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睡眠段階とは?ノンレム睡眠・レム睡眠の違いと睡眠の質を整える7つの方法を解説

「7時間眠ったのに、朝から眠い」「スマートウォッチに『深い睡眠が少ない』と表示された」。そんな経験はありませんか?

私たちは一晩中、同じ深さで眠っているわけではありません。寝入りばなの浅い眠り、ぐっすり眠る時間、脳が比較的活発になる時間が、夜の間に入れ替わっています。この変化を表すのが睡眠段階(睡眠ステージ)です。

睡眠段階は、睡眠医学や脳科学の研究で、脳波・眼球の動き・筋肉の活動などから判定されます。眠りを詳しく調べる医療機関では、睡眠ポリグラフ検査(PSG)などを用いて確認します。[1][2]

では、睡眠段階には何種類あり、それぞれ何が違うのでしょうか。深い睡眠は多いほどよいのでしょうか。睡眠周期の仕組みから、日常で睡眠を整える方法まで順番に見ていきましょう。

睡眠段階とは?眠っている間の脳と体の状態の分類

睡眠段階とは、眠っている間の脳波・眼球運動・筋活動などの特徴をもとに、睡眠をいくつかの状態に分類したものです。[1][2]

現在広く使用される分類では、睡眠は次の4段階に分けられます。

  • N1:覚醒から眠りに入る移行段階
  • N2:比較的浅いノンレム睡眠
  • N3:深いノンレム睡眠(徐波睡眠)
  • REM(レム睡眠):眼球が素早く動き、脳波が覚醒時に近づく睡眠

N1・N2・N3をまとめて「ノンレム睡眠」といいます。つまり、大きく分けるとノンレム睡眠とレム睡眠の2種類で、そのうちノンレム睡眠には3つの段階があります。

「睡眠段階」と「睡眠周期」は何が違う?

睡眠段階は、ある時点でどの状態で眠っているかを示します。一方、睡眠周期は、複数の睡眠段階が入れ替わる繰り返しの流れを意味します。

例えば、眠り始めにN1、N2を通ってN3へ進み、その後浅い睡眠を経てレム睡眠が現れる、といった変化です。ただし、毎回まったく同じ順番をたどるわけではなく、短い覚醒も起こります。[1][3]

ノンレム睡眠の3段階:N1・N2・N3はどう違う?

ノンレム睡眠では、脳波の特徴などに応じて段階が分かれます。まずは、それぞれを見ていきましょう。

N1:うとうとし始める、眠りの入り口

N1は、起きている状態から眠りに移る段階です。呼びかけや物音で目が覚めやすく、「まだ眠っていなかった」と感じる場合もあります。

脳波には、覚醒時とは異なる比較的ゆっくりした活動が現れます。授業中や電車内で一瞬うとうとした経験がある人は、その感覚を想像すると分かりやすいでしょう。[2]

N2:眠りが安定し始める段階

N2になると、N1よりも睡眠としての状態がはっきりします。脳波には、睡眠紡錘波(スリープスピンドル)やK複合波と呼ばれる特徴的な波形が現れます。[2]

N2は「浅い睡眠」と呼ばれることもありますが、「質の悪い睡眠」という意味ではありません。成人の夜間睡眠の中で大きな割合を占める、通常の睡眠段階です。睡眠紡錘波などの脳活動と記憶の処理との関連も研究されています。[4]

N3:深いノンレム睡眠、別名「徐波睡眠」

N3は、ノンレム睡眠の中で最も深い段階です。脳波にゆっくりした大きな波(徐波)が目立つため、徐波睡眠(slow-wave sleep)とも呼ばれます。[1][2]

一般に目覚めさせにくい段階で、特に夜の前半に多く現れます。身体の回復に関わる生理的な変化や記憶の処理について、重要な研究対象となっています。[1][4]

ただし、N3の時間だけが睡眠の良し悪しを決めるわけではありません。N2やレム睡眠も、正常な睡眠の構成要素です。

レム睡眠とは?夢を見ることが多い眠り

レム睡眠(REM sleep)のREMは、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の略です。

レム睡眠では、眼球が素早く動き、脳波は覚醒しているときに近い活動を示します。一方、体の骨格筋は通常、大きく力が抜けた状態になります。鮮明な夢を見ることが多いのも、この段階の特徴です。[1][2]

ただし、「夢を見るのはレム睡眠だけ」というわけではありません。ノンレム睡眠中にも夢体験は報告されています。[2]

また、レム睡眠は睡眠の後半、特に明け方に向かって長くなる傾向があります。起床時間を極端に早めたり、睡眠全体を短くしたりすると、夜の後半にある睡眠を削ることにもなります。[1][3]

睡眠段階の違いを一覧で比較

睡眠段階 主な特徴 一晩の中での傾向
N1 覚醒から睡眠への移行、目覚めやすい 入眠時や睡眠中の移行時に出現
N2 睡眠紡錘波・K複合波が特徴 夜を通して多く見られる
N3 ゆっくりした大きな脳波、深い眠り 夜の前半に比較的多い
REM 急速眼球運動、筋肉の脱力、比較的活発な脳波 夜の後半に長くなりやすい

この表は一般的な成人の睡眠の特徴です。年齢、睡眠不足、薬、健康状態、生活時間などによって、各段階の長さや現れ方は変わります。[1][3]

昔の資料に「ノンレム睡眠は4段階」と書いてあるのはなぜ?

以前は、深いノンレム睡眠を「段階3」と「段階4」に分ける分類が広く使われていました。その後の米国睡眠医学会(AASM)の分類では、両者をまとめてN3と扱うようになりました。[5]

そのため、古い教科書と新しい記事で段階の数が違って見えても、分類法の違いが背景にある場合があります。

一晩の睡眠段階はどう変わる?約80〜100分の睡眠周期

米国国立心肺血液研究所(NHLBI)は、睡眠周期がおおむね80〜100分で繰り返され、通常一晩に4〜6周期現れると説明しています。[1]

ただし、これは目安です。「必ず90分ごとに目覚ましをかければすっきり起きられる」と決められるほど、睡眠周期は一定ではありません。

一般的な一晩の流れには、次の特徴があります。

  1. 寝入りばな:N1からN2へ、さらにN3が現れやすい。
  2. 夜の前半:深いN3が多く、徐波睡眠がまとまって現れる。
  3. 夜の後半:深い睡眠が減る傾向があり、レム睡眠の時間が長くなる。
  4. 明け方:比較的浅いノンレム睡眠やレム睡眠が増える。

途中で短く目覚めることもあり、そのすべてが異常を意味するわけではありません。[1][3]

睡眠段階の割合に「正解」はある?

成人の睡眠ではN2が多くを占め、レム睡眠は全体の約5分の1程度と説明されることがあります。ただし、割合は年齢や測定条件で変わり、誰にでも当てはまる理想の比率はありません。[4]

特に深い睡眠のN3は、加齢に伴って減少する傾向が知られています。「昨夜はN3が何%だったから失敗」という判定は適切ではありません。[1][2]

睡眠段階を知る3つのメリット

1. 「睡眠時間」と「睡眠の中身」を分けて考えられる

同じ7時間でも、一晩を通した睡眠の経過は人によって異なります。睡眠段階を知ると、睡眠が単に長さだけでなく、複数の状態から構成されていることが分かります。

ただし、睡眠段階の比率だけで健康状態を判定することはできません。朝の休養感や日中の眠気も重要な判断材料です。[6]

2. 深い睡眠とレム睡眠の役割を理解しやすくなる

記憶の形成や整理に、ノンレム睡眠とレム睡眠がそれぞれ関わる可能性が研究されています。2025年公表の総説でも、睡眠段階ごとの脳活動と記憶の過程が詳しく検討されています。[4]

ただし、ある段階を人為的に増やせば、必ず記憶力が上がると証明されたわけではありません。

3. 睡眠アプリの数値を冷静に読み取れる

「浅い睡眠が長い」「レム睡眠が少ない」と表示されたとき、それがどの段階を意味するのかを理解できます。アプリの数値を過度に心配せず、長い期間の生活パターンを見る手がかりになります。

睡眠段階を見るときの3つの注意点

1. 深い睡眠が多いほど、必ずよい睡眠とは限らない

睡眠にはN1・N2・N3・レム睡眠という複数の段階が必要です。深い睡眠だけを増やすことを目標にして、必要な睡眠時間を削るのは本末転倒です。

2. スマートウォッチの判定は推定値

医療機関の睡眠ポリグラフ検査では、脳波・眼球運動・筋電図などを使って睡眠段階を判定します。一方、一般的なスマートウォッチは主に体の動きや脈拍などから段階を推定しています。

2025年の研究では、6種類の市販ウェアラブル機器を睡眠ポリグラフ検査と比較し、機器や睡眠段階によって判定性能に差があることが報告されました。例えば、研究対象となったApple Watch Series 8がレム睡眠の区間を正しくレム睡眠と判定した割合は約68.6%でした。[7]

この数字は、すべてのスマートウォッチや現在の機種の精度を表すものではありません。「深い睡眠が少ない」という表示だけで、病気や睡眠不足を判断することは避けましょう。

3. 年齢や生活状況によって段階が変化する

高齢になると、深い徐波睡眠は減る傾向があります。また、飲酒、睡眠不足、服薬、交代勤務、睡眠障害なども睡眠の経過に影響します。[1][3]

数字を比べる場合は、同じ人の生活の変化も合わせて考えることが大切です。

睡眠の質を整える7つの具体的方法

睡眠段階を直接操作しようとするよりも、必要な睡眠時間と、眠りやすい環境を確保することが基本になります。以下は厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」や米国CDCなどが紹介する、睡眠全体を整えるための方法です。[6][8]

方法1:起床時刻をできるだけそろえる

平日と休日で起床時刻が大きく変わると、眠気や体内時計のタイミングも揺れやすくなります。まずは無理のない起床時刻を決めて、毎日の差を小さくするところから始めましょう。

方法2:必要な睡眠時間を削らない

夜更かしを続けていると、一晩の後半に多く現れるレム睡眠の時間も削りやすくなります。厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人について、個人差を踏まえつつ6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することを勧めています。[6]

これは「6時間で誰でも十分」という意味ではありません。日中の眠気や休養感も見ながら、自分に合う時間を考えましょう。

方法3:朝から日中に光を浴びる

朝の光は体内時計を調整する手がかりになります。起床後にカーテンを開け、可能であれば日中に屋外を歩くなど、明るい環境で過ごす時間を取り入れましょう。[6]

方法4:夜は光と刺激を控えめにする

就寝前の強い照明やスマートフォンの使用は、眠るタイミングに影響することがあります。寝る前は照明を落とし、画面を見る時間を短くするなどの工夫が考えられます。[6][8]

方法5:寝酒に頼らない

アルコールを飲むと眠気を感じる場合がありますが、睡眠後半の覚醒や睡眠構造の乱れにつながることがあります。寝つきをよくする目的でお酒を使う習慣は見直しましょう。[9]

方法6:カフェインを取る時刻に注意する

夕方以降のコーヒーやエナジードリンクなどが、寝つきに影響する人もいます。カフェインの作用には個人差があるため、眠りにくさを感じる場合は午後から夕方以降の摂取を調整してみましょう。[8]

方法7:日中の活動と寝室環境を整える

定期的な運動、静かで暗めの寝室、適切な室温、落ち着いて眠れる寝具なども睡眠の助けになります。すべてを一度に変えるのではなく、取り組みやすいものから試すと続けやすくなります。[6][8]

具体例:スマートウォッチの「深い睡眠」に振り回された会社員

ここで、架空の会社員・佐藤さんの例を考えてみましょう。

佐藤さんは最近、スマートウォッチで毎晩の睡眠を記録するようになりました。ある朝、画面に「深い睡眠:42分」と表示されているのを見て、「これでは体が休まっていないのでは」と不安になりました。

翌朝も数値が気になり、寝る前からアプリのことを考えてしまいます。ところが、実際には前日の仕事で夜更かしをし、寝る直前までスマートフォンを使っていました。

そこで佐藤さんは、まずアプリの数字を細かく追いかけるのをやめ、毎朝の起床時刻と、日中の眠気を記録することにしました。就寝時間を確保し、朝は窓を開けて光を取り入れます。

数週間後、朝のすっきり感が以前より増したように感じました。ただし、スマートウォッチの「深い睡眠」の数値は日によって変わります。

佐藤さんが学んだのは、一晩の睡眠段階の数字を競うより、毎日の睡眠習慣と体調の変化を見たほうが役立つ場合があるということです。

※この話は説明のための架空の例であり、研究の参加者や特定の人の治療結果ではありません。

睡眠段階と似た言葉・混同しやすい言葉

睡眠の質との違い

睡眠の質は、眠りの連続性、休養感、日中の状態などを含めて考える広い概念です。睡眠段階はその一部を表す指標ですが、同じものではありません。

睡眠の規則性との違い

睡眠の規則性は、寝る時刻や起きる時刻、睡眠と覚醒のパターンが日によってどれほど安定しているかを示します。睡眠段階は一晩の中の状態、睡眠の規則性は日々の睡眠パターンの安定性に注目した言葉です。

睡眠ポリグラフ検査との違い

睡眠段階は分類の名称で、睡眠ポリグラフ検査は睡眠を測定する検査方法です。医療機関では呼吸、脳波、眼球運動、筋活動などを記録して、睡眠時無呼吸症候群などを調べることがあります。[7]

こんなときは睡眠の相談を

十分な睡眠時間を確保しているのに強い日中の眠気が続く、いびきと呼吸の停止を指摘される、夜中に何度も目が覚めて日常生活に支障がある、といった場合は、医療機関への相談を検討してください。

スマートウォッチの睡眠段階の数字だけで睡眠障害を診断することはできません。 継続する症状や生活への影響を踏まえて、必要な検査を医療者と相談することが大切です。[6][7]

まとめ:睡眠段階は「よい睡眠」を理解するための手がかり

睡眠段階には、浅いノンレム睡眠のN1・N2、深いノンレム睡眠のN3、そしてレム睡眠があります。これらは一晩のうちに何度も入れ替わり、夜の前半には深い睡眠が、後半にはレム睡眠が多くなる傾向があります。

睡眠段階を知ることは、眠りの仕組みを理解する助けになります。ただし、「深い睡眠を何分取れたか」だけで睡眠の良し悪しを決めることはできません。

大切なのは、必要な時間を確保し、できる範囲で生活リズムと睡眠環境を整え、朝の休養感や日中の調子も確かめることです。

参考文献・資料

  1. 米国国立心肺血液研究所(NHLBI). How Sleep Works — Sleep Phases and Stages. https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep/stages-of-sleep
  2. 日本睡眠学会. 「ノンレム睡眠とレム睡眠」. https://jssr.jp/basicofsleep2
  3. 米国国立小児保健・人間発達研究所(NICHD). What happens during sleep? https://www.nichd.nih.gov/health/topics/sleep/conditioninfo/Pages/what-happens.aspx
  4. Sleep’s contribution to memory formation. Physiological Reviews, 2025. https://doi.org/10.1152/physrev.00054.2024
  5. 米国国立医学図書館(NLM). Sleep Stages — MeSH. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/mesh/68012894
  6. 厚生労働省. 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」関連情報. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
  7. Schyvens A-M, et al. A performance validation of six commercial wrist-worn wearable sleep-tracking devices for sleep stage scoring compared to polysomnography. Sleep Advances, 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12038347/
  8. 米国疾病予防管理センター(CDC). About Sleep. https://www.cdc.gov/sleep/about/index.html
  9. 米国国立衛生研究所(NIH). Healthy Sleep. https://health.nih.gov/health-topics-a-z/healthy-sleep