「水をちゃんと飲むこと」は健康に良いと言われますが、では少しの水分不足でも脳や気分にどんな影響があるのでしょうか?
今回紹介するのは、わずかな脱水状態が脳の働きと心の状態に影響を与えるかを調べた珍しい研究です。
参考:【2019年】水分補給が脳機能と気分に与える影響は自律神経の適応による:2つのランダム化比較試験からの証拠
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
体重のわずか0.6%ほどの水分が減っただけでも、心拍変動(HRV)が下がり、脳の自律神経に関わる領域の活動が低下し、不安感が増すことがわかりました。
つまり、ほんの少しの水分不足でも、自律神経の調節を通して脳と気分に悪影響を及ぼす可能性があります。
喉が渇く前に飲む習慣をつけるのが大事。喉が渇いたと気づいた時点で、体重の0.5~1.0%は水分を失っている可能性があります。喉が渇いたは自覚の問題なので、個人差があります。特に「のどの渇きを我慢する癖」をつけると、気づきにくくなります。
▼内容の信頼性(10点満点)
9/10点
✅ランダム化比較試験(RCT)を2件実施
✅神経画像(fMRI)と心拍変動(HRV)を客観的に計測
✅被験者数は少ないが結果が一貫しており再現性あり
✅国際的に引用(24件)、Altmetricスコアも116と注目度高め
▼何の研究か?
「軽度の低水分状態(体重の1%未満の水分減少)が、脳の働きや気分に与える影響は、自律神経の調節を通じて説明できるのか?」を検証したものです。
2つのRCTで、被験者は高温環境下で水を飲む・飲まないを比較され、心拍変動・脳活動・気分が評価されました。
研究では、被験者は30℃の室温で4時間ほど過ごす設定でした。体を動かさなくても、この温度だと発汗で自然に水分が失われます。日本の夏の屋外やエアコンがない室内なども、同じくらいの高温環境になることが多いです。
夏はこまめな水分補給は、当たり前のように言われますが、すごく重要ですね。
研究した理由は?
これまで、脱水の悪影響は「体重の2%以上の水分損失」による場合が多く、日常のわずかな水分不足については科学的に十分検証されていませんでした。
しかし「喉の渇きがなくても、自律神経の適応が脳と気分に影響する可能性がある」という仮説を確かめるために、あえて軽度の水分不足で調べました。
脱水症状は「重症」なイメージがあるので、「のどが渇いた」ぐらいは関係ないと思われがち。でも、「のどが渇く」という軽度な脱水症状です。
結果はどうだったか?
1. 水を飲まなかった被験者は0.55%〜0.6%の水分を失っただけで心拍数が増え、心拍変動(HRV)が低下
- 研究参加者は高温環境(30℃)に4時間さらされました。
- 水を飲まなかった場合、体重の約0.55〜0.6%が水分として失われました。
(体重60kgの人なら約330g〜360gの水分が失われたことになります) - この程度の水分減少でも、心拍数が増加し、心拍変動(HRV)が低下しました。
- HRVとは、心臓の拍動がどれだけ柔軟に調節されているかを示す指標で、自律神経のバランス状態を表します。
2. fMRIでは、脳の眼窩前頭皮質(mOFC)や帯状回(vCG)など、自律神経に関連する領域の活動が低下
- 脳の「眼窩前頭皮質(mOFC)」と「腹側帯状回(vCG)」は、心拍数を抑えたり、不安を抑制するなど自律神経のコントロールに関わる部分です。
- 水を飲まなかった被験者では、これらの領域の活動がfMRIで低下していました。
- つまり「水を飲まない → HRV低下 → 脳の自律神経ネットワークの活動低下」という流れです。
3. 心拍変動(HRV)が低いほど、気分の不安感や認知負担感が増加
- HRVが低くなるほど、被験者は「不安感が高まった」「タスクの難易度が高く感じた」と自己報告しました。
- つまり、わずかな水分不足で自律神経が乱れると、脳の調節機能が落ちて気分が不安定になりやすいことがわかりました。
4. これらの結果は2つのランダム化比較試験で再現され、不安の増加はHRVの変化で説明できた
- 1つ目の研究ではfMRIとHRVを同時に測定。
- 2つ目の研究は大規模な行動実験で、HRVの低下が「不安の高まり」を**媒介(メディエーション)**することが統計的に確認されました。
- つまり、軽度の脱水でも「心臓のリズムの乱れ→脳活動の低下→気分が不安定」という仕組みがあると実証されたのです。
「喉が渇いていないから大丈夫」と油断せず、こまめな水分補給が脳と気分の健康維持に役立つ可能性あり!
気温が高い環境では特に注意が必要です。