うつ症状が回復していく中、強い焦りがありました。
順調に回復はしています。双極性障害の症状もやわらいできています。
自分を思いやる心理学セルフコンパッションのおかげで、自己否定もほとんどなくなり、メンタルの調子はいい。朝散歩もでき、部屋の中での活動も増え、体力も少しずつ付いてきている。
順調には間違いない。でも、まだまだ時間がかかる。
抗うつ剤や双極性障害の薬をやめていくのも、一錠一錠時間がかかる。
5年以上薬を飲み続けてきて、これから薬をやめていくんだから2~3年ほどで、ゆっくりとやめていけばいい。
頭ではそうわかっていました。
でも2~3年が経てば、年齢は37か38歳。
40歳間近となれば人生を再出発するのは遅いかもしれない。
僕が強い焦りを感じていたのは、双極性障害やうつ症状とは違う問題でした。
もっと早く治さないと、病気が改善しても、また苦しい人生が待っていると思っていたんです。
※メンタルも弱く、体力もなく、学歴もスキルも知識もなかったため。
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野上しもん
・29年間の睡眠障害を克服
・5年以上の双極性障害とうつを克服
・上級睡眠健康指導士
・メンタル心理カウンセラー
・食生活アドバイザー
・YouTube登録1.2万人以上
著書
・眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠
・脱・中途覚醒 “夜中に目覚める”悩みが消える
・12歳になるまでに読みたい 「子どもの睡眠」
行動を増やすとメンタルを悪化させる可能性が高い
世の中には、手放したほうがいいことはたくさんあります。
でも、単に手放すのではなく、それが本当に手放すべきかどうかを判断できることが大事です。
今抱えている問題が解決できるかどうか。
解決できないのであれば手放せばいいですし、解決できるのであれば解決した方が人生の選択肢は増えてきます。
「双極性障害やうつ症状を早く克服すること」は手放した方が良いのか?
心と体をゆっくり整えていくしか選択肢がないのか?
その答えは分かりませんでした。
当然と言えば、当然です。
早く克服できるかどうかを、まだ試していないからです。
セルフコンパッション日記を行って、僕の人生はこの時点でも大きく好転していました。
5年以上見えなかった双極性障害やうつ症状の改善が、前に進み始めていたからです。
自己否定や強いネガティブ思考がガクンと減っのも、僕にとってとても大きなことです。
だったら、双極性障害やうつ症状を早く改善して、同時に自分を成長させていく方法もあるんじゃないだろうか?
全体的な改善スピードを上げていくためには、行動を増やすことが大切です。
例えば、うつ症状や双極性障害の症状を2~3年ではなく、半年で改善するための行動を増やす。
人並みの体力を2~3年かけてつけていくのではなくて、半年でつけていく。
コミュニケーション能力を2~3年かけてつけていくのではなくて、半年でつけていく。
そうすれば、人生がより良い方向に進みやすくなるというのは間違いありません。
ただ、行動を増やすことに強い不安がありました。
行動を増やそうと考えると、焦りが生まれて、メンタルが悪化する可能性が高いからです。
特に双極性障害だったので、下手に無理な行動をすると躁状態に繋がります。
そして、躁状態のあとは長いうつ期間が待っています。
行動を増やし、改善のスピードを上げていくには、今の自分が持っている知識では難しいと思いました。
だったら答えは簡単です。
自分を劇的に変化させたセルフコンパッションがそうであったように、また心理学の力を借りればいいんです。
知識をうまく使えば、「大きく人生を変えることができる」というのは自分で証明ができていました。
今の自分に合う、行動を増やし、改善のスピードをあげる心理学はないだろうか?
そして、出会ったのがACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)でした。
ACTはこのときの僕が望んでいた知識そのものだったんです。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?
ACTとは、「自分を受け入れて、自分の価値観をもとに行動していく」というマインドフルネス系の行動療法の1つです。
うつ症状や感情的な問題に対処しながら、行動していくことができます。
僕がACTに興味を持ったのは、根本的な考え方がセルフコンパッションと同じだからです。
というよりも、セルフコンパッションに行動を掛け合わせたような考え方です。
セルフコンパッションをベースにしていた僕が、行動力をあげるには最適だったんです。
セルフコンパッションの土台があったので、ACTはスムーズに取り入れることができました。
もう少し付け加えると、この時には呼吸法やボディスキャン瞑想も取り入れていたので、マインドフルネスの力もある程度ついていたのも理由の1つです。
ACTを取り入れることによって、それほどストレスなく行動量を増やすことができました。
むしろACTを取り入れて行動することによって、行動そのものが楽しくもなってきます。
できることが増えていくからです。さらに自分を思いやるセルフコンパッションの力が、より高まっていくというのもあります。
ACTをとりいれると、感情によって行動を支配されるのではなく、感情と距離を置き、感情と向き合いながら行動がしやすくなります。
感情による影響で行動ができなかったものが、行動しやすくなりました。
具体例:行動しやすくなったもの
・今日は気分がネガティブだから、動きたくない
・本を読むのは面倒。
・お風呂も面倒。
・スマホをさわってだらだらしたい。
・しんどいから運動したくない。
・苦手だから野菜を食べたくない。 など
ACTによって「望まない行動につられずに、望む行動ができるスキル」が身に付いていきました。
ACTの6つの要素
ACTには次の6つの要素があります。
- 認知的脱フュージョン(Cognitive Defusion)
思考や感情に過度に巻き込まれず、それらを一歩引いて観察すること。 - アクセプタンス(Acceptance)
避けようとするのではなく、苦しい感情や思考をそのまま受け入れること。 - 今ここにいること(Being Present)
過去や未来にとらわれず、現在の瞬間に意識を向けること。 - 自己としての文脈(Self as Context)
自分の思考や感情に影響されすぎない、自分を観察する視点を持つこと。 - 価値観の明確化(Values)
自分が大切にしている価値や人生の方向性を明確にすること。 - コミットされた行動(Committed Action)
自分の価値に基づき、具体的な行動を起こすこと。
「2.アクセプタンス(自己受容)」「3.今ここにいること」「5.価値観の明確化」「6.コミットされた行動」の4つについては、セルフコンパッションを通して、かなり身に付いていました。
感情は、人間関係と同じです。
自分の近くにいればいるほど、強い影響を受けて行動がしにくくなります。
でも、距離を置くことができれば、あまり影響を受けずに、行動がしやすくなります。
この感情と距離を置く方法が「認知的脱フュージョン(ディフュージョン)」です。
今回この後紹介する方法は、この認知的脱フュージョンに関するものです。
一般的に「ディフュージョン」という名前の方が有名なので、今回はディフュージョンと呼んでいきます。
ディフュージョンのテクニックを使って、思考や感情に影響されずに、望む行動ができる。
セルフコンパッションでも似たような効果はありますが、、感情に影響を受けないことに特化したディフュージョンは、もともと感情コントロールが苦手だった僕にはとても重要なスキルでした。
今回は僕が双極性障害とうつ症状を克服するまでに、最も多く行ったACTディフュージョンテクニックを2つ紹介します。
思考ラベリング:「ネガティブな思考から逃げると、より苦しくなる」
ネガティブな思考や感情から逃げると、より苦しくなるものです。
ネガティブな思考や感情はとても気になるものなので、逃げても逃げてもまとわりついてくるからです。
しかも、逃げて見えないふりをすればするほど、膨れ上がってきます。
ではどうすればいいかというと、ネガティブな思考や感情を捉えられる形にすることです。
それがディフュージョンテクニックの「思考ラベリング」です。
思考ラベリングとは、分かりやすく言うと「思考や感情に名前をつけること」です。
名前をつけることによって、捉えられる形になります。
例えば、「自分はうまく仕事ができるんだろうか?」と不安に思った時、この不安に名前をつけます。
シンプルに「仕事の不安思考」みたいな付け方でOKです。
「自分はうまく仕事できるんだろうか?」と思うより、「仕事の不安思考が出てきたぞ」と考えたほうが心理的な距離を置きやすくなります。
あいまいなものに名前をつけることによって、気持ちを楽にして行動する方法を、人間は昔から使っています。
例えば、雷。
「轟音が鳴り響いて、強い光がほとばしる!世界が終わりそうで、畑作業なんてできそうもない」。
今では「雷」として科学的に認識されますが、雷が理解不能なときは「神様の怒り」としてラベリングすることで、不安をやわらげることができます。
理解ができないと不安は大きくなりますが、「神様の怒り」と思えば、「怒りが落ち着くのを待とう」という考えができるからです。
他にも次のようなものがあります。
- 生活の中で不可思議なことがあると「妖怪のしわざ」とラベリングする。
- 自分に対して嫌がらせをする人の理由が分からないときは、「あの人は性格の悪い人」とラベリングする。
- 仲が良いけど関係性がよくわからない異性に対して、「友だち以上恋人未満」とラベリングする。
あいまいなものに名前をつけることで、理解ができるようになり、不安をやわらげることができます。
このラベリングを意識してうまく使えば、思考や感情と距離を置いて、望んだ行動がしやすくなります。ただ、無意識に否定的に使うと、認知の歪みのラベリングになります。
思考のキャラクター化:「感情と理性がお互いに納得いく形で行動を選んでいくことが大切」
ラベリングよりもさらに思考や感情と距離を置く方法が「思考のキャラクター化」です。
ラベリングだけでも思考や感情の支配から逃れることはできますが、より強い執着を持った思考や感情には、キャラクター化がおすすめです。
思考のキャラクター化の方法はそのままで「思考をキャラクターにすること」です。
僕の場合は、次のような流れで行います。
- 思考や感情に名前をつける
- 思考や感情の見た目をイメージする
- 思考や感情の口癖をイメージする
- 思考や感情とコミュニケーションをとってみる
例えば、「体がしんどくて、うごきたくない」という思考をキャラクター化します。
①名前をつける
どろどろスライム
②見た目をイメージする
青色のねばねばした泥のような姿。
※ドラゴンクエストのバブルスライムのイメージに近い。
③口癖
「しんどい。動きたくない。いっそ溶けてしまいたい」
④キャラクターとコミュニケーションをとってみる
※セルコンパッションと同じで思いやりをもってコミュニケーションをする。
「体がどろどろしてて、しんどそうだね。でも、ひょっとしたら、動いたほうが体も気持ちも楽になるかもしれないよ。実際に今までも、寝転がっていたほうが、体も気持ちもしんどくなることが多かったんじゃない? だけど、しんどいのも分かるから、全部はやらなくていいよ。とりあえず5分。いや、3分だけやってみない? 気分が乗ればそのまま続ければいいし、それでもしんどいんであれば、ちょっと漫画でも読んで休もうか」
※思考をキャラクター化するときは、「ユーモアにする」「かわいくする」「シュールにする」など、軽い気持ちでコミュニケーションしやすい形にするのがおすすめです。ただ、思考のイメージからズレないことが大切。
思考をキャラクターにすることで、コミュニケーションが取りやすくなります。
思考とコミュニケーションが取れるということは、自分と思考が切り離された状態です。
自分と相手という心理的距離が離れた状態でないと、コミュニケーションができないからです。
つまり、思考とコミュニケーションをとるだけで、行動がしやすくなります。
思考キャラクターとのコミュニケーションのとりかたはセルフコンパッション日記の記事を参考にしてみてください。
行動がうまくできないときは、感情と理性がお互いに納得いく形で行動を選んでいくことが大切です。
理性で考えすぎてしまうと、感情を抑えてしまって、行動を続けることがしんどくなります。
人は感情の動物と言われるとおり、感情が持つパワーが強いためです。
思考キャラクターとコミュニケーションをとることによって、感情と理性のバランスがとれた行動をしやすくなります。
ディフュージョンで感情の支配から解放された
ACTディフュージョンテクニックのおかげで、感情にとらわれてうまくできなかった行動ができるようになりました。
おかげで双極性障害とうつ症状を早く改善できて、その後も体力や知識、コミュニケーション能力などを早く高めていくことができました。
でも、さらにディフュージョンテクニックを高める必要がありました。
実を言うと、薬をやめて健康的に過ごし始めてから、この感情コントロールがすごく重要になったからです。
これは想定外でした。
なぜ必要になったかというと、人に理解されにくい人間になってしまったからです。
- 双極性障害だったのに、薬をやめて、メンタルが安定して、健康的に暮らしている。
- 体力がなかった僕が、ジムやランニングやキツめ運動習慣を続けて、めきめきと体力をつけている。
- ネガティブだったのに、悩むことがほとんどなくなっている。
- 1年ほどで話が上手になり、WEB制作や動画編集スキルを身につけて仕事をしている。
- そのあとYouTubeを始めて、カウンセリングの仕事をして、本を執筆している。
過去の僕を知っている人であれば、過去と現在ギャップから、今の僕がとても無理をしていると誤解することが多いです。
新しい人間関係では、過去の僕の話をしても、うまく信じてもらえません。
場合によっては、僕の過去を知ることで、誤解されることがあります。
素直に話せば話すほど、誤解が生まれてしまうことは、思った以上にストレスでした。
実は僕がする行動の多くは反対されてきました。
マラソン挑戦、フリーランスの仕事、カウンセリング、YouTubeなど、僕を心配してくれる人ほど「やめたほういいと思う」と言うことが多いです。
そして、僕のことを心配してくれる言葉だからこそ、僕も言葉を「大切にしなきゃいけないのでは?」と迷ってしまうことがありました。
でも、自分の望む行動をしていきたい想いが強かったので、ディフュージョンテクニックをさらに高めていきました。
なのでACTは双極性障害やうつ症状を克服してから、より意識するようになったんです。
今回の2つのディフュージョンで、双極性障害やうつ症状を克服し、メンタルを整えることができました。
ここからはさらにACTを深ぼってお伝えをしていきます。
ご興味がある方は、ご覧ください。
実際に双極性障害やうつ病などの病気に悩んでいる方は、薬などの判断はお医者さんとご相談しながら進めてくださいね。
続き「ACTディフュージョンを極める」
1.ディフュージョンは間違うと、虚しさが生まれる
2.ディフュージョン3つのテクニック
3.最強ディフュージョン「ACT思考と感覚のリンク」
4.ACTフォーカス・ライフ。価値観行動を増やす生き方
〉完全版にご興味がある方はnoteからご覧ください