覚えておきたい期間が長くなるほど、最初の学習と復習の間隔も長くしたほうが、後のテストで正答しやすくなる傾向が確認されました。
研究では、「復習までの間隔」と「その後、記憶を保つ期間」の間に有意な相互作用がありました(β = 0.0003、z = 9.672、p < .001)。たとえば、記憶保持期間が0日または7日と短い条件では、復習間隔が長くなるほど正答のオッズは低下しました。反対に、記憶保持期間が120~210日と長い条件では、復習間隔が長くなるほど正答のオッズが上昇しました。
つまりこの研究では、「最適な復習間隔は固定ではなく、いつまで覚えていたいかによって変わる」という結果が、実際の職場研修データでも示されました。
参考:The spacing effect stands up to big data 2019年
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評価を高くできる理由は、10,514人という大規模な実社会の縦断データを使い、約220,000のデータポイントを分析していることです。
また、「復習間隔」「記憶保持期間」「問題形式」に加え、質問・個人・会社という階層構造を考慮したロジスティック一般化線形混合モデルを使用しています。過去の研究をもとに、あらかじめ仮説を設定した研究でもあります。
一方、研究者自身が複数の限界を挙げています。研修は実験室のように管理された環境ではなく、スマートフォンやパソコンなどを使ってさまざまな場所・時間に行われました。本人だけで回答したか、どの程度真剣に取り組んだかも確認できません。また、研修と研修の間に学んだ内容を仕事でどれだけ使ったかも測定されていません。
さらに、間違えた問題には修正フィードバックが与えられていたため、結果が「時間を空けて思い出したこと」によるものなのか、「フィードバックを時間を空けて受けたこと」によるものなのかを完全には切り分けられません。年齢などの人口統計情報もありませんでした。
何の研究か?
これは、復習の間隔と、その後どのくらい長く覚えておく必要があるかの関係を調べた研究です。
研究チームは、学習管理システム「Axonify」を使って職場研修を受けた5社・10,514人の従業員の縦断データを分析しました。対象には、高級百貨店、小売業、2つの製薬会社の営業チーム、高等教育機関などが含まれており、安全管理、店舗運営、商品知識、研修手順などについて学習していました。
通常の研修1回は約3分で、従業員は2~3問に回答しました。
間違えると修正フィードバックが与えられました。
分析では、同じ問題が最初に出されたときに不正解、2回目には正解したデータを対象としました。
最初から正解している問題は、研修前から答えを知っていた可能性があるため除外されています。
そして、
- 1回目の出題 → 2回目の出題までを「復習間隔」
- 2回目の出題 → 3回目の出題までを「記憶保持期間」
- 3回目に正解したかどうかを「記憶が保持されていたか」の指標
として分析しました。
研究した理由は?
学習内容を時間を空けて繰り返す「間隔効果」と、覚えたことを実際に思い出すことで記憶を強める「テスト効果」は、これまで多くの実験室研究で確認されてきました。
しかし研究者らによると、この2つを実社会でどのように組み合わせれば、知識を効率よく長期間保持できるのかは十分に分かっていませんでした。また、間隔効果を実社会で検証した研究は、主に学校教育や臨床場面に限られていました。
そこで研究チームは、実際の職場研修という環境で、「覚えておく必要がある期間が長くなるほど、効果的な復習間隔も長くなる」という仮説を、大規模な実データで検証しました。
結果はどうだったか?
最も重要だったのは、復習間隔と記憶保持期間の有意な相互作用です(β = 0.0003、z = 9.672、p < .001)。
記憶保持期間が0日、7日など短い場合、復習までの間隔を長くすると、3回目のテストで正答するオッズは下がりました。
反対に、記憶保持期間が120~210日のように長い場合には、復習までの間隔を長くするほど正答のオッズが上がりました。
研究者らはこの結果から、情報を長く保持する必要があるほど、最初の学習から復習までの間隔も長くすることが有効になるとしています。また、復習間隔を空けすぎれば常に良くなるわけではなく、どれだけ長く覚えておきたいかを考慮して間隔を設定する必要があると論じています。
実験室研究で確認されてきた「間隔効果」が、実際の職場研修という環境でも確認されたことが、この研究の主要な成果です。
| 覚えておきたい期間 | 復習間隔の目安 | 論文での扱い |
|---|---|---|
| 約1週間 | 約1日 | 過去の研究では、短い保持期間には短い復習間隔が有利 |
| 1か月以上 | 11日以上 | 過去の研究では、長期保持には長めの復習間隔のほうが保持確率が高い |
| 一般的な目安 | 保持したい期間の約10~20% | 論文が引用している教育研究レビューの提案 |
この論文は、先行研究について、1週間程度の短期保持なら約1日の間隔が有益であり、1か月以上の保持では11日以上のような長い間隔のほうが記憶保持の確率が高いと説明しています。さらにPashlerら(2007)のレビューを引用し、2回の学習の間隔は、最終的に覚えておきたい期間のおよそ10~20%にするとよいという目安も紹介しています。
なので、10~20%という目安を単純に日数へ置き換えると、イメージとしては次のようになります。
| いつまで覚えたい? | 10~20%で計算した復習間隔 |
|---|---|
| 7日後 | 約0.7~1.4日後 |
| 14日後 | 約1.4~2.8日後 |
| 30日後 | 約3~6日後 |
| 60日後 | 約6~12日後 |
| 90日後 | 約9~18日後 |
| 180日後 | 約18~36日後 |
| 365日後 | 約37~73日後 |
ここで重要なのは、この表の具体的な日数を今回の10,514人のデータから研究者が直接「最適値」として算出したわけではないことです。今回の研究そのものが確認したのは、保持期間が長くなるほど、最適な復習間隔も長くなるという関係です。
また、「10~20%」は今回の研究の新発見ではなく、論文内で引用されているPashlerら(2007)のレビューによる目安です。今回の研究結果が、その考え方と一致したという位置づけです。
1週間後まで覚えたいなら翌日ごろ、数か月先まで覚えたいなら数週間ほど空ける。覚えておきたい期間が長いほど、復習する間隔も長くしたほうがよい。目安としては、覚えておきたい期間の10~20%程度の間隔が先行研究で提案されています。
という説明が、論文の内容に沿っています。
発表者・所属機関
A・S・N・キム
ヨーク大学 心理学科
ベイクレスト・ヘルス・サイエンシズ ロットマン研究所
A・M・B・ウォン・キー・ユー
ヨーク大学 心理学科
M・ワイズハート
ヨーク大学 心理学科
ヨーク大学 ラマーシュ児童・青年研究センター
R・S・ローゼンバウム
ヨーク大学 心理学科
ベイクレスト・ヘルス・サイエンシズ ロットマン研究所
ヨーク大学 VISTA(ビスタ)プログラム
Kim et al. (2019). The spacing effect stands up to big data. Behav Res Methods, 51(4), 1485–1497.


