夜勤や交代勤務では、体内時計と勤務時間がずれやすく、眠るべき時間に眠れない、起きている時間に強い眠気や疲労が出るといった問題が起こります。
論文では、交代勤務者は世界の労働者の約20%を占め、交代勤務障害(Shift Work Disorder)は交代勤務者の26.5%に影響するとする先行研究が紹介されています。そこで著者らは、「勤務時間の組み方」「光」「睡眠教育」「仮眠」「カフェイン」「不眠症への認知行動療法(CBT-i)」「ヨガなどの心身への介入」という、薬を使わない対策をまとめました。
参考:交代勤務者に対する現在の睡眠介入:新たな予防的多要素睡眠管理プログラムを構築するためのミニレビュー【2024年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
結論
この論文が示した中心的な結論は、交代勤務者の睡眠問題には、1つの方法だけではなく、勤務スケジュール・職場環境・本人の睡眠行動を組み合わせた対策が必要になる可能性があるというものです。
特に、勤務シフトの調整や職場での光の調整には有望な知見があります。短時間の計画的な仮眠やカフェインも、夜勤中の眠気やパフォーマンス対策として利用されています。CBT-iも不眠症状を改善していますが、交代勤務者では「毎日同じ時刻に寝る」といった通常の方法をそのまま実行することが難しく、交代勤務向けの調整が必要です。
著者らは、こうした対策を予防目的の多要素プログラムとして組み合わせた場合の効果については、現時点で研究証拠が不足しているとしています。また、家族生活、通勤、食行動といった要素は、従来の介入研究では十分に扱われていないと指摘しています。
内容の信頼性:7 / 10
この論文は、新しい臨床試験を行った研究ではなく、既存研究を整理したミニレビューです。著者らは、システマティックレビュー、ガイドライン、議論論文、個別の介入研究などを調べています。複数の研究をまとめて全体像を把握する用途には有用です。
点数を7点とした最大の理由は、論文自身が方法を「informal review(非公式なレビュー)」と説明しており、著者らの専門知識をもとに関連論文を集めたナラティブなレビューだからです。個々の介入についても研究結果が一致していないものがあり、特に予防的な多要素プログラムについては効果を判断できる証拠が不足しています。
研究は英国医学研究評議会(UK Medical Research Council)の助成を受けています。著者らは、研究に影響すると考えられる商業的・金銭的関係はなかったと申告しています。また、投稿時に著者の一部がFrontiersの編集委員だったものの、論文では査読過程や最終判断には影響しなかったと記載されています。
何の研究か?
交代勤務・夜勤をする人の睡眠を改善するために、現在どのような「薬を使わない対策」が研究されているのかを整理したミニレビューです。
著者らが整理した対策は、実施例が多い順に次の7種類でした。
- 勤務シフトの調整
- 光を使った調整
- 睡眠衛生教育
- 計画的な仮眠
- カフェイン
- 不眠症に対する認知行動療法(CBT-i)
- ヨガやマインドフルネスなどの心身への介入
研究の目的は、これらを整理し、将来の**「予防的・多要素型の睡眠管理プログラム」**を作るための材料にすることでした。
研究した理由は?
一般的な不眠症ではCBT-iが第一選択の治療として推奨されていますが、交代勤務者にはそのまま適用しにくい問題があります。
たとえばCBT-iでは規則的な睡眠スケジュールが重視されますが、夜勤や不規則勤務では毎日同じ時間に眠ること自体が難しくなります。また、すでに睡眠時間が不足している人に睡眠時間を制限する方法を使うことにも問題があります。昼間に眠る夜勤者の場合、通常の診療時間に対面治療を受けにくいという問題もあります。
そのため著者らは、本人だけに睡眠改善を求めるのではなく、勤務時間、職場の照明、仮眠環境など、職場側も含めて考える必要があるとしています。既存の対策を組み合わせた予防的なプログラムはまだ少なく、その効果を示す研究も不足していることから、このレビューが行われました。
結果はどうだったか?
| 対策 | 論文でまとめられた結果 | 主な数値・ポイント |
|---|---|---|
| 勤務シフトの調整 | 順方向・速いローテーションや勤務時間短縮が睡眠に有利 | 12時間以上→10時間以下、夜勤は9時間以下/連続勤務5~7回以下/連続夜勤3回以下/勤務間隔11時間以上 |
| 光の調整 | 青色成分を多く含む光などで、覚醒度・集中力・睡眠などの改善が報告 | 固定夜勤・ゆっくりしたローテーションで特に利用可能 |
| 睡眠衛生教育 | 単独での効果は一貫せず、多くの研究で効果が小さいまたはなし | 交代勤務者向けに18項目の睡眠習慣/24時間で7~9時間の睡眠を目指す |
| 仮眠 | 夜勤時の覚醒度とパフォーマンス維持に有用 | 20~30分の仮眠/起床後、仕事再開まで約15分 |
| カフェイン | 眠気やパフォーマンス低下の軽減に利用可能 | 睡眠の6時間未満前の摂取は睡眠を悪化させる可能性 |
| CBT-i | 不眠重症度と睡眠の質を統計的には改善。ただし臨床的に意味のある基準には未到達 | 4時間のアンカー睡眠、必要に応じてベッド時間を1時間追加/オンラインCBT-i 4~6週間 |
| 心身への介入 | ヨガや運動でストレス低下・睡眠量増加を示した研究あり | 研究数が少なく、有効性はまだ不明確 |
| 多要素プログラム全体 | 将来性はあるが、予防目的で複数の方法を組み合わせた場合の有効性を示す研究証拠は不足 | 家族生活・通勤・食行動も今後検討すべき要素 |
1.勤務シフトの調整
勤務の回し方では、夜勤→夕勤→朝勤という逆方向のローテーションより、朝勤→夕勤→夜勤という順方向のローテーションのほうが、睡眠や覚醒状態に良い結果が報告されています。
ローテーション速度についても、
遅い例
朝勤7日 → 休み2日 → 夕勤7日 → 休み2日 → 夜勤7日 → 休み2日
よりも、
速い例
朝勤2日 → 夕勤2日 → 夜勤2日 → 休み2日
のほうが、睡眠改善につながるとする研究が紹介されています。
勤務時間については、12時間以上の勤務を10時間以下へ短縮すること、夜勤では9時間以下にすることが、全体として睡眠に良い結果を示しています。ただし、最適な勤務時間についての研究結果そのものはまだ確定していません。
また、論文で紹介された推奨では、連続勤務は最大5~7回、連続夜勤は最大3回、勤務と勤務の間には最低11時間を設けるとされています。朝勤は午前6時より午前7時開始、夕勤は午後11時より午後10時終了のほうが体内時計への影響を小さくできるとしています。
2.光を利用する
通常の照明と比べ、青色成分を多く含む光は、睡眠の質、覚醒度、集中力、作業能力を改善した研究が紹介されています。
特に体内時計上もっとも眠くなる時間帯に強い青色系の光を使うことで、固定夜勤やゆっくり交代する夜勤への適応を助ける可能性があります。
夜勤後は明るい朝の光を避け、帰宅後に暗い環境ですぐ眠る方法も紹介されています。帰宅時に濃いサングラスを使用する方法もありますが、論文では、暗い時間帯に自動車を運転する場合は安全性を損なう可能性があると指摘しています。
3.睡眠衛生教育
「寝室を整える」「健康的な睡眠習慣を学ぶ」といった睡眠衛生教育だけを行った場合の効果は一貫していません。多くの介入研究で、睡眠や覚醒度への効果がほとんどない、または認められなかったとしています。
通常の睡眠教育には「規則正しい睡眠時間を保つ」といった助言がありますが、交代勤務者には実行しにくいという問題があります。
そこで交代勤務者向けに18項目の「健康的な睡眠習慣」が作られており、その中では仮眠も利用しながら、24時間あたり合計7~9時間の睡眠を確保する考え方が紹介されています。(Frontiers)
4.計画的な仮眠
夜勤前や夜勤中の仮眠は、覚醒状態を維持し、パフォーマンスを改善する方法として紹介されています。
研究では20~30分間の仮眠なら休息効果を得ながら深い睡眠に入る可能性を減らせるとされています。
それでも起床直後には頭が十分働かない「睡眠慣性」が起こる可能性があり、仕事を再開するまでに約15分必要になることがあります。
5.カフェイン
カフェインは夜勤時の眠気を減らし、ミスのリスクを減らし、認知パフォーマンスを維持する方法として紹介されています。
論文では、夜勤中に少量のカフェインを継続的に摂取することで、長時間起きていることによるパフォーマンス低下を抑えられるとしています。
しかし、予定している睡眠の6時間未満前にカフェインを摂取すると、睡眠時間や睡眠の質を悪化させる可能性があります。
6.CBT-i(不眠症の認知行動療法)
交代勤務者を対象としたメタ解析では、CBT-iによって不眠の重症度が統計的に有意に低下し、睡眠の質も改善しました。
しかし、その改善幅は臨床的に意味があるとされる基準には達していませんでした。また、研究ごとに治療内容・方法・実施形式が異なり、脱落者も多かったため、強い結論を出すことは難しいとされています。
交代勤務向けの工夫としては、毎日同じ睡眠時間を要求する代わりに、最低4時間の「アンカー睡眠」を固定する方法や、仕事によってすでに睡眠が制限されている場合にはベッドにいる時間を1時間増やす方法が紹介されています。
また、4~6週間の自己実施型オンラインCBT-iで、交代勤務者の不眠症状が改善した研究も紹介されています。ただし、著者らは結論を出すには追加研究が必要としています。(Frontiers)
7.ヨガ・運動・マインドフルネスなど
この分野は、交代勤務者を対象にした研究自体がまだ少ないとされています。
一部の研究では、ヨガによるリラクゼーションや運動によってストレスが減り、睡眠量が増えたと報告されていますが、交代勤務者にどの程度有効なのかを判断できるだけの証拠はまだありません。
論文の著者と所属は以下の通りです。
| 発表者(著者) | 所属機関 |
|---|---|
| アンバー・F・タウト | ウォーリック大学 ウォーリック・メディカル・スクール 健康科学部門(英国) |
| ニコール・K・Y・タン | ウォーリック大学 心理学部門(英国) |
| トレーシー・L・スレッテン | モナシュ大学 心理科学部 ターナー脳・メンタルヘルス研究所(オーストラリア) |
| カーラ・T・トロ | ウォーリック大学 ウォーリック・メディカル・スクール 健康科学部門(英国) |
| シャーロット・カーショウ | ウォーリック大学 ウォーリック・メディカル・スクール 健康科学部門(英国) |
| キャロライン・マイヤー | ウォーリック大学 ウォーリック・メディカル・スクール 健康科学部門(英国) |
| シャンタ・M・W・ラジャラトナム | モナシュ大学 心理科学部 ターナー脳・メンタルヘルス研究所(オーストラリア) |
| タラー・R・ムフタリアン | ウォーリック大学 ウォーリック・メディカル・スクール 健康科学部門(英国) |
Tout et al. (2024). Current sleep interventions for shift workers: a mini review to shape a new preventative, multicomponent sleep management programme. Front. Sleep, 3, 1343393.

