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寝酒とは?寝つきがよくなるのに睡眠の質が下がる理由・健康への影響・やめる7つの方法を解説

「お酒を少し飲むと、すぐ眠れる気がする」「夜中に何度も起きるのに、寝る前の一杯が手放せない」。そんな経験はありませんか?

仕事が終わってから寝るまでの時間に、ビールやワイン、焼酎などを飲んで眠気を誘おうとする。これが寝酒(ねざけ)です。寝酒は昔から身近な習慣ですが、睡眠医学では、眠りの質を整える方法としては勧められていません。[1][2]

「でも、実際にお酒を飲むと眠くなるのでは?」という疑問は自然です。アルコールには確かに眠気を促す作用があります。問題は、寝つきやすさと、一晩を通した睡眠のよさが同じではないことです。

この記事では、寝酒の意味、脳と睡眠への働き、メリットとして感じやすいこととデメリット、科学的根拠、寝酒に頼らず眠るための具体的な方法を紹介します。

寝酒とは?眠るためにアルコールを飲む習慣

寝酒とは、寝つきをよくしたり、不眠を和らげたりする目的で、就寝前にお酒を飲むことです。英語では nightcap と表現されることがあります。

例えば、布団に入っても仕事のことを考えてしまい、なかなか眠れない夜。そこで「一杯飲めば眠くなるから」とお酒を飲むなら、寝酒にあたります。

晩酌と寝酒の違いは?

同じ夜の飲酒でも、言葉の焦点は少し異なります。

言葉 主な意味 睡眠との関係
寝酒 眠るためにお酒を飲むこと 睡眠を目的としている
晩酌 夕食時や夜にお酒を楽しむこと 睡眠が主な目的とは限らない
深酒 一度に多くのお酒を飲むこと 飲酒量が多い状態を指す
不眠への治療 不眠の原因を評価し、適切な治療を行うこと アルコールを睡眠薬の代わりに用いることではない

寝酒かどうかを分けるのは、主に「眠るために飲んでいるか」という目的です。ただし、晩酌であっても、飲む量や時刻によって睡眠に影響する可能性はあります。[1]

なぜ寝酒をすると眠くなるの?アルコールと脳の働き

アルコールは中枢神経の働きを抑える作用を持ち、飲酒後に眠気やリラックス感が生じることがあります。そのため、飲んだ直後は「今日は眠れそう」と感じる人もいるでしょう。

ところが、アルコールは飲んだまま体内に残り続けるわけではありません。時間とともに分解・代謝され、夜の後半になると眠り方が変化します。厚生労働省の睡眠ガイドは、飲酒が一時的に入眠を促しても、睡眠後半の質を悪化させ、中途覚醒を増やすと説明しています。[1]

ここで覚えておきたいのが、次の2つの違いです。

  • 寝つき:布団に入ってから眠り始めるまでのこと。
  • 睡眠の質:眠りの途中で何度起きるか、睡眠段階がどう変化するか、朝に休養感があるかなどを含むこと。

「10分で眠れた」だけでは、朝までよく眠れたとは判断できません。寝酒は、最初の眠気だけを強く感じさせることがあるのです。

寝酒のメリットとは?感じやすい3つの一時的な作用

寝酒が繰り返されるのには、「飲むと眠れる」という実感があるからでしょう。ただし、ここでいうメリットは本人が短時間に感じやすい作用であり、健康的な睡眠が改善することを意味しません。

1. 飲んだ直後に眠気を感じることがある

アルコールの鎮静作用によって、飲酒後に眠くなる場合があります。ただし、2025年のメタ分析では、寝つくまでの時間が短くなるという明確な結果は、主に多量飲酒で見られました。[2]

2. 緊張がやわらいだように感じることがある

仕事や人間関係の不安を抱えているとき、飲酒によって一時的に気持ちが変わることがあります。しかし、それはストレスや不眠の原因を解決したこととは異なります。

3. 「眠る準備ができた」という安心感が生じることがある

毎晩同じ飲み方をしていると、寝酒が就寝前の決まった行動になります。ただし、この安心感だけを頼りにすると、飲まない夜に不安を感じることもあります。[1]

寝酒の5つのデメリットとは?

1. 夜の後半に目が覚めやすくなる

アルコールは飲んだ直後と、体内で分解が進んだあとの睡眠に異なる影響を与えます。前半に眠りにつきやすくても、後半に眠りが乱れ、中途覚醒や早朝覚醒が増えることがあります。[1]

「飲んだ日はすぐ眠れるのに、午前3時ごろ目が覚める」という経験は、こうした影響と関係している可能性があります。ただし、夜中に起きる原因は飲酒だけとは限りません。

2. レム睡眠が減る場合がある

睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠があり、一晩の中で変化します。

2025年のシステマティックレビュー・メタ分析では、飲酒によってレム睡眠の開始が遅れ、レム睡眠の時間が短くなる傾向が確認されました。低用量の飲酒でも影響が見られ、飲酒量が増えるほど変化が強くなる傾向がありました。[2]

レム睡眠には記憶や感情の処理との関連が研究されていますが、今回の分析は「寝酒で必ず記憶力が落ちる」と直接証明したものではありません。

3. いびきや睡眠時無呼吸を悪化させる可能性がある

アルコールは、睡眠中の呼吸にも影響します。2018年の14研究・計422人のメタ分析では、アルコール摂取後に、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が平均して1時間あたり2.33回増え、平均血中酸素飽和度が低下しました。特に、いびきをかく人や閉塞性睡眠時無呼吸のある人では、影響が大きい傾向がありました。[3]

いびきが大きい、呼吸が止まると言われる、昼間に強い眠気がある場合は、寝酒だけの問題として片づけず、医療機関で相談することが大切です。

4. 翌朝に休んだ感じが得られない場合がある

睡眠中に何度も目が覚めたり、睡眠段階が変化したりすれば、「長く寝たはずなのにすっきりしない」と感じることがあります。寝酒は、眠り始める速さと引き換えに、一晩を通した睡眠を乱す可能性があるのです。[1][2]

ただし、2025年のメタ分析では、総睡眠時間や睡眠効率などの結果には不確実性が大きいとされました。すべての睡眠指標が、同じ程度に悪化すると断定はできません。[2]

5. 習慣化し、飲まないと眠れない状態につながることがある

寝酒を続けると、同じ飲酒量では作用を感じにくくなる耐性が生じたり、飲酒しない夜の不眠が問題になったりすることがあります。厚生労働省は、寝酒が依存や離脱の問題につながる可能性にも注意を促しています。[1]

特に毎晩多量に飲んでいる場合は、自己判断で急に断酒すると離脱症状が起こることがあります。これは後半の注意点で説明します。[5]

科学的根拠:寝酒と睡眠を調べた代表的な研究

研究①:2025年・27研究のメタ分析

Gardinerらは、健康な成人に対する飲酒後の睡眠を調べた27研究を統合しました。[2]

結果として、レム睡眠が始まるまでの時間が長くなり、レム睡眠の時間が減る傾向が見られました。体重1kgあたり0.50g以下のアルコール摂取でもレム睡眠への影響が観察され、飲酒量が増えるほど影響が強まりました。

一方、寝つくまでの時間が短くなる結果は、主として体重1kgあたり0.85g以上という高用量の飲酒で確認されました。

この研究で重要なのは、少量のお酒で睡眠全体が改善するという証拠にはならないという点です。睡眠時間や中途覚醒など、効果の確実性が低い指標もありました。

研究②:2018年・睡眠中の呼吸に関する14研究のメタ分析

14研究・422人を統合した分析では、アルコール摂取によってAHIが増え、酸素飽和度が低下しました。[3]

これは、お酒が単に「眠りを浅くする」だけでなく、睡眠中の呼吸にも関係することを示す結果です。ただし、研究対象や飲酒量には違いがあり、増加したAHIの数値がそのまますべての人に当てはまるわけではありません。

日本の公的な睡眠ガイドではどう説明されている?

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、晩酌を控えめにし、寝酒をしないことが勧められています。また、e-ヘルスネットでも、睡眠薬の代わりにお酒を使うことは推奨されていません。[1][6]

寝酒をやめたいときの7つの具体的な方法

寝酒を減らしたいときは、「飲まないように我慢する」ことだけではなく、寝酒が担っていた役割を、別の行動で置き換えることがポイントです。

1. まず、飲む理由を言葉にする

「眠れないから」「仕事の緊張が抜けないから」「寝る前の習慣だから」。どれが近いでしょうか。

理由が違えば、必要な対策も変わります。寝酒をした日としなかった日について、就寝時刻、夜中に目覚めた回数、朝の感覚を簡単に記録すると、傾向を振り返りやすくなります。

2. 就寝前の飲み物を置き換える

温かい麦茶や白湯など、アルコールとカフェインを含まない飲み物を選んでみましょう。大切なのは「寝る前に一息つく」という習慣を、飲酒なしで続けられる形にすることです。

飲み物を変えるだけで不眠が治るという意味ではありません。

3. 就寝前に落ち着く時間を作る

読書、静かな音楽、軽いストレッチ、呼吸をゆっくり整える時間など、自分が取り組みやすい行動を試します。厚生労働省の不眠に関する資料でも、眠る前に緊張をほぐすことが紹介されています。[6]

4. 毎日の起床時刻を大きくずらさない

眠れなかった翌日でも、生活に無理のない範囲で起きる時刻を整えると、睡眠リズムを把握しやすくなります。寝酒だけに注目せず、就寝・起床の習慣を合わせて振り返ることが大切です。

5. 朝から日中の光を取り入れる

起床後にカーテンを開けたり、日中に屋外で過ごしたりする時間を作ります。光は体内時計の時刻合わせに関わります。夜は明るすぎる照明を控え、昼夜のメリハリを意識しましょう。[1]

6. 「眠れない夜」の対応を先に決めておく

「眠れなかったらお酒を飲む」と決めていると、飲酒が唯一の選択肢になりやすくなります。

例えば「しばらく眠れず焦りが強くなったら、一度寝床から離れて静かなことをし、眠気が戻ったら寝床に戻る」という対応を考えておきます。これは不眠症の認知行動療法で使われる刺激制御法とも関係する考え方です。[4]

7. 不眠が続くなら、原因に合った支援を受ける

長く続く不眠には、不眠症、睡眠時無呼吸、不安や痛みなど、さまざまな背景があります。慢性不眠症には不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)が推奨されています。米国睡眠医学会の診療ガイドラインでも、CBT-Iは強く推奨されています。[4]

寝酒を繰り返すほど眠れない状態が続くなら、かかりつけ医や睡眠を専門とする医療機関へ相談してください。

寝酒を見直す具体例:夜中に目が覚める会社員の話

ここで、架空の会社員・田中さんの例を考えてみましょう。

田中さんは、翌日の仕事を考えると寝つけないことが増えました。ある夜、晩酌のあとにすぐ眠れた経験から、「一杯飲むと楽に眠れる」と感じるようになりました。

それから数週間、田中さんは寝る前にお酒を飲むようになります。確かに布団に入ってから眠るまでは早くなった気がします。しかし、午前3時ごろに目が覚め、その後は眠れない日もありました。朝は疲れが残り、「もっと飲めば朝まで眠れるのかもしれない」と考え始めます。

そこで田中さんは、まず1週間、飲酒時刻と睡眠の様子を記録することにしました。夜中に目が覚める日が続くことに気づき、飲酒に頼っていた理由が「眠れない不安」だと分かってきました。

田中さんは、寝る直前に仕事のメールを確認する習慣を見直し、静かな読書の時間を作りました。さらに、不眠が続いたため医療機関で相談し、睡眠について適切な助言を受けました。

この話で大切なのは、「お酒をやめれば全員すぐ眠れる」という結末ではありません。寝酒のきっかけと、眠れない原因を分けて考えたことです。

※田中さんは説明のための架空の人物で、論文に登場する実際の患者ではありません。

寝酒を見直すときの注意点と対策

毎晩大量に飲む人は、急に断酒する前に医療機関へ

長い間多量の飲酒を続けていた人では、急に飲酒をやめることで、手の震え、発汗、動悸、不安、不眠などの離脱症状が起こる場合があります。重症化すると、けいれんなど生命に関わることもあります。[5]

毎日多量に飲む、飲まないと手が震える、朝から飲酒するなどの状況がある場合は、自己判断で急に断酒せず、医療機関に相談してください。

睡眠薬や不安を抑える薬と一緒に飲まない

アルコールは薬の作用に影響し、眠気や呼吸への悪影響を強める場合があります。服薬中の場合は、飲酒について医師や薬剤師に確認してください。[5]

いびき・無呼吸・日中の強い眠気があるなら受診を

睡眠時無呼吸が疑われる場合、寝酒によって呼吸がさらに悪化する可能性があります。[3] 本人が気づかないこともあるため、家族から「寝ている間に呼吸が止まる」と言われた場合も相談を検討しましょう。

寝酒についてよくある質問

Q. 少量なら寝酒をしても大丈夫?

少量の飲酒でも、睡眠にまったく影響がないとは言えません。2025年のメタ分析では、低用量でもレム睡眠への影響が確認されました。[2] 「少しなら睡眠のためになる」と考えて飲むことは勧められません。

Q. お酒を飲むとすぐ眠れるのは気のせい?

必ずしも気のせいではありません。アルコールには鎮静作用があり、飲酒後に眠気を感じることはあります。ただし、睡眠全体への影響は別で、入眠の早さだけでは睡眠の質を評価できません。[1][2]

Q. 寝酒をやめたら、すぐ睡眠の質は改善する?

変化の仕方には個人差があります。不眠の原因が別にある場合もありますし、習慣的に多量飲酒していた人は離脱症状のために睡眠が乱れる場合もあります。改善を急がず、必要に応じて医療機関と相談することが大切です。[5]

Q. 眠れないときに最初に見直すことは?

飲酒習慣だけでなく、起床時刻、朝の光、就寝前の過ごし方、カフェイン、眠れないことへの不安を見直してみましょう。長引く不眠では、CBT-Iなど根拠に基づく治療が選択肢になります。[4][6]

まとめ:寝酒は「眠くなること」と「よく眠れること」を分けて考えよう

寝酒は、眠るためにお酒を飲む習慣です。アルコールによって一時的に眠気を感じることはありますが、夜の後半の眠り、レム睡眠、睡眠中の呼吸などに悪影響を及ぼす可能性があります。

「寝つけるから続ける」ではなく、「夜中に目が覚めないか」「朝は休んだ気がするか」「飲まない日にはどうなるか」という視点でも、睡眠を振り返ってみてください。

そして、眠るためのお酒が習慣になっているなら、寝酒の代わりになる行動を用意し、不眠そのものの原因に目を向けることが重要です。毎日多量に飲んでいる場合や不眠が続く場合は、医療機関に相談しながら進めましょう。

参考文献・資料

[1] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年一部修正)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

[2] Gardiner C, et al. (2025). The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 80, 102030. DOI: https://doi.org/10.1016/j.smrv.2024.102030 PMID: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39631226/

[3] The Impact of Alcohol on Breathing Parameters during Sleep: A Systematic Review and Meta-analysis. Sleep Medicine Reviews (2018). DOI: https://doi.org/10.1016/j.smrv.2018.05.007 PMID: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30017492/

[4] Edinger JD, et al. (2021). Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine, 17(2), 255–262. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7853203/

[5] National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA). Alcohol Use Disorder: From Risk to Diagnosis to Recovery. https://www.niaaa.nih.gov/health-professionals-communities/core-resource-on-alcohol/alcohol-use-disorder-risk-diagnosis-recovery

[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」「快眠と生活習慣」。https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004