論文では、暑すぎても寒すぎても睡眠や体温調節に影響するものの、その現れ方は異なるとまとめています。
寝具や衣類を使う現実的な睡眠環境では、暑さによって覚醒が増え、深いノンレム睡眠である徐波睡眠とREM睡眠が減少しました。さらに湿度が高い暑さでは、汗が蒸発しにくくなるため熱負荷が増し、睡眠への影響も強くなりました。
寒い環境では、寝具や衣類を使用すると睡眠段階そのものには大きな変化が見られないケースがありました。その一方で、睡眠が乱れていなくても心臓の自律神経活動は変化していました。
このため著者らは、寒さの影響は本人が睡眠の悪化として気づきにくい可能性を指摘しています。
また、正常な睡眠が得られる際には、体と寝具の間の「寝床内」の温度がおよそ32~34℃、相対湿度が40~60%に保たれていると紹介されています。これは「室温を32~34℃にする」という意味ではありません。
参考:Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm【2012年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
内容の信頼性:8/10
複数のヒト研究をもとに、暑さ・寒さだけでなく、湿度、寝具、衣類、高齢者、体温、自律神経、概日リズムまで幅広く検討している点は評価できます。
一方、この論文は新たに大規模な実験を行った研究ではなく、著者らの研究を含む既存研究を整理したレビュー論文です。著者ら自身も、寒冷環境が睡眠中の生理機能に与える影響や、温度変化と概日リズムとの関係について、さらなる研究が必要だとしています。したがって、この論文だけで「最適な室温」を一律に決められる内容ではありません。
何の研究か?
温度や湿度などの温熱環境が、人間の睡眠と24時間周期の体内リズムにどのような影響を与えるのかを整理した研究です。
具体的には、
- 暑い環境で睡眠がどう変化するか
- 寒い環境で睡眠がどう変化するか
- 寝具や衣類がその影響をどう変えるか
- 湿度が睡眠と体温調節にどう関係するか
- 高齢者では影響がどう異なるか
- 周囲の温度変化が体温の概日リズムにどう関係するか
などが取り上げられています。論文では、睡眠と体温調節は密接に結びついており、通常は夜になると深部体温が低下し、この体温低下が睡眠と関係すると説明されています。
研究した理由は?
人間の睡眠は温度環境から大きな影響を受けます。しかし、その影響は単純に「暑いか寒いか」だけでは決まりません。
人間は実際に眠るときには衣類や布団を使うため、裸に近い状態で行われた実験や動物実験の結果を、そのまま現実の睡眠環境に当てはめることは難しいと著者らは説明しています。そこで、寝具や衣類を含めた温熱環境と、人間の睡眠・体温調節との関係を整理することが、このレビューの目的とされています。
結果はどうだったか?
| 条件・テーマ | 結果 | 論文で示されたポイント |
|---|---|---|
| 暑い環境 | 覚醒時間が増え、徐波睡眠とREM睡眠が減少 | 暑さによって夜間の深部体温低下が妨げられ、睡眠が乱れやすくなった |
| 高温多湿の環境 | 暑さによる睡眠への悪影響が強まった | 湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体から熱を逃がしにくくなる |
| 寒い環境+寝具・衣類あり | 室温13~23℃、3~17℃の範囲で睡眠に有意な差が認められなかった研究があった | 寝具や衣類によって、体の周囲に暖かい環境が作られたことが関係すると考えられた |
| 高齢者:9℃と20℃の比較 | 活動量計で評価した睡眠の質に有意差なし | 寒い室温でも、寝具によって睡眠への影響が抑えられた可能性が示された |
| 寒い環境と自律神経 | 3~17℃では、睡眠段階に差がなくても、温度低下に伴って心拍変動が有意に変化 | 睡眠が大きく乱れていなくても、心臓の自律神経活動には寒さの影響が現れた ※ |
| 正常に眠れているときの寝床内環境 | 寝床内の温度は約32~34℃、相対湿度は40~60% | 室温ではなく、体と寝具の間にできる環境の温度・湿度が重要 |
| 周期的な温度変化と体内時計 | 一定温度の場合と比べて、深部体温が最低になる時刻が143分早まった研究が紹介された | 周囲の温度変化が深部体温の概日リズムに影響する可能性が示された |
※「室温が17℃から3℃へ下がるほど、深い睡眠中では副交感神経が優位になる方向に心拍変動が変化した」
暑さについては、寝具や衣類を使用した現実に近い条件でも、覚醒時間が増え、徐波睡眠とREM睡眠が減少しました。暑さによって夜間に本来起こる深部体温の低下が妨げられることが、睡眠の乱れと関係するとされています。高温多湿になると熱を汗の蒸発によって逃がしにくくなり、影響はさらに強くなりました。
寒さについては、衣類や寝具を使用した研究では、室温13~23℃、3~17℃の範囲で睡眠に有意な差が認められなかった研究が紹介されています。高齢者についても、9℃と20℃の比較で、活動量計による睡眠の質に有意差はありませんでした。寝具によって体の周囲に暖かい環境が作られたことが関係すると考察されています。
この研究では8人の男性が、17℃・10℃・3℃の3条件で睡眠しました。すると、睡眠のステージ2と徐波睡眠(SWS:深いノンレム睡眠)で、室温が17℃→10℃→3℃と下がるにつれて、LF/HFが有意に低下しました。さらに徐波睡眠では、LF/(LF+HF)も17℃より10℃・3℃で有意に低下しています。
| 温度が低下すると | 変化 |
|---|---|
| LF/HF | 低下 |
| LF/(LF+HF) | 徐波睡眠で低下 |
| 自律神経の状態 | 副交感神経が優位になる方向 |
| REM睡眠・覚醒時 | 有意な変化なし |
つまり、「寒くなると、深い睡眠中などでは心臓を落ち着かせる副交感神経が相対的に強く働くような変化が見られた」ということです。
重要なのは、「心拍変動そのものが単純に増えた/減った」という結果ではない点です。
変わったのは主に心拍変動を周波数解析したときのLFとHFのバランスです。著者らも、LF/HFやLF/(LF+HF)から自律神経活動を解釈する際には注意が必要だと述べています。
※寒くなるとLF/HFが低下しましたが、睡眠段階そのものには有意な変化がありませんでした。
周囲の温度と体内時計については、睡眠前後に温度を周期的に変化させることで、深部体温の最低点が変化した研究も紹介されています。
ある研究では、一定温度の場合と比べて、周期的な温度変化によって深部体温が最低になる時刻が143分早まったと報告されています。ただし、この分野について著者らは、さらに詳しい研究が必要としています。
カズエ・オカモト=ミズノ
東北福祉大学 カンセイ・フクシ・リサーチ・センター
コウ・ミズノ
東北福祉大学 幼児教育・初等教育部門
論文では以上の2名が著者として記載されています。
Okamoto-Mizuno et al. (2012). Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. J Physiol Anthropol, 31(1), 14.


