「痛みに効く」と聞くと、どこか“思い込み”っぽく聞こえること、ありませんか?
特にマインドフルネス瞑想のように、宗教やスピリチュアルなイメージが先行しがちな手法では、「実際に効いているのか、それともただのプラセボ(偽薬)効果なのか?」という疑問を持つ人も多いはず。
そんな中、UCサンディエゴの研究チームが、「脳の活動パターンから“プラセボか本物か”を見極める」というユニークな実験を行いました。
MRIとAI(多変量パターン解析)を駆使して、マインドフルネス瞑想がどのように痛みに作用しているのかを、科学的に検証したのです。
結果は驚きの連続でした。
マインドフルネス瞑想は、ただの思い込みではなく、脳の「痛みの強さ」や「痛みに伴う感情」に関わる神経活動を確実に変えていたのです。
一方で、「効くと思う」という期待がもたらすプラセボ反応とは、まったく異なる仕組みで作用していることも明らかに──。
参考:カリフォルニア大学2024年「脳スキャンにより、痛みに対するマインドフルネス瞑想はプラセボではないことが明らかに」
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
マインドフルネス瞑想は「痛みの強さ」や「痛みの不快感」に関する脳の活動(NPSおよびNAPS)を低下させる一方、「期待や社会心理的要因」に関連する部分(SIIPS‑1)には影響を与えず、プラセボとは異なるメカニズムで痛みを軽減します。
痛み対策にはマインドフルネス。とはいえ、どこまでプラシーボ効果(思い込み)なのかが分からないところ。ということで、脳の活動からプラセボかどうかを判断して見た研究ですね。
内容の信頼性(10点満点評価)
9 / 10点
・高信頼性の情報源:UCサンディエゴの公式発表およびBiological Psychiatry誌に掲載されており、信頼度は非常に高いです。
・具体的データに基づく:115名の健康な被験者を用いた二重臨床試験で、MRI・機械学習解析(MVPA)に裏付けられています。
・唯一の減点理由:被験者が健康な成人のみである点から、慢性痛を抱える人への効果については今後の追加研究が必要です。
何の研究か?
・目的
マインドフルネス瞑想の痛み軽減効果はプラセボによるものか、それとも独自のメカニズムによるものかを明らかにすること。
・対象
健康な成人115名(2つの臨床試験を合わせて)
・介入
4回の20分間セッションで、以下のいずれかを実施
- ガイド付きマインドフルネス瞑想(本格的)
- シャム(偽)瞑想(深呼吸のみ、非判断的注意なし)
- プラセボクリーム(ワセリン)
- オーディオブックを聴くだけの対照群
別日に分けて4回20分間セッション。マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)の8週間プログラムではなく、もっと短期的に効果があるかも見えますね。
「非判断的注意なし」とは、マインドフルネス瞑想の「評価しない」「あるがまま」の要素を指導せずに行っているという意味です。単なる目を瞑っての深呼吸ですね。
たまに目を瞑って深呼吸することがマインドフルネス瞑想と勘違いされていることはありますよね。マインドフルネスの8つの態度を意識して、瞑想を行うのがおすすめ。
研究した理由は?
・従来、マインドフルネス瞑想が「プラセボ効果」によるものと推測されていたため、その神経学的根拠を明らかにする必要があった。
・最新の脳内パターン解析(MVPA)により、「痛み」には複数の脳活動パターンが複雑に関与することがわかっており、それらを個別に解析することで、瞑想の仕組みを詳細に調べたかった。
マインドフルネス瞑想がすでに宗教的な怪しさが漂うため、プラセボなのでは?って思う人も多いのではないでしょうか。
結果はどうだったか?
自己申告の痛み評価の詳細
本研究では、被験者に「非常に熱いが無害な熱刺激」を脚に与え、その直後に2つの項目について自己評価を行ってもらいました:
- 痛みの強さ(pain intensity)
- 痛みの不快感(pain unpleasantness)
結果、マインドフルネス瞑想群のみが、両方のスコアにおいて顕著な低下を示しました。つまり、痛みの物理的な強さだけでなく、それによって感じる「イヤな気持ち」も軽くなったのです。
- 他の群(プラセボクリーム、シャム瞑想、対照群)は一部で軽減効果が見られたものの、統計的には有意ではなかったため、「瞑想の方が確実に効く」という結論につながりました。
まず、「主観的には効果あったよ」というところですね。では、プラシーボ的には?
脳パターン(神経シグネチャー)解析の詳細
研究では、MVPA(多変量パターン解析)というAIを活用した脳画像解析法により、3つの「痛みに関わる脳の活動パターン」を調べました。
NPS(Neurologic Pain Signature)=痛みの強さに関わる
- NPSは、脳の複数の領域(特に一次体性感覚野、島皮質、視床など)で共通に見られる、痛みの強さそのものを反映した活動パターン。
- マインドフルネス瞑想によって、このNPSの活動が有意に低下。
- → つまり、「本当に痛みが弱まった」ことが、脳科学的に証明されたのです。
- プラセボや他の介入では、NPSに大きな変化は見られませんでした。
少なくとも、脳活動的にも「本当に痛みが弱まった」とのことですね。
実際に私も2025年にコロナで39.5度の高熱がでたときは、マインドフルネス瞑想で乗り切りました。慣れてくると、痛みの強さが想像以上に違って驚くと思います。
NAPS(Negative Affect Pain Signature)=痛みに伴う感情
- NAPSは、痛みによって生じる不安・恐怖・イライラといったネガティブ感情に関連する脳パターン(前頭前野や扁桃体などが関与)。
- マインドフルネス瞑想群のみが、この感情的苦痛のパターンを有意に低下。
- → 「痛いけど、なんか平気」という状態を、脳が再構築しているとも言えます。
実をいうと、こっちの「痛みに伴う感情が減少」というのがマインドフルネス瞑想の効果だと思っていました。「 NPS(Neurologic Pain Signature)=痛みの強さに関わる」のほうはちょっと驚きです。ただ、脳活動ってどこまで明確に分けて考えられるか問題はありますよね。ただ、実際に使うレベルでは、マインドフルネス瞑想は痛み対策には使えますよね。
SIIPS‑1(Stimulus-Independent Pain Signature)=期待・社会心理的要因
- SIIPS‑1は、実際の刺激とは無関係に、「これは痛そう」「これは効くはず」といった期待・信念・社会的文脈に関係する脳の反応。
- プラセボクリーム群のみがこのパターンを低下させました。
- → つまり、プラセボは「これは効くと思う」という期待によって痛みを軽減していたことが明確に分かります。
プラセボクリームのみにプラセボ効果があったとのこと。これはちょっと気になるのが、マインドフルネス瞑想と偽瞑想に、プラセボ反応がなかったのはちょっと違和感ではあります。「プラセボ効果を超えて、痛みに効果がある」なら分かるのですが、「プラセボ効果がなかった」というのは不思議。マインドフルネス瞑想に対して、ポジティブな印象がなかった人たちが実験に参加したんでしょうか???
ただ「SIIPS‑1=期待・社会心理的要因」の反応だけを見ているので、これだけで一概にプラセボ効果がなかったともいえませんが…。
あと、クリームを塗ったらプラセボ効果があったのもある意味では良いことだと思います。「このクリームは効くぞ!」という思いが強い人が痛みに困っていれば、ひとまず体に良さそうなクリームを塗るのはありかもしれないですね(化粧系の乳液とか)