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BDNFとは何か?神経科学の観点から読み解く「脳の肥料」の真の姿

私たちの脳は、単なる思考の器ではありません。
それは絶えず変化し、成長し、適応する「生きたシステム」です。
そしてその変化を導くカギの1つが——BDNF(脳由来神経栄養因子)です。

この記事では、BDNFの構造から機能、遺伝子レベルの調節機構、そして病理との関連まで、科学的根拠に基づいて深堀りしていきます。


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執筆者:メンタルコーチしもん
・メンタルと睡眠の専門家 / 作家 / 講師
YouTube登録者数1.4万達成
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・29年間の睡眠障害を克服
・IQ上位0.1%『GIFTED EYES』メンバー
・上級睡眠健康指導士
著書
眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」

BDNFとは?

BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)は、脳や末梢神経系で発現する神経栄養因子で、神経細胞の成長・分化・生存・可塑性(しなやかさ)を促進するタンパク質です。

1982年、Yves-Alain BardeとHans Thoenenによって初めてブタの脳から単離され、その存在が確認されました。

BDNFは、神経成長因子(NGF)やNT-3、NT-4と並ぶニューロトロフィンファミリーの一員であり、特に中枢神経系のシナプス可塑性、神経新生、記憶、学習に深く関わります。


どこで作られ、どう働く?

BDNFはヒトの第11染色体上に位置するBDNF遺伝子によってコードされ、小胞体で合成後、CPE(カルボキシペプチダーゼE)との結合を経て高密度コア小胞に格納されます。

そこから神経活動に応じて分泌され、主に以下の2つの受容体に結合して作用します:

  • TrkB(チロシンキナーゼB):高親和性受容体、シナプス形成・神経成長・記憶に重要
  • p75NTR(低親和性神経成長因子受容体):細胞死(アポトーシス)との関係もある

特にTrkBとの結合後は、ERK/MAPK、PI3K/Akt、PLCγ経路などが活性化され、シナプス形成・神経新生を促進します。


BDNFの働き:脳に与える圧倒的インパクト

1. 神経細胞の生存と成長

BDNFは既存のニューロンの生存を支えるだけでなく、新しい神経細胞(神経幹細胞からの分化)を成長・維持する作用も持ちます。

2. 記憶と学習の中枢に作用

BDNFは主に海馬・前頭皮質・前脳基底部で活性化されるため、長期記憶や空間認知、意思決定能力と強く関係しています。

3. シナプス可塑性とLTPの促進

BDNFは、NMDA受容体とAMPA受容体を介して、長期増強(LTP)=記憶の形成過程を助ける役割もあります。


遺伝子調節とVal66Met多型の意味

BDNFの発現は、神経活動依存的に調節され、特にエクソンIVのプロモーター活性はカルシウムの流入やNMDA受容体の活性化によって強く誘導されます。これに関わる転写因子CREBが、BDNFの「可塑性スイッチ」となります。

さらに、よく研究されているrs6265(Val66Met)多型は、BDNFの分泌効率に影響を与え、学習障害やうつ病、認知症リスクとも関連が指摘されています。


💡 BDNFを増やす方法(科学的根拠あり)

① 有酸素運動(特にHIIT)

運動により心拍数を120〜160bpmに保つことで、BDNFは最大3倍に増加することが確認されています。
「最大心拍数(MHR)の60〜85%程度」に相当

② 栄養:DHA・ターメリック・ブルーベリーなど

ポリフェノールやオメガ3脂肪酸の摂取もBDNFの合成をサポート。

③ 日光と睡眠

日光によるセロトニン生成と、質の高い睡眠がBDNFレベルを安定させます。

④ 瞑想・マインドフルネス

慢性的ストレスはBDNFの合成を阻害します。呼吸法や瞑想が有効です。


病気との関連性

BDNFは以下の疾患と深く関係しています:

  • うつ病:BDNFの減少が症状と関連。抗うつ薬や運動により回復可能。
  • 統合失調症:BDNF mRNAの低下が報告されており、症状と重なる。
  • アルツハイマー病・パーキンソン病:神経変性とBDNFレベルの低下が関連。
  • てんかん:BDNFの異常上昇と発作感受性に関係。

🧬BDNF-ASとは?

興味深いのが、BDNFアンチセンス(BDNF-AS)という、BDNFを抑制する長鎖非コードRNA(lncRNA)の存在です。これはBDNFの発現を遺伝子レベルで制御し、神経の生存や死にすら関与しています。


🧠 最後に:BDNFは、未来の脳を変える「内なる鍵」

私たちの脳は、年齢とともに衰えるのではなく、適切に使えば何歳でも成長可能です。
BDNFは、その成長と回復の「トリガー」。

つまり——
「体を動かす」ことは、「脳を育てること」。
今日から始める運動、瞑想、食事習慣が、未来のあなたの脳の構造そのものを変えていくのです。

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