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先行きが不確かなとき、なぜ具体的な説明にひかれる?4研究から分かった広告の伝え方

「高品質な商品です」と言われるのと、「水中でも鮮明な写真が撮れます」と言われるのでは、どちらが安心して選べそうでしょうか。

どちらも商品の魅力を伝えようとしています。でも、まだ知らない商品を買うときや、周囲の状況が落ち着かないときには、後者のほうが判断しやすく感じるかもしれません。広告の言葉が具体的か抽象的かによって、商品の魅力の伝わり方は変わるのでしょうか。

この問いに取り組んだのが、オランダのアムステルダム自由大学のFemke van Horen、ドイツのマンハイム大学のMichaela Wänke、英国ロンドン・ビジネス・スクールのThomas Mussweilerによる研究です。論文は2023年5月にオンライン公開され、2024年刊行の『International Journal of Advertising』第43巻第3号に掲載されました。

研究チームは、ドイツの大学生を対象にした実験、オランダのホッケー観戦者への現場調査、米国のオンライン参加者による実験など、合計4研究(実験室での3研究、自然な場面での1研究)を通して、伝え方と不確実さの関係を検討しました。本文に詳しく載っている3研究の参加者は、それぞれ141人、124人、307人です。4つ目の研究は補足資料で報告されています。

結論を先に言うと、先行きや選択に不確実さを感じているとき、抽象的な説明より具体的な説明のほうが好まれやすいという結果でした。ただし、いつでも具体的にすればよいわけではありません。この違いが重要です。

「具体的な説明」と「抽象的な説明」は何が違う?

論文が比較したのは、広告で使われる言葉の具体性(language concreteness)です。

具体的な説明とは、目に浮かぶような特徴や場面があり、何を意味するかが比較的はっきりしている表現です。抽象的な説明は、広い意味を持ち、人によって解釈が分かれやすい表現です。

たとえば、次のように比べられます。

抽象的な説明 具体的な説明
「高性能なカメラ」 「水中でも鮮明な写真を撮れるカメラ」
「優れた洗浄力」 「衣類の汚れをきれいに落とす」
「使いやすいサービス」 「申し込みを3つの画面で完了できるサービス」
「暮らしをもっと快適に」 「寝室の照明をスマートフォンから消せる」

下の2つを含め、表の日本語は違いを理解するための説明例です。実験で用いた文言そのものの完全な翻訳ではありません。

この研究のポイントは、広告に新しい情報を大量に追加したわけではなく、伝える内容や文章の長さをなるべくそろえたうえで、表現の具体性を変えたことです。つまり、「情報量が多いから好まれた」という説明だけでは片付けにくい設計になっています。

なお、「具体的」だからといって、細かい数字を必ず書かなければいけないわけではありません。「どんな状態になるか」「どの場面で使えるか」がイメージできることも具体性に含まれます。

不確実性とは?商品のことを知らない場合だけではない

不確実性(uncertainty)とは、これから何が起きるか、どんな結果になるか、どの選択がよいかを十分に予測できない状態です。

この論文では、不確実性を大きく2種類に分けて考えています。

1. 社会や身の回りの出来事による不確実性

景気の変化、仕事や生活の見通し、スポーツの勝敗など、商品そのものとは別の出来事から生じる不確実さです。

たとえば、重要な試合が始まる直前、観客にはどちらが勝つか分かりません。そのような場面で見た広告は、試合の結果が決まったあとに見た広告と、同じように受け取られるのでしょうか。研究では、その違いを調べました。

2. 商品を選ぶこと自体から生じる不確実性

新しい機器や使ったことのないサービスのように、自分に合うかどうかが分からない場合です。

新しいカメラに見慣れない機能が付いていたら、便利かもしれないと期待する一方で、本当に使えるのかと迷うでしょう。そこで具体的な説明が判断の手がかりになる可能性があります。

ここでいう不確実さは、必ずしも強い恐怖や精神的な不安を意味するものではありません。「先が読めない」「結果が分からない」という状態に注目した研究です。

なぜ不確実なときに具体的な言葉が響くのか?3つの理論的説明

研究チームは、先行研究を参考に3つの考え方を示しています。ただし、以下の3つの心理過程を今回の実験ですべて直接測定し、原因として証明したわけではありません。実験結果を説明するための理論的な枠組みです。

1. 情報を慎重に確かめようとする

先が読めないとき、人は手がかりを詳しく調べようとする場合があります。

「魅力的なカメラです」という説明だけでは、何を比べればよいのか分かりません。それに対し、「自転車に乗りながらでも手ぶれを抑えて動画を撮れます」という説明は、利用場面を想像しやすく、商品を検討する材料になります。

著者たちは、こうした吟味しやすさが具体的な表現の説得力を高める可能性を指摘しています。

2. 目標より「どう使うか」に意識が向きやすい

心理学の解釈レベル理論(construal level theory)では、物事を抽象的な目的から考える場合と、具体的な手段から考える場合を区別します。

たとえば、抽象的な目標は「健康的な生活を送ること」。具体的な手段は「夕食後に20分歩くこと」です。

先行きが不確かなときには、今できる行動や細部に注意が向きやすく、具体的な広告がその考え方に合う可能性があります。

3. はっきりしたイメージが、予測しやすさを与える

不確実な場面では、人は秩序や予測可能性を求めることがあります。

そこで、「安心の品質」といった広い表現より、「軽い雨の中でも使える」「使ったあとに折りたためる」といった描写のほうが、購入後の場面をはっきり想像できるかもしれません。

著者たちは、このイメージの明確さも、具体的な広告が好まれる理由の候補として挙げています。

研究方法:4研究では何を比べた?

論文は、具体的な広告と抽象的な広告への反応を、異なる状況で比較しています。

研究 参加者・場面 不確実さの作り方・調べ方 主な測定
研究1 ドイツの大学生141人 社会・経済・個人生活の見通しに関する文章で、不確実/確実な気持ちを喚起 4商品の評価、支払意思額
研究2 オランダのホッケー観戦者124人 試合前(結果が分からない)と試合後(結果が判明) ホッケースティックの評価、ラジオ局の広告文の選択
研究3 米国のオンライン参加者307人 新規商品と見慣れた商品を提示し、新しいものを試したい傾向も測定 カメラ・ベビーモニターの評価と購買意図
補足研究WA1 補足資料に詳述 新規商品の説明表現と探索傾向を別の尺度でも検証 商品の評価

研究1と研究3は、広告文などの条件を変えて比較した実験です。研究2は実際の試合前後で行われた現場調査であり、試合の前後という時間帯自体をランダムに発生させたわけではありません。4研究には実験的な証拠がありますが、すべてが同じ強さで因果関係を示す設計ではないことに注意してください。

ここから、結果を順番に見ていきましょう。

研究結果①:先行きが不確かな人は、具体的な広告の商品を高く評価した

研究1では、ドイツの大学生141人が参加しました。

まず、社会や経済などが不確かだと感じさせる文章、あるいは安定していると感じさせる文章を読んでもらいました。その後、電球、洗剤、香水、チーズフォンデュの4商品の広告を見て、魅力などを評価してもらいました。

評価の平均を整理すると、次のようになります。

参加者の状態 具体的な説明の広告 抽象的な説明の広告
不確実さを感じている 5.51 4.18
確実さを感じている 4.69 5.12

この表は、論文に報告された商品評価の平均値です。不確実さを感じている条件では、具体的な説明のほうが明確に高く評価されました。不確実さと広告表現の組み合わせによる統計的な交互作用も認められています(F(1,137)=25.20、p<.001)。

反対に、確実さを感じている条件では抽象的な説明の平均値が数字上は高かったものの、同じ条件内での具体的・抽象的表現の差は統計的に明確ではありませんでした(p=.09)。ここを「安心している人は必ず抽象的な広告を好む」と読み替えないことが大切です。

研究結果②:「いくら払ってもよいか」にも影響はあったが、評価ほど強くなかった

研究1では、商品の魅力だけでなく、参加者が最大いくらまで払ってよいと考えるか(支払意思額)も調べました。

商品によって価格帯が違うため、研究チームは金額を標準化した数値で比較しています。その結果、不確実さと広告表現の組み合わせによる交互作用は統計的に有意でした(F(1,121)=5.83、p=.017)。不確実な条件では、具体的な説明のほうが抽象的な説明より、支払意思額が高いという結果も出ています(p=.02)。

ただし、支払意思額の分析では、価格を記入しなかった人、指定範囲外の値を記入した人、非常に大きな外れ値を示した人を除外しています。これらを含めた追加分析では交互作用はp=.067となり、通常の5%水準では統計的に有意ではありませんでした。

つまり、商品を「魅力的だ」と評価する効果に比べて、お金をいくら出すかという判断への効果は慎重に見る必要があります。実際の購入金額や売上が増えたと測定した実験でもありません。

研究結果③:試合前は、具体的な広告文を選ぶ人が多かった

研究2では、オランダのホッケーの試合を観戦する124人に調査を行いました。試合前は勝敗が分からず、試合後には結果が分かっています。

参加者は、ラジオ局の広告スローガンを2種類から選び、ホッケースティックの広告も評価しました。

特に分かりやすいのが、ラジオ局の広告文を選んだ割合です。

調査のタイミング 具体的なスローガンを選んだ割合 抽象的なスローガンを選んだ割合
試合前 66% 34%
試合後 44% 56%

選択割合の違いは統計的に有意でした(p=.012)。結果が読めない試合前には、具体的なスローガンの人気が高かったことになります。

ホッケースティックの広告評価も、具体的な説明では試合前の平均5.66、試合後の平均4.87と差がありました。ただし、試合前の人だけを比べたとき、具体的な広告と抽象的な広告の間に統計的に明確な差は確認されていません(p=.15)。

この現場調査は、実験室ではない場所でも同じ方向の傾向が見られることを示しています。一方、試合前後には時間帯や気分などの違いが生じる可能性もあります。

研究結果④:新商品では「新しいものを試すのが苦手な人」に具体的な説明が特に響いた

研究3は、米国のオンライン調査参加者307人を対象にしたものです。

見慣れた商品と新しい商品を、具体的な文章または抽象的な文章で紹介しました。さらに参加者には、「新しいものを試すことに前向きか」という探索傾向も尋ねています。

結果を見ると、新しいものを試すのにあまり積極的ではない人の場合、新商品の評価平均は次のとおりでした。

  • 具体的な説明:5.08
  • 抽象的な説明:3.87

一方、新しいものを試すのに積極的な人では、次のようになりました。

  • 具体的な説明:5.33
  • 抽象的な説明:4.87

探索傾向が低い人ほど、具体的な説明と抽象的な説明の差が大きかったのです。新規性・広告表現・探索傾向の3要因の交互作用も統計的に有意でした(F(1,300)=4.07、p=.045)。

ただし、探索傾向が高い人でも、研究3では具体的な説明の優位性が小さくなっただけで、差自体は残っています(p=.03)。「新しいものが好きな人には具体的な説明が効かない」と一律に結論づけることはできません。

また、なじみのある商品では探索傾向と広告表現の交互作用は確認されませんでした。この結果は、新商品を紹介するときに、受け手がどのくらい未知のものを好むかが関係する可能性を示しています。

研究結果⑤:補足研究でも、新商品と探索傾向の組み合わせを確認

論文の補足資料には、研究WA1という追加実験も掲載されています。

研究3では、一部の新商品の具体的な説明が、単に「前向きで好ましい言葉」に見えた可能性がありました。そこで補足研究では、説明文の比較条件や探索傾向を測る尺度を変え、結果を確かめました。

補足研究でも、新しいものを試す傾向が低い人は、具体的な説明の新商品をより高く評価するという方向の結果が報告されています(探索傾向による交互作用 p=.02)。一方、見慣れた商品では同様の交互作用は見られませんでした(p=.78)。

実験材料や測定方法を変えても、中心的な傾向がある程度再現された点は、この研究の強みです。

この研究で分かったことを一度整理しよう

分かったこと 解釈のポイント
不確実な状態では、具体的な広告の商品評価が高まりやすい 研究1で明確な交互作用を確認
支払意思額にも類似の傾向 外れ値の扱いによって有意性が変わり、効果は比較的弱い
試合前には具体的なスローガンが選ばれやすい 研究2で66%対44%。実際の購入を示す数字ではない
新商品では、探索傾向の低い人に具体性の効果が特に大きい 研究3と補足研究で同じ方向の結果
確実な状態で抽象表現が必ず優れているわけではない 研究によって結果が異なる

研究が示したのは、広告文の効果は文章の特徴だけでなく、読む人が置かれた状況にも左右されるということです。

具体的な伝え方には、どんなメリットがある?

今回の結果に沿って考えると、次のようなメリットが考えられます。ここでのメリットは主に広告評価に関するもので、必ず売上が上がるという意味ではありません。

1. 未知の商品を想像しやすくなる

初めて見る商品について、「高性能」「革新的」と言われても、何ができるのか分からないことがあります。具体的な機能や使用場面を示すと、購入後の姿を想像しやすくなります。

2. 不確かなときに判断の手がかりになる

受け手に迷いがある場合、何に役立つかが見える説明は、評価を形成する材料になります。特に研究1では、不確実さを感じる条件で具体的な広告の評価が高くなりました。

3. 新しいものを試すことに慎重な人にも届きやすい

研究3では、新しい商品への積極性が低い人ほど、広告の具体性による評価差が大きくなりました。「新しさ」だけで押すより、使い道を説明することが役立つかもしれません。

抽象的な表現にはデメリットしかない?注意したい3つのこと

1. 抽象的な言葉も、目的によって役割がある

「自由な毎日へ」「新しい可能性を」といった言葉は、商品やサービスが目指す価値観を表すのに向いています。今回の研究は、抽象表現そのものに価値がないと示したわけではありません。

2. 具体的であっても、内容が正確とは限らない

具体的な数字や利用場面が示されると、説得力があるように感じられる場合があります。しかし、それが事実かどうかは別問題です。

「誰でも3日で上達する」「確実に結果が出る」といった根拠のない断定は、文章が具体的でも信頼できる説明にはなりません。確かめられる事実だけを具体化することが大切です。

3. 好印象と、実際に買う行動は同じではない

今回の研究で主に測ったのは、広告に対する商品評価、回答者が答えた購買意図や支払意思額、スローガンの選択でした。

実店舗の売上、クリック率、長期的なブランドへの信頼を直接検証した研究ではありません。そのため、広告の具体性を変えるだけで売上が必ず増えるとまでは言えません。

具体的な文章を作る5つの方法

以下は、論文で比較した「表現の具体性」を文章作成に応用した方法です。5つの方法の効果を一つずつ検証した介入実験ではありません。

方法1:形容詞を、できることの説明に変える

「使いやすい」「便利」「快適」と書いたら、一度問い直してみましょう。

「どんな場面で、何ができるのか?」

たとえば「便利な収納」なら、「使わないときは折りたたんで棚にしまえる収納」という形です。商品に実際に備わっている特徴であることを確認したうえで使います。

方法2:受け手が迷っている点に答える

新しい商品を紹介するとき、受け手は「何が違うのか」「自分にも使えるのか」「どんなときに役立つのか」と考えるかもしれません。

その問いに対し、機能、利用条件、使用場面を具体的に書きます。単なる性能の羅列ではなく、判断に役立つ説明を選びます。

方法3:数字よりも先に、使う場面を明確にする

数字は大切ですが、単位や意味が分からなければ伝わりません。

「バッテリー容量が大きい」より、「通常の使い方でどのくらい使用できるか」という情報のほうが、選びやすい場合があります。数値を書く際は、測定条件や根拠も添えましょう。

方法4:大きな価値を示したあと、具体例を置く

抽象的な言葉をすべて削る必要はありません。

「毎日の作業をもっと楽に」という価値を示したあとに、「同じ書類の入力項目を自動で引き継げる」という具体的な説明を置けば、目的と方法の両方を伝えられます。

方法5:異なる表現を、同じ条件で比較する

具体的な説明と抽象的な説明を比べるときは、長さ、写真、価格などをなるべくそろえると、違いを検討しやすくなります。

研究でも、広告の内容や分量をできるだけ近づけて比較していました。実務では、同じ対象者層に対して反応を確かめることで、自分の商材や状況に合う表現を探せます。

具体例:新しいサービスを紹介する2人の担当者

ここからは、研究結果をイメージしやすくするための架空のストーリーです。実験参加者の実話ではありません。

小さな会社で、業務管理サービスを導入することになりました。

担当者のAさんは、社内に向けて案内文を作ります。

「このサービスは、革新的なワークフローによって生産性を最大化します」

ところが、案内を読んだ社員のBさんは、よく分かりません。「新しい仕組みは慣れるまで大変そう」「今の仕事が止まったら困る」と考えていたからです。

そこでAさんは、説明を次のように書き直しました。

「申請書を作るとき、前回入力した部署名と担当者名を引き継げます。確認が必要な書類は一覧で表示されます」

Bさんはようやく、どこで使うのかを想像できました。「それなら、毎回入力し直す手間は減りそう」と感じます。

この例は、先行きが分からず慎重になっている人に、使用場面の具体的な情報が届く、という研究の着眼点を表しています。ただし、この文章変更が業務サービスの導入率を高めたと今回の論文で検証されたわけではありません。

研究を読むときに押さえたい限界と対策

1. 表現が評価に影響しても、効果が長期に続くかは分からない

実験は、広告を見たあとの比較的短い時間内で反応を調べています。数週間後や数か月後まで態度が続くかは、別の研究が必要です。

2. 実際の購買行動を直接測ったわけではない

支払意思額や購買意図は、商品に対する気持ちを示す指標です。現実の購買では価格、予算、比較対象、配送条件なども関わります。広告の評価と販売実績を分けて考える必要があります。

3. 一部の比較は有意ではなかった

研究1では確実な条件内の広告表現の差が有意ではありませんでした。研究2でも、ホッケースティックの広告は試合前の条件内で具体的・抽象的な広告の差が有意ではありませんでした。支払意思額の感度分析でも、有意性が弱まっています。

全研究の方向性を大切にしながら、個別の結果の強さも見ることが重要です。

4. 言葉の好ましさが完全に一致したわけではない

研究では事前テストを行って、具体的な表現と抽象的な表現の好印象の程度をできるだけそろえています。それでも、研究1のチーズフォンデュや研究3の一部の商品では、文章の好ましさに差がありました。補足研究は、この問題を確かめるためにも行われています。

5. なぜ効いたのか、心理的な媒介過程は今後の検証課題

詳しく情報を調べるようになったからなのか、具体的な行動を考えやすくなったからなのか、安心できる見通しを感じたからなのか。論文には複数の説明がありますが、どれが決定的な仕組みなのかはまだ絞り切れていません。

また、ドイツ・オランダ・米国で得られた結果を、そのまますべての文化や商品カテゴリーに当てはめることもできません。

まとめ:具体的に伝える価値は、「読む人の不確実さ」で変わる

今回の研究で注目したいのは、広告の言葉が具体的か抽象的かという違いは、読む人の状況との組み合わせで意味を持つという点です。

ドイツの大学生の実験では、不確実さを感じているとき、具体的な広告の商品が高く評価されました。オランダのスポーツ観戦の場面では、具体的なラジオ広告のスローガンを選んだ人が試合前66%、試合後44%でした。そして米国のオンライン実験では、新しいものを試すのに慎重な人ほど、具体的な新商品説明を高く評価しました。

伝えるときに考えたいのは、「自分は何を言いたいか」だけではありません。

「相手は今、何を予測できず、何が分かれば判断しやすくなるのか」。

そこを意識して、事実に基づく具体的な説明を選ぶことが、伝わりやすさを考える一つの出発点になります。

参考論文

van Horen, F., Wänke, M., & Mussweiler, T. (2024). When it pays to be clear: the appeal of concrete communication under uncertainty. International Journal of Advertising, 43(3), 533–553. オンライン公開:2023年5月8日。

※研究1〜3の人数、平均値、検定結果は本文の各研究章、補足研究WA1の要約は本文「Generalization and replication(Study WA1)」に基づきます。実務向けの文章例と架空のストーリーは論文の実験材料そのものではありません。