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屋外ランニングは1%勾配のトレッドミル走行よりもエネルギー消費量が多い【2026年】

傾斜1%のトレッドミルでも、屋外ランニングのエネルギー負担を完全には再現できませんでした。

屋外では、トレッドミルよりも、

が高くなりました。特に第2換気性作業閾値(VT2)に近い高めの運動強度では差が大きくなっています。

論文の著者らは、研究室で傾斜1%のトレッドミルを使った測定では、レースに近い強度で実際に屋外を走ったときのエネルギーコストを過小評価する可能性があると結論づけています。

参考:地上走行は、1%勾配のトレッドミル走行よりもエネルギー消費量が多い:持久系アスリートにおける走行効率、酸素輸送コスト、およびエネルギーコストの比較

【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】

内容の信頼性:7/10

この研究は、研究目的に対して比較的しっかりした実験設計になっています。

同じ12人がトレッドミルと屋外の両方を走る反復測定のクロスオーバー方式で比較しているため、個人差の影響を抑えやすい設計です。また、事前に検出力分析を行い、必要人数を12人と算出しています。酸素摂取量についても同じ携帯型代謝測定装置を両条件で使用し、測定前の校正や定常状態の判定基準も設定されています。多重比較についてはFDRによる補正も行われています。

一方、論文自身が複数の限界を挙げています。参加者は男性12人のみで、女性への一般化には制限があります。また、実験順序はランダム化されておらず、全員が「トレッドミル→屋外」の順でした。さらに、地面反力、筋活動、ストライド変動などは直接測定していないため、「なぜ屋外のほうがエネルギーを使ったのか」というメカニズムについては仮説の段階です。高強度域での糖質・脂質燃焼量の推定にも測定上の限界があります。

そのため、今回参加したようなトレーニングを積んだ男性ランナーについての実験結果としては参考になるものの、すべてのランナーにそのまま当てはめられる研究ではないと評価し、7/10としました。

※「7/10」は論文中の評価ではなく、論文に記載された研究方法と限界をもとにした評価です。

何の研究か?

屋外を走る場合と、傾斜1%に設定したトレッドミルを走る場合で、ランナーのエネルギー消費にどのくらい違いがあるのかを調べた研究です。

研究では主に次の3項目が調べられました。

「ランニングエコノミー(RE)」は、一定の速度で走るときにどれくらい酸素を使うかを示します。この研究では値が高いほど、その速度を維持するために多くの酸素を必要としたことになります。

「酸素コスト・オブ・トランスポート(O2-COT)」は、体重1kgあたり、1km進むために必要な酸素量です。

「エネルギーコスト(EC)」は、体重1kgあたり、1m進むために必要となるエネルギー量です。

参加者

参加したのは持久系トレーニングを行っている男性ランナー12人でした。

平均値は、

  • 年齢:21.3 ± 2.4歳
  • 身長:176.2 ± 6.8cm
  • 体重:67.8 ± 5.9kg
  • 体脂肪率:11.8 ± 3.2%

でした。

全員が全国レベルの競技ライセンスを持つランナーで、週5回以上、週あたり約65~80kmを走っていました。(PLOS)

実験方法

参加者は、

傾斜1%のトレッドミル
屋外の400mトラック

の両方で走りました。

走行速度は時速8~15kmで、1段階につき3分間。速度を段階的に上げながら、呼気ガスを測定しました。屋外でもトレッドミルでも同じ携帯型代謝測定装置が使われました。(PLOS)


研究した理由は?

トレッドミルでは屋外と違って空気抵抗などの条件が異なるため、これまで「トレッドミルを1%傾ければ屋外ランニングに近いエネルギー負担になる」という方法が広く使われてきました。

しかし、これまでの研究ではトレッドミルと屋外ランニングが本当に同じ負担になるのかについて、はっきりしない部分が残っていました。

特に過去の研究では、一定時間あたりの酸素摂取量を中心に比較するものが多く、

「1km進むのにどれくらい酸素を使うのか」
「実際のエネルギーコストはどうなのか」
「脂質と糖質の使われ方はどう違うのか」

といった点を、個人ごとの換気性作業閾値に合わせてまとめて比較した研究は不足していました。

そこで今回の研究では、傾斜1%のトレッドミルが屋外ランニングのエネルギー負担を本当に再現できているのかを詳しく調べました。

結果はどうだったか?

比較項目屋外ランニング傾斜1%トレッドミル結果
ランニングエコノミー・時速12km51.3 ± 2.2 mL/kg/min49.6 ± 3.1 mL/kg/min屋外が有意に高い(p-FDR=0.01)
1kmあたり酸素コスト204.2 ± 11.3 mL/kg/km197.1 ± 12.3 mL/kg/km屋外が有意に高い(p-FDR=0.01)
エネルギーコスト・時速12km3.87 ± 0.21 J/kg/m3.65 ± 0.22 J/kg/m屋外が有意に高い(p-FDR=0.01)
カロリー換算・時速12km0.93 kcal/kg/km0.87 kcal/kg/km屋外が高い
エネルギーコスト・VT2の90~100%4.60 ± 0.27 J/kg/m4.10 ± 0.18 J/kg/m屋外が有意に高い(p-FDR<0.01)
糖質酸化量・VT1~VT23.20 ± 0.80 g/min2.75 ± 0.60 g/min屋外が有意に高い(p-FDR=0.02)
脂質酸化量・VT1~VT20.28 ± 0.16 g/min0.39 ± 0.14 g/min有意差なし(p=0.07)
VT1未満・時速8~10kmの糖質・脂質利用大きな差なし大きな差なしいずれも有意差なし(p>0.10)

① ランニングエコノミーは屋外のほうが高かった

全員が両方の条件で安定した酸素摂取量を測定できた時速12kmで比較すると、ランニングエコノミーは、

屋外:51.3 ± 2.2 mL/kg/min
トレッドミル:49.6 ± 3.1 mL/kg/min

でした。

差は**+1.7 ± 1.9 mL/kg/min**で、統計的にも有意でした(p-FDR=0.01)。(PLOS)

つまり、時速12kmで走った場合、屋外のほうが同じ体重・同じ時間あたりに多くの酸素を必要としていました。


② 1km走るための酸素量も屋外のほうが多かった

同じ比較でO2-COTは、

屋外:204.2 ± 11.3 mL/kg/km
トレッドミル:197.1 ± 12.3 mL/kg/km

でした。

差は+7.1 ± 9.8 mL/kg/kmで、統計的に有意でした(p-FDR=0.01)。

つまり、同じ1kmを走るために必要な酸素量も屋外のほうが多かったという結果です。

③ 実際のエネルギーコストも屋外のほうが高かった

時速12kmでのエネルギーコストは、

屋外:3.87 ± 0.21 J/kg/m
トレッドミル:3.65 ± 0.22 J/kg/m

でした。

カロリー換算では、

屋外:0.93 kcal/kg/km
トレッドミル:0.87 kcal/kg/km

でした(p-FDR=0.01)。

さらに運動強度がVT2の90~100%まで上がると、

屋外:4.60 ± 0.27 J/kg/m
トレッドミル:4.10 ± 0.18 J/kg/m

となりました(p-FDR<0.01)。

屋外とトレッドミルの差は、VT2の70~79%では0.22 J/kg/mでしたが、90~100%では0.50 J/kg/mまで広がりました。

つまり、走る強度が高くなるほど、傾斜1%のトレッドミルと屋外とのエネルギー負担の差が大きくなる傾向が確認されました。

④ 高い強度では、屋外のほうが糖質を多く使っていた

比較的低い強度、つまりVT1より下の時速8~10kmでは、脂質と糖質の燃焼量に有意な差はありませんでした。

VT1からVT2の間では糖質酸化量が、

屋外:3.20 ± 0.80 g/min
トレッドミル:2.75 ± 0.60 g/min

となりました。

差は+0.45 g/minで、統計的に有意でした(p-FDR=0.02)。

脂質酸化量は、

屋外:0.28 ± 0.16 g/min
トレッドミル:0.39 ± 0.14 g/min

でしたが、こちらはp=0.07で統計的有意差には達していません。

そのため、この研究から言えるのは、高めの運動強度では屋外ランニングのほうが糖質利用量が有意に多かったということです。


なぜ屋外のほうが負担が大きかったのか?

論文では、屋外では路面による動作の変動、姿勢を安定させるための筋活動、空気抵抗などが関係している可能性が議論されています。また、トレッドミルではベルトの動きが脚の回収動作を補助する可能性も挙げられています。

しかし、今回の研究では筋活動や地面反力などを直接測定していません。

そのため著者自身も、これらは今回の実験で証明された原因ではなく、結果を説明するための仮説だとしています。


セイエド・ホータン・シャヒディ
ラナ・ジャン
フルカン・ムラト・パチャ
ムハンメド・ドウカン・ゼンギン

所属はいずれも、イスタンブール・ゲディク大学 スポーツ科学部 スポーツコーチング学科(トルコ・イスタンブール)です。

Shahidi et al. (2026). Overground running incurs a higher energetic cost than treadmill running at a 1% grade: A comparison of running economy, oxygen cost of transport, and energy cost in endurance athletes. PLoS One, 21(8), e0355988.


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