私たちは毎日の生活や仕事の中で、さまざまな「やる気」に突き動かされて行動しています。
「評価されたいから」「失敗したくないから」といった外からの圧力で動くこともあれば、「ただ楽しいから」「もっと知りたいから」と、自然と心が動いて行動しているときもあります。
この記事で取り上げるのは、自分の内側から湧き上がる“やる気”――内発的動機付けです。
- 誰に言われなくてもピアノを練習してしまう
- 新しい言語を学ぶことが楽しくてたまらない
- プラモデル制作に夢中で時間を忘れる
そんな「やらなければならないから」ではなく、「やりたいからやる」という純粋な動機こそが、内発的動機付けの特徴です。
やる気の本質とその育て方についてわかりやすく解説していきます。
仕事や勉強、子育て、自分の人生の指針にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
内発的動機付けとは?
内発的動機付けとは、報酬や外的な圧力とは無関係に、自分の興味・関心・好奇心から自然に湧いてくるやる気のことです。
何かに夢中になっているとき、時間を忘れて没頭するとき、その行動自体が楽しく感じられる場合は、内発的動機付けが働いています。
- ピアノが楽しくて毎日練習してしまう
- 新しい言語を学ぶのが好きで、誰に言われなくても勉強している
- プラモデルを作るのが楽しくて時間を忘れて没頭する
内発的動機付けが重要である4つの理由
内発的動機付けは、私たちが本来持っている「やりたい」「知りたい」といった自然な気持ちに基づいています。
この内側からの動機は、さまざまな面で私たちの行動や生き方に良い影響を与えてくれます。
1. 継続性がある
内発的な動機は、「やらされている」のではなく「自分がやりたいからやっている」という感覚を生み出します。そのため、習慣として長く続けやすく、途中で投げ出しにくい傾向があります。
例えば、趣味に夢中になっているとき、誰かに言われなくても自然と手が伸びるような感覚です。
2. ストレスが少ない
義務やプレッシャーに基づく行動と比べて、内発的動機付けは「やらなければならない」という強制感が少なく、精神的なストレスも軽減されます。
自分のペースで取り組めるため、心に余裕を持って行動することができます。
3. 創造性が高まる
内発的な動機に従って行動する場合、興味や好奇心を原動力にしているため、自然と新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。
これは特に、芸術や研究、開発といった創造性が求められる分野で大きな強みとなります。
4. 人生の充実感に繋がる
自分が本当にやりたいことに取り組むことは、「自分らしく生きている」という実感をもたらしてくれます。
それは、日々の満足感や幸福感を高めるだけでなく、長期的に見ても、後悔の少ない人生を築く大きな支えとなります。
内発的動機を高める4つの方法
内発的動機付けは、生まれ持った性格だけで決まるものではなく、日々の心の持ち方や行動の工夫によって育てていくことができる力です。
以下に、内発的動機付けを高めるための実践的なヒントを紹介します。
1. 自分の「好き」を探す
まずは、自分が何に興味を持っているのか、どんなときにワクワクするのかを振り返ってみましょう。
「これが大好き!」と断言できるものでなくても構いません。
ほんの小さな好奇心や、少しでも心が動いた瞬間を大切にすることが大切です。
たとえば:
- 「本屋に行くと自然と料理本に目がいく」
- 「ドキュメンタリーを見ると感動する」
- 「子どもの頃、絵を描くのが好きだった」
そういった心の動きは、内発的動機の種になり得ます。
2. 他人と比べない
現代はSNSなどの影響もあり、他人と自分を比べやすい環境です。
しかし、他人の基準で自分を評価すると、本来の興味や関心が見えにくくなってしまいます。
人それぞれ、ペースや価値観、得意なことは異なります。他人の成功に刺激を受けることはあっても、それを自分の指針にする必要はありません。「自分にとって意味があるかどうか」を大切にしましょう。
3. 試してみる習慣を作る
「ちょっと気になるな」と思ったことは、深く考えすぎずにまず試してみるのが大切です。
すべてが上手くいかなくても問題ありません。「やってみたけど合わなかった」という経験も、次の行動に活かせます。
特に日本では、「続けなければならない」「途中でやめるのは悪いこと」という感覚を持つ方も多いですが、気軽に始めて、気軽にやめる勇気もまた、内発的動機を育む自由な環境につながります。
4. プロセスを楽しむ
成果や結果ばかりに意識が向くと、途中の過程を楽しむことが難しくなります。しかし、内発的動機付けの本質は「その行動そのものが楽しい」と感じられることにあります。
たとえば:
- 料理の仕上がりより、食材を切る感触が楽しい
- 勉強の成績より、知識が増える過程が面白い
- 運動の記録より、体を動かすこと自体が心地よい
このように、「今この瞬間を楽しむ」意識が内発的動機を高める鍵となります。
内発的動機と外発的動機付けとの違い
私たちの行動には、「なぜそれをするのか」という“動機”が存在します。この動機には大きく分けて二つの種類があり、それが内発的動機付けと外発的動機付けです。
これらは、行動の「源」が自分の内側にあるか、それとも外側にあるかによって区別されます。
外発的動機付け(Extrinsic Motivation)
- 定義:
報酬・評価・義務・罰・他者からの期待など、外的な要因に基づいて行動すること。 - 特徴:
行動の目的が、行動そのものではなく、「結果」にあります。「やらなければならない」「やったら褒められる」といった理由が中心です。 - 例:
・賞をもらうために絵を描く
・テストで良い点を取るために勉強する
・怒られたくないから宿題をやる
項目 | 内発的動機付け | 外発的動機付け |
---|---|---|
定義 | 自分の興味・関心・好奇心・楽しさから生まれる動機 | 報酬・罰・評価・義務感など外的要因による動機 |
動機の源 | 自分の内側(内面) | 自分の外側(外部環境・他者) |
目的 | 行動そのものが楽しい・意味がある | 結果や評価を得るために行動する |
行動の特徴 | 自発的に継続されやすい | 場合によっては一時的・義務的になりやすい |
感情的な状態 | ワクワク、没頭、満足感 | 緊張、不安、プレッシャーを伴うこともある |
例 | ・楽しくてピアノを弾く・知りたくて本を読む・面白くて絵を描く | ・賞をもらうために練習する・怒られないように宿題をする・昇進のために資格を取る |
長所 | ・継続性が高い・創造性が育つ・幸福感に繋がる | ・目標達成を促進・外部の動機付けが明確でわかりやすい |
短所 | ・興味がないことには向かない・成果を外に見せにくい | ・動機が失われやすい・内面的な満足感が乏しいことがある |
内発的動機が高い状態で外発的動機付けをするとモチベが下がる?
内発的動機づけの低減効果とは、もともと内発的な動機を持っていた行動に外的報酬(例えば金銭的報酬や評価)が与えられると、その行動の内発的なやる気が低下するという現象です。
この現象は、多くの心理学研究で報告されており、やる気を維持しようとしたり、行動を促進しようとする場面で意図しない結果を招くことがあります。
内発的動機づけの低減効果とは?報酬がモチベーションにマイナス影響【アンダーマイニング効果】
どちらが良い・悪いということではありません
ここで大切なのは、内発的・外発的のどちらが「正しい」かを決めることではないという点です。どちらの動機も、人が成長し、社会で生きていくうえで必要です。
外発的動機が有効な場面もある
- 締め切りがあるタスクや、目標達成が重視される場面では、外発的動機付けが行動を促進します。
- 仕事や学校など、やらなければならないこともあるため、外的な動機は現実的にも必要です。
ただし、内発的動機は持続力や創造性に優れる
内発的動機は、報酬がなくても自然に続けられるため、継続性に優れています。また、楽しさや好奇心に基づいているため、創造性や主体性を引き出す力があるとされています。
特に、芸術・研究・学び・趣味などの分野では、内発的動機が強いほど成果が上がるという研究もあります。
内発的動機付けと自己決定理論の関係とは?
自己決定理論では、3つの欲求「自律性・有能感・関係性」が満たされることで、人は自然とやる気(=内発的動機)が湧いてくると、説明しています。
- 自律性がある → 自分で選んだことだからやりたい
- 有能感がある → やればできるから続けたい
- 関係性がある → 支え合える環境だから安心して挑戦できる
このように、自己決定理論は「内発的動機付け」を心理学的に裏付ける重要な理論なのです。
自己決定理論とは?持続的なモチベーションを高めるす3つの心理的欲求の満たし方
まとめ
内発的動機付けは、私たちが自分らしく、より豊かに生きるための鍵です。他人の評価や外部の報酬ではなく、「自分が本当にやりたいこと」に耳を傾けてみることで、日々の生活や仕事に前向きなエネルギーが生まれます。