私たちの睡眠は、一晩にまとめて眠る「単相性睡眠(Monophasic Sleep)」と、複数回に分けて眠る「多相性睡眠(Polyphasic Sleep)」に大別されます。
近年、多相性睡眠が生産性向上や短時間睡眠の手法として注目を集めていますが、果たして科学的に効果があるのでしょうか?
本記事では、単相性睡眠と多相性睡眠の違い、歴史的背景、科学的研究、そして実践方法について詳しく解説します。
単相性睡眠とは?—現代の一般的な睡眠スタイル
単相性睡眠の特徴
- 1日に1回、まとまった時間(6~8時間)眠る
- 現代社会において最も一般的な睡眠パターン
- 就寝時間が規則的で、体内時計(概日リズム)に合致しやすい
単相性睡眠が一般化した背景
産業革命以前、人類は一晩に2回眠る「分節睡眠(二相性睡眠)」をしていました。
しかし、19世紀以降、電気の普及や労働時間の変化により、人々は夜間に1回のまとまった睡眠をとるようになりました。
現在、多くの国では単相性睡眠が主流ですが、シエスタ(昼寝)文化を持つ地域や、一部の職業(夜勤労働者、軍隊、宇宙飛行士など)では、依然として多相性睡眠が実践されています。
多相性睡眠とは?—短時間睡眠と生産性向上の可能性
多相性睡眠の特徴
- 1日を通して複数回に分けて睡眠をとる
- 睡眠時間を短縮しつつ、覚醒時間を増やす目的で利用されることが多い
- ナポレオン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、エジソンなど、歴史上の偉人が実践していたとされる
多相性睡眠の種類
スケジュール名 | 睡眠パターン | 合計睡眠時間 |
---|---|---|
エブリマン(Everyman) | 夜に3時間 + 20分×3回の昼寝 | 約4時間 |
ウーバーマン(Uberman) | 4時間ごとに30分の昼寝 | 約3時間 |
ダイマクション(Dymaxion) | 6時間ごとに30分の昼寝 | 約2時間 |
二相性睡眠(Biphasic) | 4~6時間の夜間睡眠 + 30~90分の昼寝 | 5~7時間 |
歴史的な「最初の睡眠」と「2番目の睡眠」
産業革命以前のヨーロッパでは、一晩の睡眠は2つのフェーズに分かれていました。
- 最初の睡眠(First Sleep):夕方から深夜までの数時間
- 中間の覚醒時間:1~2時間の間に、祈り、執筆、読書、社交、瞑想などを行う
- 2番目の睡眠(Second Sleep):夜明け前までの睡眠
このような「分節睡眠」は、人工照明がない時代の自然な睡眠スタイルだったと考えられています。
科学的な視点:多相性睡眠は本当に効果的?
NASAや軍隊の研究
NASAや米軍では、多相性睡眠の研究が行われています。特に、宇宙飛行士や軍事パイロットなど、長時間の覚醒が求められる環境では、短時間の昼寝(パワーナップ)が認知機能や集中力の維持に有効であると報告されています。
しかし、一般人が多相性睡眠を長期間実践することにはリスクもあると言われています。
多相性睡眠のリスク
- 概日リズム(体内時計)とのズレ:自然なホルモン分泌が乱れ、健康に悪影響を及ぼす可能性がある
- 社会生活への適応困難:仕事や家族とのスケジュール調整が難しい
- REM睡眠の不足:特に極端な多相性睡眠では、深い睡眠(ノンレム睡眠)が不足し、認知機能の低下を招く
一部の研究では、「短期間の多相性睡眠は適応可能だが、長期的には健康リスクが高まる」と指摘されています。
実践するなら?—おすすめの睡眠スケジュール
二相性睡眠(Biphasic Sleep)
- 夜間に4.5~6時間の睡眠(90分サイクル × 3~4回)
- 昼間に20~90分の昼寝
このスタイルは、シエスタをとる文化圏(スペイン、ギリシャ、イタリアなど)や、夜勤のある職業で一般的です。
エブリマン(Everyman)スケジュール
- 夜に3時間のコア睡眠
- 日中に3回の20分昼寝
- 合計睡眠時間:約4時間
このスタイルは、多相性睡眠の中でも比較的実践しやすいとされています。
ウーバーマン(Uberman)スケジュール
- 4時間ごとに30分の昼寝をとる。
- 合計睡眠時間:約3時間
1日3時間以下の睡眠では、睡眠負債が蓄積しやすく、長期的に健康を害する可能性が高い
ダイマクション(Dymaxion)スケジュール
- 6時間ごとに30分の昼寝をとる。
- 合計睡眠時間:約2時間(最も極端なスタイル)
1日3時間以下の睡眠では、睡眠負債が蓄積しやすく、長期的に健康を害する可能性が高い
単相性 vs 多相性の比較
項目 | 単相性睡眠 | 多相性睡眠 |
---|---|---|
主な特徴 | 1回のまとまった睡眠 | 1日に複数回の短い睡眠 |
適している人 | 規則的な生活を送る人 | 昼寝ができる環境の人 |
メリット | 体内リズムに合いやすい | 眠気を分散できる |
デメリット | 昼間に眠気が出ることがある | 社会的なスケジュールと合わない |
科学的エビデンス | 一般的に推奨される | 長期的な効果は不明 |
結論として、単相性睡眠が現代社会では最も適していると考えられます。ただし、短時間睡眠を必要とする状況では、多相性睡眠の活用も有効です。
まとめ
睡眠には、一晩にまとめて眠る単相性睡眠と、複数回に分けて眠る多相性睡眠があります。現代では単相性睡眠が主流ですが、歴史的には分節睡眠が一般的だった時代もありました。
多相性睡眠は短時間睡眠や生産性向上の手法として注目されていますが、科学的なエビデンスは限られており、長期的な健康リスクも指摘されています。特に、社会的なスケジュールとの適応が難しい点や、体内リズムへの影響が課題となります。
結論として、一般的には単相性睡眠が推奨されるものの、状況によっては多相性睡眠の活用も選択肢の一つとなり得ます。自分のライフスタイルや健康状態に合わせて、最適な睡眠スタイルを選びましょう。