「ストーリーストラクチャーサークル」は、物語を効果的に構築するためのテンプレートです。これは、脚本家ダン・ハーモンが提唱したもので、映画、ドラマ、小説などの物語をシンプルで効果的に展開するためのフレームワークとして知られています。
このサークル構造は、物語の進行を円環(サークル)で表し、登場人物がどのように成長・変化していくかを視覚化します。物語が進む流れを円形で分割することで、各段階での物語の役割や登場人物の感情が理解しやすくなり、構成にバランスが取れたストーリーを作りやすくなります。
本記事では、ストーリーストラクチャーサークルの基本的な構成と、具体的な活用方法について詳しく解説します。
ストーリーストラクチャーサークルの8つのステップ
ストーリーストラクチャーサークルは、物語の進行を8つのステップで分け、それぞれの役割を明確にするフレームワークです。以下のステップに沿って、物語を作ると登場人物の成長やストーリーのテンポが自然と整います。
1. キャラクターの「現状」(You)
物語は、登場人物が現状でどのような生活を送っているのか、どのような性格や特徴を持っているのかを描写するところから始まります。ここでは、読者や視聴者に登場人物の「今」の状況を示し、彼らがどのような背景や環境にいるのかを理解させます。
例:平凡なサラリーマンが日々の生活に疲れを感じている場面。
2. 登場人物の「欲望」(Need)
登場人物が何を求めているか、どのような変化や目標を持っているかを明らかにします。これは物語を動かすモチベーションとなる要素で、彼らが行動を起こす理由となります。
例:サラリーマンが「自分の生きがいを見つけたい」と思い始める。
3. 「知らない場所」への冒険 (Go)
登場人物が新たな環境やチャレンジに飛び込む瞬間です。これにより、彼らは安心できる「現状」を抜け出し、物語の本題へと進みます。
例:サラリーマンが趣味を探すため、新しい習い事やイベントに参加する決意をする。
4. 試練や障害 (Search)
ここでは、登場人物が目標に向かって努力する過程で直面する困難や障害が描かれます。これは物語を盛り上げ、読者を引き込む重要な要素です。
例:新しい習い事の場で、自信がなくなったり、周囲に圧倒されたりして挫折しそうになる。
5. 欲望の達成または対象の獲得 (Find)
登場人物が目指していたもの、または「欲望」を達成する瞬間です。この段階では、登場人物が目標に到達し、一時的な満足を得ますが、これがすべてではないことが明らかになります。
例:サラリーマンが新しい友人を見つけ、ある程度の満足感を得るが、「本当の自分」をまだ見つけていないと感じる。
6. 代償 (Take)
目標を達成したものの、代償や犠牲が伴います。この過程で、登場人物は何かを失ったり、あるいは内面的な変化を経験します。
例:新しい趣味の活動に熱中するあまり、家族との時間や仕事への集中が疎かになり、少し後悔する。
7. 帰還 (Return)
登場人物がもとの環境や立場に戻ってきますが、物語の始まりとは異なる状況や心境になっています。この時点で成長や変化を経て、何か重要な教訓を学んでいます。
例:サラリーマンが自分を大切にする方法を理解し、家族との関係を見直し、より良いバランスを探るようになる。
8. 変化の実感 (Change)
物語の終わりでは、登場人物が以前とは異なる視点や価値観を持つようになります。新たな価値観や教訓を持って生活に戻り、物語が完結します。
例:サラリーマンが、今の生活の中で小さな幸せや成長を感じるようになり、日々の生活に充実感を見出すようになる。
ストーリーストラクチャーサークルの活用方法
ストーリーストラクチャーサークルは、物語を視覚的に整理するだけでなく、構成のバランスを見つけやすくするためのガイドラインとして役立ちます。ここでは、効果的に活用する方法について説明します。
1. ストーリーのプロット作成に利用する
物語をゼロから構築する際、ストーリーストラクチャーサークルの8ステップを使って、各場面にどのような出来事を組み込むかを考えます。キャラクターの成長やテーマを明確にするために、各ステップで「どのような変化が起こるか」を意識して書くと、ストーリーがスムーズに進行しやすくなります。
2. キャラクターの心理描写を深める
ストーリーストラクチャーサークルは、キャラクターの心理描写を整理するのにも役立ちます。特に「欲望」や「代償」といったステップを深掘りすることで、キャラクターがなぜその行動をとるのか、どのような気持ちで成長していくのかを丁寧に描くことが可能です。
3. 物語の再構成や修正に活用する
既に作成した物語でも、ストーリーストラクチャーサークルを利用して再構成や修正を行うことができます。物語が進行する中で緩急や成長がうまく描かれているか、各ステップが漏れていないかを確認するためのチェックリストとして使うと効果的です。
ストーリーストラクチャーサークルを使用する際の注意点
1. 各ステップを強引に入れすぎない
ストーリーストラクチャーサークルは物語の進行を整理するためのガイドであり、全ての物語が必ずしも厳密に従う必要はありません。無理に各ステップを取り入れると不自然な展開になる場合があるため、ストーリーの流れに合った部分だけを取り入れるようにしましょう。
2. キャラクターのリアルさを優先する
ストーリーストラクチャーサークルに従いながらも、キャラクターのリアリティを保つことが重要です。登場人物がステップを自然にクリアしていくように心がけると、読者にとって共感しやすい物語になります。
3. テーマとメッセージに合わせたアレンジ
物語のテーマやメッセージが明確な場合、ストーリーストラクチャーサークルを一部アレンジしても問題ありません。テーマに合わせてステップを削るか調整することで、より焦点の合ったストーリーにすることができます。
ストーリーストラクチャーサークルを活用した具体例
ストーリーストラクチャーサークルは、実際の作品でも広く応用されています。例えば、映画「スター・ウォーズ」や「ライオン・キング」などの人気作品では、サークルに沿ったストーリー構成が見られ、登場人物の成長や物語の進行がうまく描かれています。
具体例:スター・ウォーズ(エピソード4)
- 現状:ルーク・スカイウォーカーが砂漠の惑星で普通の生活を送っている。
- 欲望:冒険や自由を求めている。
- 冒険:R2-D2と出会い、帝国軍との戦いに巻き込まれる。
- 試練:師匠オビ=ワンとの修行、敵との対峙。
- 達成:反乱軍として戦い、成功を収める。
- 代償:仲間を失うなどの痛みを経験。
- 帰還:仲間と共に勝利を祝う。
- 変化:勇敢な反乱軍の一員として新たな目的を持つ。
まとめ:ストーリーストラクチャーサークルで魅力的なストーリーを作る
ストーリーストラクチャーサークルは、物語の構成を視覚的に整理し、登場人物の成長や物語の進行を効果的に描くためのフレームワークです。特に、キャラクターの心理描写や物語のテンポを調整するのに役立ちます。今回ご紹介した方法や注意点を踏まえながら、あなたの物語にもこのサークルを取り入れてみてください。
ストーリーストラクチャーサークルを活用することで、物語に深みや一貫性を持たせ、読者に共感される作品を作り上げましょう。