記憶をつかさどる「海馬(かいば)」は、私たちの脳の中でも特に重要な役割を果たす器官です。学んだことを忘れないように記録したり、新しい道を覚えたりする際に活躍する海馬は、日常生活のあらゆる場面で働いています。
「最近の出来事が思い出せない」「方向感覚が鈍くなった」といった悩みも、実は海馬の働きが関係していることがあります。逆に、海馬を意識して鍛えることで、記憶力や集中力が向上し、認知症予防にもつながります。
この記事では、海馬の基本的な仕組みから、その役割、鍛え方までをわかりやすく解説します。あなたの脳を健康に保ち、より豊かな生活を送るためのヒントを見つけましょう。
メンタルコーチしもん
・メンタル・睡眠の専門家 / 作家 / 講師
・YouTube登録者数1.4万達成
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・29年間の睡眠障害を克服
・IQ上位0.1%『GIFTED EYES』メンバー
・上級睡眠健康指導士
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
1. 海馬とは? – 基本的な定義と役割
海馬(かいば)とは、脳の側頭葉に位置する部位で、記憶の形成や空間認識に深く関わる重要な器官です。
その形がタツノオトシゴ(英語で「hippocampus」)に似ていることから、この名前がつけられました。
海馬は新しい情報を記憶として保存するプロセスを担っており、学習や経験を蓄積する上で欠かせません。特に、短期記憶を長期記憶に変換する役割があり、日常生活で見聞きしたことや出来事が「記憶」として定着するのは海馬の働きによるものです。
2. 海馬の構造と脳内での位置
海馬は大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)と呼ばれる脳の領域に属し、情動や記憶、動機づけに関与するシステムの一部です。
- 左右の脳に1つずつ存在しており、脳全体を俯瞰したときに「C」の字のように曲がった形をしています。
- 側頭葉の深部に位置し、扁桃体(へんとうたい)や視床(ししょう)と連携して感情や記憶を司ります。
3. 海馬の主な働き
3-1. 記憶の形成と定着
海馬の最も重要な役割は、新しい情報を記憶として脳に定着させることです。
情報はまず短期記憶として処理され、海馬によって選別・整理された後、長期記憶として保存されます。
たとえば、友人と会った日の出来事や、新しいスキルを学んだ瞬間などは、海馬を通じて脳に記録されます。
3-2. 空間認識とナビゲーション
海馬は空間記憶にも関与しており、場所の記憶や方向感覚を司っています。
- 新しい道を覚える
- 自分がどこにいるかを把握する
- 目的地までのルートを思い描く
これらの行動は、すべて海馬の働きによるものです。迷路や道を進む実験で、海馬が活発に活動することが確認されています。
3-3. 情動とストレス反応
海馬は感情やストレス反応にも影響を与えます。
ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されると、海馬がダメージを受けやすくなります。これにより記憶力が低下し、認知機能の衰えが進むことがあります。
「コルチゾール」とは?ストレスホルモンの働きと健康への影響、効果的なコントロール方法を徹底解説
4. 海馬がダメージを受けるとどうなる?
海馬が損傷すると、記憶障害や認知症などが発生する可能性があります。
特に、アルツハイマー型認知症では海馬が最初にダメージを受けることが多く、もの忘れや場所の認識障害が初期症状として現れます。
- 短期記憶の喪失:「最近の出来事が思い出せない」
- 新しい情報が記憶できない:「人の名前を覚えられない」
- 方向感覚の低下:「よく知っている道で迷う」
これらの症状は海馬の機能低下によって引き起こされます。
アミロイドベータとは?アルツハイマー病との関連と最新研究
5. 海馬を鍛える方法 – 記憶力を高めるために
海馬は加齢とともに萎縮する傾向がありますが、脳を積極的に使うことで海馬を鍛え、記憶力を向上させることが可能です。以下に、海馬を活性化する具体的な方法を紹介します。
5-1. 運動を取り入れる
有酸素運動は海馬の神経細胞を増やし、脳の可塑性(かそせい)を高めます。
週3回程度のウォーキングやランニングは、記憶力向上に効果的です。
ニューロンプラスティシティとは?脳の可塑性とその鍛え方を徹底解説
5-2. 読書や学習を習慣化する
新しい知識を学ぶことは、海馬の神経ネットワークを強化します。
本を読む、語学を学ぶ、楽器を弾くなど、脳に刺激を与える活動を日常に取り入れましょう。
5-3. 良質な睡眠を確保する
睡眠中に海馬は記憶を整理し、定着させます。
睡眠不足は海馬の働きを妨げるため、1日7〜8時間の質の良い睡眠を確保することが重要です。
睡眠効率90%を目指せ!睡眠の質を高める5つの方法とは?「なぜ睡眠効率100%ではないのか」
5-4. マインドフルネスや瞑想を行う
ストレスを軽減するためにマインドフルネスや瞑想を取り入れましょう。
これによりコルチゾールの分泌が抑えられ、海馬の健康が維持されます。
マインドフルネス瞑想とは?効果や実践方法を徹底解説
6. 海馬と病気 – 認知症との関係
海馬の機能低下はアルツハイマー型認知症の進行と深い関係があります。
初期の段階で海馬が萎縮し、記憶障害が目立ち始めます。
6-1. 認知症の予防策
- 定期的に運動する
- 新しいことに挑戦する
- 社会的なつながりを持つ
これらの習慣は、海馬の萎縮を防ぎ、認知症のリスクを軽減します。
7. 海馬に関する最新の研究
近年の研究では、脳の可塑性に関する発見が進んでおり、海馬が再生可能であることが示されています。特に、BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質が海馬の成長を促すことがわかってきました。
BDNFの分泌を増やすには、運動・バランスの取れた食事・瞑想などが効果的とされています。
8. まとめ – 海馬を理解して脳を活性化しよう
海馬は記憶や空間認識を担う脳の重要な部位であり、日々の生活に大きく関わっています。適切な運動や学習習慣を取り入れ、海馬を積極的に鍛えることで、記憶力の向上や認知症予防が期待できます。
脳の健康を維持し、豊かな人生を送るために、海馬の働きを理解し、日々の生活に活かしていきましょう。