「もっと完璧にやらなければならない」
「失敗したらどうしよう」
と考え続けることは、完璧主義とどのようにつながっているのでしょうか。
この論文は、完璧主義認知理論(Perfectionism Cognition Theory:PCT)が重視する心配(worry)と反すう(rumination)に注目し、これまでの研究結果をメタ分析で統合したものです。
研究では、完璧主義を主に、
自己志向的完璧主義(Self-Oriented Perfectionism:SOP)
自分自身に非常に高い基準を課し、完璧を求める傾向
社会規定的完璧主義(Socially Prescribed Perfectionism:SPP)
周囲から完璧であることを求められていると感じる傾向
の2つに分けて調べています。
結果として、SOPとSPPはいずれも、心配・反すうと正の関連を示しました。
さらに、メタ分析を用いた媒介モデルでは、心配と反すうが、完璧主義と心理的苦痛との関係を媒介するという結果が示されました。
参考:完璧主義、心配、反芻、そして苦悩:完璧主義認知理論の証拠に関するメタ分析【2019年】
結論
このメタ分析では、自己志向的完璧主義(SOP)と社会規定的完璧主義(SPP)のどちらも、心配や反すうと関連していました。
4つの主な関連は以下の通りです。
SOPと心配:r = 0.33
SPPと心配:r = 0.43
SOPと反すう:r = 0.20
SPPと反すう:r = 0.32
すべて統計的に有意でした(p < 0.001)。
論文では、Cohenの基準に照らして、
SOPと心配:中程度の正の関連
SOPと反すう:小〜中程度の正の関連
SPPと心配:中〜大程度の正の関連
SPPと反すう:中程度の正の関連
と整理しています。
また、メタ分析による媒介モデルでは、
SOP → 心配 → 心理的苦痛
SPP → 心配 → 心理的苦痛
SOP → 反すう → 心理的苦痛
SPP → 反すう → 心理的苦痛
の4つすべてで有意な間接効果が確認されました。
つまりこの論文は、完璧主義そのものだけでなく、完璧主義に伴って心配や反すうを繰り返すことが、抑うつや不安などの心理的苦痛に関係している可能性を示しています。
ただし、著者らは因果関係を明確にするためには、今後さらに縦断研究が必要だとしています。
内容の信頼性:8 / 10
※この点数は、論文本文に記載された研究方法、解析方法、出版バイアスの検討、限界をもとに評価しています。
信頼性を高く評価できる点
- メタ分析によって複数研究を統合している
- ERIC、MEDLINE、ProQuest Dissertations and Thesis、PsycARTICLES、PsycINFO、PubMed、Web of Scienceの7データベースを検索している
- 1991年から2018年までの研究を対象としている
- 文献リストの確認に加え、著者への問い合わせによって未公表データも探索している
- PRISMAに沿って研究選択を行っている
- 2人の著者が独立して効果量と研究特性をコードしている
- 出版バイアスについて、
- trim and fill法
- fail-safe N
- Begg検定
- Egger検定
- を用いて確認している
- 心配・反すうが心理的苦痛を媒介するかについて、2段階構造方程式モデリング(TSSEM)を使ったメタ分析的媒介モデルを検証している
注意すべき点
論文では、主に次の限界が挙げられています。
- 完璧主義の測定はすべてHewitt & FlettのMultidimensional Perfectionism Scale(MPS-HF)に限定されている
- PCTが扱う他の完璧主義要素、例えば「失敗への懸念」や「行動への疑念」などは今回のメタ分析では検証していな
- 含まれた研究はすべて非臨床サンプル
- 媒介分析は既存研究の相関データを統合したもので、因果関係を直接証明するものではない
- 著者ら自身も、因果関係を明らかにするために縦断研究が必要と述べている
- PCTでは身体的健康への影響も想定されているが、このメタ分析が検証したのは心理的苦痛・メンタルヘルスに関する部分のみ
方法面は比較的強い一方、因果推論と対象集団には限界があるため、8 / 10としました。
何の研究か?
完璧主義認知理論(PCT)が示す3つの中心的な考えを、メタ分析によって検証した研究です。
PCTでは、完璧主義の人が心理的苦痛を抱えやすくなる背景に、考え続けてしまう「認知的固執(cognitive perseveration)」があると考えます。
この論文では、認知的固執の代表として、
心配
反すう
を扱っています。
心配とは?
論文では心配を、主に将来に起こる可能性のある否定的な出来事について、比較的コントロールしにくい形で考え続けることとして説明しています。
反すうとは?
反すうは、主に過去の否定的経験について、繰り返し侵入的に考え続けることとして説明されています。
論文では、
心配:未来志向
反すう:過去志向
という違いも示しています。
検証した3つのテーマ
研究者らは、PCTの次の3つの主張を検証しました。
SOPとSPPはいずれも、心配・反すうと関連する
完璧主義の人は、複数のタイプの認知的固執を経験しやすい
心配と反すうは、完璧主義と心理的苦痛との関係に関与する
文献検索
以下の7データベースを使用しました。
ERIC
MEDLINE
ProQuest Dissertations and Thesis
PsycARTICLES
PsycINFO
PubMed
Web of Science
検索対象期間は1991〜2018年です。
最終検索は2018年3月に完了しています。
また、PCTを最初に提示した文献の参考文献も確認し、複数の研究者へ未公表研究・未公表データの提供も依頼しました。
研究の選択条件
対象研究は、次の条件を満たす必要がありました。
MPS-HFを使って完璧主義を測定している
心配または反すうなど、少なくとも1種類の認知的固執を測定している
相関係数 r を報告している
英語で書かれている
最終的に15論文が条件を満たしました。
研究した理由は?
完璧主義が不安や抑うつなどの心理的問題と関連することは、それまでにも多く研究されていました。
しかし、研究者らが注目したのは、
「完璧主義の人が、なぜ心理的苦痛を抱えやすくなるのか」
という仕組みです。
PCTでは、その重要な仕組みとして、心配や反すうのような「考え続けること」が挙げられています。
完璧主義の人は、
・自分自身から否定的に評価されること
・他人から否定的に評価されること
・失敗すること
・高い基準に届かないこと
に注意を向けやすく、その結果として心配や反すうが強まる可能性があります。
一方、それまでの研究では、完璧主義と心配・反すうの関連の大きさが研究ごとに異なっていました。
また、心配や反すうが、完璧主義と心理的苦痛との関係をどの程度説明するのかも十分には整理されていませんでした。
そこで研究チームは、既存研究をメタ分析し、
完璧主義と心配・反すうの関連はどの程度か
心配や反すうの種類によって関連が違うか
心配と反すうが、完璧主義と心理的苦痛の間を媒介するか
を検証しました。
結果はどうだったか?
| 関連 | 相関係数 r | 95%信頼区間 | 対象人数 | 解釈・補足 |
|---|---|---|---|---|
| SOP × 心配 | 0.33 | 0.28〜0.38 | 1,278人 | 中程度の正の関連。Begg検定・Egger検定とも有意ではなく、出版バイアスは示されず |
| SPP × 心配 | 0.43 | 0.38〜0.47 | 1,278人 | 中〜大程度の正の関連。4つの関連の中で最も大きい |
| SOP × 反すう | 0.20 | 0.17〜0.22 | 5,339人 | 正の関連。trim and fill法で3研究を補完後も r = 0.19、p < 0.001 |
| SPP × 反すう | 0.32 | 0.27〜0.36 | 5,387人 | 正の関連。異質性は4比較中最大。trim and fill法で9研究を補完後も r = 0.27、p < 0.001 |
| 項目 | SOP × 反すう | SPP × 反すう |
|---|---|---|
| 平均年齢 | 25.62歳 | 25.61歳 |
| 女性割合 | 70% | 70% |
| 対象国 | カナダ、スペイン、英国、米国 | オーストラリア、カナダ、スペイン、英国、米国 |
| モデル | 対象人数 | Sobel検定 | p値 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| SOP → 心配 → 心理的苦痛 | 1,278人 | 7.77 | < 0.001 | 有意な間接効果 |
| SPP → 心配 → 心理的苦痛 | 1,278人 | 6.80 | < 0.001 | 有意な間接効果 |
| SOP → 反すう → 心理的苦痛 | 6,285人 | 6.84 | < 0.001 | 有意な間接効果 |
| SPP → 反すう → 心理的苦痛 | 6,333人 | 6.48 | < 0.001 | 有意な間接効果 |
この2つについても、有意な間接効果が確認されました。
したがって、このメタ分析では、心配と反すうの両方が、完璧主義と心理的苦痛との関係に関与しているというPCTの考えが支持されました。
因果関係について
著者らは、媒介モデルによって心配・反すうの役割が支持された一方で、因果関係を明確にするには縦断研究が必要だとしています。
論文では、完璧主義・反すう・抑うつを4週間追跡した先行研究を例として挙げ、今後はこのような縦断研究を増やす必要があると述べています。
発表者
合肥工業大学(Hefei University of Technology)
中国科学技術大学(University of Science and Technology of China)
宣城職業技術学院(Xuancheng Vocational and Technical College)
シエ・ユー:合肥工業大学
コン・イェン:中国科学技術大学
ヤン・ジーユー:宣城職業技術学院
チェン・ファーシアン:合肥工業大学
論文名:Perfectionism, worry, rumination, and distress: A meta-analysis of the evidence for the perfectionism cognition theory
著者:Yu Xie, Yan Kong, Jiyu Yang, Faxiang Chen
掲載誌:Personality and Individual Differences
発行日:2019年3月1日
DOI:10.1016/j.paid.2018.11.028
ScienceDirect:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S019188691830624X

