今回は認知の歪みの3つの原因とそれぞれの解決法についてお伝えをします。
「認知の歪みを整える」とは「現実をありのままの姿で見ること」です。
ありのままを見ているのと、ゆがんで見えているのでは、どちらのほうがあなたの人生がより良い方向に進めそうでしょうか?
ゆがんだ景色では、そもそも歩くことさえ、不安になってしまいますよね。
悩みを抱えても、景色がゆがんだままでは、悩みを解決する方法を考えることも難しいです。
まわりの環境や他人だけではなく、自分さえもきちんと見ることができません。
では、認知の歪みを整える方法をお伝えします。
今回は次の3ステップです。
①認知の歪み10パターンを知る
認知の歪みを知ることで、何をゆがめて見ているかが分かる。
②認知の歪みの3つの原因を知る
原因を知ることで、解決法が見えてくる。
③認知の歪みの3つの解決法を知る
解決をしていくことで、認知が整っていく。
認知の歪みが整うことで、「自分が本当はどうすればいいか?」が見えてきます。
一緒に、認知の歪みを整えていきませんか?
野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube「メンタルコーチしもん」登録数1.3万
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
アーロン・T・ベックの「10の認知の歪み」とは?
アーロン・T・ベックは、認知療法の創始者であり、認知の歪みを提唱した方です。
ベックの理論によると、認知の歪みは、個人が現実を誤って解釈し、否定的な感情や行動を引き起こす思考の偏りです。
では、ベックが提唱した「10の認知の歪み」を簡単に紹介します。
「厳密に自分の認知の歪みはコレだ!」を考えすぎなくてOKです。
認知の歪みは単独ではなく、お互いに重なり合っているので分けられないところがあるからです。
今の段階では、「そういうところあるな」と思うぐらいでOKです。
- 白黒思考(全か無かの思考)
物事を極端に捉えて、白か黒か、0か1かで考えます。0~1の間の考え方をしません。
例えば、「絶対に」「まったく」「完璧」などの言葉を使いやすいです。 - 過度な一般化
1つの出来事や経験をもとに、すべてが同じように悪い結果になると考えることです。
例えば、「すべて」「みんな」「毎回」などの言葉を使いやすいです。 - 心のフィルター
一部の情報(特にネガティブな情報)にのみ集中し、他の情報を無視することです。
例えば、「やっぱり」「まったく」「毎回」などの言葉を使いやすいです。 - マイナス思考
ポジティブな出来事や成果を無視したり、価値を低く見積もることです。
例えば、「どうせ」「できてない」「最悪」などの言葉を使いやすいです。 - 結論の飛躍
十分な証拠もないのに、ネガティブな結論に飛びつくことです。
結論の飛躍には相手の思考を読む「読心術」と、未来を決めつける「未来予測」があります。
読心術の場合は、「〇〇と思っている」「〇〇と考えているに違いない」などの言葉を使いやすいです。
未来予測の場合は、「結局〇〇になる」「どうせ失敗する」「きっと〇〇になる」などの言葉を使いやすいです。 - 拡大解釈と過小評価
小さな問題を大げさに考えたり、重要なことを過小評価することです。
拡大解釈の場合は、「絶望的だ」「どうしようもない」「取り返しがつかない」などの言葉を使いやすいです。
過小評価の場合は、「大したことない」「運が良かっただけ」「誰でできる」などの言葉を使いやすいです。 - 感情的理由付け
感情がそのまま現実を反映していると信じることです。
「感じるから」「思うから」「どうせ〇〇だから」などの言葉を使いやすいです。 - べき思考
自分や他人に対して厳しいルールや評価を押し付けることです。
「~すべきだ」「~しなければならない」「~するのが普通だ」などの言葉を使いやすいです。 - ラベリング
自分や他人に対して極端でネガティブなレッテルを貼ることです。
例えば、「無能だ」「怠け者だ」「失敗者だ」「ケチだ」などの言葉を使いやすいです。 - 個人化
自分のせいで悪いことが起きたと過剰に責任を感じることです。
例えば、「私が悪い」「もっと〇〇していれば」「私が原因だ」などの言葉を使いやすいです。
では、認知の歪みにどんな原因があり、どんな解決法があるのでしょうか?
認知の歪みの3つの原因とそれぞれの解決策
認知の歪みの原因①:過去の経験からくる「思考の癖」
認知の歪みは、過去の経験からくる「否定的な感情や行動につながる思考の癖」です。
思考の癖なので、意識しないとなかなか気づくことはありません。
なので、癖を改善するには、まずは認知の歪みに気づくことが大事です。
解決法①:「思考の癖」に気づく
認知の歪みが自分に当てはまっているかどうか気づくだけでも、一歩前進になります。
気づくことで整える意識が、自然と働くようになるからです。
姿勢でも同じですよね。猫背って気づかないとそのままですが、猫背って気づくと「背筋を伸ばそう」って思えるようになります。
先ほどの認知の歪みの紹介で、「これは自分あるなー」「これは強めだな」「これはそうでもないな」と気づくだけでも、大きな前進です。
ただ「思考の癖」なので放っておくと、いつの間にか癖が復活していることがあります。
定期的に認知の歪みをチェックすることで、改善していきます。
先ほどの猫背の例だと、猫背と気づく回数が増えれば増えるほど、背筋を伸ばす癖がついてきます。
これは認知の歪みを改善する認知行動療法の「特定」の考え方です。
認知の歪みの原因②:現実的ではない「知識」に執着すること
今の情報が多い社会では、「現実的ではない知識に執着すること」での認知の歪みは大きいです。
例えば、睡眠であれば「夜中に目覚めることはいけないこと」や「8時間は眠らないといけない」などは知識からくる認知の歪みです。
知識からくる認知の歪みは、自分ではとても気づきにくいです。
例えば、昔は天動説という地球が中心でまわりの星が回っているという考えが常識でした。そのときはそれが当たり前なので疑うことが難しいです。でも、現在は太陽を中心に回る地動説が常識ですよね。
ここで問題なのは、今この文章を読んでいるほぼすべての人が、実際には「太陽を中心に回っている」を見たこともないのに信じていることです。
これは昔の人が天動説を信じていたことと同じです。
「そんなの言い出したら、どうしたらいいんだ」ってなりますよね。
現実的な知識とは、真実の知識ではありません。
現実的な知識とは、あなたにとって使える知識かどうかです。
認知の歪みが「否定的な感情や行動」につながるのが問題であれば、「肯定的な感情や行動」につながる知識であればOKです。
しかも、それが短期的なものではなく、長期的なものであることが重要です。
では、現実的な知識はどのように手に入れればいいのでしょうか?
YouTubeのコメント
「正しい考え=良いこと、とずっと捉えてきました。白黒、正解不正解を考えずに柔軟にやっていきたいです。いつもハードルをあげすぎて、疲弊してしまっていました。わかりやすく説明ありがとうございます!」
解決法②:2つ以上の意見を持つ
認知の歪みによって、否定的な感情や行動につながっている場合、ゆるめることで現実的になってきます。
特に白黒思考やべき思考が強い場合は、「正解」を理屈だけで考えてしまいがちです。
でも、人には感情があるので「理屈だけの正解」は、生きていく現実の中では「現実的ではない正解」になります。
例えば、米国心臓協会は「ある程度の強さの有酸素運動を1週間に150分する」のを推奨しています。
でも、まったく運動していない方がいきなり「1週間に150分の運動をする」のは、何か工夫をしない限りは「非現実」です。つまり、信頼性のある情報でさえ、人によって「現実的な知識」なのか「非現実的な知識」なのかが別れます。
そんなとき、簡単に現実的な考え方をする方法があります。
それは「友人にアドバイスするように自分にアドバイスをする」という方法です。
「友人が、自分と同じ立場だったら、どんなアドバイスをするかな?」と考えるんです。
そうすると、「米国心臓協会が言ってたから、ジョギングを1週間に150分をしよう」というアドバイスではなく、「まずはストレッチや軽い散歩から始めてみたら」のような現実的なアドバイスをしやすくなります。
これは自分だけではなく、友人(他人)のことを考えることで、視点が2つになって視野が広がり、柔軟な思考ができるようになるからです。アドバイスを与える相手イメージを増やすことで、どんどん視点を増やすことができます。
これが認知の歪みを改善する認知行動療法の「ダブルスタンダード法」の考え方です。
〉ダブルスタンダード法を使った日記の書き方
ダブルスタンダード法を伝えているYouTubeのコメント
普段Youtubeにコメントをしたりしないのですが、お礼を書かせてください。
「自分の機嫌は自分でとる」「あなたの理解者はあなた」といった似たような言い回しは聞いてきましたが、この動画の考え方はそれらと一線を画し、画期的です。メタ認知のテクニックとしても応用が効きそうな素晴らしいアイディアです。ぜひ今後末永く活用させて頂きます。
認知の歪みの原因③:認知の歪みを「否定」する
「認知の歪みは治さなくちゃいけない!」って思う人が多いのではないでしょうか?
それはある意味では正解で、ある意味では不正解です。
もともと認知の歪みは、否定的な感情や行動につながる問題のことです。
「白黒思考」が認知の歪みなのではなく、「白黒思考で否定的な感情や行動につながる」のが認知の歪みです。
なので、白黒思考があること自体はOKなんです。
何もかもが白黒思考でなくなったら、優柔不断になりすぎて、生活するのが難しいですよね。
そもそも、白黒思考は治さなきゃいけないっていうのも白黒思考です。
自分を苦しめる白黒思考はゆるめて、自分をより良くする白黒思考は残す、ぐらいの感覚がおすすめです。
解決法③:認知の歪みにつながる感情と行動を見る
認知のゆがみを否定するのではなく、「自分にとってどうなのか?」を知っていくことが大切です。
「認知の歪み」に気づいたら、生活の中で、その認知の歪みが自分にとってどんな感情と行動を起こしているかを見て、次の3つ判断をしていきましょう。
①ネガティブなものにつながっていれば整える。
②ポジティブなものにつながっていればいったんOKにして、長期で考える。
③どちらでもないなら、判断つかずで保留する。
続けていくうちに、認知の歪みで苦しむのではなく、認知の歪みをうまく使えるようになります。
そうなると、否定的な感情や行動につながらなくなってくるので、もはや認知の歪みではい、単なる思考の癖に落ち着きます。
これは認知の歪みを改善する認知行動療法の「実験法」と「コストベネフィット分析」の考え方です。
認知の歪みを治す方法:まとめ
ベックの認知の歪みの10パターン
①白黒思考
②過度な一般化
③心のフィルター
④マイナス思考
⑤結論の飛躍
⑥拡大解釈と過小評価
⑦感情的理由付け
⑧べき思考
⑨ラベリング
⑩個人化
認知の歪みの3つの原因
①過去の経験からくる思考の癖
②現実的ではない知識
③認知の歪みの否定
認知の歪みの解決策
①思考の癖に気づくこと
②2つ以上の意見を持つこと
③認知の歪みにつながる感情と行動を見ること