「もっとよい成績を取りたい」と考えて勉強することがありますよね。では、「少しでも欠点があったら許せない」と感じながら勉強することは、それ以上の力になるのでしょうか。
大学やカレッジでは、授業の難しさが変わったり、予想外の課題が出たり、計画を立て直さなければならなかったりします。そんな場面で必要なのは、努力する意欲だけでなく、変化に合わせて考え方や行動を調整する「適応力」です。
2026年6月、カナダ・オタワ大学のPhilip-Antoine Donaldson、Thomas L. D. Boivin、Patrick Gaudreauは、学術誌『Educational and Developmental Psychologist』に、学生342人の調査を報告しました。研究チームが調べたのは、高い水準を柔軟に目指す「エクセレンシズム」と、欠点のない完璧さを追い求める「完璧主義」が、学習意欲や適応力とどう結びつくかという問題です。[1]
結果として、エクセレンシズムは適応力の高さと関連しました。一方、完璧さへのこだわりをさらに上乗せしても、適応力との明確な追加的関連は確認されませんでした。ただし、意欲の面ではもう少し複雑な違いがありました。
今回は、この研究の方法と具体的な数値を確認しながら、「高い目標を持つこと」と「完璧を要求すること」の違い、そして学び方を考えるヒントを見ていきましょう。
- エクセレンシズムとは?「優秀でありたい」と「完璧でなければ」の違い
- なぜ「適応力」と学習意欲を一緒に調べたのか?
- どんな研究?学生342人に質問した2026年の調査
- 研究結果①:エクセレンシズムは高い適応力と関連した
- 研究結果②:自律的動機づけは、どちらの特徴とも関連した
- 研究結果③:完璧さの追求は、プレッシャーによる意欲とも関連した
- 研究結果④:「何のために学ぶか分からない」という無動機にも違い
- 研究結果⑤:プラスとマイナスの動機が打ち消し合う可能性
- なぜ「完璧を目指すほど適応力が上がる」とは限らないのか?
- エクセレンシズムを意識する4つのメリットとは?
- 完璧さへのこだわりで起こり得る3つの難しさ
- 学びに活かすための6つの具体的な方法
- 具体例:満点を目指して勉強していた大学生の話
- 研究の限界と、結果を読むときの注意点
- よくある質問
- まとめ:高い目標を持つことと、完璧を求めることを分けて考える
- 参考資料
エクセレンシズムとは?「優秀でありたい」と「完璧でなければ」の違い
エクセレンシズム(excellencism)は、日本語では「卓越性の追求」と表すことができます。とても高い水準を目指しながらも、目標が現実的で、必要に応じて方法を変えられる姿勢を指します。
一方、この研究でいう完璧主義(perfectionism/perfectionistic standards)は、単に努力家であることではありません。欠点のない理想的な成果を強く求め、非常に高い基準を粘り強く、時に硬直的に追う傾向です。[1]
たとえば、同じ試験に臨む2人を考えてみてください。
- 卓越性を目指す人:「理解を深めて高得点を取りたい。苦手な問題はやり方を変えて練習しよう」
- 完璧さを求める人:「必ず満点を取らなければ。小さなミスさえ残っているのは許せない」
どちらも真剣です。ただ、失敗や予定変更に直面したとき、最初の人には調整する余地が残りやすく、後の人は基準そのものが負担になり得ます。
2つの特徴は、同じ人のなかにも存在する
ここで重要なのは、エクセレンシズムと完璧主義を「まったく別の2種類の人」に分けているわけではないことです。
研究で用いた「エクセレンシズムと完璧主義のモデル(Model of Excellencism and Perfectionism:MEP)」では、高い水準を目指す傾向を考慮したうえで、さらに完璧さを求めることに追加的な意味があるかを分析します。[1]
この区別をしなければ、非常に努力する人のよい面が、すべて「完璧主義のおかげ」に見えてしまうかもしれません。
なぜ「適応力」と学習意欲を一緒に調べたのか?
授業で新しい学習方法を求められたとき、慣れた勉強法にこだわり続ける人もいれば、別の方法を試せる人もいます。課題が難しくなったとき、気持ちを切り替えて準備し直せるかも違うでしょう。
このような新しい状況、変化、不確実な状況に合わせて、考え方・感情・行動を調整する力が、研究で測られた「適応力(adaptability)」です。[1]
研究者たちは、目標への熱意が強くても、その熱意がどんな理由に支えられているかによって、適応力との関係は異なると考えました。その理論的な背景が「自己決定理論(Self-Determination Theory)」です。
学習意欲には3つの違いがある
| 種類 | どんな意欲か | 学生の言葉にすると |
|---|---|---|
| 自律的動機づけ | 興味、楽しさ、自分で納得した価値に基づいて取り組む | 「このテーマを知りたい」「自分に必要だから学びたい」 |
| 統制的動機づけ | 外からの圧力、評価への不安、罪悪感などに強く動かされる | 「期待に応えなければ」「失敗したら価値がない」 |
| 無動機(amotivation) | 取り組む理由や意味を見いだしにくい | 「一応やっているけれど、なぜ学んでいるのか分からない」 |
自律的動機づけと統制的動機づけは、同時に高くなることもあります。「勉強が好き」だと感じながら、「失敗したら周りに認められない」とも考える人がいるからです。[1]
この研究は、意欲の強さだけでなく、その中身の違いに注目しました。
どんな研究?学生342人に質問した2026年の調査
論文の調査は、2024年12月にオンライン調査サービスProlificを通じて実施されました。参加したのは大学・カレッジなどの高等教育機関で学ぶ人たちです。[1]
- 当初の回答者:349人
- 注意確認への不適切な回答などで除外:7人
- 最終分析対象:342人
- 平均年齢:27.03歳(標準偏差9.65歳)
- 調査時間:およそ10~15分
- 研究デザイン:一時点で回答してもらう横断的な質問紙調査
回答者は、完璧さを求める傾向、卓越性を追求する傾向、変化への適応力、大学などで学ぶ動機について、質問項目に回答しました。
研究者が完璧主義とエクセレンシズムの測定に用いたのは、10項目からなるSCOPE(Scale of Perfectionism and Excellencism)です。適応力には9項目の尺度、学習動機には12項目の尺度を使いました。[1]
この研究では、実際に参加者の成績を向上させる訓練は行っていません。質問紙で測定された特徴どうしの統計的な関連を調べています。
研究結果①:エクセレンシズムは高い適応力と関連した
まず、研究者が調べたのは「卓越性の追求」と「完璧さの追求」が、それぞれ適応力とどのように関連するかです。
回帰分析では、エクセレンシズムだけが、適応力と統計的に有意な正の関連を示しました。2つの特徴で適応力の違いを説明するモデルの決定係数は R²=0.108 でした。[1]
論文の図1には、回帰モデルから計算した3つの典型的なプロフィールの予測値が示されています。
| 統計モデル上のプロフィール | 適応力の予測値(1~7点) |
|---|---|
| 卓越性も完璧さも高くない状態 | 4.985 |
| 卓越性を追求し、完璧さへのこだわりは低い状態 | 5.532 |
| 卓越性も完璧さへのこだわりも高い状態 | 5.571 |
卓越性を追求する状態と、どちらも高くない状態の差は統計的に有意でした。一方、卓越性を追求する状態と、さらに完璧さも強く追求する状態の差は有意ではありませんでした。[1]
なお、この表は、あらかじめ学生を3群に分けて実測した「各群の平均点」ではありません。エクセレンシズムと完璧主義の尺度得点が高い・低い場合を設定し、回帰式から算出した予測値です。ここを混同しないことが大切です。
研究結果を言い換えれば、「高い目標を目指すこと」と適応力の関連は見られたが、「そこへ完璧さをさらに要求すること」の上乗せは確認できなかった、ということです。
研究結果②:自律的動機づけは、どちらの特徴とも関連した
次は、「自分で学びたい」と感じる自律的動機づけです。
研究者の予想では、エクセレンシズムとの関連が中心になると考えられていました。しかし、結果は少し異なりました。エクセレンシズムも、完璧さを求める傾向も、自律的動機づけと有意な正の関連を示したのです。[1]
図1のモデル予測値は、次のとおりです。
| 統計モデル上のプロフィール | 自律的動機づけの予測値(1~7点) |
|---|---|
| 卓越性も完璧さも高くない状態 | 3.722 |
| 卓越性を追求する状態 | 4.411 |
| 卓越性に加えて完璧さも求める状態 | 5.100 |
卓越性の追求には、学ぶ理由を自分で見いだすこととの関連がありました。そして、完璧さを強く求める人でも、自分の学びへの興味や価値づけが高い場合があると分かりました。
この結果は、完璧さを求める人に主体的な意欲がないという単純な見方では説明できないことを示しています。大切なのは、その人がほかにどんな動機を抱えているかです。
研究結果③:完璧さの追求は、プレッシャーによる意欲とも関連した
統制的動機づけでは、違いがよりはっきりしました。
エクセレンシズムから統制的動機づけへの明確な関連は確認されなかった一方、完璧さを追求する傾向は、統制的動機づけと正の関連を示しました。[1]
| 統計モデル上のプロフィール | 統制的動機づけの予測値(1~7点) |
|---|---|
| 卓越性も完璧さも高くない状態 | 2.679 |
| 卓越性を追求する状態 | 2.530 |
| 卓越性に加えて完璧さも求める状態 | 3.185 |
研究者のモデルでは、完璧さへの追求を上乗せすると、「よい結果を出したい」という前向きな意欲だけでなく、「期待に応えなければ」「失敗は許されない」といった圧力にも支えられた意欲が高くなる傾向がありました。
同じように長時間勉強する学生でも、学習の原動力は一つではありません。その中身を分けて考える必要があります。
研究結果④:「何のために学ぶか分からない」という無動機にも違い
無動機についても、3つのプロフィールの予測値には違いがありました。[1]
| 統計モデル上のプロフィール | 無動機の予測値(1~7点) |
|---|---|
| 卓越性も完璧さも高くない状態 | 3.024 |
| 卓越性を追求する状態 | 2.539 |
| 卓越性に加えて完璧さも求める状態 | 3.012 |
エクセレンシズムは無動機の低さと関連していました。一方、完璧さを求める傾向は無動機の高さと関連しました。
興味深いのは、完璧さを強く求める状態では、自律的動機づけが高い一方で、無動機も卓越性追求のみの状態より高く予測されていることです。
これは矛盾というより、「学びたい」という気持ちと、「何のために頑張っているのか分からなくなる」ような感覚が、同じ人の中に共存し得ると考える手がかりになります。
研究結果⑤:プラスとマイナスの動機が打ち消し合う可能性
研究者たちは追加のパス解析によって、完璧主義と適応力の間に明確な関連が見られなかった理由を検討しました。
図2で示された主な標準化係数は、次のとおりです。[1]
| 関連する項目 | 標準化係数の例 |
|---|---|
| 完璧さの追求 → 自律的動機づけ | +0.29 |
| 完璧さの追求 → 統制的動機づけ | +0.20 |
| 自律的動機づけ → 適応力 | +0.37 |
| 統制的動機づけ → 適応力 | −0.28 |
つまり、完璧さを求める傾向は、適応力と正に関連する自律的動機づけにも、負に関連する統制的動機づけにも結びついていました。
さらに、自律的動機づけを経由する正の間接的関連と、統制的動機づけを経由する負の間接的関連が互いに打ち消し合うというパターンが確認されました。全体の間接効果は統計的に有意ではありませんでした。[1]
研究者は、これを「相反する動機づけ(antagonistic motivations)」による説明として位置づけています。
ただし、この追加分析は探索的なもので、データは一時点で収集されています。実際に動機が順番に変化し、その結果として適応力が変化したと証明したものではありません。
なぜ「完璧を目指すほど適応力が上がる」とは限らないのか?
ここまでをまとめると、研究者が着目したのは「高い目標に向かう力」と「欠点のない状態を要求すること」の違いです。
卓越性を追求する姿勢では、十分に高い目標へ向けて努力しながら、必要に応じてやり方を変えることができます。この柔軟さは、予想外の課題への対応と親和的かもしれません。
一方、完璧さを追求する姿勢には、集中して学ぼうとする意欲があると同時に、失敗を避けなければならないというプレッシャーも伴う可能性があります。予定を修正することが「妥協」や「失敗」に感じられると、取り組み方の変更は難しくなるでしょう。
この説明は、研究結果を理解するための理論に基づく解釈です。論文が直接測ったのは質問紙の回答であり、全員の学習場面を観察して適応の過程を追跡したわけではありません。
エクセレンシズムを意識する4つのメリットとは?
今回の研究と関連する理論から、日常の学習にとって考えられる利点を整理します。以下は研究結果を踏まえた考え方であり、この4つを介入で検証した結果ではありません。
1. 高い目標を手放さずに、現実的な計画を立てられる
卓越性の追求は、目標を低くすることではありません。「十分に難しいけれど、努力と工夫によって届く」目標を考えます。現実との距離を確かめられることで、学習計画を立てやすくなるでしょう。
2. 予定外の出来事が起きたときに方法を変えやすい
試験範囲が変わったら勉強法を変える。提出期限が短くなったら優先順位を見直す。方法を変えることと努力をやめることを区別できる点は、適応力を考えるうえで重要です。
3. 結果だけでなく、学習する理由を確認できる
「なぜ学びたいのか」を自分の言葉で説明できると、行動の方向を見直しやすくなります。研究では、エクセレンシズムが自律的動機づけと正に関連していました。
4. 成果の基準を振り返り、改善につなげやすい
完璧な結果に届かなかったときでも、「何ができたか」「次にどこを改善するか」を区別できます。結果を一度の合否や点数だけで評価しない視点です。
完璧さへのこだわりで起こり得る3つの難しさ
1. 高い意欲がプレッシャーと同時に強くなる
今回の調査では、完璧さの追求は自律的動機づけだけでなく統制的動機づけとも関連しました。学びたい気持ちが強くても、評価への不安や罪悪感が重なると、学習の負担感が増えることが考えられます。
2. 追加の努力が、適応力の追加的な高さに結びつくとは限らない
卓越性の追求に完璧さへのこだわりを上乗せしても、適応力の有意な追加的関連は見られませんでした。取り組む時間やエネルギーの増加が、いつも同じ割合の成果につながるわけではないという見方につながります。
3. やる理由が見えなくなる場合がある
完璧さを求める傾向は、無動機とも正に関連しました。「高い目標を持っているのに、何のために続けているか分からない」と感じるときには、目標と動機を切り分けて考える余地があります。
学びに活かすための6つの具体的な方法
ここからは研究に基づいて考えられる実践上の工夫です。今回の論文がこれら6つの方法を実験して効果を確かめたわけではありません。
方法1:「完璧」ではなく「十分に高い到達点」を決める
「一つも間違えない」だけでなく、「重要な概念を説明できる」「模試で前回より改善する」など、達成したか判断できる基準を設定します。
一度で届かない場合は、目標の難しさと準備時間を見直してみましょう。目標を現実的にすることと、努力を放棄することは違います。
方法2:目標と、目標を追う理由を分けて書く
紙に「何を目指すか」と「なぜそれを目指すか」を別々に書いてみてください。
たとえば「資格に合格する」という目標に対して、「仕事の幅を広げたい」と書く人もいれば、「不合格なら周囲に見放されそう」と書く人もいるでしょう。
自分の理由を確かめることが、無理のない計画を考える出発点になります。
方法3:状況が変わったら、手順を変更してよいと決める
最初に考えた勉強法が合わなければ、別の教材や練習方法を試します。予定が崩れたときは、残り時間から優先順位をつけ直します。
「計画を守ること」と「学習目標に近づくこと」が食い違う場合もあります。後者に役立つかを基準に見直す方法です。
方法4:結果の振り返りを「できたこと」と「次の一手」に分ける
テストを終えたら、間違いだけを並べるのではなく、理解できていた内容も整理しましょう。
そのうえで、改善したい点を一つ選び、次の勉強で取り組む行動を具体化します。達成度の評価と自己否定を分けて考えられるようにします。
方法5:「他人にどう見られるか」だけで目標を決めない
他人からの評価が学習のきっかけになることもあります。しかし、それだけが理由になっていると感じたら、「自分にとって、この学びの価値は何か」を確認します。
必要なら、期待に応えることと自分で納得して学ぶことの両立を考えてみましょう。
方法6:勉強量と同時に、対応の柔軟さも振り返る
「今日は何時間勉強したか」に加えて、「新しい問題にどう対応したか」「分からないときに質問できたか」「予定を調整できたか」を振り返ります。
今回の研究が調べたのは、まさに変化への適応との関連です。勉強量だけでは見えない部分を意識する工夫になります。
具体例:満点を目指して勉強していた大学生の話
ここからは、研究結果を理解するための架空のストーリーです。実際の研究参加者の体験談ではありません。
大学2年生の佐藤さんは、試験でいつも高い点数を取ろうと努力していました。授業の復習も欠かさず、分からない部分があれば資料を読み直す。勉強すること自体は嫌いではありませんでした。
ただ、95点を取っても、残りの5点のことばかり考えてしまいます。テスト前には「満点でなければ意味がない」と感じ、細部を確認し続けて眠る時間が短くなる日もありました。
あるとき授業の担当者が変わり、試験では暗記より応用問題が重視されるようになりました。佐藤さんは、これまでのノートを完璧に覚える方法にこだわり、なかなか学習方法を切り替えられません。
そこで佐藤さんは、目標を「絶対に間違えない」から「初めての問題でも、学んだ原理を使って考えられる」に言い換えてみました。暗記にかける時間を少し減らし、友人との問題演習を増やすことにしました。
最初は、「暗記し残したところがあって大丈夫だろうか」と気になりました。それでも、学びの目的が「知識を使えるようになること」だと考え直すと、予定を変える理由が少し分かりやすくなりました。
この話で重要なのは、佐藤さんの努力が減ったことではありません。高い目標を持ちながら、状況に合わせて方法を調整する選択をしたことです。
※この事例は概念の説明用に創作したものであり、今回の研究でこのような方法の効果が実証されたという意味ではありません。
研究の限界と、結果を読むときの注意点
この研究から学べることはありますが、どの程度まで結論を広げられるかも確認しておきましょう。
1. 一時点の調査なので、原因と結果の順序は分からない
今回の調査は横断研究です。エクセレンシズムが適応力を高めたのか、適応力が高い人が卓越性を追求しやすいのか、ほかの要因が関わっているのかを、このデータだけで区別することはできません。
2. 適応力も意欲も、本人の回答で測っている
使用した尺度は、参加者が自分の特徴をどう認識しているかを測定しています。実際に授業の変更にどれだけ対応できたか、成績がどう変わったかを直接観察した研究ではありません。
3. 参加者はオンラインで集められた学生342人
Prolificで募集された高等教育の学生を対象にした研究です。年齢、教育制度、文化的背景が異なるあらゆる学生や社会人に、同じ数値が当てはまるとは限りません。
4. 追加のパス解析は探索的なもの
正と負の動機が相殺されるという説明は興味深いものですが、調査後に検討された追加分析です。今後、時間をおいて繰り返し測定した研究や介入研究で、関連の経路を確かめる必要があります。
5. モデル上の予測値は、実際の3群比較ではない
図1の3つのプロフィールは、尺度得点を一定の条件に設定した場合の回帰モデルによる予測です。「学生を3つのグループに分けてそれぞれ何点だった」という測定値ではありません。
また、個々の学生が必ずその傾向を示すという意味でもありません。統計的な平均的関連を示す結果として読むことが適切です。
よくある質問
Q. エクセレンシズムは、ただ目標を低くすることですか?
いいえ。エクセレンシズムは、非常に高い水準の成果を目指す姿勢です。完璧主義との違いは、欠点のなさを絶対的に求めるかどうかや、目標に向かう方法の柔軟さにあります。
Q. 完璧主義の学生は学ぶ意欲が低いのですか?
この研究では、完璧さの追求は自律的動機づけとも正に関連していました。同時に、統制的動機づけや無動機とも正に関連しています。意欲を「ある・ない」だけで判断するより、何がその意欲を支えているかを見る必要があります。
Q. この研究は、エクセレンシズムに変える訓練の効果を調べたのですか?
いいえ。学生342人の回答から特徴間の関連を調べた研究です。考え方を変えるためのプログラムを実施し、その前後を比較したものではありません。
Q. この結果は、仕事やスポーツにも当てはまりますか?
今回の分析対象は高等教育の学生で、学習動機と適応力を調べました。仕事やスポーツにも関連する理論はありますが、この記事の具体的な数値をそのまま別の領域に適用することはできません。
まとめ:高い目標を持つことと、完璧を求めることを分けて考える
2026年に発表されたDonaldsonらの研究では、学生342人を対象に、エクセレンシズムと完璧主義の違いが検討されました。[1]
エクセレンシズムは、適応力の高さ、自律的動機づけの高さ、無動機の低さと関連していました。一方、完璧さへの追求は自律的動機づけだけでなく、統制的動機づけや無動機とも関連しました。
また、卓越性の追求に完璧さを上乗せしても、適応力への明確な追加的関連は確認されませんでした。追加分析では、プラスとマイナスの動機づけが互いに相殺される可能性が示されています。
日々の勉強で考えるなら、問いは「もっと完璧になれるか」だけではありません。
「十分に高い目標に向かって、状況に合う方法を選び直せているか」。
その視点を持つことが、努力の質と柔軟さを振り返る手がかりになります。
参考資料
- Donaldson, P.-A., Boivin, T. L. D., & Gaudreau, P. (2026). Perfectionism and excellencism in post-secondary students: Distinguishing their associations with adaptability and motivation. Educational and Developmental Psychologist, 43(2), 244–258. https://doi.org/10.1080/20590776.2026.2682173
- 研究者公開データ・資料(Open Science Framework):https://osf.io/5t74j
※本記事の数値・研究結果は上記論文に基づきます。日常の実践例と架空のストーリーは、研究結果から考えられる応用を説明するために構成したもので、当該論文で実証された介入法ではありません。

