「5つのなぜ分析(Five Whys Analysis)」は、問題の根本原因を特定するためのシンプルで効果的な分析手法として知られており、ビジネス、製造業、品質管理など様々な分野で活用されています。この手法を用いることで、表面的な原因ではなく根本原因を探り、真の問題解決につなげることができます。本記事では、「5つのなぜ分析」の意味や意義、その効果、実践方法、具体的な事例までを詳しく解説します。
野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube「メンタルコーチしもん」登録数1.3万
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
5つのなぜ分析とは?
「5つのなぜ分析」とは、問題解決において「なぜ?」と問い続けることで、真の根本原因にたどり着くための手法です。名前の通り、「なぜ」を5回繰り返して問いかけることにより、問題の本質を深掘りします。この方法は、トヨタ自動車の創業者の一人である豊田喜一郎氏が開発したとされ、トヨタ生産方式(TPS)の基盤の一つとしても知られています。
「5つのなぜ分析」は、複雑な理論に頼らず、簡潔な質問を繰り返すだけで行えるため、特別な知識やスキルがなくても実践できるのが大きな特徴です。また、単なる表面的な原因ではなく、その奥に隠れた根本的な原因を探ることができるため、問題の再発防止にも効果があります。
5つのなぜ分析の意義
「5つのなぜ分析」には、以下のような意義があります。
- 根本原因の特定
表面的な原因ではなく、問題を引き起こしている本質的な要因を見つけることができます。これにより、同じ問題が再発するのを防ぐことが可能になります。 - 問題解決力の向上
チームで「なぜ」を繰り返すプロセスは、分析力や問題解決力を鍛えるトレーニングにもなります。組織全体の改善意識を高め、次回以降の問題解決にも役立ちます。 - コミュニケーションの促進
「5つのなぜ分析」を実施する際、チーム内での質問と議論を繰り返すことで、コミュニケーションが促進されます。これにより、情報共有や意見交換が活発になり、協力体制が強化されます。 - シンプルさと即効性
手軽に実施できるシンプルな手法でありながら、その効果は大きいです。特別な道具やソフトウェアを必要とせず、すぐに実践できるのも魅力です。
5つのなぜ分析の具体的な手順
次に、「5つのなぜ分析」を実際に行う手順を見ていきましょう。以下のステップに従って進めることで、効果的に分析ができます。
ステップ1:問題の明確化
まず、解決すべき問題や現象を明確にします。ここでは、問題を具体的に表現し、どのような結果や状況が発生したのかを正確に言葉で定義します。
- 例:商品が出荷期限までに完成しなかった。
ステップ2:「なぜ?」と問いかける
明確にした問題について、「なぜ、その問題が発生したのか?」を問いかけます。チームメンバーと共に考え、出てきた答えを基に次の「なぜ?」へと進めます。
- なぜ商品が出荷期限までに完成しなかったのか?
→ 必要な部品が入荷されていなかったため。
ステップ3:さらに「なぜ?」を繰り返す
同じように「なぜ?」を繰り返していきます。各回答に対して再度「なぜ」を問うことで、次第に根本的な原因にたどり着きます。
- なぜ部品が入荷されなかったのか?
→ 部品の発注が遅れたため。 - なぜ部品の発注が遅れたのか?
→ 担当者が発注手続きを忘れていたため。 - なぜ発注手続きを忘れていたのか?
→ 発注手続きの確認システムが存在しなかったため。 - なぜ確認システムが存在しなかったのか?
→ 業務プロセスの中でシステム化が進んでいなかったため。
ステップ4:根本原因の特定と解決策の検討
「なぜ」を繰り返して最終的に浮かび上がった原因が、問題の根本原因となります。この根本原因に対して解決策を考え、実施することが重要です。
- 解決策例:発注手続きを確実に行うためのシステムを導入し、確認フローを設ける。
5つのなぜ分析の実践ポイント
5つのなぜ分析を効果的に活用するためのポイントとして、以下の点が挙げられます。
- 事実に基づいた回答を求める
問題解決の際、事実に基づいた回答を心がけましょう。憶測や主観的な意見ではなく、実際のデータや観察結果に基づいた回答を集めることが重要です。 - チームで取り組む
複数の視点からの意見を反映させることで、原因が見落とされにくくなります。異なる立場のメンバーが参加することで、より多角的な原因追求が可能になります。 - 5回にこだわらない
「5つのなぜ」といっても、必ず5回繰り返す必要はありません。場合によっては3回程度で根本原因が見つかることもありますし、逆に5回以上繰り返す必要がある場合もあります。 - 根本原因に到達したらストップする
「なぜ」を繰り返す際、根本原因に到達したと感じた時点で終了します。それ以上続けると、解決策が複雑になり、分析が非効率になる可能性があります。
5つのなぜ分析の活用事例
具体的な活用事例を通して、「5つのなぜ分析」の効果をより深く理解しましょう。
事例1:製造業における不良品発生の原因究明
- 問題:ある製品の部品に不良が発生していた。
- なぜ1:製品の部品が正確な位置に配置されていなかった。
- なぜ2:作業員が手順通りに組み立てていなかった。
- なぜ3:作業員が手順書を確認していなかった。
- なぜ4:手順書が現場の目につく場所に置かれていなかった。
- なぜ5:手順書の掲示方法に関する管理が行われていなかった。
解決策:手順書の掲示場所を明確にし、定期的に確認するチェック体制を導入する。
事例2:IT企業におけるプロジェクトの遅延
- 問題:プロジェクトの完了が予定より遅れた。
- なぜ1:作業の進捗が遅れていた。
- なぜ2:必要なリソースが不足していた。
- なぜ3:リソースの配分が不適切だった。
- なぜ4:プロジェクトの優先順位が明確でなかった。
- なぜ5:プロジェクトの計画段階で、優先順位付けが行われていなかった。
解決策:プロジェクト計画の初期段階で、全体の優先順位を明確化し、リソースを効率的に割り当てるプロセスを設ける。
まとめ
「5つのなぜ分析」は、問題の根本原因を見つけ出し、再発防止に役立つシンプルで効果的な分析手法です。表面的な問題解決にとどまらず、真の原因を特定することによって、持続的な改善を図ることができます。簡単に実施できるため、日常的な問題解決にも取り入れやすいこの手法を、ぜひ活用してみてください。