運動後の筋肉痛(DOMS)や疲労、炎症を効率よく回復させる方法は、アスリートだけでなく一般の人にとっても重要です。
この研究では、様々なリカバリー(回復)手法の効果を科学的に比較し、どの方法が最も有効かを明らかにしました。
参考:【2018年】筋肉の損傷、痛み、疲労、炎症の指標を軽減するための運動後の回復テクニックを選択するためのエビデンスに基づくアプローチ:メタ分析による体系的レビューより
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
筋肉痛や疲労回復にはマッサージが最も効果的であることが確認されました。
次いでコンプレッションウェア(着圧衣類)と水への浸漬(特に冷水浴)も有効です。
特に炎症の抑制には、マッサージと冷却療法が大きな効果を発揮しました。
マッサージは行う人の技量によってかなり変わってきそうです。そのため、コンプレッションウェアと冷水浴が個人的にはおすすめ。
コンプレッションウェアが運動後の疲労回復につながるのは意外でした。
内容の信頼性
10点満点中:9点
(99件の質の高い研究をメタ分析しており、十分な科学的根拠があります)
何の研究か?
運動後の回復方法(アクティブリカバリー、マッサージ、コンプレッションウェア、冷水浴など)が、
- 遅発性筋肉痛(DOMS)
- 疲労感
- 筋損傷の指標(クレアチンキナーゼ:CK)
- 炎症マーカー(CRPやIL-6)
にどのように影響するかを、99の研究データを統合して解析したメタ分析研究です。
遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)
運動した直後ではなく、12〜48時間後にピークになる筋肉の痛みのこと。いわゆる筋肉痛。
疲労感
科学的には「Perceived Fatigue(パーシーブド・ファティーグ)」と言い、筋肉だけでなく体や心が「疲れた」と感じる自覚的な感覚。脳や神経の状態も含めての“だるさ”“パフォーマンスが落ちた感じ”を指します。
研究した理由は?
従来、リカバリー方法の有効性は個別には調べられていましたが、手法同士を客観的に比較した包括的なメタ分析はありませんでした。
「どの回復法が最も効率的なのか?」という疑問に答えるため、世界中の研究をまとめて比較したのです。
運動後のリカバリーって悩みますよね。
運動開始たてのころはクールダウンをいっさい行っていなかったです。もう少し意識していれば、疲労がもう少し楽だったかもしれません。
結果はどうだったか?
1. マッサージ
- DOMS(遅発性筋肉痛)を大幅に減少
効果量 g = −2.26 というのは、科学的に「非常に大きな効果があった」とされる値です。
具体的には、運動後すぐ〜2時間以内に20〜30分程度のマッサージをすることで、筋肉痛が最大で4日間(96時間)抑えられることがわかっています。 - 疲労感も最も改善
マッサージには血流促進作用があり、筋肉にたまった老廃物(乳酸など)の排出を助けます。
さらに、リラックス効果により、脳内のβエンドルフィン(気分を良くするホルモン)が増え、疲労感が軽くなるというメカニズムです。 - 炎症を抑える唯一の方法
筋損傷のマーカーであるCK(クレアチンキナーゼ)や炎症マーカーのIL-6(インターロイキン6)も明確に低下。
マッサージが筋繊維の炎症反応を抑えることが、生検(筋肉の組織検査)で確認されています。
マッサージの技術によるので注意。
プロにしてもらうなら、とても良いんでしょうね。
個人では、ちょっと取り入れにくい方法です。ローラー系のマッサージならお手軽で良さそうですね。
2. コンプレッションウェア
- 筋肉痛と疲労感の軽減に中程度の効果
効果量は g ≈ −0.9 で、これは「確かな効果あり」とされる数値です。
着圧ウェアを運動後に24時間程度着用することで、筋肉の腫れを抑え、血液やリンパの流れを促進し、疲労物質の排出を助けます。 - 注意点
ただし、着圧の強さ・着る時間・部位などで効果にバラつきがあり、筋損傷マーカー(CK)は一部の研究で減少しませんでした。
コンプレッションウェアも、コンプレッションウェアによって効果は変わるので注意ですね。ただ、手軽に取り入れられるだけではなく、着るだけなのが楽ですね。
3. 冷水浴(15℃以下)
- 筋肉痛と炎症を抑える
特に15℃以下の冷水に10〜15分ほど浸かると、筋肉内の炎症が抑えられ、筋肉痛の軽減につながります。
血管が収縮して腫れや痛みを防ぐだけでなく、筋損傷マーカーのCKや炎症マーカーIL-6の低下が確認されています。 - ポイント
お湯との交互浴(コントラストバス)もDOMSには有効ですが、疲労感まではあまり改善しない傾向でした。
個人的には最もおすすめ。
ですが、家によっては夏場に15度以下の冷水って再現しにくい場合がありますよね。それぐらいなもので、テクニックもいらないしおすすめです。
4. ストレッチや電気刺激は有意な効果なし
- ストレッチは「筋肉痛予防に良さそう」と思われがちですが、実際にはDOMSを抑える効果はほとんどないとされています。
逆に、やりすぎると筋繊維を余計に傷つけるリスクも指摘されています。 - 電気刺激(EMS)は、研究によって結果がまちまちで、今回のメタ分析では「有効」といえるほどのデータは出ませんでした。
ここでいうストレッチは静的ストレッチです。
静的ストレッチは運動後に筋繊維をさらに傷つける可能性があります。静的ストレッチを行う場合は、ぐいぐいと伸ばして痛気持ちよさを感じるのではなく、筋肉を伸ばして「伸びて気持ちいい」ぐらいがおすすめです。
5.アクティブレスト
研究では、低強度のランニングやサイクリング。水中ウォーキングなどの「軽い有酸素運動」
- DOMS(筋肉痛)には小〜中程度の効果あり
→ 効果量は −0.94(g)で、これは軽度〜中程度の改善。 - 疲労感(Perceived Fatigue)には有意な効果なし
→ 疲労感についてはむしろプラス効果がなく、休んだだけと大きな差がありませんでした。
疲労感に効果がないからこそ、アクティブレストはサボりがちですよね。
でも筋肉痛に効果があるので、翌日以降が楽になります。