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不眠症の人と良好な睡眠の人では「睡眠時間は2時間違う」が「客観的には25分違う」|2022年研究

このレビューで最も重要なポイントの一つは、不眠症に対する第一選択の治療として「不眠症の認知行動療法(CBT-I)」が推奨されていることです。論文執筆時点で、主要な不眠症関連ガイドラインはいずれもCBT-Iを第一選択治療としています。

CBT-Iは1つの方法だけを指すのではなく、睡眠制限、刺激制御、認知的な働きかけ、リラクゼーション、睡眠衛生教育などを組み合わせる治療体系です。デジタルで提供するCBT-Iについても、複数の研究やメタ解析で有効性が示され、治療をより多くの人に届ける方法として期待されています。

その一方で、CBT-Iの効果を薬物療法でさらに補強した場合でも、5人中2人は完全寛解に至らなかったとする研究が紹介されています。そのため著者らは、不眠症の脳・行動メカニズムをさらに理解し、「誰が治療に反応し、誰が反応しないのか」を解明する必要があるとしています。

著者らが将来の最も重要な課題の一つとして挙げているのが、CBT-Iを、特に不安症やうつ病などの精神疾患の標準治療に組み込むことです。また、不眠症を適切に治療することが、将来的にうつ病や不安症の発症・再発を減らす可能性についても、さらに検証する必要があるとしています。

参考:不眠症:現状と今後の課題【2022年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】

内容の信頼性:8 / 10

本論文は、2022年に『Journal of Sleep Research』に掲載されたレビュー論文で、不眠症の診断、疫学、発症メカニズム、CBT-I、デジタルCBT-I、今後の研究課題まで幅広く整理しています。DSM-5、ICSD-3、ICD-11などの診断体系や、臨床ガイドライン、メタ解析、臨床研究など多数の既存研究を根拠として議論しています。

一方、この論文自体は新しい被験者データを集めた研究でも、検索方法や論文選択基準を定めて統計的に統合するシステマティックレビュー/メタ解析でもありません。著者らが既存研究を整理し、今後の方向性まで論じたレビューです。そのため、個々の効果量を一つの統計値として確定するタイプの論文とは性質が異なります。

利益相反も開示されています。筆頭著者ディーター・リーマンは『Journal of Sleep Research』の編集長として報酬を受けています。また、コリン・A・エスピーはデジタルCBT-I「Sleepio」を開発するビッグ・ヘルス社の共同創業者・チーフサイエンティスト・株主であり、アラスデア・L・ヘンリーも同社の従業員・株主です。その他の著者については利益相反なしと記載されています。

以上を踏まえ、不眠症研究全体の現状を理解する資料としての信頼性は高いものの、体系的レビューではない点と利益相反を考慮して8点としました。

何の研究か?

この論文は、「不眠症という病気について、現在の科学ではどこまで分かっていて、今後どこを研究すべきなのか」を整理したレビュー研究です。

扱われている中心テーマは、不眠症の診断、患者数や健康への影響、原因・発症メカニズム、認知行動療法を中心とした治療、デジタル治療、今後の研究課題です。

不眠症は現在、DSM-5、ICSD-3、ICD-11という主要な診断体系で独立した疾患として位置づけられています。以前のように別の病気に付随する「二次的な症状」としてだけ捉えるのではなく、ほかの身体疾患や精神疾患と併存することもある独立した病気として扱われるようになっています。

研究した理由は?

著者らによると、不眠症の診断、原因についての考え方、治療法は過去約30年間で大きく変化してきました。

主要な診断体系が不眠症の診断について共通した方向性を示し、CBT-Iについても主要ガイドラインが第一選択治療として推奨する状況になりました。その一方で、不眠症には依然として多くの未解決問題が残っています。

たとえば、なぜ急性の不眠が一部の人では慢性化するのか、客観的な睡眠検査と本人が感じている睡眠に差が生じるのはなぜか、なぜCBT-Iが効かない人がいるのか、患者ごとにどの治療を選ぶべきなのかといった問題です。

そこで著者らは、現在までに蓄積された知見を整理するとともに、今後特に重要になる研究課題を示しました。

結果はどうだったか?

項目論文で示されている内容
論文の種類不眠症の診断・疫学・原因・治療・将来の研究課題を整理したレビュー論文
慢性不眠症の頻度ヨーロッパ成人の約10%
男女の割合女性60%:男性40%
国別の例ドイツ 5.7%、フランス 最大20%
ICSD-3の期間・頻度睡眠障害と日中症状が週3回以上、3か月以上
客観的な総睡眠時間の差不眠症群と良好な睡眠者で平均約25分|1,067人(不眠症582人+良好な睡眠者485人)
主観的な総睡眠時間の差不眠症群と良好な睡眠者で約2時間|200人(不眠症100人+良好な睡眠者100人)
第一選択治療不眠症の認知行動療法(CBT-I)
CBT-Iの主な内容睡眠制限、刺激制御、認知的介入、リラクゼーション、睡眠衛生教育など
睡眠薬について主に短期使用。論文では4週間未満と記載
デジタルCBT-I臨床試験・メタ解析で有効性が報告され、効果が1年以上維持された研究も紹介
CBT-Iの限界薬物療法で効果を補強しても5人中2人が完全寛解に至らなかったとの報告
今後の大きな課題治療反応の個人差の解明、不眠症の脳・行動メカニズムの研究、CBT-Iを特に不安症・うつ病の標準治療へ組み込むこと
著者らが示す将来性不眠症治療が、うつ病や不安症の発症・再発を減らす可能性をさらに検証する必要がある

まず、不眠症は決して珍しい病気ではありません。論文では、ヨーロッパの成人の約10%が慢性不眠症に苦しんでいるとされています。男女比では女性が60%、男性が40%で、年齢とともに有病率が上昇します。国による違いも大きく、ドイツでは5.7%、フランスの調査では最大20%というデータが紹介されています。

診断については、本人の訴えが中心です。
ICSD-3では、睡眠の問題とそれに伴う日中症状が週3回以上あり、それが3か月以上続いていることなどが慢性不眠症の診断条件に含まれます。

興味深いのは、「本人が感じている睡眠」と睡眠検査で測定した結果が必ずしも一致しないことです。
論文が引用しているメタ解析では、不眠症の人と良好な睡眠者との総睡眠時間の差は、ポリソムノグラフィーでは平均約25分でしたが、本人の主観的な推定では約2時間の差がありました。

治療では、主要ガイドラインがCBT-Iを第一選択としています。睡眠薬については、CBT-Iが利用できない場合や効果が不十分な場合などに、主として短期間使用することが推奨され、論文では4週間未満が示されています。

デジタルCBT-Iについても複数の臨床試験やメタ解析が紹介され、不眠症の重症度では大きな群間効果、睡眠日誌による評価では中程度の効果が報告されています。
睡眠への効果が1年以上維持された研究も紹介されています。

それでも治療ですべてが解決するわけではありません。論文では、CBT-Iの効果をその後の薬物療法で補強しても、5人中2人は完全寛解に至らないという報告が取り上げられています。著者らは、治療反応を左右する要因や不眠症の脳・行動メカニズムをさらに研究する必要があるとしています。

発表者・所属機関

発表者所属機関
ディーター・リーマンフライブルク大学医療センター 医学部 精神医学・心理療法学科/フライブルク大学医学部 神経調節基礎センター(NeuroModulBasics)
フェー・ベンツフライブルク大学医療センター 医学部 精神医学・心理療法学科
ラファエル・J・ドレスレフライブルク大学医療センター 医学部 精神医学・心理療法学科
コリン・A・エスピーオックスフォード大学 ナフィールド臨床神経科学部門 サー・ジュールズ・ソーン睡眠・概日神経科学研究所/ビッグ・ヘルス社(ロンドン、サンフランシスコ)
アンナ・F・ヨハンフライブルク大学医療センター 医学部 精神医学・心理療法学科/フライブルク大学医学部 医学心理学・医学社会学研究所
テッサ・F・ブランケンアムステルダム大学 心理学的方法論学科
ジャンヌ・レールセンオランダ王立芸術科学アカデミー オランダ神経科学研究所 睡眠・認知部門
リック・ワッシングシドニー大学 医学・健康学部/ウールコック医学研究所 睡眠統合研究理解センター(CIRUS)
アラスデア・L・ヘンリーオックスフォード大学 ナフィールド臨床神経科学部門 サー・ジュールズ・ソーン睡眠・概日神経科学研究所/ビッグ・ヘルス社(ロンドン、サンフランシスコ)
サイモン・D・カイルオックスフォード大学 ナフィールド臨床神経科学部門 サー・ジュールズ・ソーン睡眠・概日神経科学研究所
カイ・シュピーゲルハルダーフライブルク大学医療センター 医学部 精神医学・心理療法学科
エウス・J・W・ファン・ソメレンオランダ王立芸術科学アカデミー オランダ神経科学研究所 睡眠・認知部門

筆頭著者はディーター・リーマンです。論文の構成案作成と最終編集を担当し、ほかの著者は同等に貢献したと記載されています。

Riemann et al. (2022). Insomnia disorder: State of the science and challenges for the future. J Sleep Res, 31(4), e13604.

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