私たちの体は、日々さまざまな外的刺激や内部の異常と戦っています。
その中で、特に重要な役割を果たしているのが「炎症反応(えんしょうはんのう)」です。テレビの健康番組や病院でよく耳にするこの言葉ですが、「具体的に何が起きているの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
今回は、炎症反応の仕組みや原因、役割、そして慢性炎症のリスクについて、できるだけわかりやすく解説していきます。
炎症反応とは?
炎症反応とは、「自然免疫(先天性免疫)」の一環として起こる反応で、体が「異物(細菌・ウイルス・損傷組織など)」に気づいたときに、最初に発動する即時の防御反応です。
体が傷ついたときや、ウイルス・細菌などの異物が侵入したときに、それに対抗するために起こる生体の防御反応のことです。つまり、「体を守るための反応」なんですね。
炎症は決して悪いものではなく、本来は「修復」と「防御」のために存在する重要なプロセスです。例えば、転んで膝を擦りむいたとき、赤く腫れたり、熱をもったりするのは炎症反応が働いている証拠です。
炎症の五大兆候
古代ギリシャ時代から知られている、炎症の5つの典型的な兆候は以下の通りです。
- 発赤(ほっせき):血管が拡張し、血流が増加することで赤く見える。
- 熱感:血流の増加や代謝の活性化により、熱を持つ。
- 腫脹(しゅちょう):組織に水分や免疫細胞が集まり、腫れる。
- 疼痛(とうつう):化学物質の刺激や腫れが神経を刺激して痛みを感じる。
- 機能障害:腫れや痛みにより、通常の動きが制限される。
炎症のメカニズム
体内に異物(病原体や損傷した細胞)が侵入すると、まず免疫細胞(マクロファージなど)がそれを察知し、「サイトカイン」と呼ばれる情報伝達物質を分泌します。
サイトカインは血管に働きかけて、免疫細胞(白血球など)をその場所に呼び寄せます。そして、異物を攻撃し、排除し、損傷した組織の修復が始まります。
この一連の流れが「炎症反応」です。
急性炎症と慢性炎症の違い
急性炎症
数日から1週間程度で収まる正常な炎症。傷が治る過程で自然に消えていきます。
例:虫刺され、打撲、風邪
急性炎症=自然免疫が中心
急性炎症は、体が外的刺激(細菌・ウイルス・ケガなど)に対してすぐに反応する「即時型」の反応です。ここで主に働くのは自然免疫の細胞(マクロファージ、好中球、NK細胞など)です。炎症の兆候(赤み・腫れ・熱・痛みなど)は、この自然免疫の活動によって起こります。
慢性炎症
炎症が長期間続いてしまう状態。これが様々な病気の原因になることがあります。
例:糖尿病、動脈硬化、リウマチ、アルツハイマー病など
慢性炎症は「静かな炎症」とも呼ばれ、自覚症状が少ないため気づきにくいですが、健康に大きな影響を及ぼします。
慢性炎症=自然免疫+獲得免疫が関与
急性炎症が収まらずに長引くと、獲得免疫(T細胞、B細胞など)が本格的に関わってきます。特定の異物に対して、より精密で持続的な反応を起こします。ただし、それがうまく制御されないと、「自己免疫疾患」や「慢性炎症性疾患(リウマチ、炎症性腸疾患など)」に発展します。
種類 | 主に関与する免疫 | 特徴 |
---|---|---|
急性炎症 | 自然免疫 | 速やかに発症、短期間、自己修復が目的 |
慢性炎症 | 自然免疫+獲得免疫 | 長期間持続、組織破壊・病気の原因に |
炎症を抑える生活習慣
炎症を防ぐ・抑えるためには、日々の生活習慣がとても大切です。以下のポイントを意識してみましょう。
- バランスの良い食事(抗酸化作用のある食品やオメガ3脂肪酸を含む魚など)
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- ストレス管理
- 禁煙・節酒
脂肪と炎症の関係:なぜ脂肪が炎症を引き起こすのか?
脂肪は単なる「エネルギーの貯蔵庫」ではなく、実は「ホルモンを出す臓器」でもあります。特に内臓脂肪が多くなると、次のようなことが起こります。
炎症性サイトカインの分泌
- 脂肪細胞は「TNF-α」「IL-6」などの炎症を引き起こす物質(サイトカイン)を放出します。
- これらは体中に信号を送って、慢性的な炎症状態を作ります。
マクロファージの浸潤(しんじゅん)
- 肥大した脂肪組織には、免疫細胞(マクロファージ)が集まってきます。
- そして、マクロファージがさらに炎症物質を出し、悪循環に突入。
インスリン抵抗性と関連
- 炎症が持続すると、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)。
- これが糖尿病のリスクを高めます。
まとめ
炎症反応は、体を守るために不可欠な防御メカニズムです。ただし、それが長引くと逆に病気を引き起こす「慢性炎症」となるリスクもあります。
自分の体の声に耳を傾け、日々の生活を見直すことが、健康な毎日を送る第一歩です。