論文では、夜勤中の仮眠は、夜勤による眠気の増加や注意力・作業能力の低下を抑える有効な方法だとまとめています。実際の職場研究でも、20分程度の短い仮眠から1時間程度の仮眠まで、夜勤後半の注意力や作業成績を改善した例が報告されています。
一方、仮眠から目覚めた直後には「睡眠慣性」と呼ばれる一時的な能力低下が起こる場合があります。50分の仮眠では、起床後10~15分間に睡眠慣性がみられた研究も紹介されています。そのため、「長く寝れば寝るほどよい」という単純な話ではなく、仮眠時間とタイミングを職場ごとに考える必要があります。
著者らは、研究方法や個人差が大きいため、「最も効果的な仮眠条件」を一つに決めることは難しいとしています。そのうえで、夜勤中の仮眠そのものについては、夜勤労働を改善する有効な手段だと結論づけています。
参考:職場での夜勤業務を改善するための夜間仮眠戦略【2005年】
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この論文は1つの実験結果を報告したものではなく、夜勤中の仮眠について複数の先行研究をまとめたレビュー論文です。職場調査、実験室研究、実際の夜勤職場での研究など、さまざまな研究結果が検討されています。
信頼性を下げる要素として、著者自身が、研究ごとに方法が異なるため適切な仮眠時間を断定するのは難しいと述べています。また、実際の職場で仮眠を導入して調べた研究は少なく、「アンカー睡眠」と体内時計との関係についても研究が少ないとしています。さらに、救急隊員を対象とした著者らの介入研究については、論文中で「data not published(データ未公表)」と明記されています。
そのため、「夜勤中の仮眠には有用性がある」という方向性には複数の研究が一致しているものの、何時に何分寝るのが最善なのかまで確定した研究ではない、という評価になります。
何の研究か?
これは、夜勤中に取る仮眠について、過去の研究をまとめて効果や導入方法を検討したレビュー研究です。
主に調べているのは、次のような内容です。
- 夜勤中の仮眠で眠気や注意力低下を防げるか
- 仮眠によって作業成績が改善するか
- 何分くらい仮眠を取るのがよいか
- 夜の何時ごろ仮眠を取るのがよいか
- 仮眠後の「睡眠慣性」が仕事にどう影響するか
- 体内時計の乱れを抑えられるか
- 実際の職場に仮眠制度を導入するには何が必要か
著者らは、夜勤前にあらかじめ寝ておく「予防的仮眠」と、実際の夜勤中に取る夜間仮眠を区別し、この論文では主に後者について検討しています。
研究した理由は?
24時間稼働する産業が増え、夜間にも働く人が増えるなか、夜勤では時間が進むにつれて注意力や作業能力が低下しやすくなります。論文では、強い眠気と注意力低下によって労働災害につながる可能性があり、夜勤労働者の健康上の問題も生じると説明しています。
対策として、光、音、温度、カフェイン、薬物などさまざまな方法が研究されてきました。その中でも仮眠は、眠気の増加と注意力の低下を防ぐ手段の一つとして研究されてきました。
しかし、夜勤中の仮眠制度は職場で十分普及しておらず、実際に導入する際には「どのくらい寝るのか」「いつ寝るのか」「起床直後に仕事をして安全なのか」といった問題があります。そこで著者らは、過去の研究を整理し、夜間仮眠の効果と、職場で導入するときに考えるべき点を検討しました。
結果はどうだったか?
| 項目 | 論文で紹介された結果 |
|---|---|
| 夜勤中の仮眠の基本的な効果 | 眠気の増加や注意力・作業能力の低下を抑える研究結果が複数報告された |
| 午前3時の仮眠 | 1時間・2時間とも、仮眠なしより早朝の主観的眠気が低かった |
| 午前2時の仮眠 | 1時間の仮眠で作業成績への有益な効果が報告された |
| 20分仮眠 | 午前1時~3時に取った20分間の仮眠で、夜勤終了時の注意力課題の反応速度が有意に改善 |
| 30分・50分仮眠 | 午前1時ごろ、午前4時ごろのどちらでも有益な効果がみられた |
| 50分仮眠の注意点 | 起床後10~15分の睡眠慣性が確認された |
| 午後9時/午前4時30分の1時間仮眠 | どちらも午前7時の作業成績が改善。特に午前4時30分の仮眠が有効だった |
| 睡眠周期を基準にした目安 | 1睡眠周期として約90~120分が有効と考えられている |
| 夜勤前半・後半の目安として紹介された条件 | 前半は120分超、後半は約60分が仮眠後の注意力維持に役立つ可能性 |
| アンカー睡眠 | 8時間を4時間+4時間に分け、一方を毎日0時~4時に固定。7~12日間の観察で体内時計が安定 |
| 夜勤後の昼間睡眠 | 夜勤中に仮眠すると昼間睡眠は短くなる傾向。一方、2時間の夜間仮眠+昼間睡眠の総睡眠時間は、仮眠なしの場合とほぼ同じとの報告 |
| 最適な仮眠時間 | 研究方法や個人差があるため、論文では一つの最適条件を断定できないとしている |
| 職場導入時の重要点 | 仮眠時間・タイミング、睡眠慣性、静かで暗く適温の睡眠環境、職場内の合意形成などを考慮する必要がある |
夜勤中の仮眠は眠気・注意力・作業成績の改善につながっていた
複数の研究で、夜勤中に仮眠を取ることで、起床後の眠気が少なくなり、注意力や作業成績の低下を防げることが報告されていました。
例えば、午前3時に1時間または2時間仮眠した研究では、どちらも仮眠なしの場合より早朝の主観的な眠気が低くなっていました。また、午前2時の1時間の仮眠も作業成績に有益な影響を示していました。
航空機整備士を対象とした職場研究では、午前1時~3時の間に20分間の仮眠を取る機会を設けたところ、仮眠なしの場合と比べ、夜勤終了時の注意力課題への反応速度が有意に改善しました。
30~50分程度でも効果はみられた
夜勤前半の午前1時ごろ、または後半の午前4時ごろに30分または50分仮眠した研究では、どちらの時間帯・仮眠時間でも有益な効果が報告されました。
しかし、50分仮眠の場合には、起床後10~15分に睡眠慣性が確認されました。つまり、目が覚めた直後は、一時的に頭や身体が十分に働かない可能性があります。
仮眠を取る時間帯も重要だった
午後9時または午前4時30分に1時間の仮眠を取った研究では、どちらも仮眠なしより午前7時の作業成績が改善しましたが、特に午前4時30分の仮眠の効果が大きかったとされています。
著者ら自身が紹介している実験でも、午前0時と午前4時に、それぞれ60分または120分の仮眠を比較しています。睡眠の質については夜勤後半の仮眠の方が優れていましたが、夜勤後半に60分寝た場合には睡眠慣性による作業成績の低下も確認されました。
このため、夜勤後半に短時間の仮眠を入れる場合には、起床直後に重要な作業を行うことへの配慮が必要だとされています。
90~120分が一つの目安として紹介されているが、最適時間は決められない
論文では、眠り始めてからREM睡眠までの1回の睡眠周期として、約90~120分が有効と考えられていることを紹介しています。別のレビューでは、夜勤前半なら120分を超える仮眠、夜勤後半なら約60分の仮眠が、仮眠後の注意力維持に役立つ可能性が示されています。
しかし著者らは、各研究で方法が違うため、注意力や作業能力を保つために必要な仮眠時間を断定することは難しいと明記しています。
体内時計を安定させる可能性も示されている
「アンカー睡眠」の研究では、8時間の睡眠を4時間+4時間に分け、そのうち一方を毎日0時~4時に固定し、もう一方の4時間を不規則な時間に取りました。
この状態を7~12日間続けたところ、毎日同じ時間帯に4時間の睡眠を確保すると、もう一方の睡眠時刻が不規則でも体内時計のリズムが安定したと報告されています。
著者らは、この「アンカー睡眠」については、その後の研究が少なく、仮眠時間や時間帯を変えた場合にも同じ効果が得られるかは、さらに研究が必要だとしています。
夜勤中に寝ると、勤務後の昼間の睡眠は短くなる
夜勤中に仮眠すると、その後に取る昼間の睡眠は、夜勤中に仮眠しなかった場合より短くなり、徐波睡眠も少なくなることが報告されています。
ただし、夜勤中に2時間仮眠+その後の昼間睡眠を合計すると、夜勤中に仮眠せず昼間だけ寝た場合と総睡眠時間はほぼ同じだったという研究も紹介されています。著者らは、昼間に寝続ける時間が減れば、その時間をほかの活動に使えるため、必ずしも悪い影響ではないとしています。
発表者
ヒデマロ・タケヤマ
トモヒデ・クボ
トオル・イタニ
所属機関
名古屋市立大学大学院医学研究科
環境保健科学・健康増進学部門(生活・労働・環境の健康科学)
論文では3名全員が同じ所属として記載されています。
Takeyama et al. (2005). The Nighttime Nap Strategies for Improving Night Shift Work in Workplace. Ind Health, 43(1), 24–29.

