不眠症治療において、寝る時間をただ決めるだけでなく「時間を制限すること」に意味があるのでしょうか?
本研究は、睡眠制限療法(SRT)と就寝時間の規則化療法(TBR)を比較することで、その効果の違いを明らかにしました。
参考:【2020年】不眠症治療における就寝時間制限の役割の分離:睡眠制限療法と就寝時間規則化を比較するランダム化対照試験
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】
結論
この研究では、就床時間を制限すること(TIB制限) が、単に就寝時間を一定にするだけの方法(TBR)よりも、不眠症の症状改善や睡眠の安定化において有効であることが示されました。
制限という「負荷」が、不眠症改善において重要な役割を果たしているのです。
内容の信頼性:10点満点で9点
ランダム化比較試験であり、信頼性の高いデータですが、サンプル数がやや少ない点が減点要素
何の研究か?
この研究は、不眠症治療の一環として行われる「睡眠制限療法(SRT)」と「就寝時間規則化療法(TBR)」の効果を比較したものです。SRTは就床時間そのものを短く制限し、TBRは時間を規則的に整えるだけで制限はしないという違いがあります。どちらがより不眠症の改善に効果的かを検証しました。
SRTは就床時間そのものを短く制限は、「ベッドにいる時間を減らすこと」。起床時間は規則正しくしているので「就寝時間を遅らせること」ですね。就寝時間規則化療法はその名のとおり就寝時間を規則正しくです。
研究した理由は?
これまで、不眠症治療において「なぜ睡眠制限が効果的なのか」は明確に検証されていませんでした。本研究は、睡眠制限(TIB制限)が実際にどれほど不眠症改善に寄与しているのかを科学的に明らかにするために行われました。
検証はしていなかったという意味だと思います。なぜ効果的なのかは、「睡眠圧を高めるから」となりますし。あと、睡眠制限は自然と「睡眠とベットを認知的にひもづける刺激制御療法に近づく」ので、仕組みとしての効果はあります。
結果はどうだったか?
この研究では、25~55歳の不眠症患者56名(うち女性39名、平均年齢40.8歳)が対象となりました。対象者は無作為に「SRT群(睡眠制限療法)」または「TBR群(就床時間規則化療法)」に割り当てられ、4週間の治療を行いました。
結果を詳しく見ていきましょう。
不眠症重症度(ISI)の改善
ISI(Insomnia Severity Index、不眠症重症度指数)は、不眠症の重症度を0~28点で評価する指標です。
- SRT群では、TBR群に比べて4週後に-4.49点、12週後に-4.35点 の改善が見られました。
- これは、SRTが不眠症状を著しく軽減したことを示しています。
- 効果量(d値)は-1.40(4週)、-1.36(12週)と非常に大きい
不眠症改善効果は0.8を超えているため非常に高いです。睡眠制限療法の単独では、不眠症改善できるとはいいがたいものの「他の方法と併用ができる」のが大きな利点です。睡眠制限療法は、不眠症改善後も「質の高い睡眠時間を伸ばす」のに使えます。
睡眠の継続性と生活の質の向上
睡眠の安定性や生活の質は、
- 客観的測定(ポリグラフ検査、アクチグラフィー)
- 自己申告(睡眠日誌、アンケート)
で評価されました。
結果として、
- SRT群はTBR群に比べ、*睡眠継続性(中途覚醒の減少や連続した睡眠時間の増加)において優れていました(d=0.40~0.92)。
- さらに、睡眠関連の生活の質(起床後の疲労感の軽減や日中の活動性の向上)もSRT群で大きな改善が見られました(d=1.29)。
中途覚醒の減少は想定通りですね。「眠る力を高めて睡眠の質をあげる方法」なので、睡眠継続性には効果が高いと想定されるからです。ただ、生活の質の向上が大きいのにはびっくりしました。睡眠制限療法は「睡眠の質があがる」だけではなく、「短期間なら睡眠時間は短くてもいい」という思考も身に付くからかもしれません。
睡眠制限療法は、「眠気」などの問題が言われていますが、睡眠の質が高まる分、それほどでもないのかもしれないですね。
TIBの制限効果
TIB(Time In Bed:布団に入っている時間)の平均的な制限効果として、
- 1.63~1.98時間の差がSRT群とTBR群の間で確認されました。
つまり、SRT群では「布団にいる時間を約1.5~2時間短縮」したことにより、睡眠効率(実際に眠れた時間÷布団にいた時間)が向上したのです。
TBRは就寝時間は規則正しく、SRTは就寝時間を遅らせます。これを見ると今回の研究では、90~120分ほど就寝時間を遅らせた結果のようですね。