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完璧主義は短時間のオンライン講座で変わる?大学生70人の比較試験で分かった効果と限界

「きちんと仕上げないと提出できない」「相手のちょっとした反応が気になる」「自分にも人にも厳しくなって、疲れてしまう」。そんなことはありませんか?

完璧主義は、仕事や勉強に向かう姿勢だけでなく、人との付き合い方や気持ちの整理にも関わる場合があります。では、完璧主義を扱うために、何週間も通う心理療法ではなく、短時間のオンライン学習プログラムを利用したらどうなるのでしょうか。

2024年6月、オーストラリアのマッコーリー大学のShanara Visvalingam、Angelica C. Matheson、Natasha R. Magson、Melissa M. Norbergは、この疑問に関する研究を学術誌『Current Psychology』で発表しました。大学1年生70人を対象に、完璧主義に特化したオンラインプログラムと、健康的な生活習慣を学ぶ別のプログラムを無作為に割り当て、約1か月後と3か月後の変化を比較しました。[1]

結果は単純ではありません。完璧主義の一部の側面、対人関係での敵意、孤独感、セルフ・コンパッションには好ましい変化が見られた一方、研究が主な評価項目とした心理的苦痛では、対照群より大きな改善が確認されませんでした。しかも、学習活動の平均完了率は36.23%にとどまっています。

この記事では、プログラムで実際に何を学び、どの項目に変化があり、何がまだ分からないのかを、論文本文に沿って紹介します。

完璧主義とは?自分だけでなく人間関係にも表れる特徴

完璧主義というと、「自分の仕事を100点にしないと気が済まない人」を思い浮かべるかもしれません。しかし、心理学では完璧主義を、自分に向ける期待だけでなく、他人への要求や、周囲から期待されているという感覚も含めて考えます。

今回の研究は、HewittとFlettの多次元的な完璧主義の考え方を取り入れ、主に3つの側面を測定しました。[1]

側面 主な意味 身近なイメージ
自己志向的完璧主義(self-oriented) 自分自身に非常に高い基準を求める 少しの不備が気になり、課題を出せない
他者志向的完璧主義(other-oriented) 他人にも高い基準を要求する グループ課題で他の人のやり方を許しにくい
社会規定的完璧主義(socially prescribed) 周囲から完璧であることを求められていると感じる 失敗したら友人や先生に見放されると思う

3つは別々に測定できますが、同じ人に複数の側面があることも考えられます。

加えて研究では、「失敗への懸念(concern over mistakes)」と「個人的基準(personal standards)」という、完璧主義に関係する考え方も測りました。自分に高い目標を持つことと、間違いに強く反応することを、ひとまとめにしないためです。

なぜ完璧主義の研究で「人とのつながり」が重要なのか

研究の背景にあるのは、完璧主義の社会的断絶モデル(Perfectionism Social Disconnection Model:PSDM)です。[1]

このモデルでは、完璧主義が人との関わり方に影響し、その結果として孤立や心理的な苦痛につながる可能性を考えます。

たとえば、周りから厳しく評価されていると感じる人は、小さな表情の変化を「嫌われた証拠」のように受け取るかもしれません。反対に、他人の失敗に厳しい人は、批判的な態度によって関係がぎくしゃくするかもしれません。

研究では、こうした問題に関係する要素として、次のような指標を扱っています。

  • 拒絶への敏感さ:相手から拒まれることをどれほど強く心配するか。
  • 対人的な敵意:人への怒りや敵対的な態度に関係する特徴。
  • 孤独感:本人が感じる人とのつながりの乏しさ。
  • セルフ・コンパッション:失敗やつらさがある自分に、思いやりをもって向き合う姿勢。
  • マインドフルネスや苦痛への耐性:感情や考えへの気づき、不快な体験の扱い方に関する特徴。

ここで重要なのは、単に「完璧にこだわるのをやめよう」と伝えるのではなく、完璧主義が人間関係や感情の扱い方とどう結びついているかを学習内容に取り入れた点です。

研究はどのように行われた?大学生70人のパイロット比較試験

研究チームは、オーストラリアのマッコーリー大学で心理学を学ぶ1年生のうち、完璧主義の傾向が高い人を募集しました。[1]

最初のオンライン調査に同意した学生は1,388人。その後、基準を満たすかを追加確認し、最終的に70人を2つの群に無作為に割り当てました。

項目 研究の内容
対象者 完璧主義傾向の高い大学1年生70人
平均年齢 19.52歳
割り当て 介入群と比較群に1対1で無作為割り当て
介入群 Intentional Imperfection Program(IIP)
比較群 Healthy Body and Mind Program(HBMP)
学習形式 オンライン動画とワークブック、各プログラム約2.5時間、1週間で取り組む設計
測定時点 開始前、無作為割り当て約1か月後、約3か月後
主な評価項目 K-10という質問紙で測る心理的苦痛
その他の評価項目 完璧主義、敵意、孤独感、拒絶への敏感さ、セルフ・コンパッション、学業上のレジリエンスなど

パイロット試験とは、より大きな本試験を行う前に、参加者が集まるか、プログラムを使ってもらえるか、測定を続けられるか、効果を検証する準備が整っているかを確かめる研究です。

今回も研究の第一目的は、プログラムの受け入れられやすさと試験実施の可能性を調べること。効果の検討は第二目的でした。そのため、70人の結果だけで最終的な有効性を判断する設計ではありません。

比較対象は「何もしない人」ではなかった

この研究の特徴の一つは、介入群を単なる待機リストの人と比較したわけではないことです。

比較群の参加者も、栄養、運動、睡眠などを扱う健康的な心身のためのオンラインプログラムを受けました。時間と提供方法も介入群と同じです。

こうすることで、「誰かからプログラムを提供された」「動画を見て自分の生活を考えた」という共通の体験だけでは説明しにくい差を調べようとしています。ただし、比較群のプログラム自体も有用な内容を含むため、結果の解釈ではその点も考慮する必要があります。

「意図的な不完全さ」プログラムの中身は?

介入群が受けたのは、Intentional Imperfection Program(IIP)というオンライン学習プログラムです。日本語にすれば「意図的な不完全さのプログラム」に近い名前です。

名称は印象的ですが、研究で実施されたのは、わざとミスをすることを参加者に強制する実験ではありません。完璧主義と対人関係の仕組みを学び、感情との付き合い方や他者とのつながりを考える、5つの学習モジュールからなるプログラムです。[1]

モジュール 内容
1. 完璧主義について学ぶ 完璧主義の特徴と、人間関係・心理的苦痛との結びつきを理解する
2. 対人過敏への対処 他人からの評価や拒絶に敏感になる場面への対応を学ぶ
3. 対人的な敵意への対処 怒りや批判的な反応など、人との摩擦につながる反応を考える
4. 社会的つながりの改善 人との関係を保ち、孤立を減らすための考え方に触れる
5. 振り返り 学んだ内容を整理する

動画とワークブックを使って自分で進める形式で、専門家が各参加者に個別指導を行う設計ではありません。内容にはマインドフルネスやセルフ・コンパッションに関連する方法も含まれていました。

短時間でアクセスできることは、このプログラムの特徴です。しかし、短いことがそのまま学びやすさにつながるかは、実際の参加率を見る必要があります。

結果1:プログラムには満足していたが、完了率は低かった

まず、研究の中心目的だった「利用しやすさ」の結果を見ましょう。

70人のうち、割り当てられたプログラムに一度でもログインした人は60人(85.71%)でした。内訳はIIP群31人、比較群29人です。[1]

ところが、学習活動の平均完了率はIIP群36.23%で、比較群は49.43%でした。両群の差は統計的に有意ではありませんでした(p=0.108)。

参加者がプログラムのページを開いたことと、内容を最後まで学習したことは違います。利用を開始するハードルと、続けるハードルを別々に考える必要があります。

参加者の満足度はどうだった?

オンライン介入の満足度を測る質問紙CSQ-Iでは、IIP群の平均は24.47点、比較群は23.00点でした。こちらも有意差はありません(p=0.349)。

IIP群のフィードバック回答者では、77.8%が、学んだ概念は自身の完璧主義の経験によく当てはまると回答しました。ウェブサイトの操作が容易だと答えた人も94.5%いました。

一方で、次の回答も得られています。

  • 66.7%:プログラムは少し、あるいはかなり長すぎると感じた。
  • 55.56%:個別のガイダンスがあるとよいと答えた。
  • 38.9%:完了の妨げになることがあったと答えた。
  • 50.0%:活動が完璧主義への対処に役立った程度は「少し」から「ある程度」だと評価した。

これらはフィードバックに回答した人の結果です。参加者全員の評価と読み替えることはできません。

「内容に納得できる」と「最後まで続けられる」は別の問題だと分かります。

結果2:1か月後の追跡には46人、3か月後には34人が回答した

研究結果を読むうえで見落とせないのが、追跡時点での回答人数です。[1]

測定時点 回答者数 当初70人に対する割合
介入開始前 70人 100%
約1か月後 46人 65.71%
約3か月後 34人 48.57%

約1か月後の内訳はIIP群21人・比較群25人、約3か月後はIIP群19人・比較群15人です。

つまり、3か月後には約半数の参加者からしか追跡回答が得られていません。その後に回答しなかった人がどんな状態だったのかは、測定結果だけでは分かりません。

研究者は、得られたデータを線形混合モデルで分析しました。この方法は測定時点ごとの全データを使えますが、途中で回答をやめた人が多いことによる不確実さを消せるわけではありません。

結果3:完璧主義の一部の側面には、比較群より大きな改善が見られた

効果を調べる分析では、IIP群と比較群の時間に伴う変化の違いを検討しました。

研究者が報告した結果は、次のように分けられます。[1]

指標 比較群との差が確認された時点
他者志向的完璧主義 約1か月後と約3か月後の両方
社会規定的完璧主義 約1か月後(3か月後には維持されず)
自己志向的完璧主義 約3か月後
失敗への懸念 約1か月後(3か月後には維持されず)
個人的基準 約3か月後

特に他者志向的完璧主義は、1か月後と3か月後の両方で、IIP群に有利な群と時間の交互作用が認められました。

一方、すべての指標が同じ時期に改善したわけではありません。社会規定的完璧主義や失敗への懸念では、1か月後に確認された群間差が、3か月後には確認されませんでした。

また、「基準を超えるほどの臨床的に意味のある変化」を別の方法で調べた分析では、自己志向・他者志向・社会規定の3側面で1か月後の群間差が認められました(それぞれ p=0.037、0.038、0.013)。しかし、3か月後にはこれらの群間差は有意ではありませんでした。

ここでいう統計上の平均的な変化と、個人が臨床的に意味のある程度まで変わったかという判定は、別の指標です。両方の結果を見て判断する必要があります。

結果4:対人的な敵意・孤独感・セルフ・コンパッションにも変化があった

プログラムは完璧主義そのものだけでなく、人との関係や自分への向き合い方にも注目していました。

そのため、研究では対人的な敵意、孤独感、セルフ・コンパッションなども測定しています。結果は次のとおりです。[1]

  • 対人的な敵意:IIP群に有利な差が約1か月後に見られましたが、3か月後には維持されませんでした。
  • 孤独感:IIP群に有利な差が約3か月後に確認されました。1か月後には明確な差はありませんでした。
  • セルフ・コンパッション:IIP群に有利な差が約1か月後に見られましたが、3か月後には維持されませんでした。

孤独感については、ほかの指標より遅い時点で差が見られたことになります。ただし、それが学んだ内容の定着によるものか、人間関係の変化によるものかなど、詳しい仕組みまでこの試験が直接証明したわけではありません。

ここでのポイントは、プログラムが完璧主義の点数だけでなく、人との関わりに関連する指標にも作用する可能性が示されたことです。

結果5:主な評価項目「心理的苦痛」では明確な群間差がなかった

今回の研究で主要評価項目に設定されたのは、K-10という質問紙で測る心理的苦痛でした。[1]

K-10は、精神的につらい状態がどの程度あるかを測る質問紙です。研究開始時点の参加者の平均点は33.23点で、論文が用いた判定基準では重い心理的苦痛の範囲に当たります。

それだけに、心理的苦痛がどれほど改善するかは重要な問いでした。しかし、分析ではIIP群と比較群の変化の差について統計的に有意な結果は認められませんでした。

IIP群だけを見ると時間とともに得点が改善した分析もありましたが、「介入群で介入前より良くなった」ことと、「比較群より明確に良くなった」ことは違います。

この研究から言えるのは、完璧主義や対人関係に関するいくつかの指標で有望な結果が出た一方、心理的苦痛への有効性は確認されなかったということです。

また、拒絶への敏感さ、学業上のレジリエンス、マインドフルネスなど、その他の臨床的特徴でも、群と時間の有意な交互作用は確認されませんでした。

結果6:活動を多く終えた人ほど、変化が大きい項目もあった

研究者は探索的な分析として、IIPの活動をどれほど終えたかと、各指標の変化との関係も調べています。[1]

約1か月後の他者志向的完璧主義の変化については、活動完了割合との間に相関が認められました(r=0.46、p=0.035)。

これは、プログラムの取り組み具合と、その指標の変化が関連していたという結果です。

ただし、活動を多くこなしたことが改善を直接引き起こしたと、この相関だけから言えるわけではありません。もともと参加意欲が高い人ほど多く取り組んだ可能性なども考えられます。

だからこそ、研究者は内容を改善して継続しやすくしたうえで、より大きな試験を行う必要があると考えています。

短時間のオンラインプログラムに期待できる3つのメリット

ここからは、論文の結果を踏まえて、この形式のプログラムが持つ利点を整理します。研究で明確に実証された効果と、設計上のメリットは分けて考えましょう。

1. 一人で学べる形式なので、取りかかりやすい

オンライン動画とワークブックを使う形式なら、決まった場所に通う必要はありません。学ぶための時間も、今回のIIPでは約2.5時間という設計でした。

学業やアルバイトで忙しい大学生が利用することを考えると、アクセスのしやすさは重要です。ただし、アクセスしやすいことと最後まで完了できることは別だという点は、実測した完了率からも分かります。

2. 「失敗の不安」だけでなく人間関係を扱える

IIPでは、自分への厳しい評価に加えて、周囲からの評価への敏感さ、人に対する敵意、孤独感を扱いました。

その結果、対人的な敵意や孤独感にも群間差が見られたことから、完璧主義を人との関係も含めて理解することには検討する価値がありそうです。

3. セルフ・コンパッションを学習に取り入れられる

失敗したとき、自分にどんな言葉をかけるでしょうか。「こんなこともできないのか」と責める代わりに、問題点は確かめながらも、自分への態度を少し変えてみることはできるかもしれません。

今回の研究ではセルフ・コンパッションの得点に短期的な差が確認されました。長期的な維持までは示されていませんが、学習内容として組み込まれたことが特徴です。

3つの難しさ・デメリット:なぜ続かなかったのか

1. 短い設計でも、受講者には長く感じられる

約2.5時間という学習量であっても、フィードバック回答者の66.7%は長すぎると感じました。

完璧主義をテーマにする場合、課題を「きちんとこなさなければ」と思うこと自体が負担になるかもしれません。これは研究が検証した原因ではなく、今後考えられる解釈の一つです。

2. 自分に必要な内容が分かりにくいことがある

研究者は、モジュールの一部が自分には当てはまらないという参加者の声にも言及しています。[1]

他人の評価を恐れる人と、他人に厳しくなりやすい人とでは、最も役立つ学習内容が違うかもしれません。全員に同じ順番で同じ内容を提供する方法には、調整の余地がありそうです。

3. 一人で学ぶ形式では、途中で止まりやすい

参加者の半数以上が、個別のガイダンスがあるとよいと答えました。動画の内容を理解しても、自分の生活でどう使うかを一人で判断するのは難しい場合があります。

研究者も、将来のプログラムには個別化や参加を促す工夫が必要だと提案しています。

完璧主義との付き合い方:日常で考えたい6つの方法

以下は、IIPで扱われた考え方を参考にした日常のための提案例です。研究でこの6手順を個別に検証したわけではなく、臨床プログラムをそのまま再現するものでもありません。

方法1:自分の完璧主義がどこへ向いているかを考える

まず、「自分に厳しいのか」「他人に厳しいのか」「他人から厳しく求められていると感じるのか」を分けて考えてみます。

たとえば、提出物を何度も書き直すのは自己志向的な側面かもしれません。グループ活動で他人のミスが許せないのは、他者志向的な側面が関わるかもしれません。

何に困っているかが分かれば、見直す行動も具体的になります。

方法2:失敗した事実と、自分への評価を分ける

「レポートの提出が遅れた」は出来事です。一方、「だから自分には価値がない」は、その出来事についての評価です。

まずは、起きたことを具体的に整理します。必要な修正や謝罪があるなら対応しつつ、ひとつのミスから自分の全体を決めつけていないか確かめましょう。

方法3:相手の反応を、一つの意味に決めつけない

友人の返信が遅かったとき、「自分の発言が失礼だった」「嫌われた」と考えることはありませんか。

そんなときは、別の理由も考えてみます。相手が忙しい、体調が悪い、まだ返信内容を考えている、という可能性もあるでしょう。

これは相手の本心を断定する方法ではなく、解釈の幅を残す練習です。

方法4:他人に求める水準を具体的に伝える

グループで作業するとき、「どうしてこんなこともできないの」と責める代わりに、どの部分に修正が必要かを伝えます。

「この表の数字をもう一度確認してほしい」「締め切りまでに難しいところがあれば教えてほしい」など、相手が対応できる言葉にすると、摩擦を減らせる可能性があります。

方法5:自分に向ける言葉を少し穏やかにする

うまくいかないとき、自分の内側でどんな言葉が流れているかに気づいてみます。

「また失敗した。自分はだめだ」と考えていたら、「今回はうまくいかなかった。次の準備で変えられるところは何だろう」と言い換えてみる方法があります。

目指すのは問題を見なかったことにするのではなく、改善を考えられる状態を保つことです。

方法6:学習や行動を小さな単位に分ける

一度にすべての問題を直そうとせず、「今日は5分だけ振り返る」「次の会議で相手の意見を一つ尋ねる」など、具体的な行動にしてみます。

今回の試験では、短いプログラムであっても完了率が低いことが課題でした。続けやすい設計を考えるうえでは、小さな区切りや、その人に必要な内容を選ぶ方法が検討できます。

具体例:完璧にやろうとして、グループから距離を置いてしまった学生

ここからは研究の考え方を説明するための架空のストーリーです。実際の試験参加者の体験談ではありません。

大学生の美咲さんは、ゼミの発表資料を作るたびに疲れていました。

自分の担当ページに小さな表記のゆれを見つけると、夜遅くまで直し続けます。ほかのメンバーが資料を送ってくると、今度は見出しの位置や文章の長さが気になってしまいます。

「私がちゃんとやらなければ、先生に低く評価される」

そう考えるうちに、メンバーへの伝え方は厳しくなりました。友人からの返信が遅いと「嫌われたのかもしれない」と不安になり、話し合いにも参加しづらくなりました。

ある日、美咲さんは、自分の問題にはいくつか違う側面があるのではないかと考えました。

自分の資料を何度も書き直すのは、自分への厳しい基準。他人の資料まで細かく直したくなるのは、周囲への高い要求。先生や友人からの評価を恐れる気持ちもあります。

そこで、次の発表準備では一度に全部を変えず、「修正を伝えるときは、一番重要な点を一つだけ具体的に伝える」と決めました。

友人の返事が遅いと不安になったものの、すぐに理由を決めつけず、少し待つことにしました。資料に細かな修正点が残っていても、まずは予定どおり共有しました。

結果は完璧ではありません。それでも、以前より話し合いの時間を持てたことに気づきました。

この例で示したいのは、完璧主義をなくすかどうかだけでなく、周囲の人や自分自身にどう向き合うかを考えることです。

※この物語は理解のための創作であり、研究で確認された個人の改善や、治療効果を表すものではありません。

研究の限界:効果を判断する前に押さえたい5点

今回の結果を解釈するときは、研究者自身が挙げた制約が重要です。[1]

1. あくまでパイロット試験だった

研究の主目的は、プログラムを実施できるか、参加者に利用してもらえるかを確かめることでした。有効性を最終判断するための十分な検出力を備えた大規模試験ではありません。

2. 追跡回答者が少なかった

3か月後の回答率は48.57%。追跡できなかった人が多いと、残った回答者だけでは全体の傾向を正確に表せない可能性があります。

3. プログラムの活動完了率が低かった

IIPの平均完了率は36.23%でした。想定した学習内容に十分取り組まなかった参加者も含まれるため、プログラム本来の効果がどの程度だったのか判断しにくくなります。

4. 参加者の特徴が偏っていた

参加者の88.6%はシスジェンダー女性で、全員が同じ大学の心理学1年生でした。年齢、教育環境、性別などが異なる集団にも同じ結果が当てはまるかは不明です。

5. 自己報告の測定が中心で、有害な影響も収集していない

主要な結果は質問紙に基づきます。行動観察や他者評価、実際の成績などと組み合わせた評価があれば、別の角度から検証できるでしょう。

また、論文ではプログラム参加によって生じ得る害のデータを収集していないと明記されています。したがって、負担や有害事象について結論を出すことはできません。

次の研究では何が必要になる?

研究者は、より大規模な本試験の前に、参加者が利用しやすく継続しやすい形へプログラムを調整する必要があると述べています。[1]

特に検討されているのは、個人に合った内容を提示することと、追跡調査への参加を維持することです。

完璧主義が高い人でも、周囲からの評価への過敏さが中心の人と、他人への強い要求が中心の人では、困っている場面が異なるかもしれません。必要な部分を選びやすくすることで、受講の負担を減らせる可能性があります。

また、参加を促すリマインダーや調査への謝礼など、研究への参加継続を支える仕組みも挙げられています。これらは今後の改善案であって、今回の試験で有効性を検証した結果ではありません。

よくある質問

Q. 2.5時間のオンライン学習だけで完璧主義は治りますか?

この研究だけでは、そのようには判断できません。一部の完璧主義指標に対照群より大きな改善が見られましたが、研究は小規模なパイロット試験で、持続しなかった変化もありました。

Q. 心理的なつらさも改善しましたか?

IIP群で改善を示す経時的な分析はありましたが、主な評価項目である心理的苦痛について、比較群より明確な改善を示す群間差は確認されませんでした。

Q. 完璧主義のどの側面が変化しやすかったですか?

他者志向的完璧主義では、1か月後と3か月後の両方でIIP群に有利な群間差が見られました。ほかの側面では差が確認された時期が異なります。ただし、どの側面が一般に最も変わりやすいかを断定するには、より大きな研究が必要です。

Q. この研究のプログラムを一人で再現できますか?

論文には5つの学習モジュールの概要が掲載されていますが、記事中の説明だけで元のプログラム全体を再現できるわけではありません。心理的な苦痛が強い場合や生活に支障がある場合は、医療・心理の専門家に相談する方法もあります。

まとめ:短時間でも変化の可能性は見えた。ただし「続けられるか」が課題

2024年の研究では、完璧主義傾向の高い大学1年生70人を対象に、約2.5時間のオンライン学習プログラムを比較しました。

完璧主義の一部の側面、対人的な敵意、孤独感、セルフ・コンパッションでは、比較群より好ましい変化が確認されました。一方、心理的苦痛についての群間差は統計的に明確ではなく、学習活動の完了率と追跡回答率も低い結果でした。

今回の論文が示すのは、「短時間のプログラムで完璧主義に関係する特徴が変化する可能性」と、「利用しやすく、最後まで取り組みやすい形に改善する必要性」の両方です。

私たちの日常でも、完璧主義を一つの性格として片づけるのではなく、自分への厳しさ、相手への期待、周囲からの評価への不安を分けて考えることが、取り組むべき問題を整理する手がかりになるかもしれません。

参考文献

  1. Visvalingam, S., Matheson, A. C., Magson, N. R., & Norberg, M. M. (2024). Intentional Imperfection Program: A pilot randomised controlled trial to help university students manage perfectionism. Current Psychology, 43, 25629–25645. https://doi.org/10.1007/s12144-024-06238-4

原著論文(全文公開):https://link.springer.com/article/10.1007/s12144-024-06238-4

※本記事は学術論文の内容を紹介する一般情報です。個別の診断や治療の代わりになるものではありません。