日常生活や仕事で目標を達成したいと考えるとき、どうしても続かない、行動に移せない、といった悩みを抱えることがあります。そんなときに役立つ心理学的手法が、**イフゼンプランニング(If-Then Planning)**です。イフゼンプランニングは「もし〇〇が起きたら、〇〇する」という形式で、特定の状況と行動を結びつけ、目標達成を促す方法です。これにより行動を自動化し、行動のハードルを低くする効果があります。
この記事では、イフゼンプランニングの仕組みや実践方法、日常やビジネスでの具体的な活用例、さらにこの方法を使った目標達成のコツについて解説していきます。
野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
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著書
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イフゼンプランニングの基本構造
イフゼンプランニングは、心理学者のピーター・ゴルヴィツァーによって提唱された行動計画の手法です。この手法は、「もし〇〇が起きたら、〇〇する」という**「If-Then(もし〜なら)」**の形式で考えるのが特徴です。ここでは、基本的な構造について理解していきましょう。
イフ(If):条件設定
「もし〇〇が起きたら」という部分は、行動を起こすためのトリガー(きっかけ)となる条件です。たとえば、勉強の習慣をつけるために、「もし朝7時になったら」と時間を条件に設定します。その他にも、場所や状況を条件に設定することができます。
ゼン(Then):行動の明確化
「〇〇する」という部分は、条件が起きたときに取る具体的な行動です。行動を明確にすることで、あらかじめその行動に対する準備が整い、スムーズに行動に移すことが可能になります。勉強を習慣化する例では、「机に向かい勉強を始める」という行動がこれに該当します。
イフゼンプランニングの例
- 勉強の習慣:もし朝7時になったら、机に座って勉強を始める。
- 運動の習慣:もし仕事が終わったら、帰宅前にジムに寄る。
- 食事管理:もし外食するなら、必ず野菜を先に食べる。
このように、行動のきっかけを条件として明確にし、それに対する行動を事前に計画することで、目標達成がしやすくなります。
イフゼンプランニングが目標達成に役立つ理由
1. 行動を自動化する
イフゼンプランニングは、行動を無意識化して自動的に実行できるよう促します。もし〇〇という条件が現れたときにすぐに〇〇するという行動があらかじめ決まっているため、意識的な努力が少なくなり、行動に移しやすくなります。
2. 迷わず行動に移せる
多くの人が行動を起こせない理由は、どう行動すべきかが曖昧なままだからです。イフゼンプランニングによって、どのタイミングで何をすべきかが明確にされるため、迷わず行動でき、挫折を防ぎます。
3. 継続力が高まる
習慣化には時間がかかりますが、イフゼンプランニングを用いると、毎回の行動が条件に結びつくため、継続的な行動が自然と促されます。たとえば「もし食事をとるなら、食事前に一杯の水を飲む」というルールを作れば、無意識に水を飲むことが習慣化しやすくなります。
4. 複雑な目標にも使える
イフゼンプランニングは、単純な行動だけでなく、複雑な目標達成にも応用可能です。例えば、プロジェクトを進める際に「もし顧客からのフィードバックが来たら、それを反映して次のタスクに進む」といったように細かく行動を設定することで、大きな目標達成に向けたステップを管理しやすくなります。
イフゼンプランニング7つの効果
参考:オーストラリアにある大学の2019年の研究
①目標達成をサポートする
目標意図に比べ、行動に移す確率が高まります。特定の「もし〜したら、〜する」というプランニングにより、特定状況で行動を開始しやすくなります。
②柔軟な対応
環境変化に応じた柔軟な行動が可能です。計画通りの状況だけでなく、予測されていない状況にも対応できることがわかっています。
③身体持久力の向上:
特定の持久力タスクで実施意図が認識負荷を軽減し、自己意識的な努力を減らすため、持久力パフォーマンスが向上する効果があります。
④認知プロセスの促進:
計画状況に出会うと、自動的に関連行動が始まりやすくなる、脳における「戦略的自動性」効果が見られます。
⑤決断力の改善
決断や情報処理が求められる場面で、反射的な思考モードや直感的モードを適切に切り替えることが可能になります。適切な意思決定がしやすくなることが示されています。
⑥社会的行動や自己制御の向上:
イフゼンプランニングを使うと、自己制御が向上し、集団での目標達成や社会的相互作用での受容性や効率性が高まる傾向があります。
⑦自動行動の促進
特定の行動が自動化されるため、行動実行にかかる認識負担が軽減され、迅速に反応できるようになります。
イフゼンプランニングを活用した具体例
1. 健康管理における活用
- 運動:「もし昼休みになったら、15分のウォーキングをする」
- 食事管理:「もし外食するなら、必ず野菜を注文する」
健康管理は日々の習慣が重要です。条件を決めることで、「気が向いたらやろう」という曖昧な判断から抜け出し、計画的に健康的な行動を取れるようになります。
2. 学習や自己啓発における活用
- 読書:「もし夜9時になったら、スマホを置いて読書をする」
- 語学学習:「もし朝の支度が終わったら、10分間英単語の復習をする」
イフゼンプランニングを学習習慣に取り入れると、日々の生活に学習のリズムを組み込むことができ、目標の達成を加速させます。
3. 職場での時間管理とタスク管理
- メール管理:「もし新しいメールを受け取ったら、10分以内に確認する」
- プロジェクト進行:「もし会議が終わったら、すぐに議事録を作成する」
職場でのタスク管理には、業務の中での行動のきっかけを明確にすることで、作業効率が向上します。特にタスクが増えやすい職場では、イフゼンプランニングを使った明確な行動計画が有効です。
イフゼンプランニングを効果的に使うためのポイント
1. 条件は具体的に設定する
条件が曖昧だと、行動のきっかけがつかめず、計画が実行されにくくなります。たとえば「朝になったら」ではなく、「もし朝7時に起きたら」のように具体的に設定することが重要です。
2. 小さな行動から始める
一度に多くの行動を設定すると挫折しやすくなります。まずは「もし歯を磨いたら、スクワットを10回する」といった小さな行動を設定し、達成感を積み重ねることで自信をつけていくと良いでしょう。
3. 行動は明確にする
「もし〇〇なら、頑張る」などの曖昧な行動は効果が薄くなります。行動は「もし〇〇したら、10分間歩く」のように、具体的かつ簡潔に設定することがポイントです。
4. 結果を振り返る
イフゼンプランニングの効果を最大化するには、定期的に行動結果を振り返り、改善ポイントを見つけることも重要です。「きっかけがうまくいかない」「行動が達成しづらい」と感じた場合は、条件や行動を少し調整してみましょう。
イフゼンプランニングがもたらすメリットとデメリット
メリット
- 行動が継続しやすい:行動が条件付けられているため、意識せずとも自動的に実行されやすくなります。
- 行動力が向上する:何をすべきかが明確になり、行動への迷いがなくなります。
- 達成感が得られる:小さな目標でも達成することでモチベーションが向上します。
デメリット
- 条件設定が難しい場合がある:条件が曖昧だと実行が難しくなります。設定には練習が必要です。
- 行動がマンネリ化することも:自動化しすぎると、行動に変化が出にくくなる場合があります。
まとめ:イフゼンプランニングで目標達成を加速しよう
イフゼンプランニングは、特定の状況と行動を結びつけることで、目標達成をサポートする心理学的手法です。具体的な行動を事前に計画することで、迷わずに行動を起こせ、継続力が高まります。
「もし〇〇なら、〇〇する」という簡潔な計画を生活の中に取り入れることで、習慣が定着しやすくなり、目標達成が加速します。日々の生活や仕事にこの方法を応用して、無理なく効率的に目標を達成していきましょう。