うつ病では、症状が改善した後も「なぜ自分はこうなんだろう」と同じことを繰り返し考える反すう思考が残り、再発や症状の持続に関わるとされています。
今回の研究では、再発性の大うつ病性障害をもつ大学生を対象に、反すうそのものを減らすことに焦点を当てた「反すう焦点化認知行動療法(RFCBT)」をグループ形式で実施。その結果、治療前から治療後にかけて、うつ症状は65%、反すうとネガティブ感情はそれぞれ30%減少したと報告されました。効果は6か月後まで維持されていました。
参考:反復性大うつ病性障害患者における抑うつ、否定的感情、および反芻思考の軽減に対する反芻思考に焦点を当てた認知行動療法の有効性の評価:無作為化多施設臨床試験【2025年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
結論
反すうに焦点を当てたグループ認知行動療法「g-RFCBT」を受けた人では、うつ症状・反すう・ネガティブ感情が改善し、その効果は6か月後まで維持されました。
治療直後、介入群の72.2%がうつ症状を50%以上減少させ、44.4%が70%以上減少させました。6か月後でも、50%以上の減少が66.7%、70%以上の減少が50.0%にみられました。
研究者らは、g-RFCBTを再発性大うつ病性障害に対する有望な治療法と結論づけています。一方、研究規模が小さいため、より大規模で多様な集団での検証が必要とも述べています。
内容の信頼性:7 / 10
この点数は、論文本文に記載されている研究方法と限界のみを材料にした評価です。
信頼性を高める要素として、無作為化臨床試験であること、3か所のカウンセリングセンターから参加者を集めていること、データ解析担当者がグループ分けを知らない状態で解析したこと、治療直後だけでなく2か月後・6か月後まで追跡していること、臨床試験登録が行われていることが挙げられます。
論文自身が挙げている主な弱点は、最終解析が36人と少ないこと、対象が大学生だけであること、ITT(割り付けられた全参加者を含める解析)を行っていないこと、通常の治療などと比較する「能動的対照群」ではなく待機群との比較であること、治療開始前から反すうの得点にグループ差があったことです。特に反すうについては、研究者自身が「慎重に解釈する必要がある」としています。
何の研究か?
再発性の大うつ病性障害(MDD)と診断された大学生を対象に、グループ形式の反すう焦点化認知行動療法(g-RFCBT)が、
- うつ症状
- 反すう思考
- ネガティブ感情
を減らせるか調べた無作為化臨床試験です。
参加者は当初44人で、g-RFCBTを受けるグループと、研究終了まで治療を受けない待機群に無作為に分けられました。途中で8人が除外され、最終解析は36人(介入群18人、待機群18人)でした。
介入群では、
10回の週1回・2時間のグループセッション+2回の個別セッション
が行われました。
治療では、反すうしている「内容」そのものを論破するのではなく、反すうを繰り返す思考パターン自体を変えることに重点を置いています。機能分析、If–Thenプラン、問題解決、ストレス対処、リラクゼーションなどが用いられました。
研究した理由は?
論文では、反すうは、ネガティブなことについて繰り返し考え続ける認知プロセスであり、うつ病の発症や症状の維持、再発に関係する重要な要素と説明されています。治療後にも反すうが残ることがあり、再発に関連する残存症状として研究されてきました。
RFCBTは、その反すうを直接ターゲットにした認知行動療法です。
研究者らによると、これまでRFCBTの有効性を示す研究はあったものの、ペルシャ語圏の人を対象にした検証済みの無作為化比較試験は行われていませんでした。
そこで今回、ペルシャ語圏の再発性大うつ病性障害の人にg-RFCBTを実施し、うつ症状・反すう・ネガティブ感情への効果と、ペルシャ語圏への適応可能性を調べました。
結果はどうだったか?
質問票の平均点:低いほど症状が少ない
| 項目 | 治療前 | 治療直後 | 2か月後 | 6か月後 |
|---|---|---|---|---|
| うつ症状 BDI-II | 27.16 | 9.77 | 10.61 | 12.22 |
| 反すう RTQ-31 | 108.77 | 77.55 | 71.72 | 77.00 |
| ネガティブ感情 PANAS-NA | 30.61 | 22.00 | 20.22 | 22.44 |
改善した人の割合
| 項目 | 治療直後 | 2か月後 | 6か月後 |
|---|---|---|---|
| うつ症状50%以上減少 | 72.2% | 77.8% | 66.7% |
| うつ症状70%以上減少 | 44.4% | 55.6% | 50.0% |
| 反すう:信頼できる改善 | 83.3% | 88.9% | 83.3% |
| 反すう:臨床的に意味のある改善 | 44.5% | 66.7% | 44.5% |
| ネガティブ感情:臨床的に意味のある改善 | 27.8% | 50.0% | 50.0% |
① うつ症状
うつ症状を測るBDI-IIの平均値は、
治療前:27.16 → 治療直後:9.77
まで低下しました。
待機群では、
治療前:25.11 → 治療直後:25.83
でした。
介入群と待機群の時間経過による違いは統計的に有意でした(p < 0.001、η² = 0.34)。
論文の抄録では、治療前から治療直後までにうつ症状が65%減少したと報告されています。
また、介入群18人のうち、治療直後に、
- 13人・72.2%:BDI-IIが50%以上減少
- 8人・44.4%:BDI-IIが70%以上減少
しました。
6か月後にも、
- 66.7%:50%以上の減少
- 50.0%:70%以上の減少
が確認されました。
② 反すう思考
反すうなどの反復的な思考を測るRTQ-31は、
治療前:108.77 → 治療直後:77.55 → 2か月後:71.72 → 6か月後:77.00
となりました。
待機群は、
90.44 → 86.38 → 85.38 → 87.72
でした。
時間とグループの交互作用は統計的に有意でした(p < 0.001、η² = 0.28)。抄録では、治療直後までに反すうが30%減少したと報告されています。
介入群では治療直後に83.3%が「測定誤差を超えた信頼できる改善」を示し、44.5%が研究で設定された「臨床的に意味のある改善」の基準を満たしました。6か月後もそれぞれ83.3%、44.5%でした。
なお、治療開始前の時点ですでに介入群のRTQ-31得点が待機群より有意に高く(p = 0.002)、研究者らも反すうに関する結果は慎重に解釈する必要があるとしています。
③ ネガティブ感情
ネガティブ感情を測るPANAS-NAは、
治療前:30.61 → 治療直後:22.00 → 2か月後:20.22 → 6か月後:22.44
でした。
待機群では、
29.77 → 27.88 → 28.38 → 28.61
でした。
時間とグループの交互作用は統計的に有意でした(p < 0.01、η² = 0.14)。抄録では、治療前から治療直後までのネガティブ感情の減少率は30%と報告されています。
治療直後には介入群の50.0%が信頼できる改善を示し、27.8%が研究で設定された臨床的に意味のある改善基準を満たしました。6か月後には、それぞれ55.6%、50.0%でした。
注意
BDI-IIの「臨床的に意味のある改善」の人数について、論文本文内に記述の不一致があります。
結果セクションでは治療前→治療直後について「13人がclinically significant changes」と記載されていますが、Discussionでは治療直後について14人(77.8%)が信頼できる改善、9人(50.0%)が臨床的に意味のある改善と記載されています。
そのため、この項目については一方の数字だけを確定値として扱わず、上記のように論文中の記述差を明記するのが安全です。
モーセン・ハサニ
ザンジャーン医科大学 医学部 臨床心理学科
サイーデ・ゼヌージアン
ザンジャーン医科大学 医学部 臨床心理学科
レザ・アフマディ
シャヒード・ベヘシュティ医科大学 医学部 臨床心理学科
サヘル・ハクプール
社会福祉・リハビリテーション科学大学 医学部 臨床心理学科
ソレイマン・サベリ
ザンジャーン医科大学 医学部 臨床心理学科
レザ・ピルゼ
ザンジャーン医科大学 医学部 精神医学科
オミド・サエド
ザンジャーン医科大学 医学部 臨床心理学科 (スプリンガー)
研究資金はザンジャーン医科大学から提供され、論文では資金提供者は研究デザイン・データ解析・結果の解釈に関与していないとされています。著者らは利益相反なしと申告しています。(スプリンガー)
Hasani et al. (2025). Evaluating the efficacy of rumination-focused cognitive-behavioral therapy in alleviating depression, negative affect, and rumination among patients with recurrent major depressive disorder: a randomized, multicenter clinical trial. BMC Psychiatry, 25(1), 626. (PubMed)

