※アフィリエイト広告を利用しています

成人の慢性不眠症に対するCBT-Iでは、どの要素が重要なのか?241試験・3万1452人を解析した研究【2024年】

慢性不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、複数の方法を組み合わせて行う治療です。しかし、「どの要素が実際に効果へ結びついているのか」「すべての要素が必要なのか」は十分に分かっていませんでした。

この研究では、成人の慢性不眠症を対象にした241件のランダム化比較試験、合計3万1452人のデータを集め、CBT-Iを構成する要素と提供方法を分解して比較しました。

解析の結果、認知再構成、第三世代の認知行動療法的要素、睡眠制限、刺激制御、対面形式は、治療後の寛解と関連する可能性が示されました。一方、睡眠衛生教育は寛解を上乗せする明確な関連を示さず、リラクセーションは寛解に不利に働く可能性が示されました。

ただし、研究者ら自身が、この解析は治療要素どうしの相互作用を完全には捉えられず、結果は仮説生成的であり、決定的な結論として解釈すべきではないとしています。

参考:成人の慢性不眠症に対する認知行動療法の構成要素と提供形式:系統的レビューと構成要素ネットワークメタ分析【2024年】

【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】

結論

この研究からは、慢性不眠症に対するCBT-Iでは、特に次の要素が重要である可能性が示されました。

  • 認知再構成
  • 第三世代の認知行動療法的要素(マインドフルネス、アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
  • 睡眠制限
  • 刺激制御
  • 対面での提供

治療後の寛解について、それぞれの追加効果は以下のように推定されました。

  • 認知再構成:iOR 1.68(95%信頼区間 1.28–2.20)
  • 第三世代の要素:iOR 1.49(95%信頼区間 1.10–2.03)
  • 睡眠制限:iOR 1.49(95%信頼区間 1.04–2.13)
  • 刺激制御:iOR 1.43(95%信頼区間 1.00–2.05)
  • 対面形式:iOR 1.83(95%信頼区間 1.19–2.81)

一方で、

  • 睡眠衛生教育:iOR 1.01(95%信頼区間 0.77–1.32)
  • リラクセーション:iOR 0.81(95%信頼区間 0.64–1.02)

でした。

研究者らは、認知再構成+第三世代の要素+睡眠制限+刺激制御を対面で行う組み合わせを、対面の心理教育と比較した場合、心理教育群の寛解率を14%と仮定すると、寛解率の差は+0.33(95%信頼区間 0.23–0.43)、治療必要数(NNT)は3.0(95%信頼区間 2.3–4.3)になると推定しています。

ただし、これは各要素の効果が足し算できるという解析上の仮定を含む推定です。研究者らは、実際の治療では要素どうしの相互作用がある可能性を完全には除外できないとしています。

内容の信頼性:8 / 10

※この点数は、論文内に書かれている研究方法・結果・限界だけを根拠にした評価です。

高く評価できる点

  • 241件のランダム化比較試験、3万1452人を含む大規模なシステマティックレビュー
  • PubMed、コクランCENTRAL、PsycInfo、WHO国際臨床試験登録プラットフォームを検索
  • プロトコルを事前にPROSPEROへ登録
  • PRISMAのネットワーク・メタ解析向けガイドラインに従って報告
  • 複数の独立したレビュー担当者が研究選択、データ抽出、研究の質評価を実施
  • コクランの改訂版リスク・オブ・バイアス・ツールを使用
  • 複数の感度分析を実施し、主要結果とおおむね一致
  • 治療レベルのネットワークでは、全体的な不整合を示す証拠はみられなかった

注意すべき点

研究に含まれた241試験の全体的なバイアスリスクは、

  • 低リスク:21試験(9%)
  • 多少の懸念:135試験(56%)
  • 高リスク:85試験(35%)

でした。

また、治療レベルのエビデンスの確実性は、比較によって中程度から低い、または非常に低い範囲でした。構成要素レベルでも、全体として中程度から低いと評価されています。

さらに、この解析では「複数の治療要素の効果は足し算でき、相互作用はない」という加法モデルを基本にしています。研究者らは、意味のある相互作用を完全には否定できず、今回の結果を決定的なものではなく仮説生成的なものとして扱う必要があるとしています。

以上を踏まえ、研究規模と方法は強い一方、元の試験のバイアスリスクと解析モデル上の制約があるため、8点としました。


何の研究か?

成人の慢性不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)について、どの治療要素と提供方法が、寛解や睡眠状態の改善に関連しているのかを調べたシステマティックレビューおよびコンポーネント・ネットワーク・メタ解析です。

対象となったのは、18歳以上の慢性不眠症患者を対象に、何らかのCBT-Iと別の治療または対照条件を比較したランダム化比較試験です。精神疾患や身体疾患を併存する不眠症も含まれています。

対象となった研究

  • 対象試験:241試験
  • ランダム化された参加者:3万1452人
  • 平均年齢:45.4歳(標準偏差16.6)
  • 女性:2万1048人 / 3万1452人(67%)
  • 不眠症以外の併存症を含む試験:180 / 241試験(75%)
  • ベースラインの不眠重症度指数(ISI):平均 16.8(標準偏差4.8)
  • 治療期間:1〜16週間
  • 治療期間中央値:6週間
  • 睡眠薬使用者:4259 / 2万704人(21%)
  • 対象試験の発表年:1980〜2023年

調べた主な治療要素

  • 睡眠衛生教育
  • 睡眠日誌
  • 認知再構成
  • 第三世代の認知行動療法的要素
  • 建設的な心配への介入
  • 睡眠制限
  • 刺激制御
  • リラクセーション
  • 逆説志向

提供方法についても、個別・グループ、対面、オンラインでの治療的ガイダンス、人による励まし、自動リマインダーなどに分けて解析しました。

主な評価項目は、治療終了時の寛解でした。副次評価項目として、脱落、睡眠効率、総睡眠時間、入眠潜時、中途覚醒時間、長期寛解などが調べられました。


研究した理由は?

慢性不眠症に対するCBT-Iは、教育的・認知的・行動的な複数の方法を組み合わせた治療です。

これまでの研究では、CBT-I全体として睡眠の改善と関連することは示されていました。しかし、研究者らによると、個々の構成要素がどれだけ効果に寄与しているのかは不明確でした。

また、個々の要素を比較したランダム化比較試験は存在するものの、それぞれ異なる対照条件と比較しているため、通常のペアワイズ・メタ解析だけでは、各要素の効果を正確に切り分けにくいという問題がありました。

そこで研究チームは、複数の治療をネットワークとして比較しながら、それぞれの治療要素を分解して推定できるコンポーネント・ネットワーク・メタ解析(cNMA)を用いました。

目的は、CBT-Iの各構成要素と提供方法が臨床的な結果とどのように関連しているかを調べることでした。


結果はどうだったか?

結果のまとめ

項目結果解釈
認知再構成iOR 1.68(95%CI 1.28–2.20)寛解に有益である可能性
第三世代の要素iOR 1.49(95%CI 1.10–2.03)寛解に有益である可能性
睡眠制限iOR 1.49(95%CI 1.04–2.13)寛解に有益である可能性
刺激制御iOR 1.43(95%CI 1.00–2.05)寛解に有益である可能性
対面形式iOR 1.83(95%CI 1.19–2.81)寛解に有益である可能性
睡眠衛生教育iOR 1.01(95%CI 0.77–1.32)寛解を上乗せする明確な関連は示されず
リラクセーションiOR 0.81(95%CI 0.64–1.02)寛解に不利に働く可能性
推定上もっとも有効な組み合わせ vs 対面心理教育OR 5.34(95%CI 3.56–8.01)4要素+対面形式の組み合わせ
同上:寛解率差(対照寛解率14%の場合)+0.33(95%CI 0.23–0.43)寛解率で33ポイントの差と推定
同上:NNT(対照寛解率14%の場合)3.0(95%CI 2.3–4.3)約3人の治療で1人分の追加寛解に相当する推定

※iORは「incremental odds ratio(増分オッズ比)」で、その要素を治療パッケージに追加したときの寛解との関連を表す指標です。

認知再構成

認知再構成は、睡眠についての役に立たない考え方や信念を見つけ、それを検討し、修正する技法です。

この要素を含むことは、治療終了時の寛解と関連しており、iORは1.68(95%信頼区間 1.28–2.20)でした。

研究では、認知再構成は主に主観的な睡眠の質の改善と関連していました。また、長期寛解にも有益である可能性が示されました。

第三世代の認知行動療法的要素

ここには、マインドフルネスやアクセプタンス&コミットメント・セラピーが含まれます。

寛解についてのiORは1.49(95%信頼区間 1.10–2.03)でした。

主に主観的な睡眠の質の改善と関連していました。一方で、この要素を加えることは脱落の増加と関連する可能性も示されました。

研究者らは、第三世代の要素は比較的新しく、近年の試験で主に検討されているため、新しい治療の効果が過大評価される可能性にも注意が必要だとしています。

睡眠制限

睡眠制限は、ベッドの中で過ごす時間を制限し、睡眠効率に応じてその時間を調整していく方法です。

寛解についてのiORは1.49(95%信頼区間 1.04–2.13)でした。

さらに、

  • 主観的な睡眠の質
  • 睡眠効率
  • 入眠後の覚醒時間

の改善と関連していました。

刺激制御

刺激制御は、ベッドと睡眠との結びつきを作り直すことを目的とした方法です。

研究で扱われた刺激制御には、毎朝同じ時間に起きる、昼寝を避ける、眠くなってからベッドに入る、眠れないときはいったんベッドを出る、ベッドや寝室は睡眠と性行為のために使う、といった内容が含まれていました。

寛解についてのiORは1.43(95%信頼区間 1.00–2.05)でした。

また、

  • 主観的な睡眠の質
  • 睡眠効率
  • 入眠潜時

の改善と関連していました。

対面形式

治療者と対面してCBT-Iを受ける形式は、寛解と関連しており、iORは1.83(95%信頼区間 1.19–2.81)でした。

主観的な睡眠の質や長期寛解にも有益である可能性が示されました。

ただし研究者らは、対面形式と、人による励ましを含むセルフヘルプ形式との間で、対面形式が優れているという明確な証拠は得られなかったとも報告しています。

睡眠衛生教育

睡眠衛生教育は、睡眠そのものについての説明や、食事、運動、物質使用、光、騒音、温度など、生活習慣・環境に関する一般的な助言を行うものです。

寛解についてのiORは1.01(95%信頼区間 0.77–1.32)で、睡眠の質を改善する独立した上乗せ効果を示す明確な関連は確認されませんでした。

これは「睡眠衛生教育に意味がない」と断定する結果ではなく、他のCBT-I要素へ加えたときの独立した追加効果が明確ではなかったという結果です。

リラクセーション

腹式呼吸、漸進的筋弛緩、自律訓練、誘導イメージなどのリラクセーションについては、寛解のiORが0.81(95%信頼区間 0.64–1.02)でした。

研究者らは、リラクセーションが潜在的に逆効果となる可能性を示す結果と解釈しています。

その理由として、リラクセーションによって眠れないままベッドで横になっている時間が長くなり、睡眠制限や刺激制御と反対方向に働く可能性を挙げています。

ただし、この結果についても95%信頼区間は1.0をまたいでおり、研究者らは最終的な結論ではなく、今後さらに検証が必要な結果として扱っています。

「最も効果的」と推定された組み合わせ

研究では、

  • 認知再構成
  • 第三世代の要素
  • 睡眠制限
  • 刺激制御
  • 対面形式

を組み合わせたCBT-Iパッケージを、対面での心理教育と比較しました。

推定オッズ比は5.34(95%信頼区間 3.56–8.01)でした。

心理教育群の寛解率を、実際に観察された中央値である14%と仮定すると、

  • 寛解率の差:+33ポイント(95%信頼区間 +23〜+43ポイント)
  • NNT:3.0(95%信頼区間 2.3–4.3)

と推定されました。

ただし、これは個々の治療要素の効果が加算されると仮定したモデルから計算された値であり、この組み合わせそのものを直接比較した1件の試験結果ではありません。


発表者・所属機関

発表者

  • ユキ・フルカワ
  • マサツグ・サカタ
  • リュウイチロウ・ヤマモト
  • シュン・ナカジマ
  • シノ・キクチ
  • マリ・イノウエ
  • マサミ・イトウ
  • ヒロク・ノマ
  • ヒカリ・ニシムラ・タカシナ
  • サトシ・フナダ
  • エドアルド・G・オスティネリ
  • トシ・A・フルカワ
  • オレスティス・エフティミウ
  • マイケル・パーリス

所属機関

  1. 東京大学医学部附属病院 神経精神科
  2. 京都大学大学院医学研究科/公衆衛生大学院 健康増進・行動学部門
  3. 江戸川大学 社会学部 心理学・人文学部門
  4. 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法研究部門
  5. 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
  6. 名古屋市立大学大学院医学研究科 サイコオンコロジー・緩和ケアセンター コア・ラボラトリー
  7. 北里大学大学院医療系研究科
  8. 千葉大学 子どものこころの発達研究センター
  9. 慶應義塾大学医学部 予防医学・公衆衛生部門
  10. オックスフォード大学 精神医学部
  11. オックスフォード・プレシジョン・サイキアトリー・ラボ/国立健康・ケア研究機構 オックスフォード・ヘルス・バイオメディカル・リサーチ・センター
  12. オックスフォード・ヘルス NHS ファウンデーション・トラスト/ウォーンフォード病院
  13. 京都大学大学院医学研究科/公衆衛生大学院 臨床疫学部門
  14. ベルン大学 社会・予防医学研究所
  15. ベルン大学 プライマリ・ヘルスケア研究所
  16. ペンシルベニア大学 看護学部 精神医学部門 行動睡眠医学プログラム

著者と所属番号

  • ユキ・フルカワ:1
  • マサツグ・サカタ:2
  • リュウイチロウ・ヤマモト:3
  • シュン・ナカジマ:4、5
  • シノ・キクチ:6
  • マリ・イノウエ:4、7
  • マサミ・イトウ:2
  • ヒロク・ノマ:4
  • ヒカリ・ニシムラ・タカシナ:4、8
  • サトシ・フナダ:2、9
  • エドアルド・G・オスティネリ:10、11、12
  • トシ・A・フルカワ:2、13
  • オレスティス・エフティミウ:14、15
  • マイケル・パーリス:16

参考元

  • 論文名:Components and Delivery Formats of Cognitive Behavioral Therapy for Chronic Insomnia in Adults: A Systematic Review and Component Network Meta-Analysis
  • 著者:ユキ・フルカワ、マサツグ・サカタ、リュウイチロウ・ヤマモト ほか
  • 掲載誌:JAMA Psychiatry
  • 公開日:2024年1月17日
  • 巻号・ページ:2024;81(4):357–365
  • DOI:10.1001/jamapsychiatry.2023.5060
  • 参考URL:https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2814164

※本文は、上記論文に記載された内容のみをもとに、日本語で要約・再構成しています。

タイトルとURLをコピーしました