「受け止める」という言葉は、マインドフルネスにおいて重要な態度のひとつですが、これを「受け容れる」と混同している人も少なくありません。両者には明確な違いがあり、それを理解することは、心の健康やストレス管理において非常に役立ちます。
本記事では、「受け止める」とは何かを詳しく解説し、「受け容れる」との違いにも触れながら、マインドフルネスの実践法や日常生活での応用法を紹介します。
「受け止める」とは?その具体的な意味
「受け止める」とは、目の前で起きていることや、自分の中に湧き上がる感情や思考を、無理に変えたり評価したりせずに「事実として捉える」態度を指します。
受け止めるの3つの特徴
- 評価をしない
- 物事を「良い・悪い」「好き・嫌い」といった主観的な判断をせず、そのまま観察する。
- 現実を拒否しない
- 自分にとって受け入れがたい現実であっても、まずは「それがある」という事実を認める。
- 感情や思考をそのまま見る
- 湧き上がる感情や思考に対して、「消したい」「変えたい」と抵抗するのではなく、「自分はこう感じているんだな」と気づくこと。
「受け容れる」との違い
「受け止める」と「受け容れる」は似ていますが、異なるニュアンスを持っています。
「受け止める」と「受け容れる」の比較
要素 | 受け止める | 受け容れる |
---|---|---|
目的 | 現実や感情を評価せずに事実として認識する | 起きた出来事や感情を自分の一部としてポジティブに受け入れる |
アプローチ | 距離を置いた観察を行い、抵抗や否定をしない | 内面的に「それを受け入れる」準備が整った状態になる |
感情の影響 | 湧き上がる感情や思考をただ観察し、深く巻き込まれない | 感情や出来事を受け入れて、それを自分の中で消化する |
例 | ・「今、不安を感じている」と気づき、その存在を認めるだけ | ・「不安を感じているのは当然のことだ」と考え、前向きにその感情を自分の一部として取り入れる |
「受け止める」は、状況や感情を否定せずに「存在を認める」行為であり、それ以上深い受容や肯定は含まれません。一方、「受け容れる」は、受け止めたうえでさらに自分の一部としてポジティブに受け入れる段階を指します。
なぜ「受け止める」ことが重要なのか?
- ストレス軽減につながる「受け止める」ことで、現実に対する抵抗や否定的な感情を和らげ、心が軽くなります。ストレスの多くは、「現実を変えたい」という抵抗から生じるため、そのままを観察する態度が有効です。
- 冷静な判断ができる目の前の状況をまず「受け止める」ことで、感情に振り回されず、冷静に判断できるようになります。「受け止める」態度は、解決策を見つける第一歩です。
- 自己理解が深まる自分の内面を評価せずに受け止めることで、感情や思考のパターンに気づくことができます。これにより、自分の本当のニーズや価値観をより明確に理解できるようになります。
「受け止める」を実践するためのマインドフルネス練習法
1. 呼吸瞑想で受け止める練習
呼吸瞑想は、今この瞬間を「受け止める」練習に最適です。呼吸そのものに良し悪しの評価はなく、ただ存在を感じることで「受け止める」態度を育てます。
実践方法:
- 静かな場所に座り、目を閉じる。
- 自然な呼吸を観察する(速さや深さをコントロールしない)。
- 心が雑念で満たされても、それを「ダメだ」と評価せず、「今こう感じている」と気づくだけにとどめる。
2. 感情のボディスキャン
感情を受け止めるためには、自分の身体に意識を向ける練習が有効です。
実践方法:
- 仰向けに横になり、リラックスする。
- 頭から足の先まで、身体の各部分に意識を向ける。
- 身体に感じる感覚や緊張を、良い・悪いと判断せずに観察する。
3. ジャーナリングで気づきを深める
日々の出来事や自分の感情を記録することで、「受け止める」態度を強化できます。
質問例:
- 今日、何を受け止めたか?
- 受け止めることで、どのような変化があったか?
- 抵抗したくなった場面を観察し、それに気づいた感覚はどうだったか?
「受け止める」態度を日常生活でどう活用するか?
1. 人間関係での応用
他者の言動に対して「受け止める」態度を持つと、無用な対立や誤解を避けることができます。たとえば、相手の意見に反発せず、「この人はこう考えているのだな」と捉えるだけで、感情的にならずに対応できます。
2. 問題解決の第一歩として
困難な状況に直面したとき、「なぜこんなことが起こるのか」と悩むのではなく、「今こういう状況がある」とまず受け止めることが、冷静に対処するための土台となります。
3. 自分の感情をマネジメントする
怒りや悲しみ、不安を感じたとき、それを否定せずに「今、自分はこう感じている」と受け止めることで、感情のコントロールがしやすくなります。
まとめ:「受け止める」ことで心穏やかな生活を目指す
マインドフルネスの「受け止める」という態度は、現実や感情を否定せず、そのままを認識する重要なステップです。「受け容れる」と異なり、受け止めることは無理に肯定する必要はありません。現実や感情にまず気づき、それを評価せずに観察するだけで、心の平穏を取り戻すことができます。
「受け止める」を実践することで、ストレスの軽減、自己理解の向上、人間関係の改善といった多くのメリットが得られます。ぜひ今日から実践して、心穏やかな日常を手に入れてください!