「嫌な出来事を思い出しても、うまく距離をとることで、気持ちが軽くなる」──そんな実感を裏づける最新の科学レビューがあります。
成人における自己距離型リフレクションと自己没入型リフレクションの有効性:実験研究の系統的レビューとメタ分析
本研究は、感情的に苦しい体験を振り返るときに「自分を客観的に見る(自己距離化)」方法が、「自分目線に浸る(自己没入)」よりも、心理的に健康的な効果をもたらすかを、25の実験・2,397人分のデータで検証しました。
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■ 結論
自己距離化された内省(自分を少し離れた視点から振り返ること)は、自己没入型の内省(自分目線で思い返す)よりも、小〜中程度のポジティブな効果を持つと示されました(効果量g = 0.19)。
ただし、研究のばらつきやバイアスのリスクがあるため、エビデンスの信頼性は「低い」と評価されています。
■ 内容の信頼性:7 / 10
- 質の高いプロトコルとメタ分析を使用しており、方法論は堅実。
- ただし、参加者が大学生中心で偏りがあり、感情指標に偏った研究も多い。
- 結果のばらつき(効果の幅はg = -0.83〜1.04)やバイアスの懸念もあり、今後の高精度な研究が必要。
■ 何の研究か?
ストレスとなる過去の出来事について「どのような視点で振り返ると、より健康的で建設的か」を検証する研究。
具体的には、
- 自己距離型(自分を第三者視点から観察)
- 自己没入型(当時の自分を追体験)
という2つの方法の効果を、感情・認知・行動・生理などの面から比較した実験研究のメタ分析(25件)。
■ 研究した理由は?
人はストレス体験を振り返ることで、成長や洞察を得ることがありますが、そのとき「どんな視点で振り返るか」が重要です。
しかし、過去研究ではこの視点(距離のとり方)について統一的な結論が出ておらず、効果の大きさや条件も不明でした。
そこで本研究では、自己距離化が持つ全体的な効果と、どんな状況・人・方法で効果が出やすいかを明らかにするために、系統的レビューとメタ分析を行いました。
■ 結果はどうだったか?
- 全体効果は 小〜中程度(g = 0.19)。
- 感情的に強い出来事に対してはより効果的(g = 0.44)。
- 対面より自主的な実施やコンピュータ介入のほうが効果あり。
- 日常的・最近の体験より、生涯的なストレス経験に対して効果が高い。
ただし:
- 効果のばらつきが大きく、エビデンスの確実性は低い(GRADE評価)。
- 多くの研究が大学生中心・短期間・感情指標に偏重。
- 信頼できる効果として確定するには、より質の高い研究が必要。