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完璧主義は考え方の訓練で変わる?大学生54人のランダム化比較試験を解説

「少しの失敗も許せない」「予定どおりに進まないと落ち着かない」。そんな気持ちに悩むことはありませんか?

同じ出来事でも、「小さな間違いなら次に直せばよい」と考える人がいる一方、「失敗したら評価が下がってしまう」と考える人もいます。では、出来事の受け止め方を練習によって変えると、完璧主義や不確実さへの不安も変化するのでしょうか。

2024年、Kübra Tör-ÇabukとVolkan Koçは、心理学誌『PsyCh Journal』に、この問題を実際の介入で検証した研究を発表しました。トルコの大学生54人を無作為に2群へ割り付け、オンラインで4週間にわたり「認知バイアス修正(CBM)」を実施しました。対照群にも別の課題を行ってもらい、介入前、介入直後、1か月後の変化を比べています。

結果は一様ではありませんでした。失敗への懸念や「親から批判されている」という認識では改善を示す結果があった一方、全体的な心理症状では明確な改善が確認されませんでした。最終的に解析されたのは30人です。研究で分かったことを、方法から順番に見ていきましょう。

認知バイアス修正とは?完璧主義の「解釈の偏り」に働きかける

まず、ここでいう認知バイアス(cognitive bias)は、出来事を解釈するときの偏りを意味します。

たとえば発表で言い間違えたとき、「誰にでも起こるミス」と受け取ることも、「能力がないと思われた」と受け取ることもあります。後者のような否定的な解釈が強くなれば、同じ発表でも心理的な負担が大きくなるかもしれません。

認知バイアス修正(Cognitive Bias Modification:CBM)とは、課題を繰り返すことで、特定の解釈の偏りを変えようとする方法です。今回使われたのは、解釈の偏りに働きかける CBM-I(Interpretation) と呼ばれる形式です。

研究では、完璧主義だけでなく、もう一つの特徴も対象にしました。それが「不確実性への不耐性」です。

不確実性への不耐性とは?分からない状況を受け止めにくいこと

不確実性への不耐性(intolerance of uncertainty)は、先が読めないことや結果が分からないことに、強い不快感や不安を覚える傾向です。

たとえば、面接の結果を待っているとき、発表の質問内容が分からないとき、予定が突然変わったときなどを考えてみましょう。自分では結果を完全にコントロールできない状況です。

完璧主義と不確実性への不耐性は同じ概念ではありません。しかし、「間違えないようにしたい」「予想外のことが起きてほしくない」という受け止め方のなかで重なり得るため、研究者たちは両方の解釈の偏りを同時に扱うプログラムを試しました。

研究方法:54人を無作為に2群へ分け、4週間のオンライン課題を実施

参加者は、トルコ語を使う18歳以上の大学学部生です。募集への参加に同意した178人のうち、110人が最初の質問紙に回答しました。そのなかから心理症状の質問紙「BSM」で一定の基準を超えた54人が選ばれ、実験群とプラセボ対照群へ無作為に割り付けられました。

54人の平均年齢は21.63歳で、女性が43人、男性が11人でした。精神疾患がある人や心理・精神科治療を受けている人は研究の対象から除外されています。

調査の段階 人数・内容
募集への参加に同意 178人
最初の質問紙を完了 110人
条件を満たし無作為割付 54人
4週間後の質問紙を完了 32人
1か月後まで完了し最終解析に含まれた人 30人

54人がすべての分析に含まれたわけではないことは、結果を理解するうえで重要です。

4週間、何をしたのか?

参加者は自宅のパソコンで、週に1回、合計4回のオンライン課題に取り組みました。プログラムには、完璧主義と不確実性への不耐性に関する2種類の課題が含まれます。

実験群は、曖昧な場面について、より非完璧主義的な方向や不確実さを受け入れる方向で解釈する練習をしました。課題のなかでは、文章の続きを補ったり、内容を確認したり、回答へのフィードバックを受けたりしました。

対照群は、似た形式の課題に取り組みましたが、一貫して特定の解釈へ誘導する仕組みではありませんでした。研究者たちは、単なる課題への参加と、解釈の修正を狙った訓練を比較しようとしたのです。

測定は、介入前(T1)・4週間後(T2)・さらに1か月後(T3)の3回です。完璧主義の尺度、先行きの不確実さへの反応を調べる尺度、心理症状を測る尺度などが使われました。

研究結果①:失敗への懸念は、介入後に低下した

完璧主義は、Frost多次元完璧主義尺度(FMPS)の6つの下位側面で測られました。

そのうち「失敗への懸念」では、介入群と対照群の時間的な変化の違いが統計的に有意でした(報告値:p=0.032)。

測定時点 実験群の平均点 対照群の平均点
介入前 22.60 23.13
4週間後 19.33 25.20
1か月後 19.60 24.26

実験群では介入前から4週間後にかけて平均点が低下し、対照群では反対に上昇しました。研究者は、実験群内の前後差も統計的に有意だったと報告しています。

ただし、1か月後の平均値だけを見て、効果が長期的に安定して維持されたと結論することはできません。研究者も追跡時点での結果が一貫しなかったと述べています。

研究結果②:「親から批判される」という認識にも変化が見られた

もう一つ有意な相互作用が報告されたのは、「親からの批判の知覚」という下位尺度でした(p=0.010)。

この尺度は、親が実際に何をしたかを観察しているのではなく、回答者が親の批判をどのように受け取っているかを測るものです。

実験群の平均点は、介入前の11.06から4週間後には9.60に下がりました。対照群は10.33から11.46へ上がっています。

介入で親の態度そのものが変わった、という意味ではありません。曖昧な出来事をどう解釈するかへの訓練が、親から批判されているという認識に関係した可能性を示す結果です。

一方、「個人的に高い基準を持つこと」や「親から高い期待を受けていると感じること」など、ほかのすべての側面で同じ改善が示されたわけではありません。

研究結果③:不確実さへの解釈の偏りは改善したが、尺度全体では慎重な解釈が必要

不確実な状況をどう解釈するかを測る課題では、実験群に変化がありました。得点が高いほど否定的な解釈の偏りが少ない指標です。

測定時点 実験群 対照群
介入前 0.65 0.66
4週間後 0.78 0.57

この解釈課題では、群と時間の相互作用が統計的に有意でした(p<0.01)。狙った解釈の方向に変化が起きたという点で、今回の介入の重要な結果です。

一方、「不確実性への不耐性」という自己回答尺度では、4週間後の平均点が実験群81.73、対照群94.06となり、群間の差は報告されました。しかし、群と時間の相互作用は有意ではありませんでした(p=0.240)。

したがって、「不確実性への不耐性そのものが訓練によって確実に改善した」とまで言い切るよりも、解釈の偏りの課題で明確な変化が見られ、自己回答尺度の変化には慎重な解釈が必要と捉えるほうが、本文の分析結果に忠実です。

研究結果④:心理症状全般の改善は確認されなかった

研究者たちは、完璧主義や不確実性への反応だけでなく、心理症状全般を測る「BSM」も調べました。

結果は、実験群と対照群の時間的変化に有意な違いはありませんでした(p=0.759)。実験群の平均点は、介入前100.80、4週間後101.53、1か月後101.26でした。

つまり、この研究で改善が報告された心理的な特徴があったとしても、全体的な心理症状の軽減まで確認されたわけではありません。

ここは、研究の意義を考えるうえでも見落とせない結果です。解釈の偏りが変わることと、気分や不安などの症状が軽くなることは、同じ成果ではないからです。

認知バイアス修正にはどんなメリットが考えられる?

今回の研究は、CBM-Iを使った介入方法の可能性を示しています。研究内容から考えられる利点は主に2つあります。

1. 特定の解釈の偏りに焦点を絞れる

「完璧主義を全部なくす」という大きな目標ではなく、失敗への懸念や曖昧な状況の受け止め方といった具体的な特徴を対象にできます。今回も、完璧主義の一部の下位尺度で変化が確認されました。

2. オンラインで反復練習できる

参加者は自宅のパソコンから週1回、課題を行いました。この形式なら、少なくとも研究の実施手順としては、毎回同じ場所で対面する必要はありません。

ただし、この研究は、オンラインであること自体の優位性や費用対効果を比較したものではありません。あくまでオンライン形式で実施し、一定の変化を観察できたという段階です。

デメリット・注意点は?効果の範囲と継続性には課題がある

1. 改善はすべての側面に及んだわけではない

失敗への懸念などで変化は見られましたが、個人的な高い基準、親からの期待、整理整頓などの側面まで、一様に変わったわけではありません。

2. 心理症状への効果は確認されなかった

一般的な心理症状を測る尺度では、介入群と対照群の変化に明確な差がありませんでした。完璧主義の一部分に変化があったことと、精神的不調を治療できることは別です。

3. 参加者の減少が大きかった

無作為に割り付けられた54人のうち、1か月後まで調査を完了したのは30人です。約44%が最終調査まで残らなかったため、最後まで取り組めた人だけの結果に偏りが生じている可能性があります。

4. 1か月後までの結果が安定していない

介入直後の変化と比べて、追跡時点の結果には一貫しない部分がありました。長期的に効果が続くかは、さらに大きな研究で確かめる必要があります。

研究の仕組みを理解するための3つの具体的な考え方

以下は研究で使用された「解釈を見直す」という発想を日常の例に置き換えたものです。今回の論文で効果が検証されたセルフケア手順ではありません。

方法1:出来事と解釈を分ける

例えば、提出した資料について上司から修正の指示があったとします。「修正を指示された」は出来事です。「自分は能力がないと思われた」は解釈です。

この2つを別々に書くと、何が実際に起きたことで、何を推測しているのかを見分けやすくなります。

方法2:一つの場面に複数の解釈を考える

「間違いを指摘された」という場面には、「期待を裏切った」という解釈だけでなく、「改善点を共有してもらった」「次の作業で正確さを高められる」といった見方もあり得ます。

無理に前向きな考えへ置き換えるのではなく、一つの解釈だけで決めつけていないかを確かめる例です。

方法3:分からないことが残る状況を言葉にする

「面接で何を聞かれるか分からない」と考えたとき、何が準備できて、何が予測できないかを分けてみましょう。

この研究は、不確実な状況の受け止め方を訓練する可能性を調べています。すべてを予測することと、予測できない部分があるまま行動することは、異なる目標です。

具体例:発表の失敗が怖い大学生

ここで、研究の仕組みを理解するために、架空の大学生Aさんの話を考えてみましょう。

Aさんはゼミ発表の前になると、「質問に一つでも答えられなければ、周りに失望される」と考えます。発表資料を何度も直し、準備が終わっても安心できません。

ある日、友人と練習していると、説明が分かりにくい箇所を指摘されました。Aさんの頭には、「やっぱり自分はだめだ」という考えが浮かびます。

そこで友人は、「それは改善できる箇所が見つかった、ということでもあるよね」と別の受け止め方を示しました。

Aさんは、指摘された事実と、そこから自分が想像した評価を分けて考えてみます。「ここを直せば、伝わりやすくなるかもしれない」。不安がすべて消えたわけではありませんが、一つの出来事に複数の意味があることに気づきます。

この話は、出来事の解釈を見直す練習が何を目指しているかを説明するための創作です。研究の実参加者や治療の成功例ではありません。

この研究のエビデンスを読むときの5つのポイント

第一に、ランダム化比較試験という設計です。 無作為割付とプラセボ対照群があるため、単なる前後比較より介入の影響を検討しやすい方法です。

第二に、解析対象は小規模です。 割付54人、最終解析30人で、結果の精度や再現性には限界があります。

第三に、参加者は特定の条件を満たしたトルコの大学生です。 心理症状尺度では一定以上の得点でしたが、精神疾患の診断がある人や治療中の人は除外されていました。医療現場の患者にも同じ効果があるとは、この研究からは言えません。

第四に、評価の中心は質問紙と解釈課題です。 日常生活での失敗の頻度、仕事や学業の達成、精神疾患の治癒などを直接測定した研究ではありません。

第五に、結果の読み分けが必要です。 不確実性への不耐性については介入直後の群間差があっても、群と時間の相互作用は有意ではありませんでした。全体的な心理症状も改善を確認できていません。

著者らは、この介入を今後さらに検証する価値のある予備的な成果と位置付けています。規模を拡大した再検証と、より長い追跡が必要です。

まとめ:完璧主義の一部は変化したが、効果の範囲は限られていた

2024年のTör-ÇabukとKoçによる研究は、大学生54人を2群に無作為に割り付け、オンラインの認知バイアス修正を4週間実施したランダム化比較試験です。最終解析には30人が含まれました。

研究では、失敗への懸念と親からの批判の知覚に改善を示す結果があり、不確実性への解釈の偏りを測る課題でも変化が確認されました。

一方、全体的な心理症状の改善は確認されず、不確実性への不耐性の自己回答尺度でも群と時間の有意な相互作用は見られませんでした。追跡結果や参加者の減少も考慮する必要があります。

この論文の意義は、完璧主義に関わる「出来事の受け止め方」へ働きかけられる可能性を、実際の比較試験で検討したことです。考え方の偏りに変化が起きたとしても、それがどの範囲の心理的な改善につながるのか。今後の研究で確かめるべき課題も明らかになりました。

参考論文

Tör-Çabuk, K., & Koç, V. (2024). Cognitive bias modification for perfectionism and intolerance of uncertainty: A randomized controlled trial. PsyCh Journal, 13(4), 679–691. https://doi.org/10.1002/pchj.742

※本記事は上記の原著論文を中心に作成しました。研究で得られた結果と、説明用の架空事例・日常的な振り返り方は区別して記載しています。