肩関節の痛みと強いこわばりが徐々に進み、自分で動かしても、他人が動かしても肩の動く範囲が狭くなる病気です。医学的には主に癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)と呼ばれます。
肩関節を包んでいる「関節包」に炎症が起こり、その後、関節包が厚く硬くなって縮むことで、肩が凍りついたように動かしにくくなります。数か月から数年かけて改善することが多いものの、回復が長引いたり、多少の痛みや可動域制限が残ったりする人もいます。
「五十肩」との違い
日本でいう五十肩(四十肩)・肩関節周囲炎は、中年以降に起こる肩の痛みを広く表す言葉として使われることがあります。
その中でも、関節包が硬くなり、明らかな可動域制限を起こした状態が凍結肩です。
五十肩と凍結肩をほぼ同じ意味で使う場合もありますが、腱板断裂、石灰沈着性腱炎、変形性肩関節症などは別の病気であり、診察や画像検査による区別が必要です。
主な症状
1. 肩の痛み
初期には痛みが中心です。
- 肩の外側から上腕にかけての鈍い痛み
- 腕を上げる、後ろに回す動作で痛む
- 何もしていなくても痛むことがある
- 寝返りや患側を下にして寝ると痛む
- 夜間痛で目が覚める
- 急な動作で強く痛む
痛みの場所を一点に指しにくく、肩全体や上腕外側が痛むこともあります。
2. 肩のこわばり・可動域制限
凍結肩の最大の特徴は、自動運動と他動運動の両方が制限されることです。
- 自分で腕を上げられない
- 反対の手や医師が動かしても十分に動かない
- 特に腕を外側へひねる「外旋」が強く制限される
- 腕を上げる、横に開く、背中へ回す動作も制限される
他人に動かしても動かない点が、単純な筋力低下や一部の腱板障害との重要な違いです。
3. 日常生活への影響
次のような動作が難しくなります。
- 髪を洗う、整える
- 上着を着る、脱ぐ
- 背中のファスナーを上げる
- エプロンや帯を後ろで結ぶ
- 背中を洗う
- ズボンの後ろポケットへ手を入れる
- 高い棚から物を取る
- シートベルトを取る
- 患側を下にして眠る
痛みだけでなく、関節自体が硬くなるため、無理に頑張っても腕が上がらない状態になります。
症状の経過
典型的には、次の3段階で説明されます。実際には境界が明確でない人や、異なる経過をたどる人もいます。
① 炎症期・凍結進行期
数週間から数か月かけて痛みが強まり、徐々に動かしにくくなります。
- 夜間痛が強い
- 安静時にも痛む
- 動かすと鋭く痛む
- 可動域が少しずつ狭くなる
この時期に強く引っ張るストレッチをすると、痛みや炎症が悪化することがあります。
② 拘縮期・凍結期
痛みが多少軽くなる一方、肩の硬さが目立ちます。
- 腕が上がらない
- 背中に手を回せない
- 日常生活の制限が強い
- 肩甲骨を大きく動かして代償する
③ 回復期・解凍期
痛みが落ち着き、肩の動きが徐々に戻ります。
回復には数か月から数年かかることがあります。AAOSは完全な回復まで最長3年程度かかる場合があると説明しており、近年のレビューでは、一部の人に長期的な痛みや可動域制限が残る可能性も指摘されています。
原因
凍結肩では、関節包に炎症が起こり、その後、線維化して厚く硬くなります。関節包の容積が小さくなり、関節の滑らかな動きが妨げられます。
なぜ炎症や線維化が始まるのかは、明確に分からないことも多くあります。
原発性凍結肩
明らかなけがや手術がなく、徐々に発症するものです。「特発性」とも呼ばれます。
続発性凍結肩
次のような出来事の後に起こります。
- 肩や腕の骨折
- 肩の手術
- 腱板損傷
- 脳卒中などによる麻痺
- 痛みのため長期間腕を動かさなかった
- 手術後などに腕を固定していた
肩を長期間動かさない状態は、凍結肩の発症要因になります。
起こりやすい人
多くみられるのは40~60歳前後で、女性にやや多いとされています。主な関連因子には次があります。
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下症・亢進症
- 肩の外傷や手術
- 長期間の固定
- 以前に反対側の凍結肩を経験した
- パーキンソン病など一部の全身疾患
糖尿病がある人では、こわばりが強く、回復に時間がかかる傾向があります。
診断
診断の中心は、症状の経過と肩の診察です。
医師は一般に次の点を確認します。
- いつから痛むか
- けがや手術があったか
- 夜間痛があるか
- 自分で動かせる範囲
- 医師が動かした場合の範囲
- 外旋、挙上、内旋の制限
- 筋力低下やしびれの有無
- 首から来る症状がないか
典型的には、肩甲上腕関節の動きが全方向で制限され、特に外旋が大きく制限されます。
画像検査
凍結肩そのものは、通常のレントゲンで明確に映るとは限りません。画像検査は主に、別の病気を除外するために行います。
- レントゲン:骨折、石灰沈着、変形性関節症など
- 超音波:腱板断裂、滑液包炎など
- MRI:腱板、関節包、腫瘍などを詳しく評価
- 関節造影:状況により関節包の状態を確認
典型的な症状と診察所見があれば、すべての人にMRIが必要になるわけではありません。
似た病気
腱板断裂
腕を自分で上げにくくても、他人が動かせば比較的動く場合があります。筋力低下が目立つこともあります。
石灰沈着性腱炎
突然、非常に強い痛みが出ることがあり、レントゲンで石灰が確認されます。徐々に硬くなる典型的な凍結肩とは経過が異なります。
変形性肩関節症
軟骨がすり減り、骨の変形を伴います。レントゲンで変化が見つかることがあります。
頸椎由来の痛み
首から肩、腕、手にかけて痛みやしびれが広がり、首の動きで症状が変化することがあります。
その他
関節リウマチ、感染性関節炎、骨折、脱臼、腫瘍なども肩の痛みや動きの制限を起こすため、典型的でない症状では鑑別が必要です。
治療
治療の目的は、痛みを抑えながら肩の動きを回復させ、日常生活への影響を減らすことです。多くは手術をせずに治療します。症状の段階や痛みの強さによって、運動の内容を変えることが重要です。
1. 痛みを抑える
医師の判断で次が使用されます。
- アセトアミノフェン
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 外用薬
- 関節内ステロイド注射
鎮痛薬は関節包の硬さを直接なくすものではありませんが、痛みを減らし、睡眠やリハビリを行いやすくします。
ステロイド注射は、特に痛みや炎症が強い時期に、短期的な痛みと機能を改善する可能性があります。長期的には、運動療法などとの差が小さくなる傾向があります。
NSAIDsは胃潰瘍、腎機能障害、心血管疾患、抗凝固薬の使用などによって適さない場合があります。薬の選択は医師や薬剤師に確認してください。
2. 運動療法・理学療法
凍結肩治療の中心です。
- 痛くない範囲での関節運動
- 振り子運動
- 補助を使った挙上運動
- 外旋・内旋のストレッチ
- 肩甲骨の動きの訓練
- 回復期の筋力訓練
- 姿勢や日常動作の指導
痛みが非常に強い時期には、強く引っ張る訓練ではなく、短時間の穏やかな運動を中心にします。痛みが落ち着いてきたら、徐々にストレッチの強度や範囲を増やします。
3. 温熱療法
入浴や温熱パックによって周囲の筋肉がほぐれ、運動を行いやすくなることがあります。熱すぎるものを直接皮膚に当てず、低温やけどに注意します。
運動後に痛みが増した場合は、冷却が合うこともあります。
4. ハイドロダイレーション
画像を見ながら、肩関節内へ液体を注入して関節包を広げる治療です。「関節包拡張術」「関節内加圧注入」などと呼ばれます。
短期的に痛みや可動域を改善する可能性がありますが、注入量や方法には違いがあり、他の治療より明確に優れているかは十分に確定していません。
5. 手術・麻酔下授動術
保存治療を十分に行っても強い拘縮が続き、生活への影響が大きい場合に検討されます。
- 麻酔下授動術:麻酔下で肩を動かし、硬くなった関節包を伸ばす
- 関節鏡視下関節包切離術:関節鏡で硬くなった関節包を切離する
通常は第一選択ではなく、治療効果、合併症、術後リハビリの必要性を含めて検討します。
自宅で注意すること
- 肩を完全に動かさない状態を長く続けない
- 痛みを無視して強くひねったり引っ張ったりしない
- 重いダンベルや自己流の強い筋トレを急に始めない
- 医師や理学療法士から指示された運動を少量ずつ続ける
- 夜は腕の下に枕やクッションを置いて支える
- 痛みが増したら運動の強度や回数を見直す
「痛くても無理に動かせば早く治る」とは限りません。強い炎症期に過度なストレッチを行うと、痛みが増えて運動を継続できなくなることがあります。反対に、長期間まったく動かさないことも拘縮を悪化させます。
受診の目安
次の場合は、整形外科を受診してください。
- 痛みとこわばりが続く
- 夜間痛で眠れない
- 腕を上げる、服を着るなどの日常動作が難しい
- 徐々に動く範囲が狭くなっている
- 糖尿病や甲状腺疾患がある
- けがや手術後に肩が硬くなった
- 治療しても改善しない
早い段階で腱板断裂や石灰沈着性腱炎などを区別し、痛みの段階に合った治療を始めることが重要です。
早急な診察が必要な症状
- 転倒や事故後の強い痛み、変形、著しい腫れ
- 突然まったく腕を動かせなくなった
- 肩が赤く熱を持ち、発熱や強い倦怠感がある
- 腕が冷たい、色が変わる
- 急な筋力低下や強いしびれ
- 胸の圧迫感、息苦しさ、冷汗などを伴う肩や腕の痛み
これらは骨折、脱臼、腱断裂、感染症、神経・血管障害、心臓疾患などの可能性があり、典型的な凍結肩として様子を見る症状ではありません。
要点は、「痛い肩」だけではなく、他人が動かしても肩が動かないほど関節自体が硬くなることが凍結肩の特徴という点です。治療は痛みの強い時期と硬さが中心の時期で異なるため、強い夜間痛や可動域制限がある場合は整形外科での評価が適しています。
感想と考察
四十肩や五十肩よりも、「凍結肩」と呼んだほうが、改善しそうな感じがあっていいなと思いました。
やっぱり、四十、五十というように年齢が入っていると、「ある程度は仕方がないもの」と感じやすくなってきますよね。そうなると、諦めやすくなってしまう。
でも、「凍結肩」と書かれていると、「この凍っている肩を解かせばいいんだ」という考えが生まれやすくなるのかなと思います。自分でどうにかできるというコントロール感も生まれるので、響きとしては「凍結肩」のほうがいいんじゃないかなと思いました。

