うつ病のときはとても強い不安を感じていました。
「うつ病が治るかどうかわからない」
「うつ病が治ってもうまくいくかどうかわからない」
「うつ病が治っても再発してしまうかもしれない
「薬がやめられるかどうかわからない」
不安で胸が苦しくて、力が入らなくて、頭が痛くなるような感情は、僕を縛り付ける鎖のようでした。
この不安から苦しみから抜け出すために、自分を殴ったり、手が痛くなるほどテーブルを叩いたり、叫んだり、手元にある薬を全部飲んだりと、ときには薬が悪いと思い込み薬を捨てたりしていました。
5年以上の双極性障害とうつ症状で苦しんだ僕が、現在薬をやめて体も心も健やかに暮らせている1つの理由は「不安の苦しみがほとんどなくなったこと」です。
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野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube「メンタルコーチしもん」登録数1.3万
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
不安が大きくなってしまう6つの思考
次のような考えを持っていると、不安が苦しくなってきます。
①不安にとらわれてしまい、不安を広げる考え方をする
②不安になることで行動ができず、不安が解決できない
③不安解決が一時的な解決にしかなっていない
④不安を敵と考えるがあまり、不安を強く意識して苦しくなる
⑤不安を避け続けて、不安に慣れず、苦しいままになる
⑥不安を無視して、自分の感情が分からなくなり、苦しくなる
大切なのは、不安にコントロールされるのではなく、不安をコントロールすることです。
不安から、時には力を借りて、時には離れてもらう。
人間関係と同じで、不安との良い距離感が大事です。
そして、不安とうまく付き合っていく最適な方法がマインドフルネスの「RAIN」です。
不安で苦しむどころか力に変えてしまう「RAIN」とは?
RAINとは、4ステップで感情と向き合うマインドフルネスの方法です。
今回であれば、不安を受け入れることで、不安による苦しみが減るだけではなく、不安を力に変えることができます。
しかも、一時的に不安で苦しまなくなるのではなく、不安に対する苦しみが軽くなる効果がずっと続くメリットがあります。
マサチューセッツ大学医学大学院のマインドフルネスセンターの創設所長「ジョン・カバット・ジン」などマインドフルネス専門家がおすすめする信頼ある方法です。
マインドフルネス系のテクニックは分かりにくいものが多いですが、RAINは4ステップと分かりやすく、いつでも・どこでも使えるのが特徴です。
RAINの4ステップ
①Recognize:今の自分の状態に気づく
②Allow:感情を受け入れる
③Investigate:思いやりを持って感情を理解する
④Nurture:あるがままの自分を大切にする
または、Non-identification:感情と距離を置き、操られない
僕はセルコンパッションなどのマインドフルネスからRAINを実践して、不安の苦しみが激減しました。
では、RAINの4ステップを具体的にどのように歩んでいけばいいのでしょうか?
Recognize:今の自分の状態に気づく
まず今、不安に感じていることに気づくことが最初のRです。
不安とうまく付き合っていくには、そもそも不安に気づかないといけません。
不安に気づけない状態は、「暑くてのどがかわいているのに、暑いことにも、のどがかわいていることにも、気づけないこと」と同じです。
暑いと気づけば窓を開ける、エアコンをつける。
のどが渇いていると気づけば、水を飲む。など、適切な行動がしやすくなります。
つまり、不安に気づくことで、不安に振り回されることなく、落ち着ていて対処をすることができます。
不安に気づくことができた時点で、あなたは不安とうまく付き合うための一歩を踏み出しています。
残りの「A」「I」「N」の3歩進むことができれば、驚くほど不安に悩まされなくなります。
ご安心ください。
では、不安に気づくことができたら、次の「A」に進みましょう。
Allow:感情を受け入れる
不安に気づいたら、不安の感情を受け入れていきます。
不安の中に「怒り」「悲しみ」「虚しさ」などがあれば、全部受け入れていきます。
受け入れるときの方法は「人間だから不安になることもあるよね。そりゃそうだ」ぐらいでOKです。
注意としては、「ポジティブに受け入れる」ではありません。不安を良いとも悪いとも思わず、容認するという意味合いでの受け入れるです。
先ほどの暑さの例えで行くと、「汗をかくなんて、なんてダメなんだ」とは思わないですよね。
「そりゃ、暑いんだから、汗はかくよなー」って思いますよね。
それと不安は同じことです。
「何かトラブルがある」
「新しいことをしている」
「分からないことがある」
だったら、不安になるのは人として自然のことです。
むしろ、トラブルがあるのに不安にならない、新しいことをしているのに不安にならない、分からないことがあるのに不安にならないのは、危険なことです。
不安は、問題を解決したいモチベーションを高めるものだからです。
「不安にならない=問題を解決するが著しく下がること」につながります。
ただ、不安で苦しみ続けることも問題です。
ストレスが強いだけでなく、行動ができなくなって問題を解決できなくなるからです。
だからこそ、不安を受け入れていくことが大事です。
不安を受け入れることで「問題解決の力を高める」ことができます。
不安を受け入れることで、「不安はイヤだ!」「早く消したい!」という抵抗を減らすことができ、苦しみを減らすことができます。
心のバランスを保ったまま、不安の声を聴くことができます。
Investigate:思いやりを持って感情を理解する
不安の感情を、思いやりを持って理解をしていきます。
次のように自分に問いかけると、思いやりを持って不安を理解しやすいです。
・この不安は、私に何に気づいて欲しいのだろうか?
・この不安は私にどんなメッセージを送っているんだろうか?
・この不安のメッセージは、私の「どんな価値観を大切にできていない」と伝えているのか?
・この不安を感じているとき、私の体にどんな変化が起きているだろうか?
・この不安は、私が私の体にどんなことをして欲しいと望んでいるのだろうか?
・この不安は、どうして私が望まない行動をさせようとするのか?
僕がうつ病のときに抱えていた不安はこんな感じでした。
「うつ病が治るかどうかわからない」
「うつ病が治ってもうまくいくかどうかわからない」
「うつ病が治っても再発してしまうかもしれない」
「薬がやめられるかどうかわからない」
どれも分からないことだらけで、不安になっていたんです。
つまり、不安メッセージは僕に「もっと問題を分かるものにしたほうが良い」と伝えていたんです。
僕は結局、「うつ病が治るかどうか」は分かりませんでした。
人に聞いても、調べても答えは分からなかったので、「うつ病を治す」ではなく「楽しい時間を5分でも増やす」と考え方を切り替えることにしました。
うつ症状をなくす考え方では、無気力で自暴自棄になっていましたが、うつ症状があっても楽しい時間を増やしていくと考えることで、前向きに行動ができるようになりました。
20分楽しめた時間が、30分に伸びるだけでも「前に進めた」と思えたからです。
テレビを見る・漫画を読む・掃除や洗い物をする時間を増やすという、分かりやすい問題に置き換えることができたからです。
不安を受け入れた結果、6か月で抗うつ薬と双極性障害の薬をやめて、健やかに暮らせるようになりました。
うつ病を治すことをあきらめた結果、5年以上のうつ病からの回復になったのだから面白いものです。
それでは、不安の感情理解ができたところで、最後のステップである「2つのN」に進んでいきましょう。
①Nurture:あるがままの自分を大切にする
1つめのNは自分に思いやりを持って行動していくだけでOKです。
ここまでで不安を受け入れているので、以前よりも苦しみはかなり減っている状態です。
「ある程度の不安を抱えたままでも、行動できるじゃん!」ってことが理解できてくると、不安を必要以上に恐れることもなくなってきます。
不安は一時的に体が不快になるだけで、薄れていくものと理解できてくるからです。
ただ、実際にはそこまで簡単に切り替えらず「不安を悪いものと考えて逆らおうとして、自己否定につながること」もあると思います。
そんなときは次の方法をお試しください。
・自分の胸に手を置き、「安心して良いよ」と伝えてあげる。
・不安でのどが苦しくなったら、「のどをリラックスしてあげよう」と温かい飲み物を飲む。
・自分への思いやりの日記を書く「セルフコンパッション日記」を書く。
・もしも他の人が自分と同じ立場だったら、どんな思いやりの言葉をかけるかを考える。など
自己否定がなかなか治らない場合は、自分を思いやる心理学「セルフコンパッション」に手を出してみましょう。
ちなみに僕の場合は自己否定が強いタイプだったので、セルコンパッションがRAINにおける重要な知識でした。
②Non-identification:感情と距離を置き、操られない
感情にとらわれやすいタイプだと、こちらの「感情と距離を置き、操られない」がおすすめです。
「あるがままの自分を大切にする」と同じように、まずは「ある程度の不安を抱えたままでも、行動できるじゃん!」ってことが理解できてくると、楽です。
「感情って、いつまでもくっついているものではなく、距離を置けるものなんだ」と思えるようになるからです。
〉感情と距離を置くディフュージョンの方法
ただ「感情にとらわれて、うまく行動ができない場合」は次の方法をお試しください。
・不安を紙に箇条書きして、自分の中ではなく、いったん外に出してみる。
・不安に名前をつけたり、姿を描いたりして、不安をキャラクター化する。
・不安を考えるのは「20時から30分だけ!」と、不安を時間にして見える形にする。など。
ポイントは「不安を形にすること」です。
不安を目に見える形にすることで、「自分」と「不安」を分けることができ、不安な感情と距離を置きやすくなります。
感情に操られることもなくなっていき、望む行動がとりやすくもなります。
どうしても「感情に捉われてしまうんだ!」ってときには、「ACTの脱フュージョン」を学ぶのがおすすめです。
RAINまとめ
- Recognize:今の自分の状態に気づく
- Allow:感情を受け入れる
- Investigate:思いやりを持って感情を理解する
- Nurture:あるがままの自分を大切にする。
または、Non-identification:感情と距離を置き、操られない
鋭い方はお気づきだと思いますが、RAINは不安に限らず、怒りや悲しみや虚しさなど「あらゆる感情に対して使える方法」です。
RAINの4ステップで今自分がどこにつまずいているのが分かり、前に進めるようになります。
続き
1.RAIN「R」:今の自分の不安に気づく2つの方法
2.RAIN「A」:不安を柔らかくして受け入れる方法
3.RAIN「I」:不安に寄り添って理解する方法
4.RAIN「N」:あるがままに望む行動をする方法
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