不眠症改善で最も効果が高いCBT-I(不眠症の認知行動療法)。
ただ、CBT-Iは複数の方法を組み合わせており、実践するのに時間がかかる欠点ありました。
そこで東京大学・オックスフォード大学などの研究チームが、241試験・3万1452人のデータを分析。
CBT-Iの中で「不眠症改善効果が高い方法は何か?」を調査しました。
その結果、CBT-Iの中核になっていたのは4つ。
①認知再構成
➁第三世代の要素
➂睡眠効率
④刺激制御
なぜ、この4つの睡眠法が効率的だったのか?
意外な結果と共に、仕組みも含めて、詳しく解説します。
不眠症改善で中核となる4つの睡眠法とは?
①眠れない悪循環ループから抜け出す「認知再構成」
睡眠を悪化させる考え方を、現実的な考え方に修正する方法。
今回の研究では、主に「主観的な睡眠の質」が改善。
睡眠が悪化する考えとは?
「十分眠れないと、翌日は何もできない」
「眠れなかった分は、翌日に取り戻さないといけない」
「8時間眠らないと、翌日はうまく動けない」
…などの不眠を長引かせやすい考え方のことです。
その考え方が「正しいかどうか」ではなく 睡眠の悪化につながることが問題になります。
眠れない悪循環ループ
眠れないと焦る
↓
頭がさらに覚醒する
↓
「早く寝ないと」
↓
さらに眠れない
ポイントは「ポジティブに考えるのではなく、視野を広げてフラットに考えること」
「多少眠れなくても、大丈夫」
「少しずつ睡眠リズムを取り戻せば問題ない」
「今日明日ではなく、安定的に安眠できるようになればいい」
➁眠れない悪循環ループを手放す 「第三世代の要素」
第三世代の要素とはマインドフルネス系の心理療法(MBSR、ACTなど)のこと。
眠れない状態を無理に変えようとするのではなく、眠れなさ・不安・考えとの付き合い方を変える。
今回の研究では、主に「主観的な睡眠の質」が改善。
ポイントは3つ
①睡眠を評価しない
➁眠れないことに抵抗しない
➂眠ろうとコントロールしない
ただ、今回の研究では効果はあったが、「続けることができなかった人も多い方法」でした。
マインドフルネスは感覚的なスキルがあるため、人によっては難しいことがある。
・評価しない→「評価しちゃいけない」と評価するにつながる
・抵抗しない→「抵抗しちゃいけない」と抵抗するにつながる
・コントロールしない→「コントロールしちゃいけない」とコントロールにつながる
評価しない→評価そのものから離れる
抵抗しない→抵抗そのものから離れる
コントロールしない→コントロールしないから離れる
「とりあえず不眠症を改善したい。でもマインドフルネスが苦手な人」は取り入れなくてもOKです。
ただし、「手放すことが大事」は念頭においておいたほうがいい。
➂眠り続ける力を高める「睡眠効率療法」
「ベッドにいる時間」を「実際に眠れている時間に近づける」方法。
全体の睡眠時間ではなく、ベッドの上でまとまった睡眠時間をまず増やすことから始める。
例えば、「眠れない8時間」より、「まとまった眠れる6時間」を作る。など。
今回の研究で示された主な3つの効果
①主観的な睡眠の質が改善
➁ベッドの上で効率よく眠れる
➂夜中に起きている時間が減る:中途覚醒の改善
現在、眠れない。でもベッドにいる時間が長い場合は、
・ベッドに入る時間を遅らせる
・起床時間は固定する
ベッド時間を短くすることで、睡眠をギュッと圧縮するのが目的。
④ベッドに入ると自然と眠れる「刺激制御療法」
「ベッド=眠る場所」という結びつきを脳に覚え直させる方法。
まずは「ベッドで眠る以外のことをしない」を脳に覚えてもらう。
今回の研究で示された主な3つの効果
・主観的な睡眠の質が改善
・ベッドの上で効率よく眠れる
・寝つきがよくなる
不眠が続いた場合の悪循環ループ
ベッドに入る
↓
眠れない
↓
考え事をする・焦る・スマホを見る
↓
「ベッド=眠れない場所」と脳が学習する
↓
ベッドに入ると目が覚めるようになる(条件付け不眠症)
「眠れるときはベッド、眠れないときはベッドから出る」をすることで、「ベッドに入ると目が覚める・何かしたくなる・考えたくなる」ではなく、「ベッドに入るとストンと眠りやすくなる」
刺激制御では、
・眠くなってからベッドに入る
・眠れない状態が続いたら、一度ベッドを出る
・眠気が戻ってからベッドに戻る
・ベッドでは基本的に睡眠以外のことをしない
・起床時間を固定する
これを繰り返します。
「ベッド=起きている場所」から、「ベッド=眠る場所」に戻していく。
今回の研究での刺激制御のポイントは5つ
①毎朝同じ時間に起きる
➁昼寝を避ける
➂眠くなってからベッドに入る
④眠れないときはいったんベッドを出る
⑤ベッドや寝室は睡眠と性行為のために使う
4つの中核の睡眠法は実際どれくらい効果があった?
今回の研究では、CBT-Iに含まれる睡眠法の中で「不眠症の改善のしやすさ」をオッズ比で出しています。
「不眠症の改善のしやすさ」をオッズ比
・認知再構成:1.68
・第三世代の要素(マインドフルネス系):1.49
・睡眠効率療法:1.49
・刺激制御療法:1.43
・睡眠衛生:1.01
・リラグセーション 0.81
オッズ比は、その要素を「追加した場合の効果」
1より大きい → 改善しやすい
1とほぼ同じ → 追加してもほとんど変わらない
1より小さい → 改善しにくくなる
注意としては「オッズ比1.5=治る確率が1.5倍ではない」。
オッズ比が高い方法を追加すると、改善する可能性が高まる」という意味。
追加した場合の改善率
= 元の改善率 ÷ 元の非改善率 × オッズ比 ÷(1 + 元の改善率 ÷ 元の非改善率 × オッズ比)
研究チームは中核の4つを掛け合わせると、「オッズ比5.33」と言っているが、実際には内容が被っているところがあるので、2つに分ける。
①睡眠に対する捉え方:認知再構成・第三世代の要素
➁ベッドの対する睡眠の方法:睡眠効率・刺激制御
どっちか片方ずつはいれた方が良い。
もちろん、完全にかぶる訳ではないので、4つすべてやる方が効果は高い。
4つの中核の睡眠法の優先順位
難易度と効果を考えた場合の優先順位は
①認知再構成
➁睡眠制御
➂睡眠効率
④マインドフルネス系
僕の不眠症改善では、「うつ病(双極性障害)改善のときにマインドフルネス系を取り入れていたので、マインドフルネス系が先にはなってる。
※不眠症のマインドフルネスではなかったが、応用しやすかった。
追加効果がなかった2つの睡眠法は意味がないのか?
①睡眠衛生
➁リラクゼーション
追加効果がなかった理由と仕組みを知ると、さらに睡眠改善しやすくなる。
①睡眠を悪化させない生活習慣「睡眠衛生」は効果がない?
睡眠衛生は睡眠のための生活習慣や環境を整えること
睡眠衛生の具体例
・カフェインやアルコールを控える
・寝室を暗く・静か・快適にする
・寝る直前の強い光やスマホを避ける
・日中に適度に運動する
・起床・就寝リズムを大きく乱さない
・寝る直前の重い食事を避ける など
これは「効果がない」ではなく「追加効果がなかった」という話。
基本的にCBT-Iは1~16週間、だいたい6週間行います。
睡眠衛生を入れると、その分、効果的な
①認知再構成
➁睡眠制御
➂睡眠効率
④マインドフルネス系 の時間がなくなる
そのため、睡眠衛生に効果があったとしても、他の時間が減ったマイナス分があるので、「追加効果」がなかった。
今回の研究は、結果的に「不眠症改善の効率性」になっているのが原因。
そもそもCBT-I提供には時間(とお金)がかかる。
年々増える慢性的な不眠症を抱える患者の需要に提供が追いついていないため、「CBT-Iの効率性」が求めらた。
もちろん、運動、食事、寝る前のスマホの光、寝室環境は大事。ただ、それはサブ的な要素。
誤解が生まれるのが「不眠症改善」と「不眠症ではない人の睡眠改善」は違うということ。
あとで詳しくお伝えします。
そのため、「睡眠のための生活習慣や環境は意味がない」ではなく、「できるものはしたほうがいい。けど、不眠症における優先順は低い」という内容。
推測になるが…
カフェインやアルコールに関しては、睡眠に対する悪影響は強いので、夕方以降のカフェインや、寝る前のアルコールはやめたほうがいい。
ただ、この2つは知っている人も多く、本人が自発的な改善もするため、「追加効果」が減っていると考えられる。
➁むしろ悪化?リラグゼーションの意外な落とし穴
今回の研究では「眠るために身体や頭の覚醒を下げる方法のこと」です。
リラグゼーションの具体的例
・腹式呼吸
・漸進的筋弛緩法
・自律訓練法
・誘導イメージ法 など
今回の研究では、「追加するとむしろ不眠症改善にマイナス」と出ていた。
これも効果がないという意味ではなく、他のプラスの睡眠法に使える時間など減るという意味もある。
ただ、もっと根本的な原因は
「リラックス法で、リラックスすることが難しいこと」
なぜか?
リラックス法で逆に緊張する悪循環
眠るためにリラックスする
→眠るためにリラックスしなければならないという思考が生まれる
→思考や体に力みが生まれる
→覚醒につながる
→さらに無理してリラックスしようとする
…という悪循環ループに入るため
マインドフルネス系と同じく、リラックスもスキルのため、改善効果が得やすい人と出ない人が出てくるため。
基本は、リラック法を試す。神経レベルで落ち着いたら、そのあとは「リラックス意識を手放すこと」が大事。
つまり、リラックス法はリラックスするための手段ではあるけど、最終的な意識のリラックスにはマインドフルネス的な感覚が必要になる。
さらに今回、マイナスだった理由は
リラックスに固執するがあまり、覚醒につながるだけではなく
その分、ベッドで眠れない時間が増える為「刺激制御」「睡眠効率」に悪影響がでる。
「不眠症改善」と「不眠症ではない人の睡眠改善」は何が違うの?
100%抑えとかなくちゃいけないポイント。
まず不眠症とは
・不眠症状が週3回以上・3か月以上続く
・眠る時間や環境を確保しているのに
寝つけない・夜中に何度も目が覚める・早く目が覚める・眠った感じがしない
・その結果、日中の生活に支障が出ている
不眠症の主な原因は4つの中核の睡眠法を見ると明らか
・認知再構成:1.68
・第三世代の要素:1.49
・睡眠効率:1.49
・刺激制御:1.43
中核の4つの睡眠法は、すべて「主観的な睡眠の質」に対する効果の高さがある。
つまり、不眠症の主な原因は「主観的な睡眠評価や考え方」
そのため、睡眠に対する捉え方の改善が上にくる。
睡眠は
機械で観測ができる「客観的な睡眠」
自分が思っている「主観的な睡眠」がある。
不眠症の人の場合、「主観的な睡眠が非常に悪いこと」が問題になりやすい。もちろん、客観的な睡眠も低下しているが、客観的な睡眠は本人が思っているほど悪化していないことがある。
実は問題のポイントが違う
そういう意味では、
大まかな優先順位
・一般的な睡眠改善:睡眠システム改善→メンタル改善
・不眠症の改善:メンタル改善→睡眠システム改善
そのため
睡眠には何が大切と言えば「体内時計。朝に光をあびること」となるが、
不眠症改善に何が大切と言えば「睡眠の捉え方」となる
結局、不眠症改善をするにはどうすればいいの?
不眠症改善の効率を考えるなら…
①睡眠に対する捉え方を柔らかくする:【認知の再構成】
➁起床時間は固定する:【起床(刺激制御・睡眠効率)】
➂眠くなってからベッドに入る:【刺激制御】
④がんばって眠ろうとしない:【マインドフルネス】
⑤(ベッドで眠れない時間が多いなら)ベッドにいる時間を減らす【睡眠効率】
※起床時間の固定は、一緒に朝の光を浴びるのがおすすめ
ただし、睡眠効率療法は、他の病気を抱えている人の場合は、注意が必要なことがある。
ちなみに 不眠症ではない人の睡眠改善はどうすればいいの?
不眠症ではないなら…
①夜の睡眠機会を用意する
➁起床時間は固定する
➂日中を活動的に過ごす
④夜はリラックスして過ごす
⑤体と心の健康度を高める
—
あとは好きなものから
・寝る環境を整える(アイマスク・耳栓)
・運動をする
・食事を整える
・ストレスケア
・完璧な睡眠を求めない(不眠症につながるから)
不眠症の人は、一般的な睡眠改善をしちゃいけないではなく
優先順位の問題なので、不眠症の人は「不眠症の改善→睡眠改善」となる。
睡眠は「眠れない障害をなくす」が大事
今回の話は不眠症における「眠れない障害になりやすいものから改善」という話。
つまり、不眠症に特化しています。
しかし、当然ながら、何か病気を抱えていて眠れない場合は、病気から治すほうが優先順位が高いことがあります。
・家族のいびきや、近くの騒音がうるさいなら、自分に合う耳栓のほうがいいこともあります。
・寝る前にコーヒーをたくさん飲んでいれば、まずコーヒーをやめたほうがいいです。
・僕の場合であれば、双極性障害によるメンタル改善のほうが優先順位が上でした。
そう考えると、誰もがやったほうがいい睡眠改善は「起床時間の固定」です。
「一般的な不眠症の人の改善を参考にしながら、自分の不眠症を改善するのが重要」です。
そして、不眠症改善はきちんとやれば、ほとんどの人ができるものです。
【この点は、一般的な不眠症改善率(寛解率)と、混同しないほうがいいです】
というのも、不眠症の治療とは、基本的には今回のように「限りある時間の中で、やりやすく、多くの人に使える方法を行うこと」だからです。
これは多くの慢性的な不眠症の人を改善するための、効率化が働くためです。
ただ、自分で学び、行動する範囲を広げれば、その分、改善の可能性は一般的な数値よりもあがる可能性が当然高いです。
これは試験に合格する確率と同じ
例えば、50%の合格率の試験の場合でも、「あまり勉強しない人」「やみくもに勉強した人」「効率的に勉強した人」「効率的に勉強し、時間を使った人」では当然、合格率は変わってきます。
なので、重要なのは「平均」を「自分に当てはめず、あくまで目安にし、どうすれば率をあげられるか?」と考えることです。
あなたは不眠症を効率的に改善する方法を知りました
今回の不眠症改善の中核となる4つの睡眠を知ることで、効率的に不眠症を改善できます。
同時に、不眠症を改善するポイントも知ることができました。
今後、睡眠情報を見たときにも、「その睡眠情報は、どこの原因を取り除くのか?」というのが、見えてきます。そのときに「これは優先順位が高い・低い」が、見分けがつくようになります。
AI時代において、「何が自分にとって大切か?」を見分ける力は、以前よりも重要な力となってきます。
なぜなら、AI時代において重要なのは「情報を整理整頓し、意思決定する力」だからです。
今回の話をもとに、僕の過去の睡眠動画も見て頂ければ、理解が広がると思います。
【メモ】参考動画は、再生リスト「効率的な不眠症改善」にまとめています。

