子どもにとって3番目に大きなストレスはなんでしょうか?
勘のいい読者の方なら気づいているかもしれませんが、それは「おねしょ」です。
「子どもにとって何がストレスかを子どもに聞いた」というアンケートによると、子どもにとって「おねしょ」は親子喧嘩や離婚についで3番目のストレスだったそうです。
アメリカのアンケートだったので、日本の子どもがそのまま同じとは限りませんが、子どもの世界では「おねしょ」は大人が思っている以上に、大きなストレスなんです。
子どもがおねしょをすると、親が叱ったり、怒ったり、落ち込んだり、焦ったり、しんどそうな表情を浮かべるものです。
その親の姿を見て、子どもは「罪悪感」を感じます。
子どもは3歳、4歳、5歳、6歳と年齢を重ねるにつれて、「どうして自分はおねしょをしてしまうんだろう?」と考えるようになります。
おねしょはまわりの子どもも隠すので、「自分だけがおねしょをしている」と錯覚をしてしまうからです。
子どもにとっておねしょは「人に言ったら恥ずかしい悪いこと」です。
兄弟がいればからかわれることもあるかもしれませんし、親から叱られることもあります。
誰にもおねしょをしていることを話すことができず、1人でおねしょの悩みを抱えてしまいます。
その結果、友だちとのコミュニケーションが苦手になることがあります。
おねしょで悩んでいると、「友だちとのお泊り」「学校のお泊りイベント」を避けるようになります。
子どもとしては「おねしょ」を言い訳にもできず、友だちに嘘をついてしまうからです。
友だちに嘘をつく理由がおねしょなので、「自分はダメな子、悪い子」と考えて自信をなくすことがあります。
自信をなくすと学力にまで影響を与えるので、「おねしょ」は思った以上に深い悩みです。
実際に僕も、5~6歳ぐらいまでおねしょをしていて、すごく恥ずかしかったのを覚えています。
親戚によくからかわれていましたし、まわりの子は「おねしょなんてしていないし」みたいな空気感があって、「自分はまだおねしょしている」と嫌な気持ちになりました。
大人になって、子どもたちは思ったよりも「おねしょ」をしていることを知って驚いたものです。
では、実際どれだけの子どもたちがおねしょをしているのでしょうか?
親が「年齢とおねしょの関係」を知っておくことは、とても大事なんです。
子どもにとっておねしょは大きな悩みですが、親にとっても「自分の教育が悪かったのかな」という悩みにつながりやすいからです。
実は10歳(小学4年生)でも10人に1人は週2回以上のおねしょをしているレポートがあります。リンカーン医療精神保健センターが2023年に夜尿症(睡眠中の排尿)についてまとめたレポート[i]によると、夜尿症の有病率は
7歳:15%
10歳:10%
青少年:2%
成人:0.5~1%
想像より多いか少ないかはあなた次第ではありますが、個人的には思ったよりも多くて驚きました。
では、夜尿症とは具体的にどういうことなのかというと、
・5歳以上
・週に2回以上おねしょをする
・3か月以上続くこと
基本的に、5歳になるまでは昼夜関係なく膀胱のコントロールやトイレでおしっこするなどのトイレトレーニングが、発達的に終わっていないことがあるため「夜尿症」とは呼ばれません。
おねしょはトイレトレーニングの失敗と感じる親もいると思いますが、実際には子どもの成長によるところが大きいです。5歳というのも目安で、おねしょに関する発達が終わる年齢は個人差があります。
そのため、親のトイレトレーニング悪かったと思い込みすぎないことが大事です。
親が「自分の育児に問題があったからだ」と罪悪感を感じると、子どもが察してしまい子どもも「罪悪感」を感じることがあるからです。
実際に、先ほどの年齢別の夜尿症(週2回以上のおねしょ)を見ていただくとわかるとおり、夜尿症の子どもはそれなりにいるものです。
ただ、ナイーブな話になればなるほど、コミュニティによっては隠してしまうことがあります。
そのため「自分の子どもだけかもしれない」と考えて、なかなか人に相談できず、子どもだけではなく親も1人で悩んでしまうことがあります。
でも、大丈夫です。恥ずかしいことではありません。
10歳でも5%、青少年(中高生)でも2%はいるんです。
大切なのは、これから「おねしょをどうしていくか?」です。
では、おねしょはどんなことが原因なのでしょうか?
野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube「メンタルコーチしもん」登録数1.3万
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
子どもの夜尿症6つの原因
①夜間の尿生成
夜間にも、体は尿をつくっていきます。
子どもが成長すると、ADHと呼ばれる利尿を抑えるホルモンが作られていき、おねしょが減っていきます。しかし、ホルモンについては成長を待つことしかできません。
なので、夜間にも体が尿を作るのであれば、寝る前までに膀胱の中の尿を減らすことがポイントになります。
②膀胱の問題
膀胱が小さいと、すぐに尿が満杯になるので「おねしょ」をしやすくなります。
また膀胱コントロールがうまくいかないと、同じようにおねしょをしやすくなります。
まずは、日々の食事や運動を整えて、体の成長を見守っていきましょう。
まだ発達しきっていないだけの可能性があるからです。
体が成長していっても、膀胱に問題がありそうと思えば、お医者さんに相談しましょう。
③不安・ストレス
カリフォルニア大学小児泌尿器科は、ストレスを経験している子どもは夜尿症のリスクが3倍あがると報告しています。[ii]
普段の生活の中での不安やストレスもそうですが、「おねしょ自体の不安やストレス」を減らすことが大事です。
また、弟や妹ができたときや、転校したとき、家以外で寝るときなど、日常が変わるタイミングで不安やストレスが大きくなりやすいです。そんなときは、おねしょをしても、「大丈夫だよ」と安心させてあげましょう。
場合によっては、「お母さんやお父さんもおねしょしていたんだよ」と、「仲間」であることを伝えてあげることは大切です。
きっと、子どものおねしょで悩んでいる親のどちらかあるいは両方が、子どもの気持ちが分かると思うからです。
なぜなら、おねしょは遺伝も大きく関係してくるからです。
④遺伝
夜尿症は遺伝も大きく関係しています。
片方の親が夜尿症の場合、子どもが夜尿症になる確率は44%。
両方の親が夜尿症の場合、子どもが夜尿症になる確率は77%。と言われています。
でも、あなたが子どものおねしょに悩んでいたとしても、「自分の遺伝のせい」と悩む必要はありません。
「自分の遺伝のせい」と考えるのではなく、「だからこそ分かってあげられる」と考えることをおすすめします。
夫婦や家族で「子ども時代のおねしょ体験」を話し合うのも良いですね。
いきなり子どもを交えて話すよりも、まず夫婦や家族で「おねしょ体験を共有」してからのほうがおすすめです。
おねしょは「恥ずかしい悪いこと」という考えを、家族全体でなくしていくことが、子どもの健やかな成長につながり、結果的におねしょをなくしていく道につながります。
⑤睡眠から目覚めることができない
膀胱がいっぱいになっても、尿意を感じて目覚めることができないと、おねしょはしやすいです。
気づいたらおねしょしていることもあれば、朝起きたときにおねしょに気づくこともあります。
尿意で目覚めないが原因の場合、「膀胱がいっぱいになるとトイレに行く必要がある」と脳に教育できれば、おねしょが改善します。
この場合に、とても効果があるのが「おねしょアラーム」。
おねしょアラームは、専用パンツにおねしょをすると尿を感知して起こしてくれるアイテムです。
おねしょしたあとで起きるので、その日のおねしょを防ぐことはできません。
ただ、おねしょをしてすぐ起きるを繰り返すと、尿意を感じて目覚めるようになってきます。
⑥便秘や睡眠時無呼吸症候群などの場合
便秘や睡眠時無呼吸症候群の場合も、おねしょにつながります。
便秘になって、うんちをあまりしなくなると、排尿や排便の筋肉が弱まるため、尿のコントロールが難しくなるためです。
睡眠時無呼吸症候群の場合は、低酸素によって尿を作るホルモンが活動するため、尿が増えます。しかも、呼吸のしにくさをお腹の力でカバーするため、腹圧によっておねしょをしやすくなることがあります。
このケースでは、お医者さんに相談して便秘や睡眠時無呼吸症候群を治療していくことが大事です。
アレルギー性鼻炎も睡眠時の低酸素につながりやすいので、早め早めの治療が大切です。
では、以上の原因をどのように解決していけばいいかをお伝えします。
子どもの夜尿症5つの解決策
①水分コントロール
水分コントロールは、おねしょで悩む場合に、一番はじめに取り組むものになります。
おねしょで悩んでいる子どもの多くは、夕方以降の水分補給が多く夜中に尿がたまりやすくなっています。
では、どうすればいいかというと、夕方までの水分量を増やし、夕方以降の水分量を減らすことです。
具体的には次のように水分補給をします。
⑴ 12時までに1日の水分量の40%
⑵ 12時~16時30分までに1日の水分量の40%
⑶ 16時30分以降に1日の水分量の20%
⑷ 就寝の2時間前に水分補給を制限
時間や数値は目安ぐらいでお考え下さい。
基本的には午前と夕方までの水分量を増やして、夕方以降は減らすぐらいでOKです。
また、利尿作用のあるカフェイン、牛乳や野菜ジュースなどカリウムが入ったものを午後は控えめにするのがおすすめです。
当然ですが、夕方以降でも過剰な水分制限はNGです。
②おねしょアラーム
「膀胱に尿がたまったら、トイレに行く」を習慣づけるのに、おねしょアラームはおすすめです。
おねしょアラームは、アラームがついた専用のパンツを吐き、尿を感知すると起こしてくれるアイテムです。
おねしょしてすぐ起きるを繰り返すことで、尿意を感じて目覚めやすくなります。
5歳未満のおねしょは発達がまだ終わっていない可能性があるので、基本は使わないでください。
なぜなら、おねしょアラームを使っても治らず、ただ夜中に起こすだけのアイテムになる可能性があります。
5歳以上で、子どもの成長は進んでいるけど「おねしょだけがなかなか治らない」というときにおすすめです。
おねしょアラームの大切なポイントは2つ
⑴ 毎日きちんと使うこと
⑵ 効果が得られるまでは時間がかかること
※おねしょアラーム「WET STOP3」は、「 1ヶ月位までに43%、2ヶ月位までに61%、3ヶ月位までに72%の対象者に改善」と伝えています。
薬の治療法とは違い、リスクがほぼないことが良いところです。
ただ、おねしょアラームが1万円ほどするアイテムです。この価格はご家庭によっては少し考えてしまう値段ですよね。
ただ、おねしょアラームはおねしょを改善すれば使わなくなります。
なので、その後、子どもを持つご家庭にプレゼントしたり、メルカリなどで売ったりするという手もあります。購入時もメルカリなどを使って安く購入する、おねしょアラーム下取りサービスをしているメーカーから買うことで、費用を抑えることができます。
やや面倒であることと、すぐに結果がでないことは少しもやもやするかもしれません。
でも、おねしょアラームで改善すると、おねしょ再発率が薬よりもはるかに低くなります。
おねしょの後始末がなくなることと、子どものストレスが1つ減ることを思えば、おねしょ解決法の中では最適です。
さらに、デスモプレシンと組み合わせると、おねしょをより高確率で改善できると言われています。
③デスモプレシン
デスモプレシンは利尿作用をとめるホルモンと似た働きをする薬です。
副作用があるため、お医者さんにきちんと摂取量や副作用を聞いた上で飲むことが大事です(薬全般に言えます)。
ただ、デスモプレシンのみの場合、薬をやめるとおねしょの再発はしやすいです。
デスモプレシンを単独で使う場合は、修学旅行やお泊りするなど「子どもがおねしょできないとき」にお医者さんにご相談するのがおすすめです。
デスモプレシンは単独であれば再発しやすいですが、おねしょアラームと一緒に行うとおねしょ改善率が非常に高いです。
まずはおねしょアラームを使って、おねしょ改善がうまくいかない場合にデスモプレシンを考えるのがおすすめです。
おねしょにおいて、薬は治療のためとは考えないでください。
あくまで、子どもが自然におねしょをなくしていくためのサポートでしかありません。
これは、とても重要なことです。
④お医者さんに相談する
おねしょで悩んでいる場合は、やはりお医者さんに相談することが大切です。
改善方法を教えてくれたり、睡眠障害があれば治療してもらえたり、デスモプレシンのような薬の助けを借りることもできるからです。
特に、おねしょ問題は、親であるあなたにとっても精神的に、時間的に、金銭的に悩ましい問題になってきます。
お医者さんにきちんと相談するだけでも、安心感が得られます。
あなたが安心感を持つことは、子どもの不安をとりのぞく上ではとても重要なポイントです。
続きにご興味がある方は、こちらの本をお読みください。
本書の睡眠の整え方も子どもの夜尿症を改善するのに役立ちます。
また、おねしょ改善におすすめできない「発達前のおねしょ改善」「罰」「ドライベッドトレーニング」についてもお伝えしています。
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1.子どもの睡眠不足3つのデメリット
2.子どもの睡眠を整える上で大切な2つのこと
3.子どもの睡眠を整える5つの生活習慣
4.夜の良い過ごし方と悪い過ごし方
5.快眠!寝室環境4つのコツ
6.子どもの睡眠の3タイプ
7.悩める子どもの5つの睡眠障害
[i] Gomez Rincon M, Leslie SW, Lotfollahzadeh S. Nocturnal Enuresis. [Updated 2023 Jun 26]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK545181/
[ii] Mark W. Jalkut MD a b, Steven E. Lerman MD a b, Bernard M. Churchill MD, FRCSC a b [ENURESIS] https://doi.org/10.1016/S0031-3955(05)70386-2