私たちの体には、ウイルスや細菌などの外敵に対して自らを守る「炎症反応」という仕組みがあります。発熱や腫れ、赤みなどは、体が戦っている証拠です。しかし、この炎症が長引いたり、必要以上に強くなってしまうと、かえって体にダメージを与えることがあります。
近年の研究では、慢性的な炎症がさまざまな病気や不調の原因となることが明らかになってきました。たとえば、生活習慣病、老化、メンタルの不調、免疫の乱れ、さらには睡眠の質にまで影響すると言われています。
こうした炎症をやわらげ、心身のバランスを整えるのが「抗炎症」という考え方です。
この記事では、抗炎症とは何かをわかりやすく解説するとともに、抗炎症の6つのメリットや、抗炎症に効果的な食べ物や生活習慣について、科学的な根拠を交えながらご紹介します。
健康的で快適な毎日を送りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
抗炎症とは?
抗炎症(anti-inflammatory)とは、炎症を抑える作用のことです。
炎症とは、体が細菌やウイルスなどの異物に対して反応する生体防御の仕組みで、発熱や腫れ、赤み、痛みなどの症状を伴います。
しかし、必要以上に強い炎症や、慢性的な炎症は、かえって体に悪影響を与えてしまうこともあります。そこで、「抗炎症作用」は、こうした過剰な炎症反応をバランスよく抑える役割を果たします。
抗炎症の6つのメリット
1. 老化の進行を遅らせる|アンチエイジング
「老化」は避けられない自然現象ですが、進行をゆるやかにすることは可能です。
近年の研究では、「炎症」が老化のスピードを速める要因のひとつであることが分かってきました。
とくに「炎症性サイトカイン」という物質が体内で増えると:
- 肌のたるみやシワ
- 筋肉量の減少(サルコペニア)
- 骨密度の低下
- 記憶力や集中力の衰え
といった老化に伴う変化が早く起こる可能性があります。
抗炎症を意識したライフスタイルは、内側から若さを保つエイジングケアの一環としても効果的です。
2. 慢性疾患の予防と改善
慢性炎症が長期にわたって起こると、以下のような病気に繋がるリスクが高まります。
- 高血圧:血管に常に負担がかかり、血圧が上昇しやすくなります
- 動脈硬化:血管の内側に炎症が起き、血液の流れが悪化
- 糖尿病:インスリンの働きが妨げられ、血糖値がコントロールできなくなる
- がん:細胞の炎症が長引くと、異常な細胞増殖を招くことがあります
- 認知症:脳内の炎症が、神経細胞の破壊を促す可能性があります
日常的に抗炎症生活を送ることで、こうした病気のリスクを下げることができます。
3. メンタルヘルスへの好影響
心の健康と炎症の関係も、近年大きな注目を集めています。うつ病や不安障害の発症には、脳内の炎症が関与している可能性があるとする研究が増えているのです。
脳で炎症が起きると、神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスが崩れやすくなり、気分が落ち込みやすくなったり、意欲が低下したりします。
中国医科大学2018年の研究チームは、食事の炎症スコアが高いグループは、炎症スコアが低いグループに比べて、うつ病リスクが25%高いと報告しています。
炎症スコアは、炎症促進食を食べると点数があがり、抗炎症食を食べると点数が下がるスコアです。
4. 免疫力のバランスを整える
免疫は私たちの健康を守るために欠かせない機能ですが、過剰に働いてしまうと逆に体を攻撃することがあります。
その代表的な例が「自己免疫疾患」です:
- 関節リウマチ
- 潰瘍性大腸炎
- 甲状腺の異常(バセドウ病など)
こうした病気は、自分の体を敵と認識して攻撃してしまう、免疫の「誤作動」によって起こります。
抗炎症を意識した生活を送ることで、免疫の働きを正常で安定した状態に保ちやすくなり、感染症に強く、自己免疫系のトラブルを抑えることも期待できます。
5. 疲労感や体の重さの軽減
「最近なんとなく疲れやすい」「寝ても疲れが取れない」と感じている方はいませんか?
実はその原因の一部に、体の中の慢性的な炎症が関係している場合があります。体が常に「軽い戦闘モード」にあるような状態では、エネルギーが消耗されやすく、回復しにくくなってしまいます。
抗炎症的な生活習慣を取り入れることで:
- 疲れにくくなる
- 朝スッキリ起きられる
- 体が軽く感じる
といった日常的な体調改善も期待できます。
6.睡眠改善につながる
サウスカロライナ大学2020年の研究チームは、食事の炎症性を下げた(抗炎症食に変えた)人では、睡眠中の中途覚醒時間(WASO)が平均58.3分から25.59分減少。睡眠効率が約2.6%向上したと報告しています。食事による炎症が睡眠の質を高める可能性があります。
抗炎症に効果的な食べ物5種類
毎日の食事の中で選ぶものが、炎症レベルを左右します。以下は、抗炎症作用が高いとされる代表的な食材です。
1.魚(特に青魚)
サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚には、「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれています。
この成分は、体内の炎症を抑える作用があり、心臓病や認知症の予防にも効果があります。週に2〜3回の摂取が理想です。焼き魚や煮付け、缶詰でもOK。
2.野菜・果物
ビタミンCやE、ポリフェノール、カロテノイドなどの抗酸化物質が豊富です。
炎症の原因となる「活性酸素」を除去し、細胞の老化を防ぎます。
特におすすめは、ほうれん草、ブロッコリー、パプリカ、トマト、ブルーベリー、りんごなど。
彩り豊かな野菜と果物を1日5種類以上意識して取り入れると◎。
3.オリーブオイル(特にエキストラバージン)
地中海式食事の中核をなす健康オイル。
オレイン酸やポリフェノールの一種「オレオカンタール」が抗炎症作用を持っています。
サラダのドレッシングやパンにかけるなど、加熱しすぎず使うのがおすすめです。
【健康と美味しさの両立】エクストラバージンオリーブオイルの魅力とは?
4.ナッツ類
アーモンド、くるみ、カシューナッツなどには、良質な脂質、マグネシウム、食物繊維が豊富です。
血糖値や炎症マーカーを下げる効果が報告があります。
1日ひとつかみ程度を目安に、無塩・無添加のものを選びましょう。
5.ターメリック(ウコン)
カレーの黄色のもととなるスパイスです。
含まれる成分「クルクミン」には、非常に高い抗炎症作用があります。カレー料理だけでなく、ターメリックティーやスープに加えるのも◎。
抗炎症に効果的な4つの生活習慣
食事だけでなく、生活全体を見直すことが抗炎症の大きなカギです。以下のポイントを日常に取り入れてみましょう。
1.ストレスをためない
長期的なストレスは、体に慢性的な炎症反応を引き起こします。
深呼吸、瞑想、趣味の時間、自然とのふれあいなど、自分なりのストレス解消法を持つことが大切です。
2.適度な運動
運動は炎症を抑えるホルモンの分泌を促進します。
毎日20〜30分のウォーキングや軽い筋トレでも十分効果があります。
運動を続けることで、免疫バランスが整い、慢性炎症の予防につながります。
3.十分な睡眠
睡眠中、体は修復と回復を行い、炎症を抑えます。
理想は7〜8時間の質の良い睡眠。寝る前のスマホやカフェインを控えるのも大事です。
4.禁煙・節酒
タバコは炎症を引き起こす最大の要因の一つ。禁煙は即効性のある抗炎症対策です。
アルコールも過剰に摂ると炎症を促進するため、適度な量(週に1〜2回、少量)に抑えましょう。
まとめ
ここまで「抗炎症」とは何か、そしてそれが私たちの健康や日常生活にどのようなメリットをもたらすかについてご紹介してきました。
抗炎症を意識した食事や生活習慣は、特別な医療やサプリメントに頼らなくても、今日からすぐに始められる身近な健康法です。
慢性疾患の予防、老化の進行を遅らせること、心の安定、免疫バランスの調整、疲労や睡眠の改善など、さまざまな面で私たちの生活を支えてくれます。
特に、現代人に多い「知らないうちに起こっている慢性炎症」を抑えるには、
- バランスの取れた抗炎症食
- ストレス管理
- 十分な睡眠
- 毎日の軽い運動
といった基本的な生活習慣の見直しがとても大切です。
小さな積み重ねが、将来の大きな健康の差になります。今日からできることを少しずつ始めてみましょう。