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If–Thenプランは目標達成に役立つ?642件のメタ分析で分かった計画の立て方

「明日から勉強しよう」「来週は運動を増やそう」。そう決めたのに、気づけばいつもどおりの一日が終わっていた。そんな経験はありませんか?

目標を立てたときは、やる気があったはずです。でも、仕事が終わって疲れていたり、スマートフォンを見始めたりすると、予定していた行動を思い出せないこともあります。では、行動する気持ちを実際の行動につなげるには、どんな計画が役立つのでしょうか。

この問題を調べたのが、米国のノースカロライナ大学などに所属するPaschal Sheeran、Olivia Listrom、Peter M. Gollwitzerの3人です。研究チームは、目標達成のための「実行意図(implementation intentions)」を調べた研究をまとめ、2024年3月に『European Review of Social Psychology』でオンライン公開しました。雑誌の刊行情報では2025年の第36巻第1号、162~194ページに収録されています。

分析対象は294文献に含まれる642件の検証。健康行動、勉強、記憶、集中、感情の調整など、多様な領域で計画の効果を比較しています。

研究から見えてきたポイントは、予定を漠然と書くだけでなく、「もし○○が起きたら、△△する」と状況と行動をセットで決めることでした。ただし、効果の大きさには研究間で差があり、出版バイアスを考慮すると推定値が小さくなるという重要な結果も出ています。

今回は、実験の数値を確認しながら、If–Thenプランの意味、実践方法、うまく使う際の注意点まで順番に紹介します。

If–Thenプランとは?「もし○○なら、△△する」と決める計画

If–Thenプランは、日本語では「実行意図(implementation intention)」と呼ばれる計画の立て方です。心理学者Peter M. Gollwitzerらが発展させてきた考え方で、行動するきっかけとなる状況と、そのとき実行する反応を、あらかじめ結びつけます。

基本形はとてもシンプルです。

もし【ある状況】になったら、【決めた行動】をする。

例えば、次のような計画です。

  • 「朝のコーヒーを入れたら、英単語を5分復習する」
  • 「仕事のパソコンを閉じたら、運動着を用意する」
  • 「夕食を片づけたら、明日の予定を1分確認する」

ここでの「If」は、必ずしも問題が起きたときだけを意味しません。時間、場所、ある作業の終了、感情、誘惑など、行動する合図として認識できる状況を指定できます。

一方の「Then」には、実際に取る行動を入れます。「頑張る」「気をつける」といった抽象的な決意より、その場で実行できる反応が分かる表現を選びます。

目標意図と実行意図はどう違う?

If–Thenプランを理解するときに重要なのが、目標意図と実行意図の区別です。

目標意図は、「何を達成したいか」という方向を決めるもの。実行意図は、「そのための行動を、どんな状況で始めるか」を定めるものです。

比較 目標意図 実行意図(If–Thenプラン)
注目すること 達成したい結果 行動のきっかけと反応
表現例 「本を読む習慣をつけたい」 「通勤電車に座ったら、本を2ページ読む」
役割 取り組む方向を定める 状況に応じて行動を始めやすくする
考える問い 「何をしたい?」 「いつ何が起きたら、何をする?」

例えば、健康のために運動したいと考えている人がいても、平日のどの場面で体を動かすかを決めていなければ、実行の機会を逃すかもしれません。

そこで「帰宅して玄関で靴を脱いだら、ストレッチマットを広げる」と決めておく。目標が日常生活の具体的な場面に結びつくところが、実行意図の特徴です。

なぜ計画の形が重要なのか?心理学的な仕組み

論文では、実行意図が働く仕組みとして、状況を認識しやすくなることと状況と反応の結びつきが強くなることを整理しています。

「帰宅したら」と決めた人は、帰宅という場面を行動の合図として捉えやすくなります。そして、合図が現れたときに何をするかを決めてあるため、毎回その場で最初から判断する必要が減る可能性があります。

研究者たちは、こうした働きが行動の開始を比較的自動的にし、意識的な意思決定の負担を軽くすると考えています。

ただし、このメタ分析で報告された効果量は、計画を立てた群と対照群の結果の差を統合したものです。すべての参加者の頭の中で同じ心理的過程が直接測定されたわけではありません。 仕組みについては、関連する実験研究も踏まえた理論的な説明として受け取るのが適切です。

642件をまとめた研究は、どのように行われた?

今回の論文は、一つの新しい実験で642人を調べた研究ではありません。過去に行われた研究を集め、複数の実験結果を統計的に統合したメタ分析です。

研究チームはWeb of ScienceやPsycINFOなどを使い、1994年1月から2019年9月までに発表された実行意図関連の文献を検索しました。その後、参考文献の追跡や過去のレビューの確認も行っています。

文献検索で見つかった4,845件などを選別し、最終的には294文献、642件の検証を分析対象にしました。一つの文献に複数の研究や計画条件が含まれている場合があるため、「文献数」と「検証数」は一致しません。

対象にしたのは、計画を立てる介入と比較対象の条件を設け、行動・感情・認知などの結果を測定した実験研究です。単なる相関調査は除外しました。また、複数の方法を同時に使い、実行意図だけの寄与を切り分けられない介入も原則として除外しています。

比較には主にCohenのd(標準化平均差)が使われました。値が正で大きいほど、今回の分析では計画を用いた群の結果が比較群より望ましい方向にあることを表します。ただし、dは「達成率が何%増えた」という数字ではありません。

なお、このレビューは事前登録されておらず、著者らは、分類項目を文献の内容から帰納的に作ったためだと説明しています。検索も2019年9月までであり、2024~2025年に発表された後続研究をすべて含むわけではありません。

研究結果①:計画には全体として効果が見られた

642件の検証をまとめたサンプル数で重みづけした平均効果量はd=0.36、95%信頼区間は0.33~0.40でした。

これは、実行意図を取り入れた群で、平均すると望ましい方向の差が見られたことを意味します。しかし、d=0.36をそのまま「36%改善」と読み替えることはできません。

研究チームは、扱った結果の種類ごとにも効果量を調べています。

結果の領域 検証数 効果量 d 95%信頼区間
行動の変化 301 0.27 0.23~0.31
認知課題の成績 204 0.47 0.40~0.54
感情の調整 26 0.66 0.50~0.81
社会的判断 20 0.52 0.41~0.62

出典:Sheeranらの論文、Table 1。各領域の検証数であり、642件を4種類に単純に分割した参加者数ではありません。

例えば、行動の変化には、食生活、運動、受診や服薬などが含まれます。認知課題には、注意、記憶、反応の正確さや速さなどが含まれています。

一方、すべての分野で同じ結果だったわけではありません。ワクチン接種や投票行動については、この分析で統計的に明確な効果が確認されませんでした。運動についても、64件の検証を統合した効果量はd=0.14で、比較的小さなものでした。

「計画を立てれば何でも大きく変わる」という結果ではなく、対象や状況によって効果に差があるというのが、論文から読み取れることです。

研究結果②:If–Then形式は、予定表形式より効果が大きかった

今回の論文で特に実践と結びつくのが、計画の形式についての分析です。

研究チームは、状況と行動を条件つきで結びつける「If–Then形式」と、「いつ・どこで・何をするか」を並べる「スケジュール形式」を区別しました。

計画の形式 検証数 平均効果量 d
If–Then形式(条件と行動を結ぶ) 373 0.43
スケジュール形式(予定を記述する) 269 0.29

出典:同論文、Table 3。形式による差は統計的に有意でした(Q(1)=20.81、p<.001)。

たとえば、次の2つを比べてみましょう。

予定表形式:「月曜日の18時に運動する」

If–Then形式:「月曜日の仕事が18時に終わったら、運動着に着替える」

後者は、行動のきっかけとそのとき行う反応が、より直接的に結びついています。日常生活では、時間だけでなく、朝食後、帰宅時、会議が終わった直後など、普段から起こる場面を使うこともできます。

ただし、ここでの0.43と0.29は、異なる研究群を分類して比べた値です。すべての参加者を同じ条件で直接比較した一つの実験結果ではないため、形式以外の研究上の違いが影響している可能性もあります。

研究結果③:計画を一度でもリハーサルすると、効果が大きかった

計画を作る際、その内容を頭の中で確認したり、繰り返し口にしたりすることも検討されました。

リハーサルをしなかった条件の平均効果量はd=0.33、リハーサルを含む条件ではd=0.45でした。違いは統計的に有意でした。

一方、リハーサルを1回にするか、2回、3回にするかによる明確な差は確認されていません。

例えば「夕食後に食器を下げたら、10分だけ読書する」と決めたなら、いつその場面が来て、何をするのかを一度思い浮かべてみる。そうすれば、計画の合図と行動が結びつきやすくなるかもしれません。

ただし、これは研究群間の比較に基づく結果です。「何回も唱えれば比例して効果が上がる」とまで言える数字ではありません。

研究結果④:もともとの目標への意欲も関係した

If–Thenプランは、行動するタイミングを助ける方法ですが、何を目指したいかという動機づけとも関係しています。

論文では、目標への意図が強い、活性化している、あるいは自分の価値観と一致している条件のほうが、効果が大きいと報告しています。動機づけの強弱を比較できた8件では、効果量の差が大きく、強い側でd=0.79という推定値が示されました。

また、身体活動に関する追加分析では、もともと運動する意図が強い研究群でd=0.31、弱い研究群ではほぼゼロという違いが見られました。

この結果から考えられるのは、「どうやって実行するか」の前に、まず「自分は本当にそれをしたいのか」を確認する必要がある、ということです。

もっとも、動機づけの強弱について直接比較できた研究数は少なく、このd=0.79を一般的な目標すべてに当てはめることはできません。

研究結果⑤:自己申告だけでなく、客観的な測定でも差が見られた

行動の変化を調べる研究では、参加者が「できました」と答える自己申告だけだと、思い出し間違いや、よく見られたい気持ちが結果に影響する可能性があります。

今回のレビューでは、自己申告で測った結果の平均効果量はd=0.28、機器などによる客観的な測定ではd=0.43でした。どちらでも統計的に明確な効果が認められています。

また、追跡期間による分析では、介入から1週間未満の群でd=0.48、6か月以上の群でd=0.51と報告されました。ただし、6か月以上の追跡に分類された検証は12件です。

「誰にでも半年後まで同じ効果が続く」とは言えませんが、一定期間が過ぎても効果が見られる研究があったことは注目に値します。

出版バイアスを考えると、効果量はどれくらい変わる?

ここは今回のメタ分析を読むうえで欠かせない部分です。

研究チームは、効果が大きい研究ほど報告・出版されやすく、効果が小さい研究や差が出なかった研究が表に出にくくなる出版バイアスを検討しました。

分析方法によって、推定される効果量は次のように異なりました。

推定方法 効果量 d 95%信頼区間
642件のサンプル加重平均 0.36 0.33~0.40
Trim-and-fill法による調整 0.35 0.31~0.38
頑健ベイズ・メタ分析(RoBMA) 0.15 0.08~0.22

この違いは小さくありません。著者らはRoBMAによって、計画の効果を支持する強い統計的証拠が得られた一方、実際の効果の大きさは小さく、研究間のばらつきも大きいと説明しています。

例えば、試験の勉強を始めるきっかけづくりとしてIf–Thenプランが役立つ可能性はあります。でも、これだけで勉強時間が大幅に伸びると見込むのは適切ではありません。

役立つ可能性があることと、どれほど大きく役立つかは、分けて考える必要があります。

計画の「If」には何を入れる?研究で整理された合図

研究者たちは、これまでのIf–Thenプランで使われた合図を分類しました。代表的なものは次のとおりです。

合図の種類 例 日常向けの考え方
時間・場所 朝8時、職場の席 決まった時間や場所を行動の合図にする
作業の切り替わり 会議の終了、次の課題の開始 区切りが来たら次の行動へ進む
特定の出来事 電話が鳴る、通知が届く 起こった出来事に反応を結びつける
感情・身体感覚 焦りを感じる、空腹を感じる 内面の変化を合図として扱う
思考 「後でいいや」と考える 特定の考えが浮かんだら決めた行動を取る

これは論文の分類を日常用に言い換えたものです。研究では、外から分かる出来事だけでなく、頭の中に浮かぶ考えや感情も計画の合図として使われていました。

例えば先延ばししやすい仕事なら、「やる気がなくなったと感じたら、とりあえず資料の最初の見出しを確認する」といった計画が考えられます。

なお、合図の種類ごとに分析すると、研究数が少ない項目やばらつきが大きい項目もあります。最も効果的な合図が一つに決まったわけではありません。

計画の「Then」には何を入れる?行動以外の選択肢もある

If–Thenプランの後半は「何かをする」という行動だけではありません。論文では、行動の開始・抑制に加えて、認知的な手順や自分への声かけなども分類しました。

例えば、次のような形です。

  • 行動を始める:「仕事が終わったら、スポーツシューズを履く」
  • 別の行動に切り替える:「甘いものを間食したくなったら、まず用意したお茶を飲む」
  • 反応を保留する:「衝動的に返信したくなったら、一度文章を読み直す」
  • 注意を向け直す:「集中が途切れたと気づいたら、今取り組む問題の条件を読み直す」
  • 自分に短く声をかける:「発表前に緊張したら、『落ち着いて一文ずつ話そう』と伝える」
  • 目標を思い出す:「選択に迷ったら、最初に決めた目的を確認する」

上の文例は論文の分類を参考に作った応用例であり、一つ一つがこのメタ分析で個別に検証された文章という意味ではありません。

重要なのは、状況が起きたときに、何をすればよいのかが具体的であることです。

If–Thenプランの4つのメリットとは?

1. 行動開始のタイミングを決めやすい

「時間ができたらやる」と考えていると、いつが開始の場面なのか曖昧になりがちです。合図を決めておくことで、始める機会を見つけやすくなると考えられます。

2. その場で考える負担を減らせる

帰宅直後など、疲れている場面では、次に何をするか決め直すだけでも面倒に感じることがあります。実行意図では、状況に対する反応を事前に選んでおきます。

3. 妨げとなる状況にも備えられる

誘惑や気分の変化が起きたときの反応を先に決めることで、行動を中断しにくくする工夫ができます。例えば「通知が気になったら、今の段落を終えてから確認する」といった形です。

4. 行動だけでなく、集中や感情の調整にも使える

今回のメタ分析には、注意、記憶、感情の調整を扱った実験も含まれています。使い道が日課や運動だけに限られないことは、この研究の特徴です。

以上は研究結果から考えられる利点です。個人の状況によって、実際に役立つ程度は異なります。

If–Thenプランの3つの難しさ・デメリットとは?

1. 自分の生活に合わない合図では使いにくい

「毎朝7時に起きたら運動する」と決めても、勤務時間が日によって違う人には、その合図が安定して現れないかもしれません。生活の中で自然に発生する場面を探す必要があります。

2. 決めた反応が大きすぎると実行しにくい

「帰宅したら毎日2時間勉強する」と決めると、疲れている日には始めづらいでしょう。まず「参考書を開いて一問だけ解く」など、始めやすい反応にすることが考えられます。

3. もともとの目標に納得していないと効果を得にくい場合がある

実行意図は、目標への意欲が高い条件で効果が大きくなると報告されました。そもそも本人が望んでいない目標では、計画だけを詳しくしても十分に役立たない可能性があります。

これらは、メタ分析の結果を日常で利用する際に考えられる課題です。特定のデメリットが全員に発生するという実験結果ではありません。

If–Thenプランを作る具体的な6つの方法

ここからは、論文で示された知見を参考にした日常での使い方の提案です。研究で検証された計画文をそのまま配布するものではありません。

方法1:まず、達成したいことを一つ決める

「勉強を続けたい」「健康のために歩く時間を増やしたい」など、自分にとって意味のある目標を選びます。

方法2:行動する場面を一つ選ぶ

毎日起こりやすい出来事を探します。起床、朝食の終了、仕事の終わり、帰宅、入浴前など、生活の中のはっきりした区切りが候補です。

方法3:Thenに書く行動を小さく具体化する

「頑張る」ではなく、「本を開く」「靴を履く」「資料の1ページ目を読む」など、状況が起きた直後にできることを決めます。

方法4:一文でIfとThenを結ぶ

「もし【合図】が起きたら、【最初の行動】をする」という文章にまとめます。複雑な条件を重ねず、すぐに思い出せる程度の長さが使いやすいでしょう。

方法5:その場面を一度思い浮かべる

例えば「昼食が終わったら、外を5分歩く」と決めたなら、実際に昼食を終える場面と歩き始める動作を一度確認します。論文では、リハーサルを含む計画群のほうが平均効果量が大きいという結果がありました。

方法6:試した後に、合図と行動を調整する

実際に合図が現れなかったり、行動が難しかったりしたら、別の場面やもっと小さな行動を選びます。できなかった日を責めるより、計画が生活に合っていたかを確認することが役立ちます。

If–Thenプランの具体例:資格の勉強が続かなかった会社員

ここからは考え方を理解するための架空のストーリーです。研究参加者の体験談ではありません。

会社員の田中さんは、資格試験に向けて勉強しようと決めていました。日曜日には毎回「来週こそ平日も頑張ろう」と思います。しかし、仕事が忙しい日は帰宅後にスマートフォンを見ているうちに夜が更け、勉強できないまま眠っていました。

そこで田中さんは、目標を「毎日1時間勉強する」から、まず「勉強を始める場面を作る」に変えました。

自分の一日を振り返ると、夕食後に食器をキッチンへ運ぶことだけは、ほぼ毎日同じように行っています。その行動を合図にして、次の計画を立てました。

「もし夕食の食器をキッチンに置いたら、机に座って問題集を一問だけ解く」

そして夕食を終える場面を一度頭の中で思い浮かべました。実際の夜、食器を運んだときにその計画を思い出し、問題集を開きました。

一問を解いて、その日は終わりにした日もありました。余裕がある日は、そのまま何問か続けました。数日後、残業で帰宅が遅くなり、計画どおりにできなかった日もありました。

そこで田中さんは、勤務が遅い日に備えて別の合図を考えました。「昼休みに席へ戻ったら、英単語を一つ確認する」。自分の生活にある機会を探し直したのです。

この話のポイントは、特別な根性が生まれたことではありません。目標を思い出す場面と、その場で始める行動が明確になったことです。

※このエピソードは説明のための創作であり、研究で確認された参加者の行動変化や効果量を表すものではありません。

実践するときの注意点と対策

予定を書くこととIf–Thenを作ることを区別する

カレンダーに「19時:読書」と書くことも予定管理には役立ちます。ただ、今回の研究で効果量が大きかった形式は、「19時になったら、読書用の本を開く」のように、状況と反応を条件つきで結びつける方法でした。

書き残すことの効果は慎重に解釈する

メタ分析では、計画を記録した研究群の平均効果量がd=0.31、記録しなかった研究群がd=0.44でした。しかし、これは異なる研究間の比較です。個人が予定をメモしてはいけない、という結論を直接検証した実験ではありません。

自分にとって必要な予定管理を維持しつつ、行動の合図を具体化するという使い方が考えられます。

リハーサルを過度に増やさない

少なくとも一度リハーサルした研究群で効果量が大きくなりましたが、回数を増やすほど上乗せの効果が明確になるわけではありませんでした。まず一回確認して、実行場面で思い出せるか試すのが現実的です。

計画が使えない日は調整する

仕事や家庭の事情で日課が変わると、決めた合図が現れないこともあります。If–Thenプランは、その日の状況に合わせて書き直すこともできます。

今回のメタ分析の限界は?

研究規模が大きい一方で、著者らは複数の制約を挙げています。

第一に、出版バイアスの影響です。 大きな効果を示した研究が集まりやすい可能性があり、補正方法によって平均効果量は0.36から0.15へ変わりました。

第二に、研究間のばらつきです。 対象者の年齢、目的、課題、介入方法、追跡期間が違います。効果を一つの数字だけで代表させると、条件による違いが見えなくなります。

第三に、条件間の比較方法です。 If–Then形式とスケジュール形式、リハーサルの有無などは、多くの場合、別々の研究群を比べた結果です。形式だけを操作した直接比較実験と同じ強さの因果的結論にはなりません。

第四に、研究数が少ない分類もあります。 一部の感情、合図、反応の種類は数件しか検証されておらず、推定値が不安定になる可能性があります。

第五に、検索対象の時期です。 主な文献検索は2019年9月までで、レビュー自体は事前登録されていません。また、人種・民族、社会経済的背景、教育水準については研究間で情報を十分に統合できませんでした。

そのため、実践するときは「自分の行動に合うか」を見ながら試し、結果が出なければ計画を調整するという姿勢が適切です。

If–Thenプランについてよくある質問

Q. If–Thenプランは先延ばし対策になりますか?

行動を始める機会を指定できるため、先延ばししやすい場面を整理する方法として使えます。ただし、今回の論文が示す効果量はさまざまな行動・認知・感情の結果を含んでおり、先延ばしだけの改善率ではありません。

Q. 目標が大きい場合は、計画をたくさん作ったほうがよいですか?

今回の分析では、計画を1~2個作った群と7~8個作った群の平均効果に大きな違いはありませんでした。目標の妨げになる場面を見つけ、必要な計画を作ることが優先されるでしょう。

Q. 「もし不安になったら」という感情を合図にしてもよいですか?

論文では、感情や考えを合図にした計画も分類されています。ただし、強い心理的な苦痛を伴う状況では、自分に合った対処方法を慎重に選ぶ必要があります。

Q. If–Thenプランだけで習慣は完成しますか?

この研究は実行意図による行動・認知・感情への介入効果を調べたもので、すべての行動が自動的な習慣として定着するまでの期間を測定したものではありません。計画によって始めやすくなることと、長期的に習慣が形成されることは分けて考えられます。

まとめ:「やろう」を「そのとき、これをする」に変える

目標を立てた後に必要なのは、やる気を高め続けることだけではありません。日常のどの場面で、何をするのかを決めておくことも役立ちます。

Sheeranらのメタ分析では、294文献・642件の検証から、実行意図が行動・認知・感情の調整に有益な方向の差を生むことが確認されました。特に、状況と行動を結びつけるIf–Then形式は、単に予定を記述する形式より平均効果量が大きいという結果でした。

一方、出版バイアスを考慮した分析では平均効果量がd=0.15と小さく見積もられています。万能な方法としてではなく、実行しやすい計画を作るための一つの道具として利用するのがよさそうです。

今日取り組みたいことが一つあるなら、まず次の一文を完成させてみてください。

「もし____になったら、私は____をする」

その「もし」が実際に起こる場面か、そして「すること」がその場で始められる大きさか。そこから計画を考えることができます。

参考資料・研究

  1. Sheeran, P., Listrom, O., & Gollwitzer, P. M. (2025). The when and how of planning: Meta-analysis of the scope and components of implementation intentions in 642 tests. European Review of Social Psychology, 36(1), 162–194. https://doi.org/10.1080/10463283.2024.2334563 (オンライン公開:2024年3月27日)
  2. Taylor & Francis掲載ページ・要旨。論文の要旨、著者、掲載情報、データ公開先を確認できる。
  3. 著者公開版PDF(掲載版と組版等が異なる可能性あり)。研究方法、Table 1~4、出版バイアス補正、限界の記述を確認した。
  4. Open Science Framework:研究データ・補足資料。原著論文が公開先として案内している資料。
  5. Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2025). Psychology of Planning. Annual Review of Psychology, 76, 303–328. 実行意図を含む計画研究の背景を整理した総説。

※日常での文例や架空のストーリーは、論文の知見をもとに作成した説明用の例です。個別の研究参加者の発言・行動として扱ったものではありません。