人なら万人に使えるテクニック」と、この研究結果からは言えますね。
WOOPは、「やる気」だけに頼らず、心理的な障壁を乗り越えるための具体的な「対処戦略」を取り入れることで、行動につなげる力を高める方法です。
医療現場のように多忙な環境でも、有効な学習支援の一手法として期待されます。