ストレッチは「柔軟性を高める」と誰もが知っています。しかし、その効果の程度や、どんな方法が最も効率的かについては、意外と科学的に整理されていませんでした。
今回紹介するメタアナリシスでは、77件の研究を統合し、「どのストレッチ法が長期的に可動域を最大化するのに有効か?」を徹底的に検証しました。
さらに、性別による差や、頻度・強度・持続時間といった条件が柔軟性に与える影響も分析されています。
「静的ストレッチやPNFは本当に優れているのか?」「女性の方が柔らかくなりやすいのか?」――日常的にストレッチを取り入れる人なら気になる疑問に答えてくれる研究です。
参考:【2023年】ストレッチングによる可動域への慢性的影響と潜在的な調節変数の考慮:メタアナリシスによる系統的レビュー
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
長期的に可動域を最大化したい場合、動的ストレッチや弾性ストレッチよりも、静的ストレッチや固有受容性神経筋促通法(PNFストレッチ)が有効であることが分かりました。
また、男女差では女性のほうが柔軟性の向上幅が大きい傾向がありました。
ただし、ストレッチの「量・強度・頻度」といったトレーニング条件は、可動域の向上に大きな影響を与えないと示されています。
2025年の静的ストレッチの研究では、可動域への効果は男女差はなしでした。
違いとしては、今回の研究は「長期的に可動域を最大化」にするだからだと思います。
改善効果は男女差がなくても、どこまで改善かするについては男女差があるってことですね。
内容の信頼性:8.5/10
本研究は77件の研究データ、合計186の効果サイズを統合して分析した大規模メタアナリシスであり、統計的な信頼性は高いといえます。
ただし、研究対象が「健康な被験者」に限られており、アスリートや高齢者への適用は今後の検証が必要です。その点を踏まえ、信頼性は8.5点としました。
何の研究か?
この研究は、ストレッチが長期的に関節可動域(ROM)に与える影響を調べた系統的レビューおよびメタアナリシスです。
特に「ストレッチの種類(静的・動的・PNFなど)」「性別や年齢」「トレーニング頻度や強度」といった要因が、可動域改善にどう関係するのかを分析しました。
研究した理由は?
ストレッチが柔軟性を高めること自体は知られていましたが、どの方法が最も効果的か、またトレーニング条件がどの程度影響を与えるかは不明確でした。そのため、過去の研究をまとめて精度の高い結論を出すことを目的にしています。
結果はどうだったか?
1. 全体効果
ストレッチを行ったグループは、何もしなかったグループ(対照群)と比べて、明確に可動域(ROM)が広がることが確認されました。
統計的には「効果サイズ = -1.002, p < 0.001」で、これは中程度の改善効果を意味します。つまり、「ストレッチは本当に柔軟性を高める」という結論はかなり信頼できるものです。
「ストレッチは柔軟性に効果がある」という当たり前と言えば当たり前の結果ですが、当たり前を証明することは大事。
2. ストレッチの種類
ストレッチ方法によって効果に差が出ました。
- 静的ストレッチ(一定時間じっと伸ばす方法)
- PNFストレッチ(筋肉を収縮と弛緩を繰り返して伸ばす方法)
これらは、動的ストレッチ(動きながら伸ばす)や弾性ストレッチ(反動をつけて伸ばす)よりも、可動域を大きく改善しました(p = 0.01)。
柔軟性を「しっかり高めたい」場合は、ウォームアップ用の動的ストレッチではなく、静的またはPNFをメインにした方が効果的といえます。
以前に、メジャーで活躍したイチローさんと松井秀喜さんと対談で、松井さんが「PNFが自分にとって相性が良かった」と言っていましたね。それまで、私はPNFを知りませんでしたね。
3. 性差
男女で比較したところ、女性の方が男性よりもROMの改善幅が大きかったと報告されています(p = 0.04)。
つまり「ストレッチの効果が出やすい体質傾向」が女性にある可能性が示唆されました。
ただし、これは「効果があるかどうか」の話ではなく、最大限にどこまで改善できるかという伸び幅の違いである点に注意が必要です。
イメージ通り、女性のほうが柔らかくなるんですね。ただ、最大限の話であって、静的ストレッチそのものは男女ともに変わりなく効果があります。
4. その他の要因
意外だったのは、以下のような要素が可動域改善に大きな差をもたらさなかったことです:
- ストレッチの回数(頻度)
- 1回あたりのストレッチ時間(持続時間)
- 伸ばす強さ(強度)
- 総量
つまり、「たくさんやればやるほど効果が高い」というわけではないのです。むしろ「どんなストレッチ法を選ぶか」が最も大事なポイントであることが強調されました。
さすがに持続時間は関係あるだろう…と思ったんですが、これも最大限だからかもしれませんね。体全体の柔軟性・可動域を広げるために「どのストレッチをするか?」のほうが最大限を考えるうえでは非常に大切なわけですね。