睡眠時間を完全に不規則にすると、体温や尿中成分のリズムは24時間より長い周期で自由継続する状態になりました。
一方、1日8時間の睡眠を「4時間+4時間」に分け、そのうち4時間を毎日同じ時間に固定するアンカー睡眠を入れると、最終的にはリズムの周期が24時間と統計的に区別できない状態まで安定しました。
アンカー睡眠を0:00~4:00、4:00~8:00に設定した群では、24時間周期への安定が速くみられました。8:00~12:00では約4日、12:00~16:00では約6日かけて安定しました。
食事時間は実験中もほぼ一定だったにもかかわらず、アンカー睡眠のない群では24時間周期を維持できませんでした。また、リズムの位相変化は食事時間ではなく、睡眠時間の変化に近い動きを示しました。研究者らは、睡眠に関連する何らかの要素がリズムの安定に重要だとしています。
研究者自身は、この安定化が体内時計そのものの真の同調なのか、規則的な睡眠に伴う外的影響によって見かけ上24時間周期になったのかは、この実験だけでは区別できないとも述べています。
参考:異常な生活リズムにおけるリズム同期化のアンカーとしての睡眠【1981年】
【研究や論文は、chatGPTに著作権に配慮して、要点をまとめてもらっています。[ ]のメモは僕の意見・感想です】
内容の信頼性:7 / 10
論文に記載された研究設計と限界だけを根拠に評価すると、7点です。
強みは、隔離実験室を使い、通常生活の期間と睡眠スケジュールを変えた期間を比較していることです。深部体温だけでなく、ナトリウム、カリウム、塩化物、クレアチニン、無機リン酸、カルシウム、尿酸など複数の生理指標を測定し、コサイナー法などを用いて周期を解析しています。
制約として、被験者は18~21歳の健康な学生で、各群は2~5人と小規模です。実際の交代勤務者を直接調べた研究ではありません。また研究者ら自身が、睡眠には姿勢、光、社会的交流など複数の変化が伴うため、どの要素がリズムを安定させたのかを切り分けられないとしています。さらに、真の概日リズムの同調と、外的要因による見かけ上の変化の区別も、この実験では確定していません。
何の研究か?
不規則な睡眠生活の中でも、毎日同じ時間に4時間眠る「アンカー睡眠」を設けることで、人間の概日リズムを24時間周期に安定させられるかを調べた実験です。
被験者は健康な18~21歳の学生です。表に記載された人数を合計すると27人分で、男性12人分、女性15人分です。各群2~5人で実験しました。最初の5日間は通常の生活として、0:00~8:00に睡眠を取り、通常の時間帯に食事をしました。
その後、睡眠時間を不規則にする実験に移りました。
アンカー睡眠を設けない条件では、1日1回の8時間睡眠を毎日違う時刻に取る群と、4時間睡眠を2回とも不規則な時間に取る群を設定しました。
アンカー睡眠を設ける条件では、1日8時間の睡眠を4時間ずつ2回に分け、一方を毎日同じ時間に固定しました。固定した時間は0:00~4:00、4:00~8:00、8:00~12:00、12:00~16:00の4パターンです。もう一方の4時間睡眠は不規則な時間に取りました。
研究中は、深部体温を1時間ごとに測定し、起床時と覚醒中は2時間ごとに尿を採取しました。尿については、ナトリウム、カリウム、塩化物、クレアチニン、無機リン酸、カルシウム、尿酸などを分析しています。
研究した理由は?
研究者らが注目したのは、交代勤務などで睡眠時間が頻繁に変わると、体内の概日リズムが勤務・睡眠スケジュールと一致しなくなる可能性です。
論文では、交代勤務では勤務時間が変わるたびに体内リズムの適応と再適応が必要になり、急速に勤務時間が変わる場合には、規則的な時間の手がかりがなくなることで、体内リズムが24時間より長い周期で自由継続する可能性が示されています。
そこで研究者らは、睡眠全体を規則正しくするのではなく、睡眠の一部分だけでも毎日同じ時間に固定すれば、残りの睡眠時間が不規則でも体内リズムを安定させられるのではないかと考え、この実験を行いました。
結果はどうだったか?
| 条件 | 睡眠方法 | アンカー睡眠 | 実験時の平均リズム周期 | 主な結果 |
|---|---|---|---|---|
| A群 | 8時間睡眠を毎日不規則な時間に取る | なし | 24.516 ± 0.191時間 | 24時間より有意に長い(p < .05) |
| B群 | 4時間+4時間をともに不規則に取る | なし | 24.683 ± 0.159時間 | 24時間より有意に長い(p < .05) |
| C・D・E群 | 4時間固定+4時間不規則 | 0:00~4:00 | 24.166 ± 0.164時間 | 24時間との差は有意でない |
| F群 | 4時間固定+4時間不規則 | 4:00~8:00 | 24.191 ± 0.137時間 | 24時間との差は有意でない |
| G群 | 4時間固定+4時間不規則 | 8:00~12:00 | 23.977 ± 0.081時間 | 約4日後に安定。初期と後期の差 +0.667 ± 0.150時間、p = .001 |
| H群 | 4時間固定+4時間不規則 | 12:00~16:00 | 24.213 ± 0.168時間 | 約6日後に安定。初期と後期の差 +0.686 ± 0.264時間、p = .021 |
※C~H群の平均周期は、C~G群では実験開始後の最初の4日間、H群では最初の6日間を除いて算出されています。表2の「n」は被験者数ではなく、解析された各生理リズムの数です
アンカー睡眠のないA群では、通常生活時の平均周期は24.160 ± 0.103時間でしたが、不規則な8時間睡眠にすると24.516 ± 0.191時間になりました。
同じくアンカー睡眠のないB群では、通常生活時の24.195 ± 0.106時間から、不規則な4時間+4時間睡眠では24.683 ± 0.159時間になりました。
どちらも実験期間の周期は24時間より有意に長く(p < .05)、通常生活時と比較しても有意に長くなっていました。食事時間はほぼ規則的なままだったため、規則的な食事だけでは24時間周期を維持できませんでした。
アンカー睡眠を入れた群では、実験後半の平均周期は以下のようになりました。
0:00~4:00のアンカー睡眠を取ったC・D・E群では24.166 ± 0.164時間、4:00~8:00のF群では24.191 ± 0.137時間、8:00~12:00のG群では23.977 ± 0.081時間、12:00~16:00のH群では24.213 ± 0.168時間でした。いずれも24時間との差は統計的に有意ではありませんでした。
G群とH群では、開始直後から安定したわけではありません。G群では初期と後期の周期差が**+0.667 ± 0.150時間(p = .001)、H群では+0.686 ± 0.264時間(p = .021)で、実験初期には周期が長く、その後24時間付近へ安定しました。安定までの目安はG群が約4日**、H群が約6日でした。
研究者らは最終的に、アンカー睡眠がある場合、不規則な生活の中でもリズムが24時間周期に安定すること、そして安定後のリズムの位相はアンカー睡眠の時間によって変化し、その変化量は睡眠中央時刻の移動量とおおむね一致すると結論づけています。
発表者:デイビッド・S・マイナーズ、ジェームズ・M・ウォーターハウス
所属機関:マンチェスター大学(英国マンチェスター)
※PubMedの当該レコードでは所属情報が表示されていないため、同題・同著者の公開本文に記載された所属を使用しています。
Minors et al. (1981). Anchor sleep as a synchronizer of rhythms on abnormal routines. Int J Chronobiol, 7(3), 165–188.


