私たちが毎日当たり前のようにとっている「睡眠」。その中には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つの大きなサイクルが交互に訪れていることをご存じでしょうか?
今回はその中でも、“眠っているのに脳が活発に働いている”という不思議な状態である「レム睡眠」について、詳しく、そしてわかりやすく解説します。
ノンレム睡眠とは?深い眠りが心身に与える重要な役割
レム睡眠とは?──夢と深く関係する「逆説の眠り」
レム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep)は、「急速眼球運動睡眠」と訳されるとおり、目がピクピクと動いている睡眠状態のこと。眠っているのに眼球が激しく動き、しかもこの時、脳は日中と同じくらい活発に活動しています。
このレム睡眠、実は体は眠っているのに、脳は起きているという逆説的な状態。そのため、「逆説睡眠」とも呼ばれることがあります。
また、レム睡眠中は筋肉の緊張がほとんどなくなり、体は完全に脱力状態になります。この“体は動かず、脳だけ動いている”という状態こそが、夢を見る時間帯と密接に関係しているのです。
レム睡眠の主な特徴
- 目がピクピクと動く(Rapid Eye Movement)
- 夢を見る時間帯
- 筋肉が緩み、体は完全にリラックス
- 呼吸や心拍が不規則
脳はフル稼働、体は静止──レム睡眠中の脳と体の変化
レム睡眠中の脳波を調べると、なんと覚醒時と同じような速くて不規則な波(シータ波やガンマ波)が出現します。これは、記憶をつかさどる海馬や感情を制御する扁桃体などが活発に働いている証拠です。
一方、思考や理性をつかさどる前頭葉の活動は低下しているため、夢の中では突飛な展開や非現実的なイメージが多くなります。こうした脳の部位ごとの「非同期な活動」が、夢の独特な世界を作り出していると考えられています。
さらに、レム睡眠では「PGO波(橋膝後頭波)」という脳幹から出る電気信号が、眼球運動や夢の映像処理と関係しているとも言われており、夢のリアリティを一段と高めています。
レム睡眠のサイクル──夜の後半に増える
私たちの睡眠は約90分周期で「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を交互に繰り返しています。最初のレム睡眠は入眠後約70〜90分で現れますが、夜が深まるにつれてその持続時間は長くなり、朝方にもっとも長くなるのが特徴です。
成人では、レム睡眠は総睡眠時間の約20〜25%(約90〜120分)を占めます。一晩で4〜5回経験しており、このリズムが私たちの脳と心を支えています。
レム睡眠の役割──「ただの浅い眠り」ではない
レム睡眠は一見“浅い眠り”に見えますが、実は次のような非常に重要な役割を担っています。
① 記憶の整理と定着
レム睡眠中には、日中に学んだことや経験したことが再整理され、長期記憶として保存されます。とくに手続き記憶(体の動きやスキル)や感情的な記憶の処理に深く関わっていると考えられています。
② 感情のリセット
不安やストレスの処理もレム睡眠の大きな役割の一つです。レムが不足すると、感情が不安定になりやすく、イライラしやすくなったり、うつ傾向が強まることもあります。
③ 創造性と直感力の向上
夢の中では、現実の常識にとらわれない発想が展開されます。このとき脳は自由な連想を行っており、起きたあとにインスピレーションを得る人も少なくありません。創造的な思考にもレム睡眠は不可欠です。
レム睡眠が不足するとどうなる?
レム睡眠が足りないと、脳は「レムリバウンド」という現象を起こします。これは、次の睡眠でレム睡眠が早く、そして長く現れることで、脳が必要な回復を優先しようとする反応です。
実験では、レム睡眠を意図的に妨げた人は、注意力や記憶力が低下したり、情緒が不安定になったりすることが報告されています。また、長期的に不足すると免疫力の低下や、さらには死亡リスクが高まるという動物実験もあるほどです。
レムリバウンドとは? 睡眠不足が引き起こす脳の緊急対応
レム睡眠を増やすための習慣
質の高いレム睡眠を得るためには、日々の生活習慣がとても大切です。
例えば、規則正しい睡眠リズムを保つこと、寝る前のスマホやPCの使用を控えること、カフェインやアルコールを減らすこと、そしてストレスをうまくコントロールすることなどが効果的です。
まとめ──レム睡眠は「脳のメンテナンスタイム」
レム睡眠は、私たちの心と脳の健康を支える「メンテナンスタイム」。夢を見るからといって「眠りが浅い」と誤解されがちですが、実際には記憶、感情、創造性といった極めて大事な機能が行われている時間です。
ノンレム睡眠が体を癒す時間なら、レム睡眠は脳と心を整える時間。この2つがバランスよく得られてこそ、本当に質の高い睡眠になるのです。
もし「最近、夢を見ない」「起きても疲れが取れない」と感じたら、それはレム睡眠が足りていないサインかもしれません。今夜から少しだけ、睡眠の質を見直してみてはいかがでしょうか。
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