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リラックス後に不安になるのはなぜ?全般性不安障害・うつ病研究から解説【ペンシルベニア州立大学2019年研究】

リラクゼーションは多くの不安や抑うつ症状の軽減に役立ちますが、一部の人では逆に不安が高まる「リラクゼーション誘発性不安(RIA)」という現象が起こります。
本研究は、不安障害やうつ病の人にこの現象がなぜ起きるのか、その背景に「ネガティブ感情の急上昇への敏感さ(ネガティブコントラスト感受性)」が関係しているのかを検証しました。

参考:【ペンシルベニア州立大学2019年研究】リラクゼーショントレーニングのパラドックス:全般性不安障害および大うつ病におけるリラクゼーション誘発不安および陰性コントラスト感度の媒介効果

【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。緑のメモは僕の意見・感想です】


結論

・GAD(全般性不安障害)では、RIAはネガティブコントラスト感受性によって完全に媒介されていた。
・MDD(大うつ病性障害)では、RIAは部分的に媒介されていた。
・この感受性は、不安障害やうつ病に共通する「感情変化への脆弱性」を示し、治療時には考慮すべき重要な要因である。

リラクゼーション後にネガティブ感情刺激(悲しい/恐怖の動画)を見せて、再度リラクゼーションを実施。そのときに不安が起きやすくなるかどうか? という話ですね。全般性不安障害は完全に影響を受け、大うつ病性障害は部分的に影響を受けています。
これは大うつ病性障害は無気力になることもあって、むしろ不安が感じにくいこともあるからです。


内容の信頼性(10点満点)

9/10
・査読付き論文(Journal of Affective Disorders 掲載)
・臨床レベルの症状を持つ大学生89名を対象にした実験研究
・測定方法は信頼性・妥当性の確認された質問票を使用
・サンプルの年齢層や文化的背景の偏りは限界点


何の研究か?

全般性不安障害(GAD)、大うつ病性障害(MDD)、健常者を比較し、

  1. リラクゼーション後にネガティブ感情刺激(悲しい/恐怖の動画)を見せ、ネガティブコントラスト感受性を測定
  2. 再度リラクゼーションを行い、RIAを測定
    これらを使い、「ネガティブコントラスト感受性」がRIAにどう影響するかを媒介分析で検証した。

全般性不安障害(GAD)、大うつ病性障害(MDD)の人にこの実験を行うのは、なかなかに酷ですね。安全性は配慮しているとは思いますが、日本では難しい実験なのかなと思います。


研究した理由は?

・GADやMDDでは、安心・リラックス状態から急に嫌な出来事に直面すると感情の落差が大きくなり、強い不安や抑うつが生じやすいとされる(コントラスト回避モデル)
・RIAは治療効果を下げる可能性があり、メカニズムを明らかにすれば、適切な介入ができる可能性がある。
・これまでMDDでのRIA研究はほとんどなく、GADとの比較検討も不足していた。


結果はどうだったか?

1. 全般性不安障害群(GAD)(n=28)の結果:完全媒介

  • 完全媒介とは、GADの有無がRIAに与える影響が、すべて「ネガティブコントラスト感受性」を経由して発生していることを意味します。
  • 実際の分析では、
    • GAD → ネガティブコントラスト感受性:有意に高い(B = 4.13, p < .05)
    • ネガティブコントラスト感受性 → RIA:有意に高い(B = 0.09, p < .01)
    • 直接効果(GAD → RIA)は、感受性をモデルに入れると非有意化(B = 0.85, p = .16)
  • 解釈:GAD患者は「リラックス後にネガティブな刺激が来るとつらい」という感受性が高く、その感受性が高いほどRIAが起こる。GADの場合、この感受性がRIA発生のほぼ全てを説明している。

不安に悩まされている方は、少なくともリラックス時は「不安や恐怖を煽る情報や映像」は避けたほうが良さそうですね。怖いもの見たさはあると思いますが、要注意。


2. 大うつ病性障害群(MDD)(n=32)の結果:部分媒介

  • 部分媒介とは、MDDがRIAに与える影響の一部はネガティブコントラスト感受性で説明されるが、残りは他の要因によるということ。
  • 実際の分析では、
    • MDD → ネガティブコントラスト感受性:有意に高い(B = 5.66, p < .01)
    • ネガティブコントラスト感受性 → RIA:有意(B = 0.09, p < .01)
    • 直接効果(MDD → RIA)は、感受性をモデルに入れても依然有意(B = 1.60, p < .01)
  • つまり、MDD患者では「感受性」がRIAの一因であることは確かだが、他の心理的特徴(例:快感喪失、ポジティブ感情への鈍感さ)がRIAを強めている可能性が高い。

うつ病の方の場合も「不安や恐怖を煽る情報や映像」の影響でリラックスが難しくなることはあります。が、不安障害に比べて、「リラックス時に虚しさから来る漠然とした不安」に悩まされることがあるんだと思います。


3. 群間比較

  • 健常群(n=29)に比べ、GAD群・MDD群ともにRIAスコアが有意に高かった。
  • 平均RIAスコア:
    • GAD群:3.79
    • MDD群:4.69
    • 健常群:2.55
  • MDD群の方がGAD群よりRIAが高い傾向が見られたが、統計的には両者の差は明確ではなかった(感受性の高さが似ているため)。

4. 媒介モデルの説明力

  • ネガティブコントラスト感受性を介したモデルは、RIAの分散の**21%**を説明。
  • 心理学の介入研究としては中程度の効果量で、RIA発生要因の一つとして十分な影響力を持つ。
  • 残りの79%は、感受性以外の要因(個人の認知スタイル、情動調整スキル、性格特性など)によって説明される可能性がある。

5. 臨床的示唆

  • 評価の必要性:リラクゼーション導入前に「感情の落差への耐性」を評価することで、RIA発生リスクを予測できる可能性がある。
  • 介入の方向性
    1. 感受性低減トレーニング(例:リラックス直後に軽度のネガティブ刺激を繰り返す曝露法で耐性を高める)
    2. 認知再構成(「リラックスは危険」という信念の修正)
    3. スモールステップ法(短時間・軽度のリラクゼーションから始め、徐々に強度を上げる)
  • 注意点:感受性が高い人に急な深いリラクゼーションを行うと逆効果の恐れがあるため、導入時は段階的アプローチが推奨される。

例え、リラクゼーションというポジティブなものであったとしても、「普段、体験をしていない感覚は不安を呼び起こすこと」につながります。ポジティブなものであったとしても、少しずつ慣れる必要があるんですね。「幸せすぎて不安」という言葉をたまに聞くことがありますが、リラグゼーション誘発性不安と似た心理状態なのかもしれませんね。

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