不眠症に対する逆説的意図:系統的レビューとメタ分析
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsr.13464
逆説的志向(Paradoxical Intention, PI)は1990年代から不眠症の治療法として認識されていますが、最新のメタ分析では評価されていません。本研究は、不眠症の症状と理論に基づくプロセスに対するPIの有効性を検討した初の系統的レビューとメタ分析を行うことを目的としました。6つのオンラインデータベースから適格な記事や論文を検索し、PIを受動的および能動的な比較対象と比較しました。その結果、受動的な比較対象に対しては大きな改善を示し、能動的な比較対象に対しても中程度の改善が見られました。特に、PIは睡眠関連のパフォーマンス不安を大幅に軽減する効果が確認されました。
「起きていよう」と考えることで、「眠らなくちゃいけない」という睡眠の不安を大きく和らげる効果があるんですね。
野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
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著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
はじめに
不眠症は、睡眠の開始、維持が困難であり、早朝に目が覚めてしまう状態です。この状態は、日中の不安や機能障害を引き起こします。全人口の約6〜10%が不眠症の基準を満たし、この症状が治療されないと慢性化する傾向があります。このため、不眠症に対する効果的な治療法の重要性が強調されています。
1970年代にAscherとEfranは逆説的志向(PI)を開発しました。PIは、不眠症患者に眠ろうとするのではなく、できるだけ長く起きているように指示する治療法です。初期の症例報告では、PIは入眠潜時(睡眠に入るまでの時間)を短縮し、不眠症患者に効果的であることが示されました。これ以降、複数の研究がPIの有効性を調査し、同様の結果が得られています。
方法
本研究は、系統的レビューとメタ分析を用いてPIの有効性を評価しました。6つのオンラインデータベース(MEDLINE、PsycINFO、EMBASE、CINAHL、Web of Science、ProQuest)から、PIの有効性を評価した1990年以降の研究を検索しました。
対象となる研究は、ランダム化比較試験および実験研究であり、PIを用いた不眠症治療の結果を報告しているものです。PIを受動的な比較対象(待機リストや無治療)および能動的な比較対象(注意制御プラセボ、脱感作、刺激制御、イメージ、情報、漸進的弛緩法、フィードバック)と比較しました。治療後の標準化平均差Hedgeのgを算出し、異質性検定、フェイルセーフNの計算、研究の質の評価も行いました。
結果
合計10件の試験が特定されました。受動的な比較対象と比較して、PIは主要な不眠症症状(入眠潜時、夜間の覚醒回数、睡眠効率、総睡眠時間、睡眠の質、休息感)に大きな改善をもたらしました。特に、PIは入眠潜時を短縮し、夜間の覚醒回数を減少させ、睡眠の質を向上させる効果がありました。
能動的な比較対象と比較すると、改善の程度は中程度でしたが、いくつかの主要なアウトカムについて依然として効果が確認されました。特に、PIは睡眠関連のパフォーマンス不安を大幅に軽減する効果がありました。この結果は、PIがパフォーマンス不安を軽減することによって機能するメカニズムの一つであることを裏付けています。
結論
PIは不眠症に対する効果的な治療法であり、特に睡眠の開始や維持の困難を軽減し、睡眠後の休息感を高める効果があります。今後の研究では、PIの有効性と実施方法をさらに詳しく検討し、臨床現場での応用を広げることが期待されます。PIの理論的根拠や治療メカニズムを明らかにし、より効果的な治療法として確立するための研究が求められます。
また、PIは他の認知行動療法(CBT-I)と同様に、不眠症治療の有効な選択肢として考えられます。今後の研究では、PIを他の治療法と組み合わせて使用することで、その効果を最大化する方法を探ることが重要です。