今回は、中途覚醒についてお話しします。
「夜中に目が覚めても、その後すぐ眠れるなら問題ない」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
実は、夜中に目が覚めること自体は、ほとんどの人にとって普通のことです。
多くの人は、一晩に2〜3回ほど目を覚ましています。ただ、そのたびにすぐ眠り直しているため、記憶に残らず、「朝までぐっすり眠れた」と感じていることが多いのです。
では、なぜ多くの人は夜中に目を覚ますのでしょうか。
私たちの睡眠は、浅い睡眠と深い睡眠を繰り返しています。そして、浅い睡眠のタイミングでは、目が覚めやすくなります。
そのきっかけは、体の中の刺激だったり、寝室の音や温度など外の環境だったり、人それぞれです。
このように、浅い睡眠のときは自然と目が覚めやすい状態になります。そのため、多くの人は記憶には残っていなくても、一度目を覚まし、そのまますぐ眠り直しているのです。
睡眠は、およそ100分ごとの周期を繰り返しています。
そのため、そのタイミングごとに目が覚める可能性があります。
では、「夜中に目が覚めても気にしなければ、また眠れる」というのはなぜなのでしょうか。
ここで関係するのが、「睡眠慣性(すいみんかんせい)」です。
簡単に言うと、寝ぼけた状態のことです。
例えば、朝目が覚めたとき、「まだ眠いな」と思って、そのまま二度寝をしてしまった経験はありませんか。
目は覚めても、まだ睡眠の感覚が残っているため、そのまま自然と眠りに戻ることがあります。
特に、「起きなきゃ」と頑張ったり、感情が大きく動いたりしなければ、そのまま眠ってしまうことは珍しくありません。
ところが、夜中に目が覚めたときに時計を見て、「もうこんな時間だ」「また眠れるかな」と考え始めると、プレッシャーや焦りが生まれ、眠りにくくなってしまいます。
そのため、基本的には、夜中に目が覚めても気にしないことが大切です。
もちろん、すべての人に当てはまるわけではありませんが、多くの人は気にせず目を閉じているだけで、そのまま自然に眠ってしまいます。
「リラックスしよう」と意識する必要もなく、そのまま眠ってしまうことのほうが多いでしょう。
とはいえ、
「気にしないって言われても、それができないんだよ」
と思う方もいらっしゃると思います。
これは、とても自然なことです。
「気にしなくてもいい」と言われただけで、本当に気にしなくなれる人は、それほど多くありません。
瞑想やマインドフルネスを続けていて、「気にしない力」が身についている人ならできるかもしれませんが、普通は違います。
むしろ、「気にしないように」と思えば思うほど、余計に気になってしまうものです。
例えば、
「白クマのことを絶対に考えないでください」
と言われたら、どうでしょうか。
おそらく、多くの人は逆に白クマを思い浮かべてしまうはずです。
「白クマを考えちゃいけない」
「イメージしちゃいけない」
そう思えば思うほど、逆に白クマのことが頭に浮かんできます。
これが有名な「白クマ実験」です。
つまり、夜中に目が覚めたときも、
「時計を見ちゃいけない」
「中途覚醒を気にしちゃいけない」
と思えば思うほど、時計が気になったり、中途覚醒そのものが気になったりして、かえって目が冴えてしまうことがあります。
ですから、もし「気にしなくていい」と言われて、本当に気にせず眠れるのであれば、それが一番です。ただ、「どうしても気になってしまう」という方は、これからご紹介する方法を試してみてください。
今回は、「中途覚醒の人が眠るための方法5選」をご紹介します。
深呼吸や筋弛緩法は、すでにさまざまなところで紹介されていると思いますので、今回はそれらを除いた5つの方法をお話ししていきます。
中途覚醒の人が眠るための方法①「スローカウントダウン」
1つ目は、「スローカウントダウン」という方法です。
これは、数字をゆっくり数えていくことで、不安や焦り、「眠れない」という意識から自然と離れていく、マインドフルネスに近い方法です。
やり方はとても簡単です。
30から、ゆっくりとカウントダウンしていきます。
実際にやってみると分かりやすいのですが、
「30、29、28…」
というように、ゆっくり数えていくと、意識が数字に向くため、不安や考えごとをしにくくなります。
その結果、気づいたらそのまま眠ってしまうことも少なくありません。
中途覚醒の人が眠るための方法②「ライトハンド」
2つ目の方法は、「ライトハンド法」です。
これは、先ほど紹介した「ゆっくりカウントダウン」と同じように、集中力を利用して眠りへ導く方法です。本来は右手を軽く上げる方法ですが、夜中に目が覚めたときは、右手はベッドにつけたままで構いません。
まず、目を閉じたまま右手に意識を向けます。
最初に、手全体の形をイメージします。
手のひらは軽く開いているのか、少し曲がっているのか、それとも力が入っているのかを感じ取ります。
次に、指へ意識を移します。
例えば、人差し指の第一関節がどのくらい曲がっているかを感じてみましょう。
さらに、人差し指の指先へ意識を向けます。
指先の温度や、空気が触れている感覚などをできるだけ細かく感じ取っていきます。
ここまで集中できると、自然と他のことを考えにくくなります。
夜中に目が覚めたときは、このように右手や指先へ意識を集中させてみてください。
そうしているうちに眠気が戻り、気づけばそのまま眠っていることが多いと思います。
中途覚醒の人が眠るための方法③「無呼吸症候群の対策」
3つ目は、中途覚醒の原因そのものに対する対策です。
その一つが、「睡眠時無呼吸症候群の対策」です。
名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、睡眠時無呼吸症候群は、中途覚醒の原因になりやすい病気です。
眠っている間に呼吸が止まったり、息苦しくなったりするため、そのたびに目が覚めやすくなります。
ただ、この病気には誤解されやすい点があります。
それは、「太っている人しかならない」と思われていることです。
実際には、痩せている人でも睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
僕が34~35歳のうつ病と不眠症の両方があった頃を振り返ると、睡眠時無呼吸症候群だった可能性があると感じています。当時は、眠っている途中で突然息苦しくなり、息ができなくなったような感覚で目が覚めることが何度もありました。
しかし、僕は痩せていたため、「まさか無呼吸症候群だろう」とはまったく思っていませんでした。
「最近疲れているから、いびきをかいているのかな」
「たまたま息が止まったような気がしただけかな」
その程度に考えていたのです。
睡眠時無呼吸症候群は、体重だけでなく、骨格や体のつくりなどの遺伝的な要因でも起こります。
例えば、僕は骨格がやや小さいため、少しの肉付きでも気道が狭くなり、無呼吸症候群が起こりやすかったのではないかと考えています。
また、この病気は本人が気づいていないことも少なくありません。
もし、ご家族や一緒に住んでいる方がいる場合は、
「寝ているときに呼吸が止まっていないか見てもらえない?」
とお願いしてみるのもおすすめです。
もし中途覚醒の原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合は、その治療をすることで睡眠が大きく改善する可能性があります。
そのため、一度確認してみることをおすすめします。
「自分は太っていないから大丈夫」
と思っている方も、一度はチェックしてみる価値があります。
そして、睡眠時無呼吸症候群は、睡眠薬を使う際にも関係してきます。
睡眠薬には、脳に作用して睡眠を促すものもあれば、体をリラックスさせることで眠りやすくするものもあります。
特に、体をリラックスさせるタイプの睡眠薬は、筋肉がゆるむ(弛緩する)ことで気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させることがあります。
そのため、いびきが強い方や睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は、自己判断せず、医師に相談したうえで睡眠薬を使用することが大切です。
中途覚醒の人が眠るための方法④「睡眠と運動の関係を理解する」
「運動をするとよく眠れる」という方もいれば、「運動をしてもなかなか眠れない」という方もいると思います。
実は、運動が睡眠にどう影響するかは、人によって異なります。
運動による心地よい疲労感で、そのまま眠りやすくなる方もいます。
一方で、疲労そのものがストレスとなり、かえって眠りにくくなってしまう方もいます。
また、無理をして運動しすぎると、関節を痛めたり、強い筋肉痛が出たりすることがあります。
こうした痛みが刺激となって、夜中に目が覚めやすくなり、中途覚醒につながることもあります。
では、それでもなぜウォーキングなどの運動が勧められるのでしょうか。
それは、運動は「その日の疲れで眠るため」だけではないからです。
運動を継続することで、体そのものが健康になっていきます。
筋肉がつき、余分な脂肪が減ることで体力が向上し、体の状態が整いやすくなります。
その結果、体内の炎症が抑えられたり、睡眠の質が高まったりすることで、夜中に目が覚めにくくなる効果が期待できます。もし、運動をするとよく眠れるのであれば、そのまま続けていただいて大丈夫です。
一方で、「運動をしても眠れない」という方は、まずは運動を習慣化することを意識してみてください。
無理をして追い込むのではなく、「少し心地よく疲れたな」と感じる程度の運動を続けることがおすすめです。
中途覚醒の人が眠るための方法⑤「睡眠環境の3大要素を整える」
5つ目は、睡眠環境を整えることです。
睡眠を良くする方法はたくさんあります。
朝に太陽の光を浴びる、日中に活動する、寝る前にブルーライトを減らす、筋弛緩法や呼吸法をするなど、どれも効果的な方法です。
ただ、その中でも僕が特におすすめしたいのが、睡眠環境を整えることです。
なぜなら、一度整えてしまえば、その後はほとんど努力がいらないからです。
例えば、朝日を浴びることや筋弛緩法は毎日続ける必要があります。
一方で、睡眠環境は、エアコンの温度を設定したり、アイマスクを付けたりするだけで、毎日自然と効果が得られます。つまり、睡眠改善の中でも、とてもコストパフォーマンスが高い方法なんですね。
では、何を整えればいいのかというと、大きく3つあります。
「温度」「光」「音」です。
①温度(と湿度)
室温は16〜26℃、湿度は50〜60%が目安とされています。
ただ、布団やパジャマによって体感温度は変わるため、実際には18〜24℃くらいを目安にすると調整しやすいと思います。
人は眠るときに体の熱を逃がすことで眠りにつくため、「少しひんやりするかな」と感じるくらいの環境のほうが眠りやすくなります。
僕自身は20〜22℃くらいが一番快適です。
②光
光は脳を目覚めさせるため、寝るときはできるだけ暗い環境がおすすめです。
もし真っ暗だと不安になる方は、無理をする必要はありません。
アイマスクを使ったり、足元に間接照明を置いたりして、自分が安心して眠れる明るさに調整してみてください。
③音
音も、できるだけ少ないほうが眠りやすくなります。
特に、エアコンのような一定の音よりも、ドアの開閉音や通知音など、突然鳴る音のほうが睡眠を妨げやすいと言われています。
スマートフォンをおやすみモードにしたり、可能であれば寝室を静かな場所にしたりするだけでも効果があります。
もし周囲の音を完全に防げない場合は、ホワイトノイズやピンクノイズなどで音を目立ちにくくする「マスキング」という方法もあります。
ちなみに、僕が毎日やっている睡眠環境の対策はとてもシンプルです。
寝る前にエアコンで室温を20〜22℃くらいに設定して、アイマスクを付ける。
基本的には、この2つだけです。
30秒もあれば終わる習慣ですが、それだけでも睡眠の質はかなり変わります。
だからこそ、「毎日頑張る睡眠法」を増やす前に、一度睡眠環境を整えてしまうことをおすすめします。

