うつ病は世界中で深刻な問題となっています。
最近の研究で、食生活に含まれる炎症性物質(DIIスコア)がうつ病リスクと関係する可能性が指摘されました。
本記事では、この研究結果をわかりやすくご紹介します。
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
炎症を引き起こしやすい食事(高いDIIスコア)は、特に女性において、うつ病リスクを高めることがメタ分析により示されました。しかし、抗炎症食でうつ病リスクを下げられるかは、今後の研究が必要です。
今回は「炎症を引き起きしやすい食事」の話です。ただ、炎症は炎症なので、女性のほうが炎症に対するリスクは高いのかもしれないですね。神経痛などの慢性的な痛みも女性のほうが多いですし。体に対する敏感さがあるが関係していそうです。そういう意味では、女性がヨガ(マインドフルネス)を好む人に女性が多いのも分かる気がしますね。痛みを和らげる効果があるので。
内容の信頼性:10点満点で7点
対象研究の質は高めですが、対象者の多様性や食事調査の自己申告による限界、研究数の少なさが信頼性に影響を与えています。
食事調査は、自己申告になりますよね。寮生活や刑務所の人たちを対象にすれば管理はできそうですが。ただ、抗炎症は疲れ・痛み・睡眠など多岐に渡って効果があるので、研究数以上に信頼性は高いとは思います。
研究数は少ないですが、対象は49,584人ですから。
何の研究か?
「食事性炎症指数(DII)」と呼ばれる指標を使って、食事の炎症性(体内で炎症を引き起こす可能性)と、うつ病や抑うつ症状の関係を調べたメタ分析(複数の研究を統合した分析)です。
食事性炎症指数なので、簡単にいうと「抗炎症食(野菜や魚など)を多く食べて、炎症促進食(赤身肉や高GIなど)を少なく食べる」と、うつ症状がどうなるか研究ですね
研究した理由は?
うつ病は世界的に重大な健康課題であり、炎症がうつ病の発症に関係している可能性が指摘されています。食生活が炎症に影響することから、食事と精神の健康の関連を明らかにする必要がありました。
炎症がうつ病の発症に関係するのは、理屈的には「そりゃそうだ」なんですが、実際にきちんと調べることに意義がありますよね。「理屈的には」が間違った先入観を生みやすいからです。
結果はどうだったか?
DIIスコアが最も高い人は、最も低い人と比べ、うつ病リスクが23%高い(RR=1.23、95%CI 1.12–1.35)
DII(Dietary Inflammatory Index)スコアは、食事全体の炎症性を数値化したものです。スコアが高いほど、炎症を引き起こしやすい食事パターン(例:脂質や糖質の多い食事)を示します。
メタ分析の結果、DIIスコアが最も高いグループは、最も低いグループに比べ、うつ病リスクが23%高いことがわかりました(リスク比(RR)=1.23)。これは、DIIスコアの上昇とうつ病リスクの間に有意な関連があることを示しています(95%信頼区間は1.12~1.35と、結果の信頼性を裏付ける数値です)。
前向きコホート研究(時間を追って調査)の結果ではRR=1.25(95%CI 1.12–1.40)、横断研究(ある時点での調査)ではRR=1.16(95%CI 0.96–1.41)
研究デザイン別に分析した結果です。
- 前向きコホート研究(時間をかけて追跡調査を行う方法)では、DIIスコアが高い人のうつ病リスクは25%高いことが示されました(RR=1.25)。これは信頼区間(1.12~1.40)が1を超えており、統計的に有意な結果です。
- 一方、横断研究(ある時点でのデータを調査)は、DIIスコアが高い人のうつ病リスクが16%高いと出ましたが(RR=1.16)、信頼区間(0.96~1.41)は1を含むため、統計的には有意ではありません。因果関係を明確にするには、前向き研究の方が信頼性が高いと考えられます。
女性はうつ病リスクが25%高い(RR=1.25、95%CI 1.09–1.42)、男性は有意差なし(RR=1.15、95%CI 0.83–1.59)
性別で分析した結果、女性ではDIIスコアが高いほど、うつ病リスクが25%高いことがわかりました(RR=1.25、信頼区間1.09~1.42)。これは統計的に有意な結果です。
一方、男性ではリスク比が1.15と高めでしたが、信頼区間(0.83~1.59)が1を含み、有意差は確認されませんでした。女性の方が炎症に対する感受性が高く、気分への影響も大きい可能性が示唆されます。
男性は肉体的苦痛に強い傾向があるため、このような結果になっているのかもしれません。炎症は体への痛みや不快感から、不安やストレスにもつながるものだからです。逆にいうと、男性でも神経質な人は女性と同じくらいリスクが高い可能性もあります。
男性と女性というくくりはあくまで傾向であって、個人に当てはめるときは注意が必要と感じますね。
食事調査やうつ病評価の限界、研究対象者の多様性不足、研究数の少なさが課題
このメタ分析にはいくつかの限界があります:
- 食事調査の限界:DIIスコアは参加者の自己申告(食事記録や質問票)から計算されるため、記憶や申告の誤差(想起バイアス)が入りやすいです。
- うつ病評価のばらつき:研究によってうつ病の診断方法(CES-D、PHQ-9、自己申告など)が異なるため、結果の一貫性に影響があります。
- 研究対象者の多様性不足:ほとんどの研究対象がヨーロッパ系であり、他の人種や地域への適用性が限定的です。
- 研究数の少なさ:このメタ分析に含まれた研究は6件のみで、特に横断研究の結果は信頼性がやや低めです。より多くの質の高い研究が必要です。
世の中には、「食事でうつ病が改善する・しない問題」がたまにあります。実際には、うつ病改善に効果はありますし、体の炎症が強ければ心理療法や薬物療法の効果も軽減される可能性は高いです。ただ、「改善しない」と言われることも分かる所があって、そもそも食事は自己申告で実態は正確ではないのと。「改善しない」の主語が「特定の食べものや栄養だけでは改善しない」という意味で使われることが多いんだと思います。
食事の基本はバランスだからです。でも、バランスは「健康につながる意味での食生活バランス」です。