就寝前に5分間、今後数日間に行うべきことを具体的に書き出した人は、過去数日間に完了したことを書いた人よりも、平均で約9分早く眠りにつきました。
入眠までの平均時間は、次のとおりです。
- ToDoリストを書いたグループ:15.82分
- 完了済みリストを書いたグループ:25.09分
両グループの差は統計的に有意でした。さらに、ToDoリストに書いた項目数が多い人ほど、入眠までの時間が短い傾向も確認されました。
ただし、この研究は健康な若年成人57人を対象に、睡眠研究室で一晩だけ行われたものです。そのため、すべての年齢層や不眠症の人、普段の自宅環境でも同じ効果が得られるとは、まだ結論づけられません。
参考:就寝前の文章作成が入眠困難に及ぼす影響:ToDoリストと完了済みアクティビティリストを比較した睡眠ポリグラフ検査による研究【ベイラー大学2019年研究】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
内容の信頼性:7点/10点
この研究の信頼性は、10点満点中7点と評価できます。
信頼できる点は、参加者を2つのグループにランダムに割り当てていることと、睡眠を自己申告だけでなく、脳波などを測定する睡眠ポリグラフ検査で客観的に調べていることです。また、睡眠段階の判定を行った技師には、参加者がどちらのグループか知らされていませんでした。
一方で、最終的な参加者は57人と多くなく、年齢も18~30歳に限られています。実験は睡眠研究室で一晩だけ行われ、不眠症などの睡眠障害がある人は対象外でした。研究者自身も、効果の仕組みや、家庭で継続した場合にも有効かどうかは、今後の研究が必要だと述べています。
何の研究か?
寝る前に書く内容の違いが、眠りにつくまでの時間に影響するかを調べた研究です。
健康な若年成人を、次の2つのグループに分けました。
- 今後数日間にやるべきことを書く「ToDoリスト」グループ
- 過去数日間に完了したことを書く「完了済みリスト」グループ
参加者は就寝前に5分間、紙とペンで指定された内容を書きました。その後、睡眠ポリグラフ検査を使って、実際に眠りにつくまでの時間や睡眠状態を測定しました。
最初に60人を募集しましたが、3人が除外され、最終的な分析対象は57人でした。内訳は、ToDoリストグループが28人、完了済みリストグループが29人です。
研究した理由は?
研究者は、未完了の仕事や将来の予定についての心配が、寝つきを悪くする原因になると考えました。
未完了の課題は、頭の中で繰り返し思い出されやすく、認知的な覚醒や心配を引き起こす可能性があります。一方で、心配事を書き出す行為には、考えを頭の中から外に出し、反芻を減らす可能性もあります。
そこで研究者は、次の2つの可能性を検討しました。
1つ目は、将来のToDoを書くことで心配が強まり、寝つきが悪くなる可能性です。
2つ目は、ToDoを書き出すことで、覚えておかなければならないという負担が軽くなり、寝つきが良くなる可能性です。
また、過去の研究では睡眠時間を自己申告で測るものが多かったため、この研究では睡眠ポリグラフ検査を使い、より客観的に入眠時間を測定しました。
結果はどうだったか?
睡眠ポリグラフ計測
| 比較項目 | ToDoリスト | 完了済みリスト | 分かった効果 |
|---|---|---|---|
| 平均入眠時間 | 15.82分 | 25.09分 | ToDoリストのほうが平均9.27分早く眠った |
| 統計的な差 | p=0.02 | ― | 偶然では説明しにくい有意な差があった |
| 効果量 | d=0.63 | ― | 一定の大きさの効果が確認された |
| 書いた項目数との関係 | r=−0.39、p=0.04 | r=0.34、p=0.07 | ToDoは項目数が多いほど早く眠る傾向。完了済みリストは逆方向だが有意ではない |
| 総睡眠時間 | 498.53分 | 492.40分 | 明確な差なし |
| 睡眠効率 | 90.74% | 88.53% | 明確な差なし |
| 入眠後の覚醒時間 | 34.08分 | 38.43分 | 明確な差なし |
| 深い睡眠・REM睡眠 | 明確な差なし | 明確な差なし | 睡眠の深さや構成への効果は確認されなかった |
研究の中心となる結果は、就寝前に今後のToDoリストを書いた人のほうが、すでに完了した活動を書いた人よりも早く眠りについたというものです。
この研究では、健康な18~30歳の若年成人57人を、次の2グループにランダムに分けました。
- 今後数日間にやらなければならないことを書く「ToDoリストグループ」:28人
- 当日や過去数日間に完了したことを書く「完了済みリストグループ」:29人
参加者は、就寝直前に紙とペンを使って5分間の文章作成を行いました。その後、睡眠ポリグラフ検査によって、消灯してから実際に眠りにつくまでの時間が測定されました。
ToDoリストを書いた人は、平均9.27分早く眠った
消灯してから眠りにつくまでの平均時間は、次のとおりでした。
- ToDoリストグループ:15.82分
- 完了済みリストグループ:25.09分
両グループの平均値には、9.27分の差がありました。
つまり、この実験では、就寝前にこれから行うべきことを書き出した人は、完了したことを振り返って書いた人よりも、平均で約9分早く眠りについたことになります。
ただし、これはすべての参加者が一律に9.27分早く眠れたという意味ではありません。参加者ごとに入眠時間にはばらつきがあり、ToDoリストグループの標準偏差は14.07分、完了済みリストグループの標準偏差は15.94分でした。9.27分という数値は、それぞれのグループ全体の平均を比較した結果です。
グループ間の差は統計的に有意だった
この差について、論文では次の統計結果が報告されています。
t(55)=2.32、p=0.02、d=0.63
「p=0.02」は、今回のようなグループ間の差が、実際には差がないにもかかわらず偶然生じる確率が約2%であることを示します。
一般的に研究では、p値が0.05未満の場合に「統計的に有意な差がある」と判断されます。今回のp値は0.02であるため、研究者は、ToDoリストグループと完了済みリストグループの入眠時間には、偶然だけでは説明しにくい差があったと判断しました。
ただし、統計的に有意であることは、すべての人に確実な効果があることを意味するわけではありません。この研究に参加した57人の平均的な結果として、両グループに差が確認されたという意味です。
効果量はd=0.63だった
論文では、グループ間の差の大きさを表す「効果量」として、Cohenのd=0.63が報告されています。
効果量は、単に差が偶然かどうかだけでなく、その差がどの程度の大きさだったのかを示す数値です。
今回のd=0.63という結果は、ToDoリストを書く条件と完了済みリストを書く条件の間に、一定の大きさの差があったことを示しています。研究者は、単に統計上のわずかな差が出ただけではなく、入眠時間に実際的な違いが生じた可能性があると考えています。
ToDoリストは、詳しく書くほど早く眠る傾向があった
研究では、どちらのグループに入ったかだけでなく、参加者がリストに書いた項目数も調べられました。
論文では、書かれた項目数を「リストの具体性」として扱っています。つまり、書いた項目数が多いほど、より具体的かつ詳細にリストを書いたと判断しました。
各グループが書いた項目数の平均は、次のとおりです。
- ToDoリストグループ:平均15.96項目
- 完了済みリストグループ:平均14.10項目
項目数そのものには、グループ間で統計的に有意な差はありませんでした。したがって、ToDoリストグループだけが単純に多くの文章を書いたため、早く眠れたとは判断できません。
そのうえでToDoリストグループだけを分析すると、書いた項目数が多い人ほど、眠りにつくまでの時間が短いという関係が確認されました。
統計結果は、次のとおりです。
r=−0.39、p=0.04
相関係数の「r」は、2つの数値がどの程度関連しているかを表します。値は−1から1までの範囲を取り、マイナスの場合は、一方が増えるほど、もう一方が減る関係を示します。
今回のr=−0.39は、ToDoリストの項目数が多くなるほど、入眠までの時間が短くなる傾向があったことを意味します。
また、p=0.04は0.05未満であるため、この関係は統計的に有意と判断されました。
つまり、単にToDoリストを書くだけでなく、今後行う必要があることを、できるだけ多く具体的に書き出した人ほど、早く眠りにつく傾向が見られたということです。
ただし、この結果は相関関係です。項目を多く書くことが、直接的な原因となって入眠時間を短くしたと完全に証明されたわけではありません。論文でも、項目数と入眠時間の関係を調べた分析は二次的な分析であり、個人差を詳しく検討するにはサンプル数が小さいと説明されています。
完了済みリストでは、反対方向の傾向が見られた
完了済みリストグループでは、ToDoリストグループとは反対に、書いた項目数が多いほど、眠りにつくまでの時間が長くなる傾向が見られました。
統計結果は、次のとおりです。
r=0.34、p=0.07
r=0.34は、完了した活動を多く書いた人ほど、入眠時間が長くなる方向の関係があったことを示します。
しかし、p値は0.07で、一般的な有意水準である0.05を上回っています。そのため、この結果については「統計的に有意な関係が確認された」とはいえません。
論文では、あくまでも「逆方向の傾向が観察された」と表現しています。完了した活動を詳しく書くと寝つきが悪くなると、今回の結果だけで断定することはできません。
研究者は、この傾向について複数の可能性を挙げています。
1つは、完了した活動を多く書けるほど日常的に忙しい人は、もともと睡眠上の問題を経験しやすい可能性です。
もう1つは、過去に完了したことを思い出す過程で、そこから関連する未完了の予定や今後行うべきことまで思い出し、考え込みや反芻が生じた可能性です。
ただし、これらは研究者が示した考えられる説明であり、この実験によって原因が確認されたわけではありません。
リストの種類と項目数の組み合わせにも差があった
研究者は、入眠時間に対して、「どちらのリストを書いたか」と「何項目書いたか」の組み合わせが関係しているかも分析しました。
その結果、リストの種類と項目数の相互作用は統計的に有意でした。
ΔR²=0.12、F(1,53)=7.75、p=0.007
これは、項目数と入眠時間の関係が、ToDoリストと完了済みリストで異なっていたことを示します。
具体的には、ToDoリストでは項目数が多いほど入眠時間が短くなった一方、完了済みリストでは項目数が多いほど入眠時間が長くなる方向が見られました。
入眠時間の外れ値とされた1人のデータを除外して分析しても、リストの種類による差はp=0.04、リストの種類と項目数の相互作用はp=0.03で、いずれも統計的に有意でした。
そのため、特定の1人の極端なデータだけが、全体の結果を作り出した可能性は低いと考えられます。
もともとの寝つきや血圧を考慮しても差は残った
研究者は、今回の入眠時間に影響した可能性がある別の要因についても調べました。
その結果、睡眠ポリグラフ検査で測定した入眠時間と有意に関連していたのは、主に次の2項目でした。
- 実験前夜に本人が申告した入眠時間
- 平均動脈圧
実験前夜にもともと寝つくまで時間がかかった人は、研究室でも寝つくまで時間がかかる傾向がありました。また、平均動脈圧が高い人ほど、入眠時間が長い傾向も確認されました。
そこで研究者は、この2つの要因を統計的に調整したうえで、ToDoリストと完了済みリストの差を再分析しました。
その結果、リスト条件による入眠時間の差は、調整後も統計的に有意でした。
F(1,49)=6.15、p=0.02
つまり、ToDoリストグループの人が早く眠れたという結果は、単にその人たちが普段から寝つきがよかったことや、血圧の違いだけでは説明できなかったことになります。
一方、リストの種類と項目数の相互作用は、これらの要因を調整するとp=0.06となり、一般的な基準では統計的に有意とはいえない水準まで弱まりました。
したがって、「ToDoリストを書くか、完了済みリストを書くか」という条件そのものの差は比較的明確でしたが、「項目数が多いほど効果が強くなる」という結果については、より大規模な研究による確認が必要です。
入眠時間以外の睡眠状態には明確な差がなかった
ToDoリストグループと完了済みリストグループの間で明確な差が確認された主な指標は、眠りにつくまでの時間でした。
一方、次のような睡眠指標には、統計的に有意なグループ差は確認されませんでした。
- 総睡眠時間
- 入眠後に目が覚めていた時間
- 睡眠効率
- 浅い睡眠であるN1睡眠の割合
- N2睡眠の割合
- 深い睡眠であるN3睡眠の割合
- REM睡眠の割合
総睡眠時間の平均は、ToDoリストグループが498.53分、完了済みリストグループが492.40分でしたが、p=0.67であり、統計的に有意な差はありませんでした。
睡眠効率の平均は、ToDoリストグループが90.74%、完了済みリストグループが88.53%でしたが、p=0.28で、有意な差はありませんでした。
入眠後に目が覚めていた時間の平均は、ToDoリストグループが34.08分、完了済みリストグループが38.43分で、p=0.64でした。
また、夜間の覚醒回数は、ToDoリストグループが平均20.93回、完了済みリストグループが平均26.38回でした。ToDoリストグループのほうが少ない数値でしたが、p=0.07であり、統計的に有意とは判断されませんでした。
したがって、この研究から直接示されたのは、ToDoリストを書くことで睡眠全体の長さや深さが改善したということではなく、主に眠りにつくまでの時間が短くなったという点です。
研究結果から考えられること
研究者は、未完了の予定を頭の中だけで考え続けるのではなく、紙に具体的に書き出すことが重要だった可能性を指摘しています。
将来やらなければならないことは、忘れないように頭の中で維持しようとすると、心配や認知的な覚醒を引き起こす可能性があります。しかし、ToDoリストとして外部に記録することで、覚えておかなければならないという心理的な負担が軽くなり、考えを頭の中から「解放」できた可能性があります。
この研究では、就寝前に完了した活動について振り返るよりも、今後数日間に行うことを5分間かけて具体的に書き出すほうが、早く眠りにつくために役立つ可能性が示されました。
ただし、対象者は睡眠障害のない18~30歳の健康な若年成人であり、実験は睡眠研究室で一晩だけ行われました。
そのため、この方法が不眠症の人にも有効なのか、自宅で毎晩続けた場合にも効果があるのか、長期間にわたって効果が続くのかについては、この研究だけでは分かりません。
論文でも、今後は入眠困難がある人とない人の両方を対象に、自宅などの自然な環境で、複数夜にわたる無作為化比較試験を行う必要があるとしています。

