今回の研究では、「段階的なスマホ制限+心理教育+就寝前のリラクゼーション」を組み合わせた方法は、単純に就寝2時間前からスマホを禁止する方法より、睡眠と午後の認知パフォーマンスを改善しました。
具体的には、複合介入グループでは、
・睡眠効率が 85.10% → 90.60%
・寝つくまでの時間が 27.40 → 18.20
・就寝前の不安が有意に減少
・就寝前のストレスが有意に減少
・午後の持続的注意力と選択反応時間が改善
しました。
一方、総睡眠時間については、2つのグループの変化に有意な差はありませんでした。 夜中に目が覚めている時間についても、グループ間で有意な違いは確認されていません。
また、ジャンプ能力や敏捷性などの身体パフォーマンスには介入による有意な改善は確認されませんでした。
参考:段階的なスマートフォン使用制限と心理教育的指導および就寝前の自律神経調節を組み合わせることで、ノモフォビア(スマートフォン依存症)の身体活動的な学生の睡眠効率と時間帯別認知能力が向上する:ランダム化比較試験【2026年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
内容の信頼性:7/10
ランダム化比較試験であり、参加者はスマホ依存傾向の程度によって層別化されたうえで無作為に2群へ割り付けられています。
睡眠についても自己申告だけではなく、手首に装着したアクチグラフを使って睡眠効率や入眠時間などを測定しています。認知能力についても、コンピューターを使った反応時間テストが行われています。評価者にはグループ分けを知らせない方法も採用されています。
信頼性を下げる主な理由は、論文自身が次の限界を挙げているためです。
参加者は30人と少なく、対象も「身体活動を習慣的に行っている、中程度~高度のノモフォビアがある大学生」に限定されています。
介入期間は14日間で、その後の追跡調査も行われていないため、効果が長期間続くかどうかは分かっていません。
さらに、実際にスマホを使わなかったかどうかや呼吸法を行ったかどうかは、スマホのスクリーンタイムなどではなく参加者自身の記録によって確認されています。
複合介入グループだけが心理教育や呼吸法を受けているため、「段階的なスマホ制限」「心理教育」「呼吸法」のどれが、どの程度効果をもたらしたのかを個別に判断することもできません。
研究チーム自身も、より大規模な研究、長期追跡、客観的なスマホ使用時間の測定などによる再検証が必要だとしています。
何の研究か?
「スマホが手元にないと不安になる」といった中程度~高度のノモフォビアがある、身体活動を習慣的に行っている大学生を対象にした研究です。
参加者は30人で、平均年齢は21.9 ± 1.2歳。男性19人、女性11人でした。
30人をランダムに15人ずつ、次の2グループに分けました。
通常のスマホ制限グループ
14日間、毎日就寝2時間前からスマホを完全に使用しないようにしました。
スマホは電源を切るか機内モードにして寝室の外に置き、通知確認、通話、メッセージ、アプリ使用なども禁止しました。
さらに、睡眠・起床時間を一定にする、午後遅くのカフェインを避ける、夜の強い光やブルーライトを減らすといった一般的な睡眠衛生指導も受けました。
複合介入グループ
スマホを使わない時間を段階的に延ばしました。
- 1~3日目:就寝 30分前
- 4~7日目:就寝 60分前
- 8~14日目:就寝 120分前
さらに、スマホが使えないことへの不安や、スマホを確認したくなる衝動への対処方法などについて心理教育を受けました。
そして毎晩、10~12分間の就寝前リラクゼーションを実施しました。
内容は、横隔膜を使ったゆっくりした呼吸と注意のコントロールで、呼吸速度は1分間に5~6回、息を吐く時間を長めにする方法でした。
研究した理由は?
若い世代では、夜のスマホ使用が睡眠を妨げる要因の一つになっています。
論文では、スマホによる睡眠への影響として、画面からの光だけでなく、SNS、通知への警戒、取り残されることへの不安、何度もスマホを確認する行動などによって、寝る前に頭や感情が覚醒してしまうことも重要だと説明しています。
そのため、単純に「スマホを使わない」と禁止するだけではなく、
スマホを使わない時間を段階的に増やす
+ スマホから離れることへの不安に対処する
+ 寝る前の心理・身体的な興奮を落ち着かせる
という方法を組み合わせれば、より効果が高くなる可能性があります。
しかし、こうした複合的な方法が、睡眠だけでなく、時間帯による認知能力や身体能力の違いまで含めてどのような影響を与えるのかは十分に研究されていませんでした。
そこで今回の研究が行われました。
結果はどうだったか?
| 評価項目 | 結果 | 分かりやすく言うと |
|---|---|---|
| 睡眠効率(客観的評価) | 有意に改善 | 複合介入グループでは、睡眠効率が 85.10 ± 2.30% → 90.60 ± 2.60% に改善。効果量 d=0.78、P=0.014。ベッドにいる時間のうち、実際に眠れていた割合が約 5.5ポイント上昇した。 |
| 入眠潜時(寝つくまでの時間・客観的評価) | 有意に改善 | 複合介入グループでは、寝つくまでの時間が 27.40 ± 5.30分 → 18.20 ± 4.90分 に短縮。効果量 d=0.72、P=0.021。つまり、平均で約 9.2分早く眠りについた。 |
| 主観的な睡眠の質 | 有意に改善 | 複合介入グループでは、本人が感じる睡眠の質も改善した。効果量 d=0.76、P=0.018。単純にスマホを制限したグループでは有意な改善は確認されなかった。 |
| 総睡眠時間 | 有意差なし | 睡眠効率などは改善したものの、実際に眠った合計時間については、2グループの変化に明確な差は確認されなかった。 |
| 入眠後覚醒時間(眠ったあとに起きていた時間) | 有意差なし | 夜中に目覚めて起きていた時間については、複合介入と単純なスマホ制限との間で明確な差は確認されなかった。 |
| 就寝前の不安 | 有意に改善 | 複合介入グループでは、寝る前に感じる不安が有意に減少。効果量 d=0.81、P=0.012。単純なスマホ制限グループの効果量は d=0.24 で、有意な変化ではなかった。 |
| 就寝前のストレス | 有意に改善 | 複合介入グループでは、寝る前のストレスも有意に減少。効果量 d=0.74、P=0.017。単純なスマホ制限グループの効果量は d=0.21 だった。 |
| 午後の持続的注意力(PVT反応時間) | 有意に改善 | 複合介入グループでは、午後の反応時間が 439.00 ± 15.00 → 397.00 ± 14.00ミリ秒 に短縮。効果量 d=0.83、P=0.011。平均で約 42ミリ秒速く反応できるようになった。 |
| 午後の注意力低下(500ミリ秒以上の遅い反応) | 改善 | 複合介入グループでは、500ミリ秒以上かかった反応の回数が 6.30 ± 0.90回 → 3.40 ± 0.90回 に減少。午後に集中力が途切れる回数が少なくなった。 |
| 午後の選択反応時間(CRT) | 有意に改善 | 複合介入グループでは、複数の選択肢から判断して反応する時間が 390.00 ± 12.00 → 358.00 ± 11.00ミリ秒 に短縮。効果量 d=0.79、P=0.014。平均で約 32ミリ秒速く反応した。 |
| 選択反応課題の正答率 | 低下なし | CRTの正答率は全条件でおよそ 95〜96%。反応速度が速くなっても、正確性が犠牲になったわけではなかった。 |
| 朝の認知パフォーマンス | 有意差なし | 午後には注意力や反応速度の改善が確認されたが、朝の認知テストでは同様の有意な改善は確認されなかった。 |
| 身体パフォーマンス | 有意差なし | スクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプ、敏捷性テストでは、介入による有意な改善は確認されなかった。つまり、14日間では睡眠や午後の認知能力には効果が見られたが、身体能力には明確な変化がなかった。 |
① 睡眠効率が改善
複合介入グループでは、
85.10 ± 2.30% → 90.60 ± 2.60%
まで睡眠効率が上昇しました。
グループと時間の相互作用は、
F(1,28) = 6.84、p = 0.014、ηp² = 0.20
で有意でした。
効果量は d = 0.78 でした。
単純なスマホ制限グループでは有意な改善は確認されませんでした。
② 寝つくまでの時間が短縮
複合介入グループでは、入眠までの時間が
27.40 ± 5.30分 → 18.20 ± 4.90分
に短縮しました。
グループと時間の相互作用は、
F(1,28) = 5.97、p = 0.021、ηp² = 0.18
効果量は d = 0.72 でした。
単純なスマホ制限グループでは有意な変化は確認されませんでした。
③ 主観的な睡眠の質も改善
複合介入グループでは、本人が感じる睡眠の質についても有意な改善が確認されました。
F(1,28) = 6.31、p = 0.018、ηp² = 0.18、d = 0.76
単純なスマホ制限グループでは有意な改善は確認されませんでした。
④ 寝る前の不安が減少
複合介入グループでは、就寝前の不安が有意に減少しました。
F(1,28) = 7.12、p = 0.012、ηp² = 0.20、d = 0.81
単純なスマホ制限グループの効果量は d = 0.24 で、有意な変化ではありませんでした。
⑤ 寝る前のストレスも減少
複合介入グループではストレスも有意に減少しました。
F(1,28) = 6.45、p = 0.017、ηp² = 0.19、d = 0.74
単純なスマホ制限グループの効果量は d = 0.21 でした。
⑥ 午後の集中力・反応速度が改善
持続的な注意力を調べるPVTでは、複合介入グループの午後の反応時間が、
439.00 ± 15.00 → 397.00 ± 14.00
に短縮しました。
F(1,28) = 7.48、p = 0.011、ηp² = 0.21、d = 0.83
でした。
反応が500ミリ秒以上かかった「注意力の低下」の回数も、
6.30 ± 0.90回 → 3.40 ± 0.90回
に減少しました。
⑦ 選択反応時間も午後に改善
複数の選択肢から判断して反応するCRTでは、複合介入グループの午後の反応時間が、
390.00 ± 12.00 → 358.00 ± 11.00
に短縮しました。
F(1,28) = 6.89、p = 0.014、ηp² = 0.20、d = 0.79
でした。
正答率は全条件でおよそ**95~96%**を維持しており、速く答えられるようになった代わりに正確性が落ちたわけではありませんでした。
朝の認知テストでは、同様の有意な改善は確認されていません。
⑧ 身体能力には有意な改善なし
スクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプ、敏捷性テストでは、介入による有意なグループ間差は確認されませんでした。
つまり今回の14日間の研究では、睡眠や午後の認知能力には変化が確認された一方、身体パフォーマンスについては改善が確認されなかったという結果です。
発表者・所属機関
著者
- ウィエム・ベン・アラヤ:①②
- ウィッセム・ダービ:③④
- モハメド・アブデルカデル・スイシ:①⑤
- ニダル・ジェバブリ:③
- ハリル・イブラヒム・ジェイラン:⑥
- ナギハン・ブルチャク・ジェイラン:⑦
- ラウル・イオアン・ムンテアン:⑧
- ニザール・スイシ:①⑨
ウィエム・ベン・アラヤとウィッセム・ダービは、論文上で共同筆頭著者とされています。
① 身体活動・スポーツ・健康研究ユニット(UR18JS01)、チュニジア国立スポーツ観測所
② ジェンドゥーバ大学 エル・ケフ高等スポーツ・体育研究所
③ ジェンドゥーバ大学 エル・ケフ高等スポーツ・体育研究所 スポーツ科学・健康・運動研究ユニット
④ カタール警察アカデミー 警察大学 訓練部門
⑤ スファックス大学 スファックス高等スポーツ・体育研究所
⑥ アタテュルク大学 スポーツ科学部
⑦ バイブルト大学 大学院教育研究所
⑧ アルバ・ユリア「1918年12月1日」大学 法・社会科学部
⑨ マヌーバ大学 クサール・サイド高等スポーツ・体育研究所
Ben Alaya et al. (2026). Progressive Smartphone Restriction Combined with Psychoeducational Guidance and Pre-Sleep Autonomic Regulation Improves Sleep Efficiency and Time-of-Day Cognitive Performance in Physically Active Students with Nomophobia: A Randomized Controlled Trial. Life (Basel), 16(2), 212.


