「夜ベッドに入ってもなかなか眠れない…」——そんな悩みに対して、行動療法のひとつである「刺激制御(Stimulus Control)」が注目されています。
今回紹介するのは、不眠症への刺激制御の効果を改めて最新の手法で検証した、2023年の大規模レビューとメタアナリシスです。
ソース:不眠症に対する刺激制御:系統的レビューとメタアナリシス
【研究や論文は、chatGPTに要点をまとめてもらっています。】
結論
刺激制御は「寝つきの悪さ(入眠潜時)」に対して、中~大の効果(効果量g = 0.85〜0.87)を持つ有効な介入です。
特に、何も治療をしない群との比較で有効性が明確であり、他の積極的治療(リラクゼーション、イメージトレーニング等)と比べても同等程度の効果が見られました。
一方で、「総睡眠時間」への効果は小さく、研究の質にも課題があるため、より信頼性の高いデータの蓄積が必要です。
▼内容の信頼性:10点満点で点数化
6.5点
- 長年にわたる複数研究を対象にした包括的なメタ分析であり、統計的分析も丁寧に行われている
- ただし、多くの研究が古く(1978〜1998年)、方法論の質にバラつきあり
- サンプル数は少なめ(合計363人)、参加者の選定や盲検化手法も一部で不明瞭
何の研究か?
刺激制御(Stimulus Control; SC)という行動療法が、不眠症、特に「寝つけない」「途中で目が覚める」といった症状にどれほど効果的かを、既存のランダム化比較試験を網羅して分析したもの。
入眠潜時(SOL)、総睡眠時間(TST)、覚醒回数(NAW)といった睡眠日誌データをもとに、治療効果を効果量(Hedge’s g)で定量評価した。
研究した理由は?
- 刺激制御は1970年代から使われている古典的な不眠治療法であるにも関わらず、
過去のレビューは対象研究が古かったり、質がまちまちだったりしていた - 最新の厳密な基準(GRADE)に基づき、治療効果を改めて定量評価し、
「夜間の睡眠症状」に加えて「日中の疲労や気分」も含めた包括的な検証を試みた
結果はどうだったか?
対・受動的比較群(例:待機リスト、無治療)
- 入眠潜時(SOL):g = 0.85〜0.87(中〜大の効果)
- 総睡眠時間(TST):g = 0.38(小さな効果)
- 覚醒回数(NAW):効果小、統計的に有意ではない
対・能動的比較群(例:リラクゼーション、逆説的意図、プラセボなど)
- 全体的にg = 0.06〜0.30と、ほとんど差が見られなかった(無視できる〜小さな効果)
日中の症状(気分・疲労など)
- 一部の研究でうつ症状の改善あり。ただしデータは限られ、メタ分析には不十分
- 不安や眠気への効果は限定的
補足
- 刺激制御とは?
「眠れない時はベッドを出る」「ベッドは睡眠のみに使う」など、6つのルールから成る行動療法。
睡眠とベッドの関係を再学習し、条件付けを解除する目的がある。 - 今後の課題
- 実施方法(個別 vs グループ、自助 vs 面接など)の標準化が必要
- 高品質な研究(最新の方法論・大規模RCT)が不足しており、
今後の臨床応用にはさらなるエビデンスが求められる